汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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ゲレタの戦闘スタイルの説明回。

誤字脱字の指摘ありがとうございます。


真意

「…参りました」

手合わせはビラクが剣を落とした事による決着をみた。

 

 

 

 

「先程の蹴撃。どの様な仕込みが?」

模擬戦闘を終えて、少し呼吸を整えているゲレタにハーディンは思わず声をかけた。

 

模擬戦闘用の剣とは言え、金属製。その剣と蹴りが打ち合ってあの様な音が出るとは思えない。ビラクがその衝撃で剣を手放す事もまた。

 

 

「これよ、これ」

ゲレタはそう爪先で地を軽く蹴る。

 

「靴?」

ハーディンにはまるで理解が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

「靴に鉄を仕込むとは」

ハーディンは思わず絶句した。

 

「な?歴戦のハーディン殿でもこうなる訳だ」

 

「確かに有効なのですね」

ハーディンの様子を見て悪戯っぽくゲレタは水を持ってきてくれたエリスに笑いかける。

 

「その様なものが」

 

「奇襲になるでしょう?

それに最悪囚われたとしても、まさか靴が武器になるなんて思わない。そう思いませんか?」

 

「…確かに」

ゲレタの言葉に思わずハーディンも唸った。

 

 

 

 

----

 

 

 

「しかし、あれだけの動きが出来るならば武器を持って戦うべきでは?

…あ、いや。確かにゲレタ殿は戦う術を持っておられるが」

 

場を移し、ハーディンは自室にゲレタとエリスを招いていた。

 

「あんまり得意では無いんですよ。武器を使って戦うことが。

…それにこの戦闘スタイルなら、エリスにも教えられますから」

ゲレタの少し照れ臭そうな言葉に

 

「…エリス殿も出来るのですかな?」

思わずそう聞いてしまう。

 

「いえ、まだ私はこの人程ではありません。

ですが、鍛練は欠かさないつもりです」

たおやかに笑うエリスだが、その内容は非常に物騒である。

なお、レナにもこの技術は伝えるべきとゲレタとエリスは考えており、レナも自分の身を守れるならと前向きになっている。

尤もレナの足に合わせた靴を用意せねばならないので、恐らくアリティアを取り戻してからになるだろうと2人は思っているが。

 

「自分の部下なのでビラクの実力は知っているつもりなのですが、良く避けられましたな」

これはハーディンの偽らざる本音だった。

 

「どうしても動作には呼吸や視線などが連動しますからね。相手の視線を読み、呼吸を乱し、程良い牽制を入れれば相手も慎重にならざるを得ません。

元々私個人で敵を打倒するつもりはありませんので、時間稼ぎに注力しますよ」

なお、エリスを狙う不届き者の場合はその限りではない事を此処に明記しておく。

 

「大陸に広く流通している剣の多くは切れ味が決して良いものとは言えませんからね。

どうしても斬りかかるとなると力を入れなくてはなりませんし、そうなると次の動作に移るまでに時間的猶予があります。

極論を申せば、敵が斬りかかって来た場合、間合いを少し離せば多くの敵はそれに対応出来ず」

 

「…振り下ろし、無防備なところをさらけ出す。

なるほど」

ハーディンはまたも唸った。

聞けば聞く程に効果的な戦い方に思える。

靴とはありふれたものであり、そうであるからこそ誰もそれを脅威とは思うまい。

 

 

 

余談となるが、ゲレタのタリス製の安全靴(試作)は他のそれに比べて少し違いがある。

本来安全靴に仕込まれている薄い鉄板は一枚なのだが、ゲレタのは二枚入っている。

これは日常的に安全靴を愛用しているゲレタだからこその仕様。勿論、それで蹴られると軽装の場合、骨にまでダメージが通る。

 

ゲレタは二年間で蹴りの技術を磨いていたので、普通に敵の頭部も狙う事が出来た。

その場合の結果はお察しの通りだろう。

 

相手が騎馬の場合は容赦なく馬の脚を蹴り折る。

 

 

 

 

「あとは鍛練の容易さ、ですかね?」

 

「…ふむ」

これは確かにこれ以上ない利点だろうとハーディンも感じる。

剣や槍などの鍛練の場合だと、どうしてもそれらを用意して周辺にも配慮せねばならない。

が、蹴りの場合極端に言えば物陰でも出来てしまう。

 

「それに剣や槍などに比べると力をつける時間が少ないのもありますね」

 

「うむ?」

少しハーディンは戸惑った。

 

「ハーディン様。私達はいつも足を使って歩いていますので」

エリスがゲレタの言葉を補足すると

 

「確かに」

納得した。

 

 

 

 

 

 

「羨ましいものだ」

ゲレタとエリスが帰った自室でハーディンは少し落ち込んだ様に呟く。

 

あの2人は互いを想い、支え合いながら生きているのを目の当たりにしたのだから。

本来アリティアの王女であるエリスに自由恋愛など許される筈もなく、ましてや命を助けてくれた恩人だとしてもその想いが報われる事はない。

 

 

しかし、彼女はその不可能とも思える恋を実らせた。

そして彼女の為にあらゆる努力を惜しまないゲレタ。

 

彼は騎士の様にエリス王女を守るのではない。戦場であろうとも、共に在ろうと。

 

 

それがハーディンにはとても、眩しく思えたのである。

 

 

 

 




なお、本作のエリス様はローブの下にズボンを履いておられるので、ゲレタ程ではありませんが普通な蹴りを見舞ってきます。(最大級の原作破壊要素)

エリスルートのイチャイチャ(努力目標)

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