汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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此方のゲレタの一面


闇の刃

「やれやれ。折角餌を用意したのにこんな小物しか釣れないとか、嫌になるな」

 

「ゲレタ様。必要な事とは思いますが、今後はこの様な事をお控え下さい」

ゲレタとカシムは血の海に沈む暗殺者など意にも介さず、話をしていた。

いや、カシムのそれは間違いなく主であるゲレタへの嘆願であろう。

 

 

 

「…それで?捕らえたか?」

 

「はい。エレミヤからはその様に」

ゲレタの側近であるカシムとエレミヤ。しかし、序列でいえばカシムの方が上。

 

これはカシムとエレミヤの話し合いにより決まったもの。カシムは表から(騎士として)、エレミヤは裏からそれぞれ支えんが為。

カシムもエレミヤもどちらが上か?等と言うつまらないもの(・・・・・・・) には興味がない。

恩人であり、命をかけて仕える主の為にどうすれば良いのか?

 

それが最優先だった。

 

 

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暗殺者の男とその依頼人はゲレタのパレス前での功績に目を奪われてしまった。

 

故にゲレタの脅威を過少に見積もった。

それだけの事。

 

 

「これは近くの村に頼んで、餌にしてもらうか」

 

「そうですね。獣達ならどれだけ痛んでいても食べられるなら寄ってくるでしょう」

ゲレタとカシムは軽く笑いあった。

 

 

 

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「凄い」

アイネは遠目にゲレタの戦い方を見ていた。

勿論、与えられた役割は果たした上での事なのは言うまでもない。

 

ナイフを構え突撃してくる男に腰帯での攻撃を浴びせ、ナイフを落とさせ、動揺した男の側頭部を全力で蹴り抜いたのだ。

男はなす術もなく、倒れ伏しそれを騎士カシムの放った矢が射貫く。

 

 

「あの戦い方は私達の参考になるわね」

いつの間にか近付いて来ていたクライネはそう笑う。

 

ゲレタとしても、エレミヤの子供達とも言える彼女達を粗忽に扱う気にはなれず、アリティア解放後彼女達にも安全靴と『ゲレタ式蹴撃術』(渋々公認)の教育を施す。それはマルスやジェイガン、エレミヤとも調整済みだった。

 

 

「ま、これに注目してくれれば別の手段()を札に加えるだけ。

寧ろ相手はこれにも対応するとなると、大変なこった」

とそれを広めた人物はさして気にしていない模様。

 

 

 

 

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「…ゲレタ様。全て吐きました」

 

「もう少し粘ると思ったが、以外だな」

 

「流石に剥き出しの内臓とやらを痛打され続ければ、発狂しますよ。

マリア王女は顔を真っ青にしていましたが」

エレミヤの報告にゲレタはどうでも良さそうに、カシムはマリア王女に(・・・・・・)同情的だった。

 

「なに、これから彼女には戦争の残酷さを嫌でも味わって貰わないとならんからな。

寧ろ、かなり配慮したつもりだぞ、俺は」

 

「まぁ、そうですね」

 

 

 

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此処にいる者達は、国や組織の庇護を受けられず死ぬ思いをして生き延びた者ばかり。

 

カシムは己の放つ矢が外れる度に家族の命が失われる恐怖と

エレミヤは日々少なくなっていく食料と、それを何とかしようと無理して怪我をした子供達。それを助けられない自分の無力さ

ゲレタは自分の選択と行動次第でエリスの全てが終わってしまうという強迫観念

 

 

それぞれが逃げることさえ許されず、それを直視しなければならなかったのだ。

 

 

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「手札は多い方が良い。欲を言えば、相手が決して無視出来ない大きな手をひとつ持っておくと、更に効果的だ」

 

「それは理解できます、兄上。

ただ、姉上の機嫌は取ってくださいよ?」

 

「…最近、エリスの奴アピールが凄くてなぁ」

兄上からの報告を受けた私は、そのまま兄上にこれまでの事を確認すると共にそのやり方を教えて貰う事とした。

真似出来るかどうかはさておいて、その考え方を学ぶのは決して無駄にならない。そう知っているから。

 

 

「先のパレス前での戦闘で俺がでしゃばった理由は幾つかある。

先ず俺自身、そしてその上司であるマルスが侮られない為のものだな。謂わば恫喝とも言えるかも知れんが」

 

