汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
オレルアンでの滞在が予想よりも長くなった事は様々な影響をもたらした。
「…こんな事が」
「なんと」
先日ゲレタから言われた通り、ハーディンは配下の騎士を伴いオレルアン東部の平原近くにある農村を訪ねる事とした。
そこで彼等は自分達の無力さと、戦争の悲惨さを目の当たりにする。
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マルス達は確かに村を襲う山賊や盗賊を倒し、守った。
オレルアン公はマケドニア城をマルス達が攻略している最中、残った手勢を動かしオレルアン各地のマケドニア軍残党や山賊などの討伐を指示している。
無論、統治者として考えれば何ら問題ない。寧ろ称賛されてしかるべ行動だろう。
その結果が彼等の前にあった。
確かに村の状態は領内を見回って来た時と殆ど変わらない。
…
ハーディンは
戦場ではない。敵もいない筈なのに、重苦しい空気。
誰もが視線を下げ、話し声も下手をすれば草木のざわめきに書き消されかねない小さなもの。
そして、彼等はソレを見た。
…見てしまったのだ。
村の奥の建物の陰に隠れる様にして積み上げられていたもの。
それは、
マケドニア騎士が装備していた鎧だった
そして、
それは所々が赤黒く変色していた。
四人は息をのみ、思わずザガロは近くの村の者に声をかけようと
「やめよ」
それはハーディンにより制止され、彼等はその地を後にした。
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「知っておられたのか?」
「予想はしてた」
村から戻ったハーディンは兄であるオレルアン公への報告を終えたあと、ゲレタのもとへ足を運んだ。
ゲレタもハーディンが自分の所へ来るのを確信していたかの様に待っていたのである。
「あの様な事が」
「夢見がちな方が多いな、騎士とは」
憔悴したハーディンに対してゲレタは冷ややかに言葉を浴びせる。
それにハーディンは反論出来なかった。
「彼等は自分達で生きる為のものを奪われた。
勿論、今年はダメでも来年以降なら可能性はあるだろうが」
「…その来年が彼等に訪れるのかすら、定かではないのだろう?」
ゲレタの言葉にハーディンは力なく反論する。
「その通り。
だから、彼等は今を生きる為に行動した。
怒るかい?蔑むか?」
「そんな権利は我等にはない」
ハーディン達が村の奥で見たもの。
それは死んだマケドニア騎士からの剥ぎ取りの
「俺は騎士とは羨ましいものだと思うよ、ハーディン殿。
何せ食料が無くとも、国や上から貰えるし、自分勝手な信念とやらに従ったとしても許される。
…生きることを、ね?」
ゲレタは冷たく嗤った。
「騎士ともなれば、捕虜にして交渉の材料にされる事もあるだろう。
当然、その間その騎士は命を繋ぐ事も出来る」
「だが、農民などはそうはいかない。
己の食い扶持を稼がなければ、奴隷になるか、死ぬかだろうな。
まぁ、そう言っている俺も期せずして同じような立場になった訳だが」
「それは違うのではないか」
ゲレタの言葉に思わずハーディンは反論するが
「違わないさ。俺はあくまでもアリティア王女の伴侶だ。俺が真に守らねばならないのはアリティアの民とその生活なのだからな」
「たとえ俺がタリスやこのオレルアンの地で高い功績をあげようとも、それがアリティアの民の為にならぬなら、俺が受け入れられる事はなかろうさ」
「しかし、タリスは貴殿の働きにより発展した。タリス王はアリティアへの支援を惜しまぬとも聞いたが」
「ハーディン殿」
ハーディンの言葉にゲレタは
「人は見たいものしか見ないし、信じたいものしか信じんよ」
そう冷笑を浮かべたのである。
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「さて、ニーナ様。
貴女も先日のアレを見たと思いますが、どう思われましたか?」
「…何故誰かに聞かなかったのか、と」
ハーディンとの話のあと、ゲレタはニーナの居室に赴いていた。
勿論これはオレルアン公やマルスに許可を取った上での行動。ニーナ王女の意識改革はオレルアンやアリティアのみならず、大陸全土の秩序安定にすら関わる大事なのだから。
言うまでもなく、エリスは拗ねに拗ねた。
昨晩は彼女を抱き締めたまま眠らねばならなかった程に。
「では、ニーナ様なれば誰に聞きますか?」
「目の前の貴方に」
ゲレタの問い掛けにニーナは迷うことなく答えた。
「それは光栄な事ですな
…理由をお伺いしても?」
「貴方がこの課題を私に課したからです
勿論、答えて貰えるとは思えませんけども」
ゲレタとニーナの問答は淡々と続く。
「他の者に聞く事は考えられませんでしたか?」
「…それは」
「『誰かを頼る』それ自体は間違いではないでしょう。私であっても、知らぬなれば頼りましょうな
…ですが」
ゲレタは言葉を一拍置いて
「頼る相手もまた良く考えた方が宜しいかと」
「…私に偽りを教える可能性がある、と?」
ニーナの言葉に少し表情を崩すと
「その可能性もありましょうな。
しかし貴女が相手をするのは海千山千のアカネイア貴族達。彼等は保身にも長けておりましょう
偽りを言わずとも良いのです」
「…それは?」
「都合の良い真実のみを述べ、都合の悪い事については口に出さない。
こうすれば、ニーナ様に偽りを告げた事にはなりませぬ故」
「隠した事は?」
「隠したという事実は隠した事象が露見して初めてそうなります。
ニーナ様が隠した真実を突き止めねば、隠したという事にもなりますまい」
「…はぁ。
それではその事実自体が誰かにより歪められる事もある。そう言う事ですね」
ニーナは呆れた様に息を吐く。
「更に申し上げれば、その発言自体を有耶無耶にする事も時にはあるでしょうな」
「…ゲレタ様。少し宜しいでしょうか?」
「どうぞ」
「呆れてものが言えなくなる。本当にそんな事があるのですね」
ニーナの言葉にゲレタは小さく笑った。
その様子を若芽だけが見守っていた。
このままいくとアカネイア貴族やボアは泣くことになる。
……ま、ええか。
エリスルートのイチャイチャ(努力目標)
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いる
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いらない