汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
ゲレタによる仕込みがグルニア軍を襲う。
「申し訳ないのぅゲレタ殿」
「いえいえ、何を仰る。
オレルアンを発し、港町ワーレンへと向かう途中バヌトゥはゲレタとの歓談に興じていた。
「如何ですか?マルスという人物は」
ゲレタの誇らしげな言葉に
「まさか、儂等をその様に呼ぶ者がおるとはのぅ」
バヌトゥは感慨深そうに目を細めた。
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まだマルス達がタリスにいた頃の話
ゲレタはエリスやマルスにシーダ。そしてジェイガンとタリス王。彼等にはある程度この大陸の秘された歴史について話をしていた。
「妄言と受け取るかどうかは各々の判断に任せる」
とした上で。
勿論、エリスはゲレタの言を疑う気などあろう筈もない。それはマルス達も同じだった。
が、全てを開帳するのは時期を見て行なわねばならないとゲレタは考え、このような形に落ち着いたのである。
可愛らしい独占欲を発揮したエリス。彼女は詳しい話をゲレタから聞き出す為に
「話してくれないのなら構わないわ。
その代わり、寝間着がもう少し薄手のものになるかも知れないのだけど」
とよりにもよって、ゲレタの理性を脅かす事を仄めかしたのだった。
この攻撃にはさしものゲレタも観念し、寝物語としてアカネイアの建国王たるアドラ1世も含めた話をする事になる。
エリスはこの情報は切り札となり得るものであると理解すると、マルス相手だろうと秘密にする事を約した。
「二人だけの秘密、と言うのに少し色の無い話ね」
「そこは勘弁しろって。
そもそもエリスの可愛らしさを押し出した交渉に俺が勝てるわけないだろ?」
エリスの言葉にゲレタは苦笑したそうだ。
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その様な事情からマルス達アリティア勢とタリス勢は彼等を竜人族と呼ぶ。
そして、そのマルス達を見たハーディン達も言い方をそれに倣うのだ。
その為、バヌトゥは自分達に対する差別が常態化している大陸において珍しい存在と見えたのである。
勿論、マルスは直ぐに竜石をバヌトゥに返していた。
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「…来たか」
アリティア軍のワーレン付近への上陸は付近を警戒していたグルニアの斥候。彼等によりこの地の守備にあたっていたグルニアの将軍カナリスのもとへ報告が送られた。
カナリスもオレルアンのマケドニア軍を撃破し、解放したマルス王子率いるアリティア軍を警戒。アリティア軍の動きが予想以上に遅かった事もあり、周辺に展開していたグルニア軍をこの地に集結する様に指示を発した。
それにより想定されるアリティア軍を遥かに上回る戦力をこの地に集めた。
「アカネイアのニーナ王女か。往生際の悪い」
カナリスは忌々しそうに呟く。
何せアカネイアの再興という旗印を掲げられれば、アカネイア各地に潜んでいるであろうアカネイア貴族や騎士が戦意を取り戻しかねない。
「オレルアンで仕留めておけば」
カナリスとしては、オレルアンにニーナ王女が逃げ延びた時点でグルニアもオレルアン攻略に力を貸すべきだった。と考えていた
事実、彼はグルニア本国に対してオレルアン攻略の支援をグルニア最強戦力である黒騎士団により行なうべきである。
との書簡を送っていた。
何せ逃げおおせる事など不可能に近い筈のアカネイアからニーナ王女はオレルアンまで逃れている。
その前例があるならば、万にひとつの可能性を摘み取るだけの戦力を投入するのは自然な話。
「…マケドニアも何故戦力を出し惜しんだのだ」
グルニア騎士である彼が他国、しかも曲がりなりにも協力関係にあるマケドニアを批判すべきでない事は分かっている。それでもそう呪わずにはいられなかった。
勝てるだけの戦力は揃えた。
ワーレンの近くに着陣したアリティア軍に退路は残されていない。
しかし、この戦いでアリティア軍を撃破したとしても、敵の指揮官たるマルス王子と旗印であるニーナ王女。両名の頚は確実に取らねばならないだろう。
どれだけ窮地にあったとしても、今彼等は確かに戦力を整えこの地にいるのだから。
「砦に伝令!
