汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
然し、誰しもがその痛みに耐え得る訳でも変化を受容する訳でもない。
改革とは孤独な戦いとなり得るのだ。
「ドルーアの討伐を最優先とせぬは先王を始めとした歴代の王や亡くなった者達への冒涜ではないか!」
ドルーア征伐の延期を何処からか聞きつけた
更にニーナの王配としてハーディンが選ばれる事も彼等は聞きつけるに及び、ニーナを蔑ろにするディール、ミニディ両侯爵を中心とした勢力への批判を声高に叫ぶ。
何せ彼等は現在のところ非主流派。
アドリア伯やディール、ミニディ両侯爵とは相容れずさりとて
が、彼等も事此処に至ってニーナを戴く事を良しとした。
「神輿も頭も軽い方が我等にとっては都合が良い。」
彼等非主流派の会合の中で出たひと言だが、彼等の本音を表しているだろう。
ニーナを頂点としたアカネイアの体制こそがアカネイア再興の為になる。
そう考えていたミディアはアカネイア貴族達の唐突な接近に不快感を示す。
が、事実としてニーナを軽んじる勢力が急拡大している。
苦渋の決断として彼女はそれを受け入れる事とし、更に教会との連携を強め主流派に対抗しようとした。
が、この動きにアドリア伯ラングが動く。
「勘違いなさるな。元々ニーナ様の王配にハーディン公を据えようとしたのは教会勢力。正確にはボア司祭なのだ。」
と
これにより、ミディアは決断を迫られる。
ニーナ様の御心を思えばハーディン公との話は破談にすべき。そう主張する彼女であるからして、頼りとしていたボア司祭や教会との関係を考え直さねばならないのが道理。
しかし、そうなれば主流派に対抗するのは難しくなる。
彼女は騎士であり、尚且つこの様な派閥争いを嫌悪していた事もあってか、対応しきれない。
トドメとばかりに
「そもそもハーディン公は本来オレルアン公の力となるべき人物。それをアカネイアが取り上げたと言うのに、今更になってそれを破談するはアカネイアの信用を大きく損ねる愚行。」
と話を進めていた教会ならびにそれを安易に非難するミディア達へラングは発言した。
この辺りのやり方は過去『腐敗貴族の象徴』とも揶揄されていたラングらしいものであり、反面ミディアにその様なやり方の経験は無く、また非主流派からの援護もなかった。
ニーナ派とでも仮称するが、仮にニーナ派が作られるとなると廷臣は不手際を重ねて起こした事から中心的な存在となるには問題が多く、またニーナからの信も揺らぎつつあった。
何せニーナからすれば、カミュの安否やかの人物の守ろうとしていたグルニア。それは何としてでも守りたかった
ところが、廷臣達はそのニーナの願いを果たす事は叶わない。それと入れ替わりにミディアがニーナの側についたのも彼女なりの廷臣達に対する不満や不信の証。
が、間違ってはいけないのがニーナの信をミディアが得たところでアカネイアの貴族社会のみならず騎士などからもミディアは嫌厭されている事。
非主流派としても、あくまでニーナを支持するのはアドリア伯やディール、ミニディ両侯爵を核とした勢力に対抗する為のものに過ぎない。
ましてや、貴族社会の
というよりも、自身の立場⋯正確には家の方針にさえ従わずに
確かにアリティアのマルス王子は些か以上に目に余る存在ではあったが、
その戦力としての価値を減じ、しかもアカネイアへの不信を抱かせる様なミディア(彼等の価値観的には敵に寝返り、帰参したアストリアは最初から人としてすら考慮されない為)の在り方。これには流石の彼等も閉口し、
「ものの順序すら判らぬ小娘風情が。」
とその評価を最底辺にまで下げる事となった。
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王は間違えてはならない。その絶対性が揺らぐから。
とは、アカネイアにおける少し前までの常識であった。
と多くの者は誤認している。
正確には
王の選択の結果は常に正しくあらねばならない、である。
例えるならば、サッカーにおいて前者の場合なら王のシュートは必ず決まる。
後者の場合、王のボールを蹴る方向は関係ない。ゴールが動き、結果としてシュートが決まる。
と言ったところだろうか。
前者の場合だと、王に求める素養は多くなり
後者の場合ならば、臣下に求められる才が高くなる。
そして今回の場合、明らかに後者となろう。
