汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
この辺の詳細は後ほど
魔法とは精神に依存する。
しかし、それは魔法のみに限るものではない。
カダインの魔道士達はいきなり魔法を学ばない。
魔法の理論や過去の魔道士の話などを聞く、座学を受けて知識をつけてから、魔法を実践するのだ。
それはカダインの権威を引き上げるという中々に生々しい理由も確かにある。そして教える側もそう認識している者ばかり。
しかし、まだ魔法が一般的な
当時は一般的な
何せ未知の技術ともなれば、それは当然の事だろう。
しかし、魔法は技術として系統なども確立されるとその慎重さは失われていった。
唯一残ったのが、この座学であったのだが
当時の者達にとって、魔法の習得に慎重となるのは当たり前であり、態々座学の意義など論ずる必要すらなかった。
寧ろ座学に疑問を持つ者は
魔法を教わるに足らぬ者として、弾かれていた。
つまり座学は一種の篩として機能していたとも言えよう。
----
しかし、現代の魔道士にとって座学とは
アリティアから魔法を学びに来たマリク。彼は魔法を
マリクの師となったウェンデルはそのマリクの為に魔法の習得。そして、鍛練にこそ時間をかける事を選ぶ。
兄弟子であったエルレーンもまたそれを見て座学を疎かにするのは必然ですらあった。
それにより、マリクもエルレーンも他の魔道士よりも高い実力を得るに至った。
そうなれば、他の者達も挙って座学にかけていた時間を鍛練へ使う。
結果として、今のカダインは高い実力を持つ魔道士を多数擁するに至る。
その力に見合わない未熟な精神を持ったままに。
特にその中でも速成教育を受けたマリク。
その力に対して、精神は鍛え上げられている。とは思えなかった。
その上に、我武者羅な鍛練。しかも指導する者も居らず、目的意識すら見失いつつある。
これで真っ当な戦いが出来る筈もない。
皮肉にも、ゲレタよりも高い実力を求めたマリク。彼は寧ろその実力を弱める結果となってしまった。
----
情けないもの
エレミヤはカダインの魔道士を一方的に打ち倒しながら、内心嘲笑ってすらいた。
マルス王子はガーネフの支配下であるカダインを攻略する事を決定。
エレミヤはアイネとクライネを伴ってカダイン攻めに参加している。
事前にマルス王子からの降伏勧告をカダインは拒絶。
それ自体にエレミヤが思う事はない。魔法の習得をさせて貰ったのには感謝するが、合流してきたウェンデルやリンダの実力を見たエレミヤはカダインへの興味を失っている。
あまりにも
エレミヤ自身も余り他人の事を言えないが、魔法とは強い精神力があって十全に使いこなせるもの。
魔法に限るものでもないが。
----
エレミヤは確かにゲレタにより家族達と共に救われた。だが、それまでに失った生命も確かにある。
力に飲み込まれ、狂った者。
力に怯え、心を壊し自ら命を絶った者。
だからこそ、エレミヤは子供達に何度でも言うのだ。
「あの方に相応しい力を求めるならば、心も鍛えるのです。心の強さの伴わぬ力をあの方は認めません」
と
それがあの方の口癖とも言える、覚悟。
覚悟を持たぬ者に未来は拓けない。エレミヤもまた、そう思っているのだから、
----
「マルス様、私は」
マルスと再会したマリクはその後の言葉が続けられない。
エリス様は助けられ、マルス様達のいたタリスで再会。せめてマルス様の力になろうと、力を付けていたのにアリティアの解放にすら役立てなかった。
何の為に
それが分からなくなっていた事を今更理解してしまったのだから。
----
マリクの慟哭に似たものを感じたマルス。
「マリク。君は私や姉上を助けたい。そう言ってアリティアを離れた。
…けど、私や姉上は」
あの時言えなかった本心を今、語ろう。
「マリクが強いとか弱いとか、どうでも良かった。
共にいてくれるだけで良かったんだ」
「マリク。どうして共に居てくれなかった?」
マルスの震える言葉にマリクは、膝をつき涙した。
それから僅か後、カダインは武装解除しマルス達に降伏する事となった。
----
同時刻、グルニアでは中断した謁見が行なわれようとしていた。
実際には謁見と言うよりも、グルニア側がアカネイアの真意を探る場と化していたが。
「お待たせして申し訳ない」
グルニア側はゲレタとミシェイルに謝罪する。
「…口を開くつもりはなかったが、言わせて貰おう。
国内どころか臣下の意思すら統一出来ないこの様な場に意味があると、俺は思わん。
俺はともかくとして、この男はそこまで暇ではない」
ミシェイルは不機嫌さを隠す事なく言い捨てた。
「私もミシェイル王と概ね同意見ですな。
先のやり取りで貴国の本音は聞けた。そうではありませんか?」
ゲレタもミシェイルの言葉を否定しない。
その言葉にグルニア側の者達の表情は凍りつく。
「アカネイアのニーナ様はグルニア王と今後の大陸について話をしたいとパレスへと招く使者を出した。護衛をつける事も認め、その席にはミシェイル王も同席している。下手な事をすれば、グルニアよりもアカネイアの方が傷を負うのは理解できると思いますが?」
「ただ、アカネイアの解放などにマケドニアはミネルバ王女達の貢献があり、グルニアにはなかった。
故にグルニアにはアカネイアの神器であるメリクルとグラディウスの返還を求めた。
それをグルニアは拒絶し、今回私が派遣された
それだけの事」
「確かにそうだ。
が、メリクルとグラディウスは我等が手に入れたもの。貴殿らとて、戦場なればそうするであろう」
ゲレタの言葉に武官は反論する。
戦場における物資調達は寧ろ当然の事なのだから。
しかし
「一緒にされては困りますな」
ゲレタは軽く笑うと
「我等アリティア軍はその様な事をしておりませんが?」
そう言いきったのである。
----
場が凍りつく、という表現がある。
正に今この場はそうであった。
「…馬鹿な」
それは誰の声だっただろうか。
絞り出す様な、そして信じられないと言わんばかりのそれ
「失礼な事を仰られる。
今発言なさったのは、恐らく武官か騎士と思うが、あり得ないと思われたか?
