汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

148 / 222
昨日投稿したので投下


潜むもの

「…つまりアレか?

先の戦闘で使用したシューター。その詳細を知りたい。そしてあわよくば、その生産や流通に噛みたいと?」

 

「…勿論、無理を言っているのは理解しているわ。

ただ、私もそうだけど他の商人達からも言われていて」

私の言葉に

 

「そこで自分を外していたら、今後の付き合いを考え直すところだったな。

別にアンナとしても無理筋なのは分かっているだろうに」

明らかに面倒そうな表情を隠そうともしない。

それでも話は聞いてくれるから、有難いとは思うわ。

 

 

----

 

 

アリティア軍の兵站の要である輸送隊。その指揮を任されているアンナ。

彼女の直属の上司はマルスではなく、ゲレタ。

 

これはマルス達がオレルアンを離れる前に決められていた。何せ商取引についてや人を上手く使う事に関してはマルスやジェイガンは勿論、エリスでもゲレタに及ばない。

そう自覚していたから。

 

 

何せ下手に言質を取られようものなら、後々問題となるのは明白。その経験も浅く、手玉に取られる可能性もあった。

 

その点、ゲレタはオレルアンの商人の注目を集めており、間違っても侮れる人物ではない。と認識されていた。無理もない話ではある。

 

多少値が張ったとは言え、サムスーフを無事に越えるなどと言うのは狂人のそれにしか思えなかったのだから。加えて、サムシアンの交易相手を彼等自身の手で潰させている。これにより、薄れていたサムシアンへの危機意識は戻り、サムシアンへの商取引は減少。

結果としてサムシアンの弱体化にも繋がった。

 

そして、その仕掛人と目されていたのが、下男と思われていた人物、即ちゲレタだった。

 

 

仮にもサムシアンと繋がっておきながら、オレルアンの目を掻い潜り、利益と立場を得ていたのが、かの商人。

 

どの様な手段を用いたのかは分からないが、その様な商人を己の目的の為に利用し、罠に嵌めて始末させた。

 

 

そのいっそ鮮やかとさえ言える方法と、仮にも王女を連れておきながら其れを実行できる胆力。

少なくとも、好んで敵対したいと思える商人はオレルアンに居なかった。

 

アンナもまたその話を聞いてゲレタに警戒はしたものの、オレルアン公やその重臣達の動きから能力はある。そう確信し、輸送隊の話を引き受け、オレルアンの商人にも声をかけたのだ。

 

 

----

 

 

3人いれば派閥が出来る。とは言ったもので、オレルアンを発したアリティア軍の生命線たる輸送隊には途中立ち寄ったワーレンやこのアカネイアにおいてすら、輸送隊への参加を打診する商人は増えていった。その結果、ゲレタの将来性と危険性を充分理解しているアンナ派。ワーレンやその付近における内政の確かな実力と指揮官であるマルス王子との信頼関係から協力を決めたワーレン派。

そして、ただ勝ち馬に乗ろうとするアカネイア派。そんな派閥が出来てしまったのだ。

 

アンナとしては、ワーレンの商人はともかくとして、アカネイアの商人を受け入れるつもりはなかった。

 

(まず間違いなく私を追い落として、その後釜に座ろうって事なんでしょうけど)

彼等の狙いは分かるし、自分でもそれは考えるだろう。

が、目の前の人物の抜け目なさと怖さを知っていれば、そんな迂闊な事は出来ないだろうに。

 

 

おおかた、亡国の王子(マルス王子)とその側近程度なら、大したことはない。そう軽く見ているのだろう。…それが目の前の人物の逆鱗とも知らず。

 

 

「本当なら私が対処しないといけないとは思うのだけど」

 

「…いや、それをすると実働部隊の長のアンナに余計な負担(・・・・・)がかかるな

こちらで対応する」

こうやってあっさりと対応してくれるから、離れづらいのよね。他の人ならこうはいかないもの。

 

 

----

 

 

 

「私が言うべき事ではないかも知れないけど、身の回りには気をつけて」

今のアリティア軍において、この人が倒れるのはマルス王子やエリス王女が倒れる。それと同じくらいに危険な事。

当然、相手はそれを狙わない筈はない。

 

「ああ、それについてはエリスやマルス。カシムにエレミヤからもしつこいくらいに言われている。

勿論、気を付けているさ」

 

「なら、良いのだけど」

私は安堵したのだが、

 

面白いぐらいに釣り針に引っ掛かってくれる

目の前の人物の悪辣さを私はまだ理解しきれていなかったのだと、改めて思わされた

 

 

----

 

 

ある人物は依頼を受けて、暗殺を実行に移すべく行動を開始した。

 

対象はアリティア軍の人物。

何でもマムクートを斧で倒した人物らしいが、村への視察に態々そんなものを持ち込む奴はいない。

 

護衛は他の連中が引き寄せている。

無抵抗の人間相手となると、気が引けるが

 

「これも依頼。悪く思うな」

 

 

 

 

対象を見つけ、その手に何もない事と周囲に誰もいない事を念入りに確認した。

……誰もいない。コイツが死んでも、そこら辺の賊の仕業に仕立てる。

 

「おや、珍客かな?」

馬鹿な男はのんびりと俺に声をかける。

 

「アンタも馬鹿だな。もう少し賢いなら死なずにすんだだろうに」

 

「俺の命がご所望かい?

それは困ったな。まだやるべき事は沢山あるんだが」

 

「それがアンタの最後の言葉だ」

明らかにこの場にそぐわない暢気な相手の様子など気にする理由はない。

 

 

俺はナイフを片手に男に迫った




そろそろ読者もエリス様を求めていそうなので、準備します
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。