物怖じせず、一切の呵責なくニーナに教えを授けれる者がいるならばともかく。今のニーナは立場こそ『亡国の姫君』から変わっただろうが、意識は殆ど変化していない。
となれば、彼女を支える臣下に求められるものは並大抵のものになろう筈がない。
それと同時に彼女を支える者達は横の繋がりもまた必要となるのは避けられまい。
最悪、ニーナの判断を己の責として処分される者も出てこよう。
それだけ、王というものは様々なものを負わねばならぬのだ。
その好例となり得るのがグルニアであろう。
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現在も混乱の中にあるグルニア王国。
元を辿ればドルーアに与し、アカネイアを滅ぼしたグルニア。
しかし、グルニアの黒騎士カミュはニーナを匿い後にアカネイアからオレルアンへと逃した。
確かに実行したのはカミュであり、責められるべきはカミュとそれに迎合した3名の騎士であろう。
が、事はそれで済まなくなってしまう。アカネイア再興を掲げ、オレルアンにてマルス王子やハーディンを中心とした勢力が結成。その軍はアカネイア再興そしてドルーア討伐を旗印としてワーレンへ進出。
ワーレン付近に展開していたグルニア軍の指揮官騎士カナリスは当然ドルーアに与しているグルニアの為にこれを倒さんと動いた。
武運拙くカナリス等は敗れ、グルニア軍は壊滅する事となる。
さて、グルニアに被害を与えたマルス王子率いるアリティア軍。その旗印たるニーナ王女がいなければ、そもそもこの様な被害を被る事はなかった。そう言えなくはないだろうか?
そうでなくとも、その時点では敵国の王女でしかなかったニーナを見逃したどころか匿ったカミュ。
その責がカミュ個人に留まるものであろうか?
否
王の職務のひとつに騎士への受勲と言うものが存在する。
これは『王の名の下に』騎士として認める、というもの。
つまり、極論を言えば自国の騎士の行動全てに国王の信任という前提がある、という事になってしまう。
ましてやカミュは一介の騎士に非ず。
グルニアの武の象徴たる黒騎士なのだ。当然、カミュの起こした問題の責は任命した王にも及ぶ。
本来ならば、真に王の剣たる騎士の自覚あらば
その信を裏切った。その意識があるのならば、潔くカミュは自刃して果てるべきだったのだろう。
しかしそうはならず、それどころかその事実をカミュとその配下の騎士達は己の中にしまい込んだ。
それを知った騎士や民はどうしたか?
そう、王に責を問うたのである。
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この様な話がゴロゴロ転がっている訳もないが、極論その様な事も起きうるのが王。
今のニーナには直接受勲させた騎士がいないからこそ起きない事であり、ハーディンが今後のアカネイア軍においての主力を傭兵とした理由でもある。
ハーディンの兄、オレルアン公も騎士の安易な増強には慎重だった。
無理もないと今ならば思える。
「
ハーディン、お主も気をつけよ。」
オレルアン公は勇猛果敢な人物ではない。文治主義であり、平時でこそその能力を十全に発揮する人物だろう。
聡明ではないのかも知れない。英君でもなかろう。
が、常に己の手の届く範囲で最善を目指し、そして壁にぶつかっていた。
「せめて、気概は見せて欲しいのだが。」
ニーナとの話を終えたハーディンは暗い表情でそう口にしている。
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マルス達はハーディンやディール、ミニディ両侯爵の好意によりアリティアへの一時帰国が叶う事となった。
カダインのウェンデルとその弟子マリク。二人は混乱しているカダインを鎮めるべく、一度アリティアを離れる事を決意する。
ウェンデルとしては弟子の心遣いは嬉しく思う一方で、それよりも彼が助けたいと願ったマルス王子やエリス王女。二人の力になって欲しいと説得したが、マリクは譲らなかった。
「カダインへの恩返し」そう言われてしまうと、ウェンデルも心中複雑ではあったが受け入れる他にない。
マルス達は帰国するとアリティアの状況を理解している騎士アランから詳しい話を聞き、国内の賊討伐に乗り出した。
アリティアの民は漸く安心できる生活が戻って来ると胸を撫で下ろし、マルス達の行為に喝采を挙げる。
だが、一方で前国王コーネリアスの願いであったドルーア討伐。いや、暗黒竜メディウスの討伐こそが戦いの中で命を落とした者達への最大の餞となるのではないか?
