汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

122 / 222
勢い任せ。

いつも通り、思想強めです。


衝撃

「お前さんが何をしてきたかは問わんよ。

が、忘れるな。過去はいつまでもお前さんを苦しめる事にもなる。彼女を守りたいなら、盗賊から足を洗う事を俺はすすめる」

 

ジュリアンはある人物にそう言われた。

 

 

 

 

 

----

 

 

「…2年ぶり、だな」

 

「…ええ。オレルアン公やハーディンさんが無事だと良いのだけど」

 

サムスーフを越えて、オレルアンの草原を見下ろす所でゲレタとエリスは感慨に耽った。

 

あの時にはこんな関係になるとは思っていなかった。

 

 

まぁ、正確に云えばゲレタはそうであるが、エリスは叶わぬ想いであると、その感情に蓋をしていた訳だが。

 

当時のゲレタにとっては、未だエリスは『自分とは違う世界の住人』との意識が強かった。どうしても、リアリティに欠けていた、とも言えるだろう。

今となってはエリスもマルス達も一人の人間として認識するようになっているが。

 

 

エリスからすれば、ありふれた表現をするならば『理想の(物語に出てくる)騎士』の様な存在であった。風変わりなところがあったとしても、それすらエリスはゲレタへの愛を深める材料(もの)だった。

仮に

…そう、もしも仮にゲレタがアリティアの姫としての立場を捨てて共に生きて欲しい。

 

そう願ったならば、迷いなくソレを選べるくらいには。

 

 

 

----

 

 

オレルアンの地に到着したマルス達アリティア軍。彼等はオレルアンを攻略中だったマケドニア軍との戦いに巻き込まれた。

 

どう選ぼうとも、ドルーアに従うマケドニアとの戦闘は避けられない。それにオレルアンにはマルスとしても、大切な姉と頼りになる兄を助けて貰った恩がある。

 

 

アカネイアのニーナ王女がオレルアンに身を寄せていたのは、予想外ではあったが、マルス個人としてはそこまで重要視していない。

 

ニーナ王女がアカネイアの再興を願うとして、その気持ちは理解できる。ドルーアを始めとした国家を倒さねばならないのも理解できなくもない。

 

 

しかし、ゲレタとの話の中でマルスは疑問に思う様になった。

王や王族とは民や国あってのもの。

 

では、滅んだ国の王族に如何程の価値があるのだろうか?と

 

 

 

自分達がタリスで学び、励んだ2年。その間、アリティアの民はドルーアの支配に苦しんでいるのではないか?とも

 

恐らくはこの答えが出るのは自分達がアリティアの地を踏んでからになるのだろう。

…だからこそ、マルスは気になってしまうのだ。

 

 

ニーナ王女。貴女はアカネイアを再興して何をされたいのか?

 

 

----

 

 

オレルアンでの戦闘は確かにガルダやデビルマウンテンでの戦闘よりは厳しいものだった。

特にマケドニア固有の戦力とも言えるペガサスナイト。

 

その対応に

 

苦慮する事は全く無かったのである。

 

 

マルス達とて、ドルーアやその同盟国と戦いアリティアを取り戻す。との明確な目標があった。

その為、様々な状況下における戦闘訓練を行なってきている。

 

勿論、これは兄ゲレタの発案であった。

その中でもマケドニア固有の戦力であるペガサスナイトとドラゴンナイトに対する戦闘訓練。

対象は主に弓兵であるゴードンとカシムだったが、いっそ偏執的とすら思える程の密度で行なわれた。

 

結果として、マケドニアのペガサスナイト相手の戦闘にも何ら支障はなく、集落を襲おうとする山賊や盗賊も問題なく対処している。

 

オレルアンの地でマケドニアの騎士であり、シスターレナの兄であるマチスが加入。

オレルアン城の南の砦で抗戦していたオレルアンの騎士ハーディンとその配下の騎士との合流を無事に果たす。

 

 

----

 

 

ゲレタ殿は甘い部分もあるが、その反面厳しいところもある。

 

特にゲレタ殿は立場などのある者が責務を果たさない事に対して、辛辣になる事が多いと私は感じている。

 

 

「⋅⋅⋅間違えてくれるなよ、騎士ジェイガン

騎士とは国を守るのみに非ず

民と国を守るからこそ、人々から敬意を持たれる存在になるんだ」

 

 

あの時、私に向けられた言葉に私はかつてない程の衝撃を受けた。

マルス王子もあれ以降、王や国について深く考えを巡らす様になり、シーダ王女と共に町や村などに出る事も増えたと感じている。

 

 

「騎士としての自分が嫌なら、騎士を辞めれば良い。

王族が嫌になったんなら、国から出て一個人として暮らせば良い。自覚も責任感もない者が武器や権力を使い、それで誰かの人生を狂わせる。

俺は恐ろしい事だと思うがね?」

 

それは冷笑であり、嘲笑だったと感じた。

 

 

「裏切りとはある意味逃げだと俺は考える。

裏切れば周囲から信用を失い、逃げはその者の中に弱い自分を作り出す」

 

だから、今のゲレタ殿はマケドニアの騎士マチスに対して何の興味も関心も持たないだろう。

ゲレタ殿は感情の機微を相手に悟らせない様に振る舞うのが上手い。

 

少なくとも、マルス王子やエリス様にシーダ王女などタリスで交流のあった者に対しては感情を隠す事はない。私はそう感じている。

 

 

 

----

 

 

 

「お久しぶりにございます、オレルアン公」

 

「おお、そなたはアリティアのエリス王女殿。

そうか、無事であったか」

 

「はい。本来ならば報せだけではなく直接お会いすべきと思っていたのですが」

 

