汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

169 / 222
最後に向けて


未来(あす)の為に

「それで此方に参られた、と」

 

「ええ。

私は許されぬ事をした」

 

「私は貴方の懺悔を聞く程、暇ではない。

詫びるべきは私ではないのだ。お分かりだろう、騎士カミュ」

ゲレタは自分を訪ねてきたグルニアの騎士カミュの言葉を斬って捨てた。

 

「用件だけ伺う。懺悔なればグルニア王でもグルニアの教会にでもされるが宜しい。

此処に来たのはそんな事ではない。…せめてそう信じたいが」

 

「無理を承知してお願いしたい。

ドルーアとの戦いに加えて頂けないだろうか?」

カミュは自らの希望を口にした。

 

 

 

 

----

 

 

 

「率直に申し上げよう。先のグルニアでの話の通りだ。グルニアは信用するに値せず。

私はそう判断している。理由など今更もう一度語りたくもない」

 

「それは、理解しているつもりです」

カミュの顔は曇る。

 

「信用できぬ事もある。

が、それ以上に貴殿も含めグルニアの者には足りぬものがある。私はそれこそ重要視しているのだ」

 

「足らぬもの、とは?」

 

「覚悟だ。心の強さと言っても良い。

貴殿がニーナ様を匿った、或いはアカネイアから逃がした時グルニアの者は誰も居りませんでしたか?」

 

「…いえ、ロベルト、ベルフ、ライデンがおりました」

 

 

「ですな。私もニーナ様よりそう伺っております。

この際、貴殿のした事の是非は置いておきましょう」

ゲレタはそう前置きして

 

「いずれも優秀な騎士と聞き及んでおります。

その三名の誰も貴殿のしようとしている事に疑問を持たない事が問題なのですよ」

 

「しかし」

 

「カミュ殿がグルニア一の騎士として名を馳せている事を踏まえても、おかしな事。

メリクルとグラディウスの扱いの際には、そちらの武官殿は『戦場故に許される』と、その様な事を口にされた。そして、それを誰一人咎めもしなかった。

敵国の王族を秘密裏に助け、逃がすのはグルニアでは一般的なのでしょうか?」

 

「その様な事は」

 

「であるならば、誰かひとり貴殿に問えなかったのでしょうか?

これは本当に許される事なのか?と。

しかし、そうはならなかった。つまりグルニアでは上位者に対して疑義を挟む事は出来ぬ、許されぬ。そう判断出来るわけですな」

 

「そうでなくとも、見えてしまう。

そう仰られるのですか」

カミュの沈んだ言葉にもゲレタは容赦しない。

 

「でなければ、どう説明される?

それとも貴殿のする事は全て正しいと盲信しているとでも?

だから、心が弱いと申し上げている。

選択の重みを他者に無条件に預けているのだから」

 

「無論、本来なれば兵士が一人一人自分の考えによって動くなどあってはならない。

それは軍組織としての崩壊に他ならない。

だが、貴殿や貴殿の側にいた者達は騎士だ。王より騎士としての責を与えられた者。ともすれば、一軍すら率いる者がそれでは、少なくとも私は困るな」

 

「返す言葉もない」

 

「騎士とは何か?今一度己に問いかけては如何か?

世が平和になれば、今までの様にはいかなくなる。グルニア王に伝えて貰いたい。

「貴国の助力は不要」と」

 

「…失礼する」

ゲレタの言葉にカミュは更に表情を暗くして、その場を後にした。

 

 

 

 

 

「城下の民の顔色ひとつ理解できない、しようとしない。だから信用出来ないのだがねぇ」

 

 

 

----

 

 

 

「カダインの魔道士やエッツェル殿達の協力もあって、魔法剣の生産は軌道に乗った。

アカネイアとマケドニアにおける木材の確保と加工も順調、と。

橋頭堡を確保次第、順次組み上げを開始して貰わないとならない、か。

アンナに頼んで各地からドラゴンキラーも買い集めて貰ってはいるが」

ゲレタはカミュを帰した後、自室で書類を確認しつつ(きた)るべき戦いに向けての準備に余念がない。

 

何せ相手は全力のメディウス達なのだ。手は多い方が良いに決まっている。

 

しかし、戦場に立つ者は厳選せねばならないだろう。

犠牲なく勝てるなどと思い上がるつもりはない。自分とて、死ぬ可能性は高いだろう。

 

「親方達とマケドニアが協力してくれるからこそ、取れる方法だよなぁ」

 

戦争(殺し合い)であり、闘争(誇りをかけたもの)

それがゲレタの用意した渾身の舞台。

 

 

その為に考え付く限り、あらゆる手段を講じ、多くの者達と手を取り合った。

柄にもなく騙し合いもした。

 

それでも守りたい女性(ひと)がいたから。

 

 

----

 

 

 

「お兄様。顔色が」

 

「…シーダか。

そこまで悪いか?」

 

「はい。マルス様やエリス様が見たら部屋に閉じ込めると思うくらいには」

 

「…それは、マズイな」

シーダにとって、義理の兄にあたるゲレタは奇妙で優しく、弱くも強い人だった。

タリスで初めて会った時に感じたのは、とても不器用な優しい人、というもの。

 

父やマルス様達はその時折見せる冷酷さや複数の視点から物事を見る能力などに重きを置いているように思えるが。

義姉となるエリス様とも良く話をするが、エリス様はいつも目の前の兄の事を心配している。

 

 

無理はして欲しくない。だけど、私達では出来ない事が余りにも多すぎた。

 

「あと少しで終わる」

最近お兄様はそう口にする事が増えたと感じている。

 

 

 

「お兄様、部屋に戻りましょう」

 

「あ、いやでもやる事が」

 

「ダメです。少し休んで下さい。

エリス様も呼んできますから」

この不安は消えない。

お兄様の顔を見るたびに強くなっていく様な気がして

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カミュ参戦ならず。

まぁこのルートのテーマである覚悟や責任と合わないから仕方ないね。
カミュ好きな人にはごめんなさい。

















雑兵の秘密


小説を書く時、ほぼ坂本真綾の色彩を聞いている。この作品に合っていると思っている為

FEの長年のファンだが、個人的にはセブンスドラゴン(特にPSP二作品)の様に戦えない一般人の思いも背負って戦うのが好み

語彙力随時募集中(超大事)

エリスルート完結記念の外伝

  • いる
  • いらない
  • そろそろリンダルート書いて、どうぞ?
  • そんなことよりチキを出せ
  • その他
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。