汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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大陸全てを巻き込む戦乱。

逃れうる手段はなく、人々は最善を模索する。





悪夢の胎動

アカネイアで

アリティアでドルーア討伐の論が持ち上がった。

 

特にニーナの王配となるハーディン。彼には更なる武功。率直に言えばドルーア皇帝メディウス。

かの者の頸を以てアカネイア王家への真なる貢献とすべき

 

 

という論が高まる事になる。

 

 

そもそもハーディンはアカネイアの者ではないし、請われたからこそそれに応じた。などと言う正論は意味を成さない。

 

アカネイアの王家に連なるなれば、アカネイアの敵を討ち果たすのは当然であり、それは何物にも代え難い名誉なのだ。

というアカネイア王家を神聖視する者は少なからず存在していたのだから。

 

 

アカネイアの建国に際し、それを支えた者達がいた。

何せ歴史書には建国王或いは始祖アドラ1世の建国前の出自は記されていない。

 

にも関わらず、邪悪なる竜を倒す神器。即ちパルティア、メリクル、グラディウス。そして彼に従う多くの者達。

それらを束ね、竜から大陸を取り戻した(・・・・・)。これはアドラ1世の類稀なる人望によるもの。

 

 

そう教会の教典や歴史書には記され、アドラ1世の功績を讃えている。

 

 

 

まぁ、実際にはアドラ1世が創り上げたアカネイアも暗黒竜メディウスが興したドルーア帝国により壊滅の憂き目に遭っているのだが。そこについては然程に触れられていない。

 

 

しかし、情報を手に入れる手段が限られ、その上権威ある者達が口を揃えているならば

 

まさか、それが虚構に満ちたものであろうとは思わないし、証明も出来ないだろう。

 

 

 

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主流となっている思想などに反論する場合、その根拠を求められる。

アドラやその周囲の者達の狡猾なところは、歴史の証人たる竜人族をマムクートと迫害した事ではなかろうか?

 

 

これにより、人と竜の相互理解どころか交わりすらも困難とし、もし仮に竜人族からの言葉を引き出したとしても、その信憑性を大きく損ねる事が出来るのだから。

 

 

事実、メディウスの正当な怒りは理不尽な暴虐として歴史に刻まれ彼等の嘆きも悲しみも

苦しみさえも悪のひと言で終わらせてしまえるのだ。

 

 

 

 

ゲレタは元々ヒトと竜が分かりあえると思っていない。

娘であるチキやバヌトゥが特殊であり、それを受け入れた(リンダ)や弟子達。そして村長が例外中の例外なのだ。

 

 

同じ事はハーディンにも言える。

彼は汚名を着ようとも、悪と言われようとも貫き通せる心の強さがあった。

 

最終的には闇に囚われたが、そこに関しては仕方のない事でもあろう。

 

 

「⋯ぬけぬけと都合の良い事ばかりほざきやがる。」

 

 

 

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勇者アストリア。

一プレイヤーだった頃のゲレタにとっては、ガトー、カミュにジョルジュ。ミディアに並んで到底理解出来なかったキャラクターである。

 

 

とは言え、それは未来の話。色眼鏡で見るべきではない。

そう己に言い聞かせていたが、事此処に至ってはやむを得まい。

 

 

アストリアは村を訪れるなり、徴税逃れの罪を声高に主張。

村の蓄えを徴収すると言い切ったのだ。

此方にとって幸いなのは、どうにもアカネイア本土から此処へ来る山中には獰猛な獣などがいるらしく単身で来たと言う事。

 

 

まぁ、理解は出来る。

仮にもアカネイアで勇者とまで謳われたアストリア(メリクル引換券)なのだ。

下手に兵を率いた所で余計な犠牲が出ないとも限らない。そんな判断からなのだろう。

 

 

リンダ達は隠れているし、俺も姿を見せるつもりはない。

 

 

 

⋯⋯嗚呼残念だよアストリア。

まさかお前を真っ先に殺さねばならないとは、な。

 

 

 

 

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アストリアがアカネイアに戻る事は終ぞなく、彼の無残な死体もまた見つかる事はなかった。

が、恋人であるミディアはアストリアの受けた任務を知らずにいる。その上彼女はニーナの側から離れる事が許されなかった。

 

 

 

 

英雄戦争終結後、漸くアストリアの使っていた愛剣や軽防具が発見されミディアは悲しみに暮れる事になるが

 

大陸ではありふれた悲劇でしかなかった。

 

 

 

 

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マルスはアカネイアのハーディンと文のやり取りを行ない、ドルーア討伐についての協議を重ねる事となった。

