汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
後書きも読んでくれると嬉しい
「良くやって下さった
本当に感謝の言葉もない。儂等はあの山賊達にずっと苦しめられておったのです
…やっと
やっとこれで皆が安心して暮らしていけるのです
ありがとうございます、ありがとう」
…帰って来るなり、村長さんがえらい平身低頭している件について
あー、だから帰って来る時みんな凄い嬉しそうだったのか
「儂等が出来る事など些細な事でしかありませんが
ゲレタさんとリンダさんの家を用意しまして」
はぁ!?
え、これマジなん?
マジで
…あかん、これマジや
…ええー
山賊の根城締め上げたら、家が貰えるってあーた
何処かの成り上がり物語ですか?
リンダの方を見ても明らかに驚いてるし
「いや、家を頂きましても私とリンダは」
「分かっております。ですが、これは私どものせめてもの気持ちなのです。お2人がこの村に住まなくとも、いつか偶にでも構わんのです
疲れを癒す。…その一助になれば、と」
村人誰も声をあげないって事は既に根回し終わってるのか
…こりゃ断る方が失礼だな
「…リンダ」
「うん」
「ありがとうございます。私は故郷に帰る事の出来ない身でありましたが、帰る場所を貰えて嬉しく思います」
「今は住めないけど、やる事を終わらせたらまた此処に帰って来ます」
俺とリンダの言葉に村中に響き渡る歓声が起きた
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「しっかし温泉ねぇ、これまた珍しい」
「この村の数少ない自慢出来る所だって」
私とゲレタは2人っきりで温泉に入っている
もう恋人同士なんだから、隠す所はないし
…その
その内ゲレタとの子供も欲しいと思ってるから
恥ずかしいけど、慣れないと
「それで?
貴方はいつまでよそ見をしているの?
貴方の恋人が寂しい思いをしているのだけど」
私がそう口にすると
「…あのなぁ、昨日の今日でそんな簡単に変わるかっての
そりゃあ、リンダは可愛いし綺麗だし、いつかは見たいと思ってるが」
「今じゃダメなの?」
私がゲレタの背中にくっつくと
観念したのか
「リンダに溺れそうになる」
…え、えっと
つまり、その
そういう意味、よね?
そう、なんだ
私に溺れる、か
ふふっ、何だか照れるけど嬉しい
「…じゃあ、今はこれで良いわ」
ゲレタの背中に私は背を預けて、両の手を握る
「…やれやれ、勝てる気がしねぇなぁ」
そう笑ってゲレタも手を握り返してくる
「…ねぇ」
「ん?」
「また来ようね」
「…だな」
私とゲレタは2人きりで夜空の下、笑い合った
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私とゲレタに用意された家は少し前まで使われていたらしい
どうも結婚を機に一つの家で住む事を決めたんだとか
だから、当然ベッドも一つ
でも、もうゲレタも何も言わず、一緒の布団で眠る
「おやすみなさいゲレタ」
「おやすみリンダ、また明日」
私とゲレタそう笑い合い、顔を近づけ
そして眠った
もう離れ離れにならない様に
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「いつでも帰って来てくだされ
儂等はいつも待っておりますからな」
「リンダちゃんを泣かすんじゃないよ!」
「ゲレタの兄貴、気をつけて!」
「「「「いってらっしゃい!」」」」
私達はみんなの声に見送られて村を出た
「良い人達だったね」
「今の世の中では稀少に過ぎる人達だったな」
私とゲレタはそう笑い合いながら、山道を歩いていく
私とゲレタの手はお互いしっかりとつないで
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「せっかく良い気分だったってのに」
「ホント台無し」
私とゲレタは明らかに面倒ごとに直面していた
山を幾つも越え、出会った山賊達には悪いけど『人生とさよなら』して貰いながら
そして辿り着いたのがそれなりに大きな街
そこで私とゲレタが見たものは
「さぁさぁ!此処に居るのはあの!
あの、アリティアの生き残りの娘だ!見た目良し、マルス王子に取り入る為のものとしても良し!
誰か買わないか!!」
そう威勢良く声を張り上げる男と
首を鎖で繋がれた青い髪の女性だったのだから
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「本物かしら?」
「…分からん。会った事もないからな
……ただ」
「ただ?」
「マルス王子は遠目であったが見た事がある
王子と何となく似ている気はするが」
私とゲレタは少し離れた所で相談する事にした
こんなどこにでもある様な街ならどんな事になっても中々知られる事はない
…つまり、そういう事なのだろう
そしてゲレタは少し考えているみたい
…なら私は
「でも、どうしてマルス王子の元に行かないのかしら?
行けばそれなりに手厚く扱われると思うけど」
「自分の身内を奴隷扱いしている奴に好意を抱けるか?
