汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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おはようの投稿。


エリス奮闘す

アリティアの王女エリス。

彼女は今でこそ、それなりに出来る様になっている。

 

しかし、アリティアからタリスへ逃れるまでの彼女はそれはもう本人が遠い目をして現実逃避したくなる位には恥ずかしく、また情けないものだった。

 

 

救いがあるとすれば、ゲレタという素敵な男性と出逢えた事であろうか。

その時点でエリスは

 

「…あの人と出逢えたのだから、もとは取れているわ。

……ええ、そうなの」

と言える程度には今は強かとなっていた。

 

 

 

----

 

 

弟マルスによる予期せぬ援護射撃も手伝って、エリスは本当に欲しかった。…しかし、諦めなければならないと内心悲嘆に暮れていた人物と結ばれる事が出来た。

 

それはそれとして、弟には少しばかり女性の心への配慮が足らないのではないか?

とオハナシしたのはここだけの話。

 

 

元々想い人は珍しい格好をしており、その見識も確かなもの。

特に当時は理解が及ばなかったが、オレルアンの商人の一件。今思い返せば、中々にえげつない。しかし、これ以上ない方法だったと思える。

 

ジェイガンやモロドフ、タリス王やその家臣達は一様にあの人の事を認め、褒めてくれる。

 

 

自分の事の様に嬉しかった。

マルスの婚約者となったシーダさんとはマルスの幼い頃の恥ずかしい話やシーダさんのやんちゃをした話などで盛り上がり、良い関係を築けたと思っている。

 

それもあってか、シーダさんはあの人と床を同じくする事であの人と少し揉めた時には味方をしてくれたわ。

 

 

状況を整え、味方を増やす

あの人が私に話してくれた事を実践したの。

 

 

 

「かなわんなぁ」

それを理解してくれたのか、本当に楽しそうにあの人は笑ってくれた。私の成長が嬉しかったのだ。

 

 

----

 

 

あの人は私の婚約者であるが、その一方で私やマルス、シーダさんやジェイガンを始めとしたアリティア騎士達の師匠でもあった。

 

 

「エリス!もっと力を込めて蹴りあげろ!

戦場で敵に情けをかけるな!」

私は人間を模した人形相手に護身術の鍛練をしていた。

 

 

「どれだけ鍛え上げた屈強な戦士だろうが、此処を潰される程の痛みには抗えん。

これは生物としての本能だからな」

そう私に教えていたあの人を見てオグマ達は顔を盛大にひきつらせていたわ。

 

「因みに性別問わず有効なので、鍛えて損はない

手札が多ければ多い程、上手く立ち回る事が出来るからな」

 

「そして、その手札を扱いきれる様になって貰う。

勿論、俺もまだまだだから精進せにゃならんが」

と笑う。

 

誤解されがちだが、この人は武器を使えない訳でも、使いこなせない訳でもない。

寧ろ剣の扱いに関しては、

 

 

「…中々のものですな」

と訓練ではあまり褒めないジェイガンも褒めていたくらいだ。

 

弓はあの人に大き過ぎる恩を感じているカシムも

 

「…向いてなさそう、ですね」

 

「知ってた」

思わず口にした。そう言わんばかりの彼らしくない言葉だった。それでもあの人は愉快そうに笑っていたのだけど。

 

 

 

「ゲレタ様は基礎が出来ておりますな。

何処かで学んでおられたのでしょうか?」

 

「精神鍛練のひとつとして、な

相手の隙を観る目はそこで養われたんだろうよ」

 

「……なるほど」

ジェイガンは公的な場でこそ控えているが、この様な場ではあの人にも敬称を使う。

既にジェイガンの中ではあの人も忠誠を誓うべき相手なのだろう。

あの人はあまり良い顔をしなかったが、ジェイガンが全く譲らなかったので根負けした形だ。

 

 

 

「武器を振るうって事は何かを傷付け、殺す行為。

だからこそ、高い理性や精神力が必要となる。

精神の鍛練もまた騎士として必要不可欠と見るが、どうだ?」

 

