汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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サブタイトルは適当です。
語彙力何処かに売ってないかなぁ。



今回はかなり内容が(一部のキャラにとって)キツめのものとなっております。

まぁ、でも今更っすね。


騎士

マケドニアの白騎士団パオラの来訪。

 

 

それはマルス達にとって、驚愕するものだった。

ただ、その中にあってゲレタとエリス。そしてエレミヤはまるで汚物を見るような表情であったと言う。

 

 

 

「随分と都合の良い事を言われるものだ」

パオラの話を聞き終えたジェイガンは敢えて口火を自分からきった。

アリティア軍にはマケドニアにより仲間を喪ったハーディンを始めとするオレルアン騎士がいる。

無論、彼等が感情のままに発言する事は決してないと思っているが。

 

マケドニアに対するアリティア軍の評価は決して低くはない。

しかし、先の戦闘においてマケドニアのミネルバ王女に対する評価はかなり下がっている。

 

ゲレタが尋常ならざる視野と視点。そして手腕を有しているのは最早アリティア軍の中に疑うものは居ない。

 

 

だが、それだけの隙を直接相対した事のないゲレタにすら見透かされている。そして、アリティア軍はワーレン付近における活動を通じて、民の生活や思いに触れた。

 

それを考えると、どうしてもミネルバ王女や目の前の騎士に同情的になるのは難しかったのである。

 

 

----

 

 

ジェイガンの言葉に沈黙せざるを得ないパオラ。

 

 

「随分と良い教育をマケドニア騎士は受けていると見える。

味方を平気で裏切るか」

その言葉にパオラは反論しようとするが

 

「ミネルバ王女のオレルアン攻略における行動。

その軽率な行動の対価をミシェイル王やマリア王女に支払いをさせておいて、のうのうと被害者の様に振る舞う。

これが恥知らず以外の何だと言うのか?

…まぁ、此方にもマケドニアを裏切った騎士が既にいるので、その程度なのだろう」

 

「取り消しなさい!」

あまりの物言いにパオラも声を荒げる。

 

「知っているか、騎士パオラ。

人が声を荒げるのは、感情が抑えきれなくなった時。そして

自分が否定できない事実を突きつけられた時なのだよ?」

声にならない悲鳴が彼女の喉から漏れた。

 

 

 

「兄上、それでも私は」

顔色を蒼白にしたパオラに休息をすすめ、マルスは兄に自分の意思を伝える。

 

「構わんよ。

前も言ったが、この軍の総指揮官つまり最終的な判断を下すのはお前だ。

お前があれ等(・・・)を受け入れるなら止めはせん。その代わり、戦後混乱を引き起こす事は覚悟しておけ」

その言葉にマルスは目を見開くと

 

「…そうなりますか」

力の無い口調となる。

 

「ミネルバ王女は間違えた。

彼女は手負いの獣を仕留める事なく弱らせただけで満足したのだ」

ハーディンやジェイガン、ニーナやシーダ。そしてエリスとエレミヤにカシムは言葉の続きを待つ。

 

「その手負いの獣は彼女の仲間を食い殺し、その地を離れ他所の者も喰らった。

それで仕留めなかった彼女は責められ、彼女の家族は穏便に済ませようとしたのに、それにすら彼女は不満を覚えた」

 

「愚か、ですね」

エレミヤは侮蔑の感情を隠す事なく、口にする。

 

「……獣とは皮肉が効きすぎて耳が痛いですな」

 

「ですが、ハーディン様。戦争とは民からすれば迷惑でしか無いのではないでしょうか?

だから、私達は二度とそれを繰り返さない様にするしかない」

ハーディンの言葉にニーナは決意を秘めた強い目で口にする。

 

「全ては自分に返ってくる。返ってこないのは、誰かが肩代わりしているだけの事

…マルス。彼女達を受け入れるならば、徹底的に意識を変えねば立ち行かなくなる」

その言葉に誰もが神妙に頷く。

 

「…姉上に怒られますね、私は」

 

「勿論よ。自分の行動の責任から逃げては駄目、でしょう?」

マルスの言葉にエリスは微笑む。

 

 

 

 

----

 

 

「申し訳ありません」

 