助けてくれた事にこそ感謝はされるだろうが、心象は最悪だろう」
ゲレタの考えをまとめやすい様に疑問点を口にする
「どこで見つけたのかな?」
「…足を見たが、かなり良くなかった
多分死に物狂いで逃げていた彼女を捕らえた。…或いは疲労困憊となった彼女を言葉巧みに騙して奴隷にしたか?くらいか」
「あの鎖、恐らくサイレスの魔法が掛かってた」
「…どう考えても碌な状況じゃないな
資金は足りてるが」
「そうしましょう
流石に見てられないわ」
「…まぁ、良い風に考えればこれでマルス王子達に近づく機会は得られるって事か
あまり嬉しくないが、仕方ねぇ」
私の言葉にゲレタは頭を強く掻きむしって、溜息を吐いた
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「…エリスと申します
助けていただき感謝の言葉もありません」
「私はリンダ
一応魔道士かな?」
「ゲレタだ
アンタの弟さんとはちと縁があってな
流石に放っておくには忍びないって事で」
私達はエリスさんを奴隷として購入した
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予想した通り、あの奴隷商人は私達が買う気があると見るや値段を釣り上げ始めた
やれ他の方からも話がある、そう言って
でも、それは悪手なのよ?
私達
けどね?
「…ほう?
で、何だって?」
ゲレタがキレた。元々こういう事には嫌悪感を持っているゲレタ
…本当に元山賊なのか、偶に疑いたくなるわね
なのにグダグダと話を引き延ばされるのは余程腹に据えかねたのだろう
その男の首元に一筋の傷をつけた
そして
「もう一度聞くぞ?
俺達はお前の言った値段を出すと言った
…それで?」
男は顔を真っ青にしてお金を受け取ると一目散に街の外へと逃げ出していったわ
因みにゲレタ曰く
「…あ?逃した?
俺は殺さねぇよ、俺は、な?」
との事
なんでも首筋に付けられたあの傷は治りが遅く、そして山中において『血の匂い』というのはかなり危険らしい
実際私達が通って来た山だから知っているけど、ゲレタの殺し方はそのやり方によって多少の出血がある
そして、その僅かな血の匂いだけで狼などは集まるのだ
「じゃあ、問題ないわね」
でも、私には興味がない
人を奴隷とする様な人がどんな最期を迎えたとしても、それは自業自得よね?
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私はエリス
今はもうなくなってしまったが、アリティアの王女でした
父や騎士達がドルーア帝国の復活の報せを受け、ファルシオンを持ち帝国皇帝メディウスを倒すべく国を出陣していきました
…でも
同盟国であった筈のグラの突然の裏切り
父や騎士達は奮戦したそうですが、混乱した戦況を立て直す事叶わず戦死したと
母はその報を受けて伏せってしまい、念の為に弟のマルスと信頼出来る騎士ジェイガン達を護衛につけてタリス王国へと逃しました
私や残った騎士達はすぐにでもグラが攻めてくる
そう思っていました
…でも違ったのです
父達の奮戦により、グラ王国軍も少なくない被害を出しグラだけではアリティアを攻略できなくなっていたらしい
ドルーアの支援を受けたグラ王国軍はアリティアに攻め寄せてきました
母は私だけでも逃げろと言いましたが、私はそれに頷こうとしませんでした
今思えば、何と無謀な事をしたのかと思うばかりです
結局、最後は兵士達に逃がされる事となったのですが、私程度の体力ではグラの追っ手から逃れる事は出来ません
捕らえられた私は奴隷商人に売り渡され、そして今此処にいます
因みにグラの兵士がエリスを上に引き渡さなかったのは義憤からでも憐憫からでもなかった
アリティアに対する卑劣な裏切り
それは大陸中の国や組織のグラに対する心象を悪化させ、取り引きの停止や価格の引き上げなどを行なう理由となる
その結果、グラ王国内において食糧不足が発生
兵士からすれば、一銭にもならない王の言葉や僅かばかりの報酬よりも、高値で買い取ってくれる奴隷商人を選ぶのは寧ろ当然の事といえたのだ
ファルシオンの使い手の血を絶やす為に行われたアリティアへの攻撃
その結果エリスはドルーアの手から逃れられたのは皮肉としか言いようがないだろう
ゲレタとリンダにエリスを加えた3人はエリスの足の具合を気にしながら、一路アカネイア・パレスを目指した
次回最終話
咲く花
という訳で次回が一応の区切りとして最終話となります
元々ゲレタの物語はジュリアンに対する復讐ですからね?
まぁ、何やら二位とトリプルスコアをつけているチキも出すので、第二部みたいな話になると思いますが
今までの様な頻度での更新は出来ないと思っていただければ
では明日投稿の最終話で宜しければお会いしたく思います
それはそうとして、何で突然こんなに評価とかお気に入り増えたの?
何故に?
キャラクター
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エリス
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マリーシア
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サムトー
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シーマ
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チキ
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チェイニー
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その他