汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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足りぬものの回収へ


信義

「何者だ」

 

「タリス王よりロレンス将軍宛の親書を届けに参りました。

将軍への取り次ぎをお願いしたい」

 

 

マケドニア王ミシェイルは目の前の光景を興味深く観察していた。

 

 

 

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時は少し遡る

 

 

「ふん、まさか俺を伝書鳩代わりにするとは、中々にニーナ女王も度胸のある事だ」

 

「しかし、ミシェイル様」

 

「言うな、ルーメル。少なくとも、マケドニアに生きる可能性が出来たのだ。

多少の事程度でそれを無駄に出来ん」

パレスでの話し合いを終えたミシェイル。彼は護衛として着いてきたルーメルと共にアリティアへと向かっていた。

 

 

「ですが、親書を届けるなら私に任せて貰えば」

 

「ならん。これを届けるように頼まれたのは俺なのだ。ここでそれを曲げるのは許されまい」

ルーメルの進言をミシェイルは退ける。

ルーメルの心情が理解できぬ訳ではない。しかし、ここがマケドニアの為になるか、ならぬかの瀬戸際である。そうミシェイルは直感していた。

 

何せあんな突飛もない事を提案する者もアレだが、それを受け入れ、実行に移すニーナやハーディンも大したものと考えている。

となれば、自分を敢えて指名した事にも意味がある筈

 

ミシェイルはそう漠然と考えつつ、アリティアへと向かった。

 

 

 

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WHY(なして)

 

 

そう口から出さなかった俺を褒めてほしい。

ガトーの件が片付き、新たにナギという問題を抱える事になった。

 

彼女について頭を悩ませながらアリティア城へ戻ると、マケドニアのミシェイル王がいました。

 

うん、強制フリーズするところだったわ。

 

 

 

ニーナからの親書を読んで納得したわ。

うん、確かにこれは俺が出るのが一番だ。…しかし、これをニーナとハーディンが相談して結論を出したのか。

 

弟子であるニーナと教え子とも言えるハーディン。

二人の成長にほっこりしますよ、俺は。

 

しかも抜かりなく、オレルアンとタリスには先触れの使者を出しているとの事。

 

 

 

これは行かないとダメな奴だわ。

 

…ところで、エリスにマルス?

 

 

 

帰ったらお話があります

 

 

俺のその言葉にエリスとマルスは視線を逸らした

 

 

 

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「お前がゲレタか。

妹達が世話をかけていると聞く。礼は言わせて貰うぞ」

 

「必要があったまでの事。礼を言われる事はありませんな」

ゲレタと名乗る男。どうやらニーナやハーディンが頼りにしている人物は見た目だけならば変哲のない男だった。

 

だが、油断は出来ない。

この状況を作り上げたのは、この男だとミシェイルは確信しているのだから。

 

 

 

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甘く見ていたか。

ミシェイルはそれでも自分の見積もりが甘かった事を痛感する。

 

アリティアからオレルアンへ。

オレルアンではオレルアン公自ら親書を託され

 

オレルアンからタリスへ向かい、ミシェイルは我が目を疑う事となる。

 

 

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タリスはマケドニアに比べても栄えているとは言われておらず、その軍備も大した脅威とはなり得ない。

他国からはそう見なされており、ミシェイルもまたその認識に異論はなかった。

 

ところがタリス上空にさしかかり見えてきたのは、沿岸部にある砦。そしてその砦より島の内部には

 

「シューターだと」

マケドニアにとっての天敵であるシューターが設置されていたのだから。

 

しかも、

 

「移動した?」

それは大陸において未知そのもの。

 

 

タリス(移動)式シューターと呼ばれるものだった。

 

 

 

 

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「お久しぶりにございます、タリス王」

 

「良く戻った。

…いや良く来たと言うべきだったな」

ゲレタ(友人)の訪問を快く迎え入れるタリス王。

 

 

「良く来られましたな、ゲレタ殿。

…実は少し相談したい事があるのですが」

タリス王の家臣達もゲレタを温かく迎え入れ、ついでに数人はゲレタ(他国の要人)に相談を持ちかける始末。

 

 

これには流石のミシェイルも目を丸くして驚くしかなかった。

 

なおゲレタに相談を持ちかけた者は、あとで皆にシメラレタ模様。

他国の、しかも使者としてやって来た者の仕事を増やしてはならない(戒め)

 

 

 

それはそれとして、ゲレタが自発的に動くのであれば

王を含めた全員が諸手を挙げて歓迎するのだが

 

 

 

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「解らんな。

何故タリスにあそこまでする必要があった」

ミシェイルはタリスを後にし移動中、素直に疑問をゲレタへとぶつける。

少なくとも、この人物はその程度の問答で気分を害する者でないことは理解していたから。

 

「2年も過ごせば愛着の一つや二つ持ってしまうものでは?」

なるほど、確かに納得の出来る話ではあるだろう。

 