「いいえ、気持ちは分かるもの」

意気消沈したパオラにシーダは優しく微笑む。

シーダもミネルバ王女の様に家族を人質にされたなら、救いだそうとするだろう。

 

やり方は間違いなく違うものとなるだろうが、それは口にしない。

シーダは彼女達のこれからを想像すると身震いした。

 

何せ彼女達にも事情があろうとも、マケドニアという国を。

そして、そこに住まう民を裏切ったのだから。

 

 

 

----

 

 

「早いとこ戦争が終わってくれりゃあ良いのに」

 

「…いつまでこんな生活が続くのやら」

 

「ニーナ様やマルス王子には頑張って欲しいもんだ。いつまでもこんな生活じゃかなわねぇよ」

 

ワーレンやその周辺での活動はシーダに民の声。

戦火に苦しみ、暴力に怯えるそれを直に知る機会となった。周辺の海賊のみに気を払わねばならかったタリスとはまるで違うソレを。

 

 

「誇りや名誉が要らんとは言わん。

が、その誇りや名誉で民の苦しみは癒えるか?」

兄はそう言って、オレルアンでいつまでも不満を隠そうともしなかった騎士を山中に置き去りにした事がある。

 

帰ってきたその騎士に生気はなく、頬はやつれ、目の下には隈が出来ていた。

 

「人という獣にはそれも通用しよう。

が自然を生きる獣にそれが通じなかったのは分かったか?」

兄は言葉で諭し、経験を積ませる。それでも納得の出来ない者にはその者の得意とする土俵で叩き潰す事もあった。

 

「お前達の中には己個人の問題。

そう思う者もいるだろう。が、人は一人一人を認識するのはその者が近しい関係にあるからだ。

そうでなければ、群体としてその者のあり方を受けとる。

忘れんなよ?自分のしている事は常に誰かに見られ、それを査定されている事を」

その言葉は重い、そうシーダは感じたのだった。

 

 

 

----

 

 

ドルーア軍の駐留していたディール要塞攻略はパオラや現地にて合流したカチュアとミネルバが予想するよりも遥かに容易く陥落した。

 

囚われていたマリアを救出し、安堵していたミネルバだったが

 

「姉さん、何をしてるの?」

他ならぬ妹からその言葉を突きつけられる事となる。

 

 

 

 

 

「姉妹喧嘩程度で騒がせるな」

その騒ぎを聞きつけてその場に駆けつけたゲレタ。彼は開口一番そう言い放つ。

 

「なっ!」

そのあんまりな言い方にミネルバは驚くが

 

「それはどうでも良い事だ。

…それで?ミネルバ王女。

貴女はこれからどうするつもりだ」

 

「妹を助けてもらったのだ。

その恩を」

ゲレタはそんなミネルバの言葉を遮ると

 

「これからマケドニアは地獄と化すだろう。

その責任をどうとるか?それを聞いている」

そう冷たく言い放った。

 

 

----

 

 

「地獄、だと?」

目の前の男の言葉にミネルバは戸惑った。カチュアは困惑していたが、パオラとマリアは暗い顔をしている。

 

「戦闘訓練ばかりで王族としての教育を満足に受けていないのか?

今、マケドニアはドルーアへ明確に牙を剥いた。その事をまさかドルーアが見逃すとでも?」

 

「なん、だと?」

ミネルバはその言葉に頭の中が真っ白になる感覚に陥った。

 

 

 

「ドルーアがマケドニアに対して人質を取ったのはつい少し前の事。

マリア王女、そうだな?」

 

「…うん」

 

「つまり、マケドニアはドルーアが人質を要求せねばならなくなる様な何か失態(・・・・)をした。そういう事だろう」

その言葉にミネルバはマリアを見つめ

 

「…まさか」

小さく呟く。

 

「そう、ミネルバ王女。貴女がオレルアンでした行動。そして、アカネイアで」

ゲレタは言葉をきり

 

「黒騎士カミュと共にニーナ王女をアカネイアから逃した。それが露見したのだろうよ」

淡々とその事実だけを述べたのである。

 

「あ、ああ」

声が震える。思考が定まらない。

私は、なんという事を。自分の今まで持っていたものが崩れ落ちる。

 

「良かったじゃないか。

貴女は愛する妹を守りきれた。その安っぽい信念も貫けた。

その代わり、貴女の兄上やマケドニアの民が犠牲になるが

大した事はなかろうよ?今の今までその程度の事にすら思い至れなかったのだから

男の淡々とした言葉の刃が私を切り刻む。

 

「悲しむフリなどしても無駄ですよ?

