汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
化け物か、この人物は
それがミネルバのゲレタに抱いた感想。
大陸のあらゆる国家に毒を仕込み、それを全く悟らせない。
更にこの人物のやる事全てに意味があるのではないか?と思わせるだけの確かな実績があり、本人は指摘されても微笑むだけ。
それだけでも恐ろしい存在なのに
「おや、ミネルバ王女。別に遠慮せずとも構いませんよ」
(下手に動けない)
ゲレタによる調練。それをミネルバ達は受ける事となった。
ミネルバ、パオラにエスト。そしてアカネイアの騎士であったジョルジュが参加している。
流石にドラゴンやペガサスは使えない。
何せ
「鍛練で脚を折られたとなれば、彼女達も嬉しくありますまい。やるからには全力でやらねば意味はない」
と冷えきった視線を彼女達に向けていた。
勿論私やパオラ、エストはドラゴンとペガサス抜きの戦闘訓練を選択した訳だが。
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そんな私達だが、最初からこの人物。ゲレタ殿の異様さを見せつけられる事となった。
「…本当にやるのか?」
「おや?ジョルジュ殿もおかしな事を言う。
戦場で敵は選べませんよ?」
「それは、そうだが」
最初に手合わせをする事となったのは、斧を持つゲレタ殿と弓を得物とするジョルジュ殿だった。
間合いは少し離れた所から始める事となっており、弓を使うジョルジュ殿優位であるのは明らか。
が、ゲレタ殿はまるで気にしていない。
「勘違いしている様だから、先に訂正しておこう。
これから俺達がやるのは戦争であり、戦闘ではない。
それをこれでしっかり認識してもらう」
「…分かった」
私やパオラはジョルジュ殿の勝ちを予想していたのだが
「……本当にそうなるのかな?」
エストは私達の考えに納得していない様だったのが気になった。
「まだ、やるか?」
「…いえ。参りました」
全く感情の籠ってないゲレタ殿にジョルジュ殿は降参の意思を示した。
始まって直ぐ、ゲレタ殿は『斧を相手に向かって投擲』した。
ゲレタ殿の持っている斧は投擲に適した手斧ではなく、ただの鉄の斧。
だからこそ、ジョルジュ殿はつがえた矢を戻し、回避を選んだ。
ゲレタ殿の思惑通りに。
そして、ゲレタ殿に懐へと入られたジョルジュ殿に勝ち目はなく、決着はあっさりとついてしまった。
私はパオラと顔を見合わせて、この人物とこれから手合わせするのか。と改めてその困難さを理解させられたのだ。
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それでも、何とか対処しようと考えていたのだが、ゲレタ殿が次に取り出したのは『模擬剣』だった。
そう、ゲレタ殿は斧だけではなく、剣とて使えたのだとこの時初めて知る事となる。
手合わせを始めて直ぐに理解した。彼のそれはキチンとした基礎と理論の上のものであると。
だからこそ、守りに入られると崩しにくい。
此方が踏み込もうとすれば、彼が攻撃のそぶりを見せ
私が振るう剣は力がのる前に逸らされる。
読み合いだった。
ドラゴンに跨がって戦う時とはまるで違う。
神経を磨り減らすもの。
視線の動き、微かな物音、相手の呼吸。
その全てを彼は利用して敵対者を追い詰める。
私達の戦い方を動とすれば、これは静。
その慣れない読み合いは私の精神をこれまでになく追い詰めた。
そして、彼は動く。
しかし、私の反応は僅かに遅れた。
「ぐっ」
何故なら、彼は手の剣を振るったのではなく、蹴りを叩きつけてきたのだから。
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「さて、とりあえずはジョルジュとミネルバ王女と手合わせした訳だが、どう感じた」
やはりと言うべきか、誰の表情も暗い。
まぁこれは分かっていた事だ。マルス達にした時も同じだったし、老練なジェイガンですら騙したやり方。早々読ませてやるつもりはない。
特に今回の場合、ジョルジュやミネルバとパオラはパレス前での俺の活躍を知っているから尚更。
その点、エストは勘が働いたのか違和感を感じ取っていたみたいだ。
だとしても、別に問題にはならない。
幾ら此方の手の内がある程度読まれていたとしても、札の切り方や順番などで幾らでも撹乱出来る。
心理戦を織り混ぜたこの戦い方は、この大陸の者からすれば異端そのもの。故にこそ、掛かる精神的負担は桁外れのものとなり、判断力を鈍らせる。
本人も知らないうちに。
毒と一緒で、一度取り込めば時間が経てば経つ程にその効果を増してゆく。
マルス達程しっかりと教えるつもりはない。が、この戦いで死んで貰っても困る。
それなりには鍛えるとしよう。
そういえばアンナの奴。アレは安全靴だったな。
俺は油断も隙もない部下の姿を思い出し、思わず苦笑を浮かべた
前話の感想で聖戦ルートの希望が予想外に多くて困惑中。
元々聖戦ってかなりアレなのに?
そこにうちのゲレタを放り込むの?
焼け野原になると思うのだが
なおゲレタはトンファーキックの影響をかなり受けています