汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
今日も頑張りましょう。
アカネイア王国はオレルアンより帰還したニーナを王女として、その歩みを進めようとしていた。
彼女は真っ先にアカネイア解放の功労者であるアリティア軍に対して問題のあった弓騎士ジョルジュ、聖騎士ミディアの罷免。
更に二人を擁護しようとした司祭であるボアをアカネイア司祭として相応しからずと判断。ボアの所属している教会に対して勧告を行なった。
これ等のともすれば、拙速とも思える対応に一部のアカネイア貴族や騎士は、王女に対して撤回を求めんと反発する動きを見せた。
が、これに対してミニディ侯爵ノア、ディール侯爵シャロン。更にアドリア伯ラングはその軽挙妄動を諌め、彼等の説得と分断工作を行なった。
三人の手のひら返しとも見える事に不快感を隠しもしない者もいたが、アリティア軍師ゲレタによる理論詰めをパレスで目にしたものは三人への協力を選んだ。
そして、パレス付近の民は戦闘後の死体処置に従事しているアリティア軍の姿を自らの目で見ている。
更に未だ貧困に喘ぐ民をゲレタは集め、死体処理の手伝いをさせ、その対価としてドルーア兵の装備していた武器や鎧などの防具の持ち帰りを黙認。
それらはパレスに一番近い町に持ち込まれ、武器屋で買い取られた後に、鍛冶師の手で一度鉄へと還元。それを新たな武器に打ち直し、それは再建するアカネイア騎士団などに売却。
この流れにより、彼等は多少なりとも生活に余裕が出来、ニーナによる治安回復などへの理解と協力に繋がる事になった。
故にパレス付近の民はニーナへの支持に回る。
更にアカネイア騎士団と軍の再建は傭兵達の新たな雇用先として注目を集める事となり、治安の向上に寄与したのだった。
更にアカネイア辺境の港町ワーレン。
この都市の代表がパレスへ物資を提供。その上、オレルアン公からの支援物資も届くに及び、ニーナを疑問視或いは否定的な者達も彼女の手腕と正しさを認め、これまでの行いをニーナに陳謝。
アカネイアという国家は再生の道を歩み始めた。
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「ふっ!」
「精が出るな、ミシェラン」
パレスの練兵場では多くのアカネイア騎士が鍛練に励んでいた。
「…バウカー殿か」
声をかけられた重騎士ミシェランは短く応じる。
がバウカーと呼ばれた重騎士もそれを気にする事はない。
ミシェランの側でバウカーもまた鍛練を始めた。
ミシェランと違い、バウカーはドルーアとの戦闘で重傷を負い、彼に従う兵士達の命すら賭けた献身により戦場から辛うじて離脱。その後、とある貴族に保護されこの二年間は療養に費やしていた。
まだ体調が万全とは言い難い。しかし、バウカーにもアカネイア騎士としての使命感と誇りがあるのだから。
「…私は何も出来なかった」
鍛練の中、ミシェランは後悔の籠った言葉を溢す。
「ドルーアにより捕らえられた、トムスとミディアとトーマス。
そしてボア司祭。
しかし、私達は捕らえられるだけで何もされなかった。多くの仲間達は無惨に殺されたと言うのに」
ミシェランが知るよしもない事だが、彼等は人質だった。…正確にはミディアの恋人アストリアを寝返らせる為のものでしかなかったが。
ドルーアが仮に悪辣なれば、アストリアをアカネイア軍から裏切らせた後、ミディア達を皆殺しにすれば良かった。どれだけアストリアが優秀な人物だとしても、所詮は降伏を選んだ裏切り者に過ぎない。
アストリアはドルーアに降伏した時点で、様々なものを失い引き返せない所まで追い詰められたのだ。
「…だからとて、アカネイアとニーナ様。そしてお前達を救った者達を謗る理由にはなるまい。
甘えるな、ミシェラン。我等はこのアカネイアの騎士となった時点で責任を負わねばならぬ立場となったのだ。
自らの実力のなさを悔いるのは許されても、その嘆きを他の者に向ける事が許されて良い筈がないのだ」
「そう、だな」
「あの者達を助けようとする者もいるそうだが、理解できぬ。あの二人は心が弱かった。それだけよ
我等は騎士。立場で競うものというならば、騎士をやめるべきだ」
バウカーはそう言い残し、鍛練を切り上げた。
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「…マルス王子、私の我が儘を聞いてはくれぬだろうか?」
ハーディンは配下の騎士と共にマルスのもとを訪れていた。
マルス達アリティア軍は未だアカネイアにあり、アカネイアの再建に協力している。
勿論、マルスの本心は一刻も早いアリティアの解放を望んでいた。
しかし、だからといって現在のアカネイアをそのままにしておくのは正直不安が残る。
幸いにも兄はモロドフと話し合い、アリティアの民を密かに守る為に動いていたし、その後もオレルアンやワーレン。そしてこのアカネイアでも連絡や物資の輸送は欠かしていない。
兄は行く先々で人物として信用できると見た者にアリティアの民を守って貰う為に頭を下げ、時には大金を支払って戦力支援もしており、その甲斐もあってモロドフの元に民を守るための戦力が整いつつあるそうだ。
囚われている母上にも接触できたそうだが、母上は自分が逃げ出したとなれば、只でさえ苦しんでいるアリティアの民を苦しめる。それどころか、ドルーアなどの戦力の増強を招く。とそれを断った。
それがアリティアの王妃としての、自分の果たすべき責任であり、国王コーネリアスの妻としての最期の役目、と
そして、母上はこう続けた。と
「マルスも、そしてエリスも生きてくれた。
そして愛する者を二人とも見つけた。あの人に胸を張って私は会いに行ける。
貴方の子供は幸せになる、と」
「シーダさん、ゲレタさん。
私達の愛する子供達をお願いします」
そう記したものを私は確かに受け取り、姉上と共に涙を流した。
叶うならば、母上を救いたい。
シーダや兄上と会って貰い、共に笑い合いたいと。
だが、その為に多くの命を危険に晒す事は出来ないし、してはならないと思う。
この瞬間も誰かが家族や親しいものを理不尽に奪われている。それを私は知っているのだから。
多分、兄上はこれを知れば私や姉上を怒るだろう。
それでも、私は
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「それで、お話とは?」
私は話を切り出した。
「アカネイアの安定にはかなりの時間を要する。そう私は考えます。
幸いにも、ゲレタ殿がニーナ様と上手く連携して状況を良くしようとされておりますが」
「ええ、それはそうだと思います」
ハーディンは少し躊躇い
「ザガロ達はマルス王子にお預けします。
しかし、私はアカネイアに残りニーナ様を支えアカネイアの再建に協力したく思うのです。
本来この様な身勝手が許されるものではない。それは承知しております。
…それを理解して、それでも」
「ザガロ、ウルフ、ビラク、ロシェ
君達はそれでも構わないのか?」
ハーディンの意思が固いのは理解出来た。だが、彼等はどうなのだろう?
