汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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オリジナル設定多め(手遅れ)


ヒトと竜(中編)

「…さて、あなたが望む生き証人を用意した訳ですが、何か弁明があればお聞かせ願いたい。

大陸の歴史に名を残す『白き賢者』或いは『大賢者』。ともなれば、勿論私の様な凡愚にも納得の出来る説明が聞けると確信しておりますよ」

それは断罪だとある者は感じた。

 

「まさかとは思いますが、貴方は自分が殺されないとお考えですか?

であれば、その甘えた考えは今すぐに捨てる事をおすすめしますよ。

あなたが創り上げたカダイン。そこから、この大陸全土を焼き尽くさんとしたこの大乱は起きたのです。

多くの命が失われました」

 

「…覚悟あっての事であろう」

ゲレタの言葉にガトーは反論する。

 

「でしょうねぇ!

あなた方、()の考え方であればそうでしょう。力の無い者は倒れるしかない。

だからこそ、あなた方は種族として行き詰まった。

故にヒトという種が生まれる事となった訳ですな。…ええ理解しておりますとも」

ゲレタの言葉に不穏な色が混じり始める。

 

「では」

 

貴方は何者ですか?大賢者ガトー

竜の価値観のまま、人に教えを授けると?」

心底愉しそうにゲレタは

 

「だから、あなたは半端者なのですよ?

竜を捨てながら、人にもなれず。……そんなあなたの歪みが形となったものこそ、

ガーネフ(力に溺れ、魔に堕ちた者)ではありませんかな?」

ワライカケタ。

 

 

 

 

「あなたは言われた。

命を落とした者には覚悟があった、と。

なるほど、あなたが『白き賢者』と呼ばれるのも納得ですな。

あなたは人を知らなすぎる。

失礼ながら、此処にいるモーゼス殿やバヌトゥ殿の方が遥かに人を知っておりましょうよ」

 

「世迷言よ」

 

「ではお伺いしましょう。これは覚悟してお答え願いたい。

あなたはカダインを創設し、今なおカダインにおいて影響力を有していた。

であるならば

 

何故忌むべき蔑称をあなたは正そうとしなかった?

メディウスを封じたアンリにファルシオン(ナーガの牙)を与え、アカネイア再興に貢献したあなたなれば、それくらい出来たと思うが?」

ゲレタのその言葉に周囲の空気が張り詰めたものへと変わる。

 

 

----

 

 

 

 

 

 

 

大陸最古の存在、竜。

当時の大陸は竜の楽園だった。

 

 

竜は強靭な身体と牙を持ち、高い知性をも有していた。

故に、彼等は変わる必要が無かったと言える。

 

そんな彼等でも抗えぬものがあった。生物としての定め、寿命。

 

1個の生命として完璧に過ぎたが故に、竜は子孫を残す事に必要を感じなかった。

 

 

その結果、竜はその数を緩やかに

だが確実に減らしてゆく。

 

 

種族としての終わりを察した彼等は変わらねばならない。そう感じたのだろうか?

 

更に竜は徐々に理性を失い、その結果その高い能力で同胞に牙を剥く者も現れ始めた。

 

 

 

だから、彼等は竜としての力を竜石と呼ばれる物に封じ、その力を制御する道を選んだのである。

それこそ、竜人族。

 

故に力そのものである、竜石を持たぬ彼等は圧倒的力を振るう事は出来なかった。

 

 

 

理性を失い、力により滅んだ同族の姿を焼き付けていた者の一部はそれでも不足。

つまり、

 

竜としての力に恐怖を感じた者は竜石を捨て、生きる道を選ぶ。

それがヒト。

 

 

個の力は竜や竜人族に及ばなかったが、ヒトには他の種に持たぬ者があった。

 

 

子孫を残す(未来へ繋ぐ)力。

皮肉にも強大な力を捨てた彼等は他の種族が最も欲していたもの()を手に入れられたのだ。

 

 

ヒトはその力の無さ故にいがみ合い、衝突しながら

それでも他者と繋がり必死に生きる事を選ぶ。

 

 

その姿に神竜族の長、ナーガは

いずれこの大陸はヒトの世になるだろう。と感じたのである。

 