「なに、構わぬよ。タリス王の書状と共にそなたとゲレタ殿の安全が知れて、私も弟のハーディンも安堵したものよ」

 

「あの時は非礼にも拘わらず助けて頂き、改めてお礼申し上げます。

改めまして名を名乗らせて頂きたく、オレルアン公に騎士ハーディン。

私はゲレタ。しがない流民でしたが、此度エリス王女を生涯かけてお支えする事となりました」

 

(…変わったものだ)

解放されたオレルアン城の謁見の間でハーディンは人の強さを目の当たりにする。

 

 

 

----

 

 

オレルアン城をマルス王子達アリティア軍と共に解放した翌日、私や兄であるオレルアン公と共に懐かしい者達との再会を果たす事となる。

アリティアのエリス王女とその従者であったゲレタ殿。

 

2年前、アリティアがグラの卑劣な裏切りにより滅ぼされて数日後、彼女達はこのオレルアンの地に居た。

 

 

最初は小男と思っていた私であったが、良く考えればその程度の筈はなかった事に後から思い至ったものだ。

エリス王女の身の安全を何より優先するならば、我々オレルアンの兵を動かして貰うのが確実。手段を選ぶべきではなかっただろうに、それでも我等オレルアンの事情も踏まえて判断をする。

 

それがどれだけ難しく、またエリス王女から真に信頼されていなければ為されなかったもの。

 

 

その人物が、生きてまたこのオレルアンの地を訪れる。2人の事については、タリス王からの親書にも記されていたし、エリス王女からも丁寧な文を貰っていた。あのゲレタ殿がエリス王女の伴侶となった事も含めて。

 

 

オレルアン城をマケドニアに奪われ、南の砦で機を伺っていた我等。マルス王子率いるアリティア軍とマケドニアとの戦闘の隙をついて、我等もまたオレルアン城の奪還の為に動いた。

 

正直に言えば、マルス王子達アリティア軍に対しては期待していたものの、それはどちらかと言えばマケドニアの注意を引き付けて貰う。つまり、囮として期待していた部分が大きかった。

 

 

確かに悪名高いガルダの海賊やサムシアンを倒している。が、大規模な正規軍。つまり統率のとれた軍隊との交戦経験が彼等には不足している。

それは戦う上でこれ以上ないマイナス要素であり、経験を積み重ねる事でこそ、それは払拭出来ると私は考えていた。

 

ところが、アリティア軍は寧ろマケドニア軍を翻弄し、常に優位に立ち回り、オレルアン城付近に展開していたマケドニア軍は私の予想を遥かに上回る速度で壊滅。

 

 

そこで目を見張ったのが、マルス王子の状況把握能力の高さとアリティア軍の対応力の高さだった。

マケドニア独自の兵種となりつつあるペガサスナイト。空を駆けるが為に、地形にも戦場にも左右されない『天空の騎士』

 

それ相手にアリティア軍は的確な対処を行なっているように遠目からペガサスナイトが次々と墜ちる場面を見ていたハーディンは衝撃を受けたものだ。

 

オレルアン城内の敵との戦闘の際、ハーディンは此度の戦闘への協力に対しての礼をマルス王子にしている。その時、それについて訊ねたが、王子は誇らしげにこう言った。

 

 

「恥ずかしながら、私やジェイガンはそれに思い至りませんでした。

兄ゲレタが様々な状況下でも戦える訓練をすべきだと助言してくれましたので」

 

 

----

 

 

その時私が受けた衝撃は恐らくこれまでの人生最大のものだっただろう。

 

 

エリス王女の婿となれば、マルス王子にとっては義理の兄。故に兄とゲレタ殿を呼ぶのは不思議でもない。

しかし、ゲレタ殿はあの時の立ち振舞いやエリス王女と共にサムシアンの跋扈するサムスーフを越えた時の手腕は素晴らしいものの、平民であると当人もエリス王女の手紙にも記してあった。

 

にも関わらず、ここまでマルス王子の信頼を勝ち得ている。

 

更に視界の端で彼はマケドニア兵を手玉にとっている。…武器も持たずに、だ。

 

 

どの様な教育や経験を重ねれば、あの様な御仁となるのだろう。

ハーディンはそこに興味と、少しばかりの羨望を感じた。

 

 

----

 

 

「…あの、ゲレタ殿でしたか?」

ハーディンの配下の騎士の一人ロシェは機会をみてゲレタに声をかける。

本来ならば、アリティアの王女エリスの婚約者であるゲレタに他国の騎士が声をかけるのは問題にもなりかねない行為。

 

が、どうにもその様な人物ではない事をロシェは少しの時間ではあるが理解していた。

 

「…ん?

ああ、確かロシェ殿だったか。申し訳ない、まだ名前と顔が覚えきれていないもので」

ロシェの言葉に気さくに応じるゲレタ。

 

「あの、差し出がましいとは思うのですが」

ロシェは一瞬躊躇うが

 

「あの戦い方は危険ではないでしょうか?」

そう言葉を向けたのだった

 

 

 

 

 

 

 




筆が暴走しそうだったので、話を切ります。





いつも感想や評価、ここすきなどをありがとうございます。
このとっちらかった小説が今まで続けられているのも、詠んで下さっている皆様のお陰と改めまして思う次第。

アンケートへのご協力も嬉しく思いますし、感想を読ませて頂き、新たな知見を得る事も多々。本当にありがたい限りです。


今後については、本来ならば本編を優先的に進めるのが筋であると思いますが、難航していますのでエリスルートを進めたいと考えております。
自分勝手な事とは思いますが、ご理解の程よろしくお願いいたします

エリスルートのイチャイチャ(努力目標)

  • いる
  • いらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。