汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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反応は怖いが、止まれないのでやり抜く所存。


ヒトと竜(後編)

「…どこまで」

掠れた声が響く

 

「…どこまで知っておる。そなたは」

 

「逆に伺いたい。

あなたは自分の心中を誰かに話したことはありますか?」

ガトーは視線を上げ、ゲレタとぶつけ合う。

 

「不器用な事だ。

全てをあなた独りでどうにか出来る筈ないでしょうに。

…ナギと言うのでしょう?」

 

「………知っておるのだな」

 

「詳しいことは何も」

 

 

「人とは不便なものです。

相手を理解出来る筈なのに、時に相手に己の理想を押し付ける。現実から目を背け、理想の中に己の居場所を求めてしまう。

弱く、脆い生き物なのです。

しかし、だからこそ時に手を取り合い協力する事も出来ます」

 

「それがヒトの強さ。弱さを知るが故に。

1個の生命としては、あなた方に遠く及ばない」

ゲレタはガトーのみならず、モーゼスやバヌトゥ。そして潜んでいるであろう魔竜族の方を見やり

 

「ヒトは独りでは強くなれない。

あなた方は個として強すぎた。…だから背負えてしまう。抱え込んでも潰れない。

旧き者よ、力に溺れる事なく今を生きる者達よ。

私達はあなた方から様々なものを貰い、奪ってきた」

 

「今更の話である事は承知している。

生まれた憎悪の、無念の炎を消す術など私には持ち合わせていない。

器から零れた水が戻らぬ様に、あなた方のそれは消せません」

 

「が、それも我等にパルティアを返し、このファルシオンがこの手にある事で多少は薄まろうよ」

ゲレタの言葉にモーゼスは付け加える。

 

「なんだと?」

ガトーは今更気付いたのか、モーゼスを凝視した。

バヌトゥは驚きのあまり声すらあげられない。

 

 

「私達はあなた方を超えねばならない。

子は親より巣立ち、弟子は師を超える。それが育て見守ってくれた者達への恩返しでしょう?」

 

「それは不可能だ」

ガトーはゲレタの言葉を否定する。

 

「不可能とあなた方は諦めなかった。

そうではありませんか?」

既に周囲からのガトーへの殺気はなく、ただこの人間への興味のみ

 

「諦めるのは簡単です。誰にでも出来る。

しかし、あなた方(先達)が諦めなかったからこそ、今がある。

ヒトはあなた方から別たれたもの。諦めの悪さは筋金入りですよ?」

 

「…そうか」

ガトーはようやく理解した。できた。

これが嘗てナーガ達が求めた景色(ゆめ)だったのだと。

 

 

----

 

 

ガトーは

 

「…彼女はそなたに預けたい。

虫の良い事であるのは承知しておるが」

そう願う。

 

「仮にも神竜族の者を私に預けると?

正直荷が重すぎるようにも思えますが」

 

「これ以上ない人選であると思うが?

そなたの覚悟は既に見せて(魅せて)貰っておる。我等を打ち倒し、未来(明日)を望むならば受けぬ理由はあるまい」

 

「…妻に何と言えば良いやら」

ゲレタのその呟きに

 

「佳き妻であろう。そなたを選んだならば」

モーゼス達は笑った。

 

 

 

----

 

 

 

白き賢者ガトーは死んだ。

己の命を自ら絶つことを選び。

 

 

「もう此の様な場で会うことはあるまい。

ゲレタよ、我等が心を救った者よ。その覚悟と行為に感謝と敬意を」

ガトーの遺体を運ぶ配下達と共にモーゼスは言葉を交わす。

 

「我等の道とそなたの道。残念だが、交わる事はあっても共に往く事は叶わなかった様だ」

 

「私の生国には『一期一会』という言葉があります。

その出会いを大切なものとし、後悔なき様に振る舞う。これもまた私の血肉として見せましょう」

 

「…そうか」

モーゼスはその言葉に満足そうに頷き

 

「弱き、そして強き者よ。

次に会う時、我等はその全てを賭けてそなたに最期の試練を与えよう。

見事、乗り越えてみせよ」

そう言い残し、竜へと姿を変え南へと去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

「重いものを背負わされたもんだ」

ゲレタの苦笑とナギを背負うバヌトゥを残して

 

 

 

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「魔法剣、ねぇ

相変わらず妙な事を考えるもんだ」

 

「理論上は可能かと。

他の大陸においては存在しているものですから」

 

「であれば、私も協力出来ますかな?」

 

「是非に。ウェンデル殿の知識、存分に頼らせて貰いたい」

 

 

 

ヒトは独りでは生きられぬ

独りの強さには限りがある

 

だが、力を合わせれば不可能と思える事すら可能となろう。

 

 

 

 

 

これはヒトと竜の戦い。

 

なれど、戦場に立つ者だけの戦いに非ず。

エリスルート完結記念の外伝

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