「そうですな。これからそうあって欲しいものです」

 

「まだまだ休ませられんな、ジェイガン」

 

「無体な事を仰られる」

あの人はジェイガンとそう笑いあった。

 

 

----

 

 

「ホントに使った事がないんですか、ゲレタさん」

 

「ないな。が、理屈としての運用法は理解できる」

 

「それでここまでやれるのか」

あの人は武器を持たない。しかし、それは武器を使えない事と同義ではなく、寧ろ積極的に手札を増やさんと色々な武器の使い方を学んでいった。

 

 

「斧はその重量を活かした戦い方が似合う。

が、技量を活かせない訳でもないか」

 

「どうしても、斧で重量を取られますからね。

その上装備まで固めるとなると」

 

「カカシになるのはいかんな」

 

「カカシ?なんですか、それは?」

タリスの戦士サジとあの人は話をしながら、鍛練をしている。

 

「しかし、いつ見ても恐ろしいですね、それ」

 

「せやろ?

な?エリス。戦場では勇猛で知られるサジ殿ですらこれなんだ。有効だぞ」

2人の話を聞きながら、蹴りの鍛練をしている私を見てサジさんは苦笑。それをどこか誇らしそうにあの人は笑った。

 

 

----

 

 

 

「蛸だ!捌いて食うぞ!」

 

「ほ、本当に食べるんですかい」

ある日、あの人と一緒に私はタリスの漁村に訪れていた。

 

 

あの人は

 

「魚が足りんよ、魚がさぁ」

とタリス王に話をしたらしい。

 

「…食べるのか?」

 

「食べんのかい」

とお互いに顔を見合せていた。

 

 

曰く

「魚を食べるとなると手間がかかる」

との事。

 

 

そこで急遽あの人と私は漁村へと向かう事としたのだ。

 

 

その村で少し騒ぎが起きていた。

その中心にあるものを見たあの人は目を輝かせて、最初の事を口にしたのだった。

 

 

 

「ほ、本当に食うのか?」

 

「何故食わない選択肢があるのか?

これがわからない」

困惑する村人を余所にあの人は嬉々として、鍋に水を入れて、それを火にかけた。

 

 

 

 

 

「実食タイム!

カシムもどうよ?」

 

「あの、ええっと」

常にない程に上機嫌なあの人に声をかけられて困惑するカシム。

偶々通りかかった彼をあの人が捕まえたのだ。

私もすすめられたのだが、流石に遠慮したわ。

 

「勿体ないねぇ。

ま、いいか」

赤い色に染まったそれをあの人は水から出して、懐に入れていた短刀で食べられる様に切った。

 

「調味料がないのは少し残念だが、まぁ良し」

そう呟くと、あの人は私達が固唾をのんで見守る中、普通に食べ始めた。

 

 

 

「…なぁ、それ旨いのか?」

上機嫌で食べ進めるあの人の姿に気になったのか、漁師だろう人が声をかける。

 

「…食べるかい?」

 

「少し、貰う」

恐る恐るその人も口をつけた。

 

 

 

 

 

 

「と言うことで今後蛸も食卓にあがるかと」

 

「」

あの人の言葉にタリス王やその家臣達は言葉をなくした。無理もないとは思う。あの見た目だ。

 

食べれば面白い食感と味なので受け入れられるとは思うのだけれど。

 

 

 

----

 

 

「お疲れ様」

 

「エリスもな?」

私は横になったあの人の頭を自分の膝の上にのせて、話をしていた。

 

私が好きなあの人との時間。

私があの人を見下ろし、あの人は私を見上げる。そして、目が合うとあの人は嬉しそうに笑うのだ。

 

とても柔らかな笑顔で。

 

 

「大好きよ、ゲレタ」

 

「愛してる、エリス」

私達は口を重ねた。

 

 

 

 

エリスルートのイチャイチャ(努力目標)

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