貴女の涙や嘆きに、なんの価値も意味もないのだから

顔面蒼白なパオラとカチュア。ただ苦しそうに佇むマリアに私は何も出来なかった。

 

 

----

 

 

「ああ、そうだ。マリア王女」

お姉さま達を言葉という刃で切り刻んだ人は私に声をかけた。

 

「…なに」

私は自分の立場が分かっているけど、そんな素っ気ない言葉だけ返す。

 

「彼女達には用はありませんが、貴女なれば。

ミシェイル王と共にマケドニアの為に命を賭けようとしたマリア王女なら、出来ることもあるでしょう」

 

「っ!」

その言葉に思わず相手を睨み付けた。

 

「別に私としてはどちらでも構わないのですよ?

ミシェイル王には個人的に同情しますし、マケドニアの民や兵を悼む事もします。

道を選ぶのは、選べる権利があるのは貴女だけ。

それだけの事」

それだけ私に伝えるとその場を後にした。

 

「嗚呼、それともうひとつ。

今更国や民を裏切った騎士の命や頚に価値はありません。それでも死にたいなら、好きになされよ」

そう言い残して

 

私は泣き崩れるお姉さまや二人に何も言えず、立ち尽くしていた。

 

 

 

----

 

 

「ゲレタ様」

 

「カシムか」

カシムは主君の顔に隠しきれない疲労の色を見て取った。

 

「お休み下さい。

確かに今後の事を考えれば、ゲレタ様がせねばならないのは理解できます。

しかし」

 

「すまんな。

が、弟や妹。それに教え子達が地獄に向かおうと言うのに、俺だけ端から見ているのは我慢ならない」

ゲレタ様は本来、人を傷つけたいと思わない方だ。母や妹、弟達と過ごしている時やエリス様とマルス様にシーダ様と過ごす時には穏やかな顔をされている。

 

皆はゲレタ様を強い方と言う。

そうではない。この方は自分をも誤魔化すのが上手いだけで、常に心は傷んでおられる。

 

「部屋にお戻り下さい。エリス様がお待ちですので」

 

「…そうか」

力の無い表情で私に頭を軽く下げ、ゲレタ様は自室へと向かわれた。

 

 

----

 

 

「お帰りなさい、ゲレタ」

占領したディール要塞の一角。そこにマルスは私とあの人の為の部屋を用意した。

 

特別扱いが過ぎる、なんて言う人はいない。

彼の働きはアリティア軍に無くてはならぬものと言える程のものなのだから。

 

 

 

「怒るのも疲れるのさ。憎むのも恨むのも」

私と二人きりの時、彼は良くそう口にする。

 

「でも、感情の無い装置に人はついていかない。

共感されないから。理解されないからだ」

愚痴にも懺悔にも似た彼の本音。

 

 

 

彼が私を守る為に初めて人を殺した時、彼の表情には確かな後悔と恐怖があった。後になって思い至ったのだけど。

 

守る為には誰かを傷つけねばならない。

私達にとって、この大陸に生きる者にとっては当たり前のこと。

でも、彼はその当たり前がなかった。

 

 

彼もまた必死に泳ぎ続けている。

この人の悪意や害意の満ち溢れる世界。

 

汚泥の中を

 

 

 

「ゲレタ」

私は彼の名前を呼び、彼を椅子に座らせる為に手を引く。

 

そして、椅子に座った彼を後ろから優しく抱き締める。

弱くて強い

 

この人の心を守る為に

 

 

 

 




と言うわけで先に彼女達の心を折っちゃいましょうねぇ(外道)

だって、そうでもしないと大変ですし、おすし。



実はゲレタもかなり限界ギリギリだったと言う。
エリスは本当の意味でゲレタの支えとなります。




そろそろ真の姿を晒す頃かも知れないと思う今日この頃


ランキングに入ってて草ぁ!

エリスルートのイチャイチャ(努力目標)

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