若き日のメディウスもまた、ナーガ程ではないが確かに未来を見た。

 

 

 

だが、それを許せない者もまた存在していた。未だ大陸に多く存在していた竜やヒトという弱い存在を忌み嫌う竜人族。

彼等からすれば、力を持つ自分達に種としての未来がないというのに、力のないヒトにそれが与えられる事に我慢ならなかった。

 

 

それは必然だった。

ヒトを滅ぼさんとする竜と地竜族を始めとした者達はヒトを攻撃し

ヒトに未来を見たナーガとそれに同調する神竜族。唯一地竜族の中でその長であったメディウスも此方に協力した。

 

魔竜族はそれをただ見つめていた。

 

 

 

多くの竜や地竜族は倒れ、或いは封印された。

地竜族は長であるメディウス以外、竜としての力を手放す事を選ばず、竜として。

 

 

その封印の楔となったのが、封印の盾。

盾を模した台座に五つの宝玉(オーブ)を嵌め込んだもの。

竜の理性を保つ護り。

 

 

 

ナーガが亡くなった。

幼い、そしてやっと手に入れた娘を置いて。

 

メディウスを始めとした者達はその死を悼んだ。メディウスの胸中は複雑であった。

余所の大陸に逃げた愚か者。放っておけば良いものをナーガはフォルセティらを引き連れ、その大陸へ向かったと聞く。

あろうことか、己の血を与えたばかりか、あまつさえ力の一部を武器として置いてきたと言うではないか。

 

 

そこまで貴様はヒトと在ろうと言うのか。

 

呆れにも、憧憬にも似た思いを抱いたメディウス。彼はならば、せめてナーガの願った未来を見届けよう。

そう思い、ナーガを祀る為に建てたラーマンの神官長に名乗り出てナーガの遺した武器と封印の盾を納めた所でその一生を終えようと決意した。

 

 

あの日までは

 

 

----

 

 

 

「仮にも神竜ナーガの思いを知りながら、メディウスの嘆きを知りながら良くも黙っておれたものだと寧ろ感心すらするわ」

 

「ゲレタよ。こやつをさっさと殺さぬか?

我が配下も殺気だっておる」

モーゼスはゲレタに提案する。ゲレタの話を聞いた潜んでいる者達の感情が嘗てない程に高まっているのを理解しているから。

 

「今しばらく。

これ(・・)には吐かせねばならぬものがありますゆえに」

 

「…ふむ」

温厚そのものと言えるバヌトゥですら、その怒りを隠しきれない状況にあってなおも、優先順位を見失わない。

 

「さて、異界の神竜族の娘、そしてその世界のファルシオン

それはどこに隠しているのやら」

その言葉に驚愕したガトーの目が見開く。

 

 

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「人は愚かで矮小な生き物でしょう。

無抵抗の者を踏みにじり、時には弄ぶ。

今の私とて、そうでしょうな」

ゲレタは続ける。

 

「しかし、その一方で我が弟マルスの様な者がいるのも事実」

 

「そうだな」

モーゼスは思わず自身の手元に視線を落とす。

そこにはファルシオンが握られていた。

 

 

 

----

 

 

「いえ、それは受け取れません。

兄ゲレタから聞きました。ファルシオンはあなた方にとって大切なものであると」

アリティア城を訪れたモーゼス。彼にマルスはきっぱりと言いきった。

 

「その心意気は買おう。

が、我等にそれで勝ち得ると本気で思っているのか?」

 

「私は人です。

あなた方が個の力を頼りとするなら、私は人として戦いたい。その為の手段は既に用意しつつあります」

モーゼスの言葉にもマルスは揺らがない。

 

「ククク、あの男が誇りに思うだけの事はある様だ。

では、此れは確かにラーマンへと戻すとしよう。

マルスと言ったな?

魔竜族の長、モーゼス。貴様の覚悟の程、確かに見せて貰った。

次に会う時を楽しみにしていよう」

 

----

 

 

 

 

「独りでは出来ぬ事も、私達ならば出来る。

成してみせる。それもまたヒトなのですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後編は明日

エリスルート完結記念の外伝

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