私からすれば、戦地でのそれこそ理解しがたい。
それは後々自分達を蝕む毒となるのに、何故その様な事をされるのやら」
ゲレタは寧ろそれを問い詰める。
「武官や騎士には理解しにくいでしょうが、戦いは勝てば終わりではない。その地の民の生活が平穏になって初めて終わったと言えるのではないでしょうか?」
「…それは理解できる」
ゲレタの言葉に文官のひとりは同意する。
「特に兵站の維持が難しい侵攻先ともなれば、民心の掌握は必要不可欠。そうでなければ、補給が滞り、下手をすれば反乱の芽を生む要因となり得る。
故にこそ、現地徴発は厳に慎むべき事。遺恨を残すからですな」
「しかし、政治は自分達の職分ではない。そう開き直る者も多い」
ゲレタのその発言に騎士や武官は顔をしかめる。
「それは敵の拠点でも同じでは?
敵を滅ぼせたならば、或いはそれも通りましょうが」
「メリクルとグラディウスを手に入れ、それを正当化したかったならば」
「何故、ニーナ様を助けたのですかね?騎士カミュ殿?」
その言葉はグルニア側から全てを奪い去った。
----
「何故それを」
カミュは呻く様に訊ねる。
「ニーナ様本人から聞きましたので」
事も無げにゲレタは答える。
つまらない事を聞くな、と言わんばかりに
グルニア側の皆は顔色を失っていた。
「お分かりになりませんでしたか?
これはニーナ様の温情なのです。…そうでなければ、態々二度も使者を出す筈もありますまいに」
「なるほどな。お前が乗り気でないのはそのせいか」
ゲレタの使者らしかぬ態度にようやくミシェイルは納得出来た。
少なくとも、オレルアンやタリスでの発言や行動を見ていたミシェイルからすれば、グルニアでのそれはおかしなものとしか思えなかった。
が、この様な事情ならは納得できる。
「騎士カミュ。貴殿はニーナ様にアカネイアの王族として生きる様に言われましたな?
その話を聞いた私は耳を疑いましたよ。
他ならぬ貴殿こそがグルニアの騎士としての責務を放棄しているのに」
「この様子を見ると、どうやらご存知だった様ですな。
その様な国をどうして信用できましょうか?
騎士が自らの信念の為に与えられた命を無視して、敵に逆転の機会を与える。
そして、それすら糺せもしない組織。
そんな者達にメリクルやグラディウスを任せられると?」
ゲレタは周囲を見回す。
しかし、誰も視線を合わせられない。
「…グルニア王よ。この有り様を見せられて私はそれでも貴国を信じねばならぬ。そう仰せになりますか?」
「…使者殿、メリクルとグラディウスはお返しする。
その上で頼みたい。ニーナ様への
アカネイアへのとりなしをお願いする」
絞り出す様な国王の声。
「…しかと伝えましょう。
騎士カミュ。死に逃げるなど許されると思わぬ事だ。貴殿の判断により多くの人命が失われたのだから」
ゲレタはメリクルとグラディウスを預かると、ミシェイルと共にグルニアの地を離れた
「名誉や信念。
その結果流される血と涙を知らぬ者が言ったところで、喚いているとしか思えぬのに」
これで前提は整いました。
予想通りと言うべきか、このルートで全く出ていないチキのアンケートでの存在感に戦慄すら覚える次第。
エリスとのイチャイチャは次回かその次くらいになりそう
エリスルート完結記念の外伝
-
いる
-
いらない
-
そろそろリンダルート書いて、どうぞ?
-
そんなことよりチキを出せ
-
その他