 

既にミネルバ達マケドニア勢はマケドニアへ帰国しており、当然ながら文のやり取りだけで時間を消費する事となる。

 

 

 

マケドニアへ帰国したミネルバはルーメル、リュッケ両将軍に迎えられる。

が、お世辞にも国王となる人物を迎えるとは到底思えない重い雰囲気にその場は支配されていた。

 

 

なおマケドニアの者であるレナは帰国する事を希望したが、恋人となったジュリアンやマリアから止められ、アリティアでの生活を送っている。

 

「せめて兄や両親の墓を作りたい。」

彼女の悲痛な願いだったが、それが叶わぬものであり、叶えたならば彼女の命が危ういとジュリアンは根気強く説得。何とかレナもそれを受け入れる事となる。

 

 

 

マケドニアの王となったミネルバ。その近衛となったカチュア、エスト。姉でありマケドニアの女王となったミネルバを支えようとするマリア。

彼女達の必死の努力にも関わらず、マケドニア国内の不穏な空気は払拭されない。

 

何せアカネイア攻めやオレルアン攻略などにおいてマケドニアとて犠牲を出しているのだ。

不幸中の幸いとも言えたのは、ミネルバ達がマルス達へ降ってからマケドニアとの戦闘はほぼ(・・)無かった事だろうか。

 

 

勿論、ミシェイルの特攻とも言える戦闘では言葉通りマケドニア軍は全滅しており、その家族や友人達はミネルバ達に好意的になれる筈もないが。

 

更にマケドニアという歪な産業構造をしている国家を曲がりなりにも動かしていたミシェイル。ただ戦場で武勇のみを頼りとしていたミネルバ。両者の間には一朝一夕ではとても埋め難い溝が存在していた。

 

 

信用。

それがミネルバにはまるで足りておらず、また彼女の騎士達は本来主君たるミネルバの欠けた部分を補うべきところをまるで理解していない。

 

事に政務に対する理解度はミシェイルと比べるまでもなく、内政を担当する者達はため息しか出なかったとの事。

 

 

 

民の困窮を知らぬ。

兵の苦労を知らぬ。

残された家族の不安すら理解出来ぬ。

 

なまじ前王であったミシェイルがその辺りも考えられた人物であるが故に、ミネルバへの失望は大きく深くなってしまった。

 

 

更に言えば、マケドニアの安全の為には一刻も早くドルーアの脅威を除かねばならない。

しかし、マケドニアの奥地にて異変が起きていた。

 

 

 

 

野生の飛竜の襲撃。

それ自体はマケドニアでもありふれた事。だが、今回はその頻度と規模が異なる。

 

常なれば単体或いは少数故に対処出来ていたそれ。しかし最近は群れを成して襲い掛かってきていた。

 

 

マケドニアの奥地とは、ドルーアとの国境に近い。

ミネルバは嫌な予感を感じた。

 

 

 

現在アカネイアなどは満足に動けていない。

 

しかしながら、それをドルーアが気にする必要などありはしない

 

 

確かにファルシオンは手放した。しかしそれはアカネイアやアリティアに服従した訳でも、己の身を焦がさんばかりの憎悪を忘れた訳でもない。

 

殺し合うならば、せいぜい足掻いて貰わねば意味が無い。それだけの事なのだから。

 

 

 

 

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村長は悩んでいた。

村の者とゲレタの関係について。

 

村長個人としてはゲレタは信頼に足る人物だと確信している。事実として、彼等がこの村に留まる様になってからは村の者達が怪我などで亡くなる事はなかったし、飢えや獣達に怯える日々は無くなったのだから。

 

村の戦える者達や自分と同じ年代の者達もそうだろう。

 

 

 

が、守られる事が当たり前と

平穏な日々が続くものと勘違いしている者達。戦う事から逃げ、或いは目を逸らしている者。その者達は彼等へのいきすぎた厚遇や村ヘの貢献が足りない。

そう仲間内で口にしているらしい。

 

 

少し前の宴の席では謝っておきながら、だ。

 

 

 

気持ちは理解出来なくもない。

が、彼はあくまでも振りかかる火の粉を払い、その危険を事前に摘む事を好んで行なっているだけ。

 

その者達は力が

いきすぎた力が何を引き起こしたのか?それを知らないのだ。

 

 

 

 

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もう十数年以上前の話。

 

 

村の男衆の中で皆から頼りにされていた男がいた。

男も村を守る為にその力を尽くし、儂達は安寧を手に入れた。

 

 

 

⋯その男が力にのまれるまでは。

 