「マルス王子。我々はハーディン様の配下の騎士として、王子のアリティア解放に協力する。
それがハーディン様の為にも、マルス王子達に対する恩義に報いる唯一の方法。そう考えております
今後我等に遠慮なく諸事を命じて頂きたく」
そう我等の意思をザガロが示す。
「それはオレルアン公に?」
」
「いえ、この軍の指揮官はマルス王子。
兄への話よりも王子へ話を先にするのは当然の事と」
そこまでの覚悟なら、私としては文句を言うつもりはない
しかし、
「それは兄上にも?」
アカネイアにおけるニーナ王女と共に人心掌握に努めているのは兄上だ。マルスとしてはハーディンの想いには共感を覚えるし、協力したいとも思う。
それでも、ハーディンがニーナ王女を支える事で何が起こるのか?それは自分に予想できない。
正確には、短期的な話は出来るし見えるが、中長期的な視点はまだ兄よりも遥かに劣ると自覚しているのだから。
「…王子の許可を貰ってからにしようと」
ハーディンも表情には私に話した時と別の緊張をしているらしかった。
そして彼の後ろで控えるザガロ達も。
「…まさかとは思うのだけど。
ハーディン、私にも兄との話の席に参加して欲しい。そんな考えもあるのかな?」
その様子に嫌な予感がした私は、即座に予防線を張った。
「………その様な事は」
長い沈黙のあと、ハーディンはそう答えた。
ザガロ達も表情を消している。
「それは悪手だ。
兄は選択を迫る時、正しさよりも覚悟を問い掛ける人だ。『心の強さ。それが無ければ、いつか選択により殺される事となる』と」
「感謝する」
ハーディンとその騎士達は静かに私へ頭を下げたのだ。
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アカネイア騎士ロジャー。
彼は今嘗てない程の緊張の中にあった。
それは
「いつまで呆けるつもりだ。
此方も暇ではない。貴公が言った事。それに対して私は尋ねているだけだが?」
そう私を見つめる人物、アリティアの軍師殿の放つ雰囲気によるものだった。
「アカネイアを守る。
そう貴公は私に言った。であれば、私がその手段を問う。別におかしな事でもなかろう」
「それは」
「守ると言っても、その手段は千差万別。
人によってはドルーアやその同盟国を何よりも優先して。現在ニーナ王女のしている様に国内の安定を優先する。それも1つの答えではないか?」
「それは理解できます。しかし、ドルーアがいつ再度攻めてくるか、定かではありません。
民の心を安定させる。それも必要とは思いますが」
ようやく私は口を開き、己の意見を述べる。
「それもまた正しいだろう。
いつまでも外敵を残しておいては、貴公のいう通り戦いは終わらぬ」
「なれば」
私はつい語気を強め
「そこまで考えているなら、問わねばならん。いつドルーアを滅ぼし、マケドニアやグルニアを屈服させるのか」
その言葉に私は虚を突かれ、言葉を失った。
「おかしな事ではないと思うが?
貴公の様に私のもとへ同じ様な事を主張する者はしばしば訪れる。
私はアリティアのマルス王子に従う軍師なのだが、何を勘違いしたのか貴族やら騎士が来るのだよ」
淡々と口を開き、言葉を連ねるゲレタ殿。
「同じことばかり言わねばならぬから、いい加減疲れるのだがね。
それで?騎士ロジャー、貴公はグルニアやマケドニアという
私はこの言葉に呼吸が止まった様な感覚すら覚えた。
後にニーナ様の近衛を束ねるホルス殿から
「あの方を文官程度に思って侮ると、自分の価値観全てを壊されるぞ」
と言われ
「その話はもっと早くに聞きたかったものです」
と項垂れる事となった。
次回はハーディンとこわーい先生との最後の授業
手加減?
知らない子、ですね。
エリスルートのイチャイチャ(努力目標)
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いる
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いらない