汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
未来へ
「…なぁ、リンダ」
「なぁに?」
「…いやその
悪かったから、その、だな」
「どうしたの?」
エリスをマルスに送り届けて復讐を終わらせたゲレタです
なんですけど、何というかリンダの可愛さと少しのあざとさがマジでヤバい
身長の差はあると言っても流石にそこまでではない
少し俺がかがむか、或いはリンダが爪先立ちすれば
…なんだ、その
まぁ、そういう事も出来る訳でして
それは俺としても嬉しい
…嬉しいんだが、アレ以来その頻度が割と洒落になってない気がするんですよね?
しかもマントを羽織る様にしているリンダ
なのに、その下の服は
…うん、その
凄く
凄いとしか言えないものでして
何というかアピールが凄いんです!
確かにリンダは可愛い!
それこそ
ミス アカネイアコンテスト
なんてものがあれば、リンダは間違いなく一位となる事でしょう!
…いや、それはリンダの魅力が大陸中の有象無象に知れ渡る事で
ダメだね!
リンダはおれの可愛い恋人で俺はリンダのもの!
…少し疲れたのか、何やらおかしなテンションになっている気がしてならない
…やっぱり
「…もう」
ギュッ
今更な事を考えていた俺は不意に温もりを感じた
「…ねぇ、ゲレタ
多分貴方の中で全部整理出来ていないと思うわ
…でも、私は後悔していないし、謝るつもりもないの
…あの時の貴方は怖かった。けど、それ以上に辛そうに見えた」
辛くなかった
そう言うと嘘になるだろう
あの頃の自分は
…それは今も同じ、か
----
サムシアンの頭領であるハイマンに拾われた俺だったが、まぁ最初の頃は酷かったものだった
何せ斧や弓を扱わせても、大した事すら出来ず
かと言って物を運ばせようにも、他の連中と比べて圧倒的に体力がなかったからな
寧ろハイマンはこんな俺を良く辛抱強く使ってくれたもんだ、そう今でも感謝している程だ
「ゲレタ!テメェ、何やってやがる!」
「すみません」
「斧も弓も使えねえ、その上狩り1つ出来ねえでどうする!!」
俺達サムシアンのいたデビルマウンテン
なんでそんな仰々しい名前がついたか、不思議に思うだろ?
山賊なんざ大陸中にわんさかいる
それはガルダの港町の連中も知っていただろう
しかし、
この世界において、畜産業というものはあまり発展していない
その為、肉に関しての流通は然程行われておらず、旅のお供として俺達も愛用している干し肉くらいではないだろうか?
何せ肉は保存が難しく、それ故に長期間の保存が出来ない故に原則地産地消となってしまう事が殆ど
だが、肉は栄養素として決して無視出来ないものである
その肉がデビルマウンテンでは余り獲れない
俺達サムシアンが日々狩りをしているから
その為、山越えをしてオレルアン方面に抜ける事以外で山に立ち入る事をガルダの者達はしなくなった
何せデビルマウンテンに入ったところで、何ひとつ得る物がないのだから
----
しかし、そんな俺達サムシアンだが別に住民と共存出来なかった訳じゃない
血も涙もない冷血漢の集まり
みたいに思われているが、縄張り意識の高い少々凶暴な山賊集団でしか無かったのだ
縄張り意識が高い為に、他の山賊達の侵入を許さず
国の軍隊が討伐に来たとしても、攻め潰す
その為、俺達との付き合い方を知っている者達は寧ろ少しの金や食糧で自分達の命を守る事が出来るデビルマウンテンってのは都合が良かったのだろう
何せ用事でもなければ、悪名高いサムシアンの跋扈するデビルマウンテンに立ち入ろうなんて酔狂な真似をする奴はいないんだからな
事実、サムシアンのアジトの近くには武器屋があり、戦利品の売却や武器調達に大きな役割を果たしていた
----
「なんだか、不思議
凶悪な山賊集団って聞いていたけど」
ゲレタの話を聞いていたリンダは自分の感じているイメージとゲレタの語るサムシアンの違いに驚いていた
「『ものは使いよう』って事さ
俺達は奪う事しか出来なかった。それじゃあ、いつか立ち行かなくなる。…実際経済的にはガルダの港町と俺達は決して無関係ではなかったんだぜ?」
デビルマウンテンで狩られた動物の一部はアジト付近の住民により、ガルダの港町へと卸され、港町の者達に食される
ガルダの港町で出来た武器の一部はアジト付近の住民によりサムシアンの手に渡る
ガルダの港町とサムシアンはある種の共同体を形成していたのであった
勿論、ガルダ側がそれを表立って喧伝する事は一切ない
…だが、彼等もまた自分達の生活を守る為、あらゆる手段を講じるのだ
故に
「…うわぁ」
リンダは山賊すら利用して自分達の生活を守ろうとする
そのやり方に思わずひいた
「力が無いから
なんて理由で諦める程、ヒトは潔くも綺麗でもない
なければ持ってくる
そのくらいやらねぇとこんな時代だ。生きていくのも儘ならないのさ」
そうゲレタは肩をすくめる
なお、この2人
こんな雑談をしながら山道を歩いており、当然その姿は山賊達の目に止まることになる訳で
2人の通り過ぎた後にはまるで生きているかの様な状態で息絶えている彼等の屍が転がっていた
----
遥か未来の事
「〇〇様、如何なされました?」
「…ええ
少し懐かしい夢を見ていたのです」
「夢、ですか?」
「…そうね
私には遥か昔だけと、父と母
そう慕っていた人達がいたの」
緑色の髪をした女性は穏やかに笑う
「…それは
また、なんというか」
女性と話をしている黒髪の独特な格好をした女性はなんとも言えない様な表情だ
無理もない
目の前の人物は『神竜の巫女』として尊敬と崇拝される人物であり、間違ってもそのような事が許されるとは思わなかったのだから
…しかし
「…あの、〇〇様
先程遥か昔と仰られたと思いますが」
彼女はそう恐る恐る訊ねた
「…実の両親ではないのよ
でも、あの2人から貰った温かい時間は今も私の中で生きているわ」
そう笑い、視線を空へ向けると
「…私は元気にやっているわ
お父さん、お母さん。あなた達は仲良くやっているのかしら」
そう少しだけ悲しそうにつぶやいた
という訳でアンケートのトップの人物を交えて第二部始まります
…はい
いやぁ、やっぱりゲレタのアレは賛否両論でしたね
多分そうなるだろうなぁ
とは思ってましたが
最後のやり取りは遥か未来の一応続編?となる世界の出来事ですね