汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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らしくないけど、説教回となりました。

なんでやねん。
あと日付変わったからセーフ。


憩い

「兄さん、肩が凝っているのでは?」

 

「」

 

「無言で目を逸らさないで下さいよ」

マルスは師であり、兄でもあるゲレタと他愛のない話に興じていた。

こんな会話になったのには理由がある。

 

 

 

 

----

 

 

 

「頭痛、ですか?」

 

「ええ。あの人は起きて直ぐに動けないの。

そういう時に聞けば素直に答えてくれるのだけど」

マルスは姉であるエリスから相談を受けていた。

婚約者である以上、寝床を同じくするのは本人達の問題である。そうマルスは思っているので、口には出さなかった。

 

結果としてはこれ以上ない良い未来を引き寄せられたとは言え、あの時の発言は反省すべきだとマルスは自戒していたのだ。

それはそれとして、姉と兄をくっつけられるならば、何度でもやってやろう。と思える程度にはマルスにも心の余裕があったりする。

 

たまに軽く怒られる事もあるが、それもまた家族の温かみを感じられるもの。マルスもシーダも姉と兄との時間が嫌いではなかった。

 

 

 

「それで頭痛、ですか?」

 

「少し前にあの人、肩凝りが酷くて頭痛になっている。そう言っていたのを思い出して」

困った顔で姉はそう話す。

 

「しなかったのですか?」

意外に思えるかも知れないが、姉は結構嫉妬深い。それこそ自分が兄との談笑を長い事楽しんでいると、その場に入ってきたり。

…どちらかと言えば、兄に甘えたいのだろう。と思わなくもないが。

 

「してみたのだけど、凝りが酷くて。

あの人からエリスが肩を凝らせては本末転倒って」

確かに姉は兄から蹴撃や腰帯による戦い方を学んでいるが、力自体はそこまで強くない。

そして、これは姉なりの優しさなのだろう。

 

タリスを出てからというもの、戦闘や行軍。そして話し合いが多かった為、兄として関わる機会は取れなかった。

タリスのみんなだけならば、ある程度は緩くても良かったが、流石に今も同じ事は出来ない。

 

「わかりました。兄さんの事は任せて下さい」

マルスはそう楽しそうに答えた。

 

 

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トントントン

 

「本当に肩が凝ってますね、兄さん」

 

 

皆さん大変です。

未来の英雄王が肩たたきをしてくれています。

…いやほんと何がなんだか。

 

「いつも僕達を支えてくれてありがとう。

でも、兄さんも休んで下さいね」

 

「…いや、ほらね?

やる事は沢山あるし」

 

「にいさん?」

圧が

圧が凄いよ、マルス。

 

これがプレッシャーか!(違います)

流石は歴史に名を残す英雄と言ったところか。

 

「僕達は兄さんを頼っているんです。

兄さんも僕達をもっと頼りにして下さい」

 

トントントン

 

肩を叩きながらマルスはそう微笑んでいるのだろう。

 

 

「…だな。もう少し頼るとするわ」

 

「兄さんも結構面倒な性格してますね」

 

「やかましいわ」

こんな優しい時間を守る。

それが俺の決めた道なんだ。

 

 

 

 

----

 

 

 

 

重苦しい空気だった。

 

「国を裏切り、親族を裏切った訳だ。騎士マチス。

覚悟は出来てる、なんて嘗めた事は口にするなよ」

 

「…ああ」

 

「シスターレナに言ったそうだな。ミシェイルになんだって?」

相手の圧力は更に強まるのをマチスは感じた。

 

「…まぁ良いさ。

その軽率な行動。何れお前自身に牙を剥く」

 

「俺は自分の主義思想の為に国を裏切るものや容易く捨てる、なんて宣う奴は信用しない。

精々行動で示してみせろ」

そう言い残し、相手は去った。

 

 

 

 

 

 

 

「国王は自分の命を差し出してまで国を守ろうとしてるのに、下がこれでは報われんよ。ミシェイル王」

 

 

 

 

----

 

 

「と言うわけで植物を育てましょう」

ゲレタ殿の言葉にハーディン様は勿論、ザガロ達やシスターレナにジュリアン。そして傭兵ナバールにマケドニアの騎士マチスは困惑していた。

 

かくいう私も困惑を隠せないのだが。

 

 

「貴殿の発案なれば何かの思惑があると思うのだが」

 

「そりゃありますよ、ハーディン殿。

しかし、それは言ったところで身に付きはしません。知識として身に付けても、知恵とはなり得ない。

経験していないから」

ゲレタ殿の言葉に少しざわつく。

 

「ま、一週間やってみて下さい。

その後で文句は聞きますよ?」

その言葉に反発していたであろうザガロも矛を納めたらしい。

 

 

「随分と変わった事をするのねぇ」

行商人のアンナ。彼女の呆れた様な、それでいて感心してもいるような言葉が耳に残った。

 

 

 

 

 

「はい、皆さん駄目でしたね」

一週間後、ゲレタ殿に集められた私達を前にそう笑った。

 

「底意地悪いことを考えるわね。

分かりきっていたのでしょう?」

アンナ殿はゲレタ殿に呆れた様な口調で話しかける。

 

からかわれたのか?