順次出撃し、アリティア軍を攻撃せよ。
敵に体勢を立て直す機を与えず、一気に攻め潰せ!」
グルニア軍は動き始めた。
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「ワーレンの北にある山間部で迎撃!
回復の杖の使えるエリス、レナ、ニーナは少し距離を取って準備を整えろ!」
ゲレタの指示が飛ぶ。
「負傷した者は必ず後方へ退き回復を受けよ!
敵は圧倒的な大軍だ。少しの油断が死を招くと心しろ!」
ハーディンも補足する。
「予想以上の大軍だね
兄上、厳しい戦いになりますね」
「これからの戦いに楽なものはひとつとて無い。そう思え。根比べとなるが、勝機はある」
ゲレタの言葉に皆、力強く頷いた。
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「分かってはいたが、敵が多い!」
「油断するな、カイン!」
戦闘が始まり、両軍血で血を洗う激戦となっていた。
が、未だアリティア軍に死者はいない。
その事実はグルニア軍に焦りを生じさせた。
「砦で回復した者は即座に戻れ!」
苦境にあるのはグルニア軍も同じだった。
何せ回復役を用意しているアリティア軍とは異なり、グルニア側に回復役は居ない。
しかも兵数が多い為に負傷者の数に対して回復できる砦の数は致命的に少ない。
既に砦周辺には負傷したグルニアの兵で埋め尽くされつつあった。
そこへ
ドゴーン!
轟音と共に何かが落ちてきた
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「頃合い、ですね」
山の麓に潜んでいた集団。
その中の1人は砦の方から立ち上る煙を遠望し、呟いた。
「ローロー、貴方は仲間を率いて側面から強襲。
クライネとアイネは弓隊を率いてローロー隊の支援。
負傷した者は無理せず退きなさい。私が治療するか、傷薬による回復を」
その女性は矢継ぎ早に指示を出し
「死ぬ事は許しません。
私達はあの方に恩を返さねばならないのですから」
その言葉に誰もが頷いた。
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「申し上げます!
海上に船団。更にアリティア軍の増援と思われる部隊が出現!」
「な、に」
砦からの急報を受けたカナリスは言葉を失う。
アリティア軍に海上戦力を用意したという話など聞いたこともない。
だが、現実に沖合いの船団から攻撃が次々と砦付近に行なわれ、混乱は収まるどころか深まるばかり。
更に謎の援軍。
報告によれば、仮面をつけた男達と後方から魔法や弓による支援。
明らかに手慣れていた。
「…やむを得まい。我々も打って出るぞ!」
最早この混乱は自分が出なければ収まらないと判断したカナリスは城から兵を率いて出撃した。
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「あれは」
「タリス王さ。
以前計画されていた輸送船団の護衛戦力。それを此方に回してくれる事となった。
とは言え、潮の流れ等から確実とは言えなかったから明言出来んかった」
マルスの言葉にゲレタは事もなく答える。
「あっちはタリス王を通じて食料や物資の支援をしていた者達だな。
恩を返したいと頼み込まれて、断りきれんかった」
「マルス。お前はただの将軍ではない。
一組織のトップだ。だからこそ、取れる選択肢は多い。それは覚えておくんだ」
ゲレタはそう諭して、陣を離れた。
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「おのれ、卑怯者が!」
自分達が不利となった事を察したのか、グルニア騎士が怒りと共にゲレタへと襲いかかる。
「アホか」
ゲレタはそんな世迷言などどうでも良いとばかりに攻撃をかわすと腰帯を引き抜き、その騎士の側頭部を攻撃。その一撃は騎士の耳を捉え、騎士は愛馬から落馬した。
「卑怯とは笑わせる。
自分達が圧倒的戦力で戦うのは良くて、此方が知恵を使って戦えば卑怯?」
ゲレタは靴底から折り畳んだナイフを取り、
「自分達が勝てなきゃ許せねぇなら、戦争なんぞやるんじゃねぇよ」
そのナイフを敵の首筋に突き立てた。
海上からの砦付近への攻撃と女性、エレミヤ率いる部隊により混乱させられたグルニア軍。彼等はマルス達アリティア軍の攻勢に耐えきる事が出来なかった。
そして、この戦いはアリティア軍の勝利に終わったのである。
書きたいことが書けたので満足。
エリスルートのイチャイチャ(努力目標)
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いる
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