汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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ヒトと竜(前編)

「あなたは常に他より高いところに居た。

神竜族の一員として、カダインを創り、魔法を広め、勇者アンリを導いた『大賢者』として。

だから理解出来ない、しようともしない。

力を求める者の思いを、力に伴う責任というものを」

ゲレタのその言葉にモーゼスは皮肉げに笑い、ガトー(愚か者)を見下ろした。

 

 

 

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アリティア郊外、そこには複数の姿があった。

一人は大賢者ガトー。彼は不意を突かれ、地に伏している。

一人は魔竜族の長(バジリスク)、モーゼス。

ガトーが逃げぬ様に両の足を己がブレスで焼き、愉快そうな表情でこの場にいた。

一人はゲレタ。異なる摂理の中で生き、結果アリティア王女エリスの伴侶となった異端そのもの。

 

そして、その周囲には多くの影が潜んでいた。

モーゼスの配下の魔竜族の者達である。

 

 

 

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ガトーは形勢不利と悟ると、その身を翻し逃走を図った。モーゼスに挑むのは分が悪い。ゲレタは無防備であった。

当然、ガトーはゲレタを突破する事を選ぶ。

 

些か奇妙にも思えたが、おおかたモーゼスを味方につけた事で油断したのだろう。そう判断して

 

 

だが

 

 

「見え見えなんだよ、間抜け」

そんな侮蔑の含まれた言葉と共に

 

「がっ」

ガトーは吹き飛ばされたのである。

 

 

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ほう?

モーゼスは目の前の光景に戸惑い、そして理解が及ぶと目の前の男、ゲレタへの評価を更に上げる。

 

 

あれは誘いだった。

強い言葉でアレを挑発し、儂の存在を見せ札とした。

 

最適解は魔法で男を倒す事だったが、アレはそこまでの技量を持ち合わせておらぬ。

放つ魔法の威力は高い。しかし、その予備動作が決定的な隙となる。そう考えたのだろう。

 

違和感は感じた筈だ。アレとて仮にも元は我等と同じ存在。

だが、アレは驕った。人の世の中にその身を置き、人を見下した。研鑽も碌にしておるまい。身のこなしや判断からも良く解ろうというものよ。

 

故に違和感という我等にとって、気にかけねばならぬものを無視したのだろう。

 

 

それに対して、やはりこの者は面白い。

武器ひとつ持たぬのは流石に目を疑ったが、蓋を開けてみればどうだ?

 

アレが自分の方へと駆け出した時すら、さして感情を動かした気配はなかった。

恐らく、いや確実にそうアレを誘導したのだろう。

 

 

(末恐ろしい人間よ)

我等は圧倒的な力を持つが故に、この様な事を考える事もなく、実行するなぞ理解の外。

 

それを今、我等に見せる。

これすらも、この男ならば策に組み込んでいたとしても何ら不思議ではあるまい。

 

 

 

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モーゼスはオレルアンでゲレタに会った後、少しばかりゲレタについて調べてみた。

 

幸いにも不倶戴天の敵と言えるゲレタの情報を集めるのは難しくなかった。

 

 

いや、ゲレタという人物を知るからこそ、そう言えるのだろう。

何せ、当時のドルーアやマケドニア、グルニアが注目していたのはアリティア軍(亡国)の王子であるマルス。せいぜいオレルアンの騎士であるハーディンくらいだろうか。

 

 

強い光で相手の目を焼くというゲレタの基本に実に忠実なやり方と言えるだろう。

 

 

 

面白い

モーゼスは素直にそう感じた。

 

ただの妄言の可能性も僅かにあったが、この時点でモーゼスの中にそれは無くなったのである。

 

 

であれば、我等にその存在(強さ)を示す事をしよう。そうモーゼスは漠然と感じた。

 

 

そして、あの者はパレスを守らせていたショーゼンを倒す事で我等にその強さと覚悟を示したのだった。

 

 

 

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「知った風な口を」

ガトーは男を睨み付ける。

 

「知らんよ。人は所詮自分の知る事しか知らん。が、それでも解る事はある。

大賢者ガトー、アンタは人を理解していない。

だから、ガーネフの様に弟子が闇に落ちるのにも気付かず、そのガーネフがミロアを殺した後も何もしなかった。

おおかた、ナーガの娘の行方を探していたのだろうが、やはり理解できん。

この広大な大陸を己だけで探しきれるとでも思ったか?」

 

「なに?」

ゲレタの言葉にモーゼスは

 

「それは、どういう事か?

ナーガの娘はラーマンに」

 

「居らんよ。10年程前にナーガの従者だったバヌトゥが神殿から逃がしたと聞く。

…あまりにも不憫だと思ったのだろうさ」

 

「不憫、だと?」

 

「封印され眠らされたまま、そうだろう?大賢者」

ゲレタの言葉にモーゼスのみならず、近くに潜む者からの視線がガトーに向けられた。

 

 

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「私は詳しく知らぬのですが、己の力を制御する術を

眠ったまま会得出来るものなのでしょうか?モーゼス殿

 

「そんな事は有り得ぬ。

ガトー、貴様」

モーゼスの視線に殺意が見え始めた。

 

「全てその者の空想に過ぎぬ」

ガトーはシラを切る。当然だろう。

 

それを証明できる者は居ないのだから

 

「推理小説の犯人みたいな事を言われるものだ。

大賢者殿?ひとつ教えてさしあげる。信用が足りぬなら、証人は用意するもの。常識ですよ?

…こう言っていますが、如何ですか?

 

バヌトゥ殿」

ゲレタのその言葉にバヌトゥが姿を現す。

 

 

 

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時は少し遡り、アリティアを解放した直後。

バヌトゥはゲレタからの訪問を受けていた。

 

 

「…まだ見つかりませぬか」

 

「アンナやエレミヤを動かしてはいるのですが」

バヌトゥとて無理なことを言っている自覚はある。しかし、大陸の大きさを今更ながらに理解している今となっては自分1人で探しきれると思っていない。

 

「それで、どの様な話ですかの?」

バヌトゥはゲレタの賓客として扱われており、戦闘に出された事は一度もない。

それを常々不思議に思っていたのだが、どうやらやっと役に立てる時が来たらしい。

 

「大賢者を追い詰めるのに、協力して貰いたい」

その言葉はバヌトゥにとって予想外のものであったが

 

 

 

 

 




続きは早ければ今日中に

エリスルート完結記念の外伝

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