そう思ったのか、ザガロが声をあげようとしたが

 

これが今の大陸の現状、理解したか?

その重みのある言葉に息が詰まった。

 

 

 

 

 

 

「ドルーアによるアカネイア侵攻から始まった今回の戦争。これにより多くの命が失われた。

それくらいは分かっているだろう?」

皆の表情は暗い。

 

「戦争で死んだ者だけじゃない。

賊により理不尽にも命を奪われた者。食べるものを、希望を失い自ら命を絶った者もいるだろうさ」

 

「皆が出来なかった様に植物。まぁ作物でもさして変わらんが、それを育てるにはかなりの時間を要する。

ジュリアンなら、木の実とかが採れる季節位知ってるだろう?」

 

「…ああ」

 

「作物を育て収穫出来るまでには、沢山の障害がある。皆がしくじっただろう水の調整。物によっては間引かねば大きく育たない。獣害や虫害もあるな。

それらを乗り越えて、漸く俺達が当たり前の様に口にしている物として世に出回る。

さて、その作り手や環境を破壊しなかったと思うか?この戦争は」

ニーナ様も青い表情でゲレタ殿の側で震えていた。

 

「それが戦争だ。

騎士である者達には耳が痛い話となるが、敢えて言わせて貰う。

誇りや名誉でこれ等のものを。

国を護れるのか?一度考えて欲しい」

誰も言葉を発せられず、その場は解散となった。

 

 

 

----

 

 

 

「ゲレタ殿、何故ニーナ様まで」

ハーディンは珍しくゲレタにくって掛かる。

 

「ニーナ様の為だが?

それとも何か?ニーナ様をハーディン殿は『篭の中の小鳥』として愛でたいとでも?」

しかし、ゲレタはいっそ冷ややかとも言える態度で応じる。

 

「だが」

 

「先程私は示したと思いますが?

立場ある者には責任が伴う。知らなかった、では済まされぬ事もあるのですよ?」

 

「う、ぐ」

ゲレタの言葉にハーディンはたじろぐ。

 

「…少々ハーディン殿の認識に訂正をさせて貰いましょうか?

騎士は敵を殺す。然し、それは貴方が良く思っていない文官達にも出来るのですよ?

しかも、あなた方騎士よりも遥かに犠牲なく、多くの者を」

ハーディン程の者ですら、怖気(おぞけ)を感じる光のない眼がハーディンを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

「少しは落ち着きましたか?」

 

「面目ない」

ゲレタの言葉に落ち着きを取り戻したハーディンは頭を下げ、謝罪する。

 

「ハーディン殿もまた人の子だった。

それだけでしょう?」

 

「酷い事を言われる」

ゲレタの軽口にハーディンは思わず苦笑してしまう。

 

「しかし、先に申し上げた事は私なりの考えではありますが、そこまで間違っていない。そう思いますよ?」

 

「理由を伺えるだろうか?」

ハーディンの言葉に

 

「では、明日にでもオレルアン東部の村へ行かれてはどうか?

配下の騎士達も連れて」

 

「つまり自分で見ろ。そう言われるのだな?」

ハーディンの言葉にゲレタは

 

「現場で戦うあなた方騎士の流儀に合わせただけですよ」

 

「そう言われては断れぬな」

そう言ってハーディンはゲレタのもとを離れた。

 

 

 

 

 

 

「貴女は独りではありませんよ?

今のでも解るでしょう」

ゲレタはハーディンが離れてから、物陰に声をかけた。

 

「……はい」

 

「貴女を心配する者も確かにいる。

それはお忘れなきように」

ゲレタはそれだけ伝えると、その場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせして申し訳無い。ウェンデル司祭」

そして、ゲレタの手は更に伸びる事となる。

 

 

 

 




ニーナ王女に必要なのは、素直に感情をぶつけてくれる人ではなかろうか?
と思った。

身分や立場。取り繕った言葉よりも、感情をストレートにぶつけたら、或いは



なおゲレタはハーディンの本音を引き出す為にここまでやりました。勿論、意識改革の面もありましたが

エリスルートのイチャイチャ(努力目標)

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