「言い方はどうかと思いますけど、確かにそれは有効でしたね」

竜人族を打倒し得る武器はそこまで多くない。自傷という決して軽視出来ない欠点を抱える武器ではある。しかし、これにより私達が侮られにくくなったのは事実なのだろう。

 

「因みに彼等には魔法も有効だが、今回はエレミヤとリンダ。そしてアイネ達には動いて貰わなかった。

彼女達には然るべき所で活躍して貰う」

 

「ドルーア側に対する切り札にするのですか?」

私の言葉に

 

「それもある。

が、彼等にはせいぜい踊って貰うとしよう。

ドルーアは竜人族を多数擁している。まして皇帝が地竜族の長。当然自分達の弱点は知っているだろう」

兄は笑みを深め、

 

「が、今のところ此方にその様な動きはない。

魔道士はパレス前の戦闘に参加さえさせていない。

彼等はこれをどう受け止めるだろうな?

 

 

 

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「それは」

私は答えられない。

 

「どちらにでも受け止められる。

慎重を期せば、我々はそれを知りながら意図的に使わなかった、とも。

我々は何も知らず、今回の事は偶然だと」

 

「バヌトゥ殿に積極的に動いて貰わなかったのも、この策のひとつ。彼等の中には常に猜疑心が残り続ける。

それは苦しい時にこそ、真の威力を発揮するだろう」

兄は淡々と話を続ける。

 

「あの時、もっと他にやれる事があった。

その意識の相違は必ず何処かで噴出するだろうさ。しなかったとしても、構わない。それならそれで、また別の手を打てば良い。

マルス、お前に教えるべき事ではないかも知れない。が、敢えて教えよう」

 

「…はい」

 

「目の前に差し出された選択肢。それは必ずしも正しいとは限らない。私は相手に選択肢を用意する事で、彼等を霧の中へと(いざな)う」

 

「これこそ、お前が兄と慕う男の姿

それでも、お前は俺を信じるか?」

真剣な瞳で兄は問いかけた。

 

 

 

 

----

 

 

 

「信じます。

兄上はどこまでいっても、守るべき者を間違えないと」

…敵わんなぁ。

そこまで真剣な目で断言されたら、勝てんわ。

 

「やれやれだ。

本当に得難い弟を持ったものだな」

 

「兄上も大概ですよ?」

俺とマルスはそう笑いあった。

 

 

 

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「後は俺の認識をかき乱す為のものでもある」

 

「それは?」

 

「俺の武器はなんだ、マルス」

 

「頭ですよね」

兄と笑い合った後、話を続ける事にした。

 

「オイコラ」

私の言葉に兄は私の頭を軽く(はた)いた。

 

 

「足や腰帯を使う戦い方、ですよね」

 

「まぁ必要なら頭突きもするが、そうだ。

だが、パレス前の戦闘での活躍だけ(・・・・)しか知らない者はそう思わん。

今回の様に中々気のきいた(・・・・・)挨拶を寄越した相手の素性はある程度絞られる。更に此方は歓迎できる訳だな」

 

「オグマやナバールにハーディンすら好んで戦いたくない。そう断言している相手。しかも万全の兄上との戦いとなると、遠慮したいですよ」

 

「失礼な。キチンと情をかけて殺しておいたと言うのに」

あんまりな言い方に思わず

 

「情をかけて殺す。

矛盾していませんか?」

と指摘するが

 

「…なぁ、マルス。

回復の杖って凄いよな?」

 

「……ええ、そうですね」

 

「どれだけ痛め付けても、死ななきゃ治せるなんて

拷問が捗るとは思わんかね?

そう嗤った。

 

 

 

 

 




戦争するのだから、分断は当たり前だよね?
しかもヒトに憎悪を抱いている彼等。

さて、どちらの判断が支持されるか見ものですね。












ゲレタ式拷問術

必要なもの。ゲレタ式蹴撃術の使い手と回復の杖の使い手。水


手順は簡単

手加減なしの金的を叩き込みます。
気絶したら水をぶっかけて起こしましょう。潰れたものを治しましょう。
治らなかったら、別のところを
治れば金的を再開します。

さぁ、いつまで口を割らずにいられるでしょうか?
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