と疑問を呈する者も少なからず存在している。
前国王コーネリアスの妻であるリーザ。彼女はドルーアにより命を奪われており、アリティアの民の中でも決してドルーアに対しての憎悪が燻っていない訳ではなかった。
特にアリティア再建の象徴であるマルスがアリティアを解放しても殆ど国内に留まれなかった事も大きい。
マルスやその騎士達が国外にてしていたのは『ドルーア討伐』という目的の為の筈。
だからこそ、アリティアの民は中々進まない賊退治などについても我慢していた部分は確かにあったのだ。
そして漸くマルスが帰って来たとなれば、本懐たるドルーア討伐が成功したと思ったとて不思議ではないだろう。
結果として、マルスの帰国自体は好意的に受け取られはしたものの、その有り様については是々非々と言ったところとなってしまった。
更に言えば、留守を任されていたエリス。彼女の今後についてもアリティアの有力者からはかなり不興を買っていた。
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マルスとその姉エリス。
コーネリアスとリーザ亡き今となってはアリティアの王家の血を守れるのはマルスとエリスのみ。
王族である以上はその血を絶やさない様にするのは責務。マルスは避難先のタリス王国にてシーダと婚約者となった。
これは有力者達も歓迎せずとも納得せねばならぬ事だろう。
しかし、である。
となれば、マルスよりも年上であるエリス。彼女の婚姻についての話がなされていない。これは明らかに問題であった。
言うまでもないが、出産とは命懸けのものであり医療について魔法の存在故か歪な発展を見せるアカネイア。
当然だが、子を宿したとしても子が生まれ落ちる可能性は決して高くはない。
勿論、エリスはアリティアの王女である以上万全の体制を以て臨むのは自然な事ではあるが。それでも万一の事は否定出来ない。
そこで有力者達はエリスの婚姻について考えるべきではないか?そうマルスの信任厚いモロドフに彼等は進言する。
彼等も確かにアリティアにおける勢力争いを考えなかった訳では無い。が、それ以上にアリティア王家を盤石にしようと考えたのだ。
そう言った意味において、マルスと共に戦場へ出ている
が、それは今の状況では叶わない。
ならせめて姉君であるエリスの婚姻を進めようとするのは王家の血を絶やさぬ為には当然の主張とも言えた。
モロドフもその主張には理があるとしながらも、軽々に頷けない。
エリスは今現在マリクとの絆を深めている最中であり、政略結婚をすべきではない。そう考えていたからである。
であれば、マリクはマルスに帯同するのではなくエリスの下で働くべきであり、間違ってもカダインの為に動くのは如何なものか?
と反論されるのは自然な事だった。
これがどこぞの腹黒の様に比類無き働きと各国の後押しがあったならば、或いは問題とならなかっただろうが。
そこでモロドフ配下の者はこう噂を流す。
エリス王女を助け出したのはマリクであり、これはまごうこと無き功績である、と。
これによりエリスへの話は収まった。結果としてエリスとマリクは恋仲となり、マルスの親友でもある事からマリクがアリティアの桂石として見られる事になった。
アリティア国内だけでこの話は完結していたのだが、これを英雄戦争後カダインの者が落ちたカダインの評価を高める為に利用。
結果、
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荒れ果てた国内の立て直しを優先すべきと考えたハーディンとマルス達。
しかし、多くの者はドルーア討伐を望む。
その認識のズレが後の英雄戦争へと繋がる事になろうとは、殆どの者は想像すらしていなかった。
後年の識者はこの時のアカネイアやアリティアの事を悪しざまに批判する。
が、当時の者の見え方と後世の者の物の見方が同じ筈はない。
悪夢は醒める事を許さず、人の想いは捻じれ絡み合う。
暗黒戦争、とはよく言ったものだ。
と言う訳でアカネイアとアリティアにも燻るものが多々あります。
マリクとしては、恩師であるウェンデルの手助けをしたい事や兄弟子であるエルレーンを気に掛けての行動でしたが、裏目に出ます。
彼も割とズレている部分があると思うので。
別キャラルート ヒロイン
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パオラ
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エリス
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ミネルバ
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シーマ
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ニーナ
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ミディア
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マリア
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クライネ
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カタリナ
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その他