男は村の防衛の中心的な役割を果たし、村の者からも尊敬され信頼もされていた。

 

だからだろうか、いつの間にか男の意見が常に通る様になり理不尽とも言える様な自分勝手な要求すら押し通し始めたのだ。

 

それが村の利益に繋がるのであれば受け入れただろうが、そうではなかった為に村の者達から猛反発を受ける。

それに対して男は

 

「俺が居なくても村が守れるってんなら好きにしろよ。」

と言い放つ。

 

 

村の者達の選択はひとつだった。

 

 

男の寝込みを襲い、その命を奪ったのだ

 

 

 

 

だからこそ、村長や村の古い者達はゲレタ達の姿勢を歓迎するのだ。

少なくとも、あの男の様にはならないと。

 

村の建物には閂こそされているが、壊そうと思えば壊せる程度のもの。

 

 

男衆は村の見回りを交代で行なっているが、それは外敵に備えるよりも、内部の者達を警戒しての事。

 

村長も男衆からの提案を良しとして、村の者達にも納得させている。

 

 

 

村にとっての最悪をもたらすものは獣や賊ではない。

内で和を乱そうとする者達なのだから。

 

 

例えどれだけ練達の将であろうと隙を突かれれば、容易くその命を喪う。

 

 

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本邦においてならば、室町時代の関東の武将太田道灌が分かりやすいだろうか。

江戸城の築城や主家である上杉氏を精力的に盛り立てたものの、その勢威を危ぶんだ主君の命により、湯殿を出た所で刺客に襲われ命を落としている。

 

有名どころならば、三國志における蜀の武将。張飛。

彼は部下に無理な命を出したが為に反意を抱かれ、就寝中に殺害されたという。

 

 

如何に豪傑だろうと決定的な隙を突かれれば実に呆気なく命を落とすという事が理解して貰えると思う。

 

 

 

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ゲレタの場合は特殊なので寝込みさえ襲われねば大概のことは対処出来ようが、その場合襲った者を見逃すとは思えないし、見逃してはならない。

 

そして、ゲレタの攻撃手段が此処で大きな問題となる。

ゲレタの攻撃は魔法と言えなくもないが、その魔法が発動するのは敵の体内。

つまり、魔力を知覚出来ない者には全く見えないのだ。

 

それは味方としてはこの上ない程に頼もしく、敵にすれば理不尽としか言いようのないもの。

ゲレタは好んで殺しをするつもりはないが、人の心の内など把握できるはずも無い。となれば、ゲレタのソレを知った者の中にはゲレタという存在自体を危険視する者が現れないとも限らないのだ。

 

 

 

 

村長は話に聞いているが、実際に見たことは無い。村の中では男衆は見ているだろうが、他の者は良くて伝聞程度。

村長も男衆のまとめ役もそれで良いとしている。理解出来ぬものは恐れ、それが同じヒトと知れば容易くそれを排斥する。

 

そんな未来が容易に想像出来たから。

 

 

そして最悪の場合

病で倒れ、亡くなった者をゲレタのせいにする。などと言う実にあり得て欲しくない未来すらあり得てしまうのだから。

 

 

 

 

情けない事だが、山賊や獣との戦いで身内が命を落とした者の中にはゲレタに対して敵意を隠し持っている者もいる。

 

「もっとお前が早く来れば、アイツは死ななくてもよかったんだ!」

と。

 

 

酒の席の話であり、同席していた男が即座に殴りつけた事でその場は収めたものの、そう言った意味での反感は根強い。

 

「戦って傷を負い、死ぬのが当たり前だったんだ。

ゲレタの旦那達が来てそれが遠いものとなった。良い事なのになぁ。」

 

 

村の中でも悪意が芽吹こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




と言う訳で、安全圏と思われていたゲレタの周辺もしっかり真っ黒に染め上げます。

逃げ場はひとつ。
死ぬ事だけなので。







アストリアについて。
アストリアは村の貯蓄の多さを見て、一度人員を用意すべくアカネイア本国へと戻りました。

ゲレタはそんなアストリアに少しだけ傷をつけ、そのまま見送ります。


そう、血が滲み出る程度の怪我を負わせて。
アストリアは元傭兵で経験豊かな勇者。⋯しかし、対人戦は得手だろうと獣相手にそれが通じるかどうかは。

お察し下さい。


アストリアの死はメディアにとっては凶事でありますが、大勢に関わる事はないので、描写する事は恐らくないでしょう。
居ても恋人の身柄次第で裏切りましたからね。


別キャラルート ヒロイン

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