汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
それもいつかは現実に向き合わねばならない。
理想は語るものに非ず。理想を叶える為にあらゆる努力をする。
それは届かぬ蜃気楼。
マルス達がワーレンにて民心を安定させていた頃、苦境に立たされていた者達がいた。
「更なる増援!?
兄上は何を考えておられるのだ!」
マケドニア王国王女ミネルバだった。
しかし彼女は知らない。
その増援は他ならぬ彼女や彼女の配下達の行動によって必要となった事を。
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オレルアンでのマケドニア軍の敗北。
ただの一戦ではない。
ようやく追い詰めたニーナの命を奪うか、その居場所を無くす事が出来た筈の戦い。
仮にミネルバ達が参戦した上でマケドニアが敗北したのであれば、ドルーアとしても不快には思えどそれ以上の事をしようとは思わなかった。
少なくともマケドニアは動員出来る最大戦力を投入したのだから。
ところが、そうではなかった。
オレルアン攻略から離れたミネルバ達はマルス達アリティア軍を攻撃するでもなく、ただ離脱しただけ。
となれば、ドルーアとしても不問にする事は出来ない。更に理由があった。
アカネイア攻略以降、戦闘に一切参加せず国に引き揚げたグルニアの黒騎士団の存在だ。
と言うよりも、ドルーアはニーナがアカネイアから逃げ延び、オレルアンの地にたどり着いた事。グルニア騎士団とミネルバ王女率いる部隊。それと同時期にアカネイアに駐留していたドルーアの部隊が壊滅していた事。
そして、その時期がニーナがアカネイアから逃れた時期に近い。
その事を掴みつつあった。
その報告をガーネフから受けたメディウス。彼は自身の配下のゼムセル。そして協力者であるモーゼスに声をかけ、準備をするように伝えた。
その事実をガーネフはマケドニアに出す使者にマケドニアのミシェイル王へ伝える様に命じ、使者を送り出した。
マケドニアは確かに竜騎士や天馬騎士を擁する国家だ。
しかし、マケドニアの奥地には、人に従う事を受け入れない野生の飛竜が生息している。
メディウスはモーゼスという絶対者をマケドニアに送りつける事でその獰猛な飛竜をマケドニアで暴れさせる積もりだったのだ。
なお、グルニアに派遣する予定のあるゼムセル。
彼は竜族の中の『魔を統べる竜』と呼ばれる事もある魔竜族の長である。
当然、モーゼスには配下の魔竜がおり、それら全てを解き放たせるつもりだった。
元よりメディウスはマケドニアとグルニアを比べるならば、マケドニアを評価している。
本心はどうあれ、マケドニアのミシェイル王はドルーアに従う事を良しとし、それを国内にもしっかりと意識させているのだから。
グルニアの様に軍を束ねる立場にありながら、いつまでも迷っていない。
その期待をマケドニアは
正確にはミシェイル王の妹で、一介の前線指揮官風情が裏切り、台無しにしたのである。
が、
それ故にドルーアとして、
貴様の行ないは、守りたい者を不幸にすると。
これでも聞かぬならば、期待すべき事は何もないとして、ミネルバをドルーアに引き渡してもらい、そこで裏切り者として最期を迎えさせる。
それすらメディウスやガーネフは考えていたのだ。
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当然、ミシェイルはドルーアの恫喝とも思える行為からその狙いを朧気ながらに察した。
しかし、幾ら妹を守ろうと思っても自分はマケドニアを。マケドニアの民やその未来を守り、繋げねばならない。
その為に彼はマリアを差し出し、ミネルバが少しでも頭を冷やす事を願うしかなかった。
更に考え無しの妹に自覚を促す為に更なる援軍の派遣をも決めたのである。
派遣される兵達には申し訳ない気持ちしかなかったが、ミシェイルが出来る事はこれだけだった。
まさか、派遣した兵や騎士の口から王家の一員であるミネルバを非難させる訳にもいかず、ミシェイルは苦悩を深める事となる。
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しかし、そんな事はドルーアにとって関係ない事。
信用出来ない味方など敵よりも遥かに始末が悪い。ミシェイルの苦悩は理解できなくもなかった為にドルーアはマリアを丁重に扱う事を引き渡された時に明言。
あまりにも感情を押し隠した兄の姿にマリアは心を痛めた程だ。
ドルーアはアカネイアの要所のひとつ、ディール要塞にマリアを連行。
しかし、彼女が戸惑う程にドルーア側の対応は丁寧であり、
「此度この様な事となったこと。マリア王女には申し訳なく思います。なれど、我等も命じられた務めとなれば果たさずにおれませぬ。
無体な事は我等の名誉にかけてしませぬ故、窮屈な思いをさせてしまいますが」
マリアは自分を牢に入れた時の人物の言葉に戸惑いを更に深める事となった。
ディール要塞に送られた彼女の生活は牢の中のみとなっていたが、その扱いは宝石を扱う様に丁寧なものだった。
そして、牢の番をするもの達は誰もが彼女を沈痛な面持ちで見ていたのである。
(どうして?)
その姿は彼女を人質として送り出した兄の姿を思い返されるものだったのだから。
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アリティア軍との対決が避けられぬものとなりつつあったミネルバ達。
そこに急報が届く。
ミネルバに心酔しているマケドニア本国の者からの報せであった。
「マリアが!?
兄上、そこまで」
そのあまりの仕打ちにミネルバは怒りのあまり震えを止められなかった程。
その主君の様子を沈痛な表情で見つめる三姉妹。
「…ミネルバ様」
「私はディールへ向かい、マリアを解放するように働きかける。カチュアは私に同行してくれ。
エストは兵をマケドニアに戻す様に」
愛する妹を差し出してまで、ドルーアに従おうとする今の
そして
「…パオラ。お前には危険な任務を頼む事になる」
「……マルス王子に協力を願うのですね?」
パオラは真剣な表情で主君の命を受けたのだ。
「随分と良い教育をマケドニア騎士は受けていると見える。
味方を平気で裏切るか」
マケドニア王女の受難。始まるよ
エリスルートのイチャイチャ(努力目標)
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