しかし、

「俺にはそれだけとは思えんがな」

この男に関してはそれだけとは思えない。

そんなミシェイルの真意を察したのか、愉快そうに笑った。

 

 

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「この戦争は既に三年にも及ぶ長い期間のものとなりました。

戦場となった国家や地域は荒廃し、貧困から賊に身を落とした者も多いことでしょう」

 

「確かにな」

それはミシェイルも感じていた事ではある。

比較的賊の被害の少ないマケドニアですら、賊による被害は報告されていた。

 

勘違いしてはならない。

賊の被害が少ないマケドニア。だからと言って他国に比べて豊かではないし、政治が機能している。

そんな話ではないのだ。

 

マケドニアでは成人男性は竜騎士への適正を見られる。それに漏れたとしてもマケドニア地上部隊への入隊が半ば義務付けられており、他国の民と比べると戦闘技能の面において勝っている。

故に賊が襲ったとしても、返り討ちとなる場合が多い。

 

その為に賊も稼ぎの悪いマケドニアから離れていく。

 

 

その一種の抑止力のない他国でどうなっているのか、詳しくは知らずとも想像は出来るというもの。

 

 

 

「タリスは国としては新しく、アカネイアを中心とした体制に認められておりませんでした。

しかし、タリスは唯一アリティア(故郷)を失ったマルス達を受け入れてくれた。

タリスは他国から侮られていましたからね。戦火を免れていた。

ならば、これを奇貨として受け取り、国内の安定強化と農業を始めとした産業の発展に努めれば

タリスは他国から無視し得ない存在(国家)となる

 

「戦いが終わる前に、それを考えるか」

ミシェイルの言葉に

 

「…あなたもですか、ミシェイル殿。

戦争の中にあっても、民は生きております。戦争が終わってから対策する。などと悠長な事をしていては、民の信頼を永遠に損ねる事となりますぞ」

ゲレタは冷たい笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

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「ミシェイル殿も理解しておいででしょう。

国家とは王の一存で全て動くわけではない。現在のグルニアが良い例ですな。

国王の下にいる武官と文官による深刻な対立。これは別にグルニアが特殊なのではありません。寧ろ、マケドニアや今のアカネイアなどが特殊なのです」

 

「…なるほど」

ミシェイルは短く呟き、続きを求める

 

「戦争における主役、と言うのは甚だ不本意で不快でしかありませんが、そう思っているのは武官や軍部です」

 

「兵が無ければ戦いになるまい。当然だと思うが?」

 

「しかし、兵を動かすには食糧や武器などの物資が必要となります。しかもかなりの量が。

備蓄で賄えれば良いでしょうが、今回の戦争はグルニアにとって予期し得ぬもの。

ましてアカネイア本土まで遠征させるとなれば、到底物資は足りますまい。となれば、それを何処かから用意せねばなりませぬ。…そこまでは武官もしましょうな」

 

「されど、物資とは無から沸いてくる筈もなく当時のグルニアは体制の中心たるアカネイアに剣を向けた。

当然、アカネイアに近い所から買い集める事も難しい。そうなれば」

 

「…国内、か」

 

「ええ。国内の物資を集め、兵を揃える。

その全ては民にとって負担でしかない。戦争の主役(武官や騎士)からすれば理解できないでしょうが、さぞや民も不満に思った事でしょうな。彼等の生活を圧迫する戦争など求めてはいないのに。

国として考えれば、ドルーアに与さねばグルニアは竜により蹂躙されていたでしょうから正しくはあります。

 

その民の不満を宥めねばならないのは、物資や兵を集めた者達ではなく、それら(過度な徴収)を咎めたであろう文官達。となれば両者の対立は不可避でしょう。

 

ですが、民からすれば国王の決定も武官のした事も文官のそれも等しく同じなのです。国の下したものとしてしか映らない」

 

「実に理解しがたい事であります。『自分のした判断でない』から許される?

そんな寝言を吐く者がアリティアの中枢にいれば、私は容赦なく叱責しますし、場合によっては叩き出します」

 

「私達は常に見られて(評価されて)いる事を忘れてはならぬと思うのですが」

 

 

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「ロレンスと申す。…まさか、噂の貴殿が私を訪ねてくるとは思わなかったが」

時は戻り、ロレンスと面会の叶ったゲレタとミシェイル。

 

「それに、マケドニア王まで来られるとは」

 

「勘違いして貰っては困る。あくまでも今回此方からグルニアに話す事も要請する事もない。同席するだけだ」

 

「タリス王と既知の間柄と聞き及んでおりましたからな。先にグルニアの内情を伺うべきと思ったまで」

 

「…それは」

 

「改めて自己紹介させて頂こう。

私はゲレタ。アリティア王国宰相であり、今回アカネイア王国女王ニーナ様よりアカネイア王国の特使として参った」

 

 

 

 

エリスルート完結記念の外伝

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