汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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後日談という名の補足回


後日談 明日へ向けて

「確かにそれは問題でしょうね」

 

「タリス側から言い出せる話ではありませんし、これまでの手厚い支援もあります。

此方から話を持っていくべきではないかと」

アリティアでは国王の母であるリーザと宰相ゲレタが今後の事について相談していた。

 

それは各国の次世代の事である。

 

 

 

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アカネイアのニーナ女王はまだ若く、近衛兵長であるハーディンとの関係は公然の秘密となっている。

 

婚儀については慎重に検討せねばならない事から決まっていない。

と言うのも、女王であるニーナは出産となれば、政務を普段通りにするわけにもいかない。

さりとて、伴侶となるハーディンが政務を代行するとなると、無用な混乱を招きかねない。

 

 

最低でもニーナの体制を磐石とし、政務を代行する人物がどの様な政策を主導しようと、ニーナの意思を確認する。

そのくらいでなければ、不心得者が出てきた場合アカネイアが混乱してしまうだろう。

 

特にアカネイアは変革の途上にあるとなれば、潜在的敵もまた存在しよう。

教会も懲りる事なく、自分達の権利(・・・・・・)を守る為に不満のある者達を動かす可能性も否定しきれない。

 

それらの事情から、ニーナとハーディンの婚儀について話をするのは時期尚早と言える。

 

 

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オレルアン公は自分の弟であるハーディンに後を任せたいと考えていた。

しかし、弟の心中を優先する事を選んだ。

 

国主ともなれば、覚悟のない者に預けられる程に軽いものではない。それを公は理解していたのだから。

 

 

元々国主としての教育を受ける事に好意的ではなかったハーディン。故に騎士を纏める立場に収まった。

 

となれば、オレルアンにも後継者問題が発生する。

しかし、それは許容せねばならない問題。幸いにも家臣の中に優秀な、それでいてこれからの未来についてしっかりとした考えを持つ子供がいた。

その者を養子とする事でオレルアンの次代の問題は解決したと言えるだろう。

 

…些か物悲しいと感じなくはなかったが。

 

 

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グラはまだ年若いシーマが女王である為に国内が安定したと判断できるまでは、伴侶を持つ事はしない。

彼女の恋人であるサムソンもその辺りの事情に納得してくれており、家臣達も理解を示してくれている。

 

 

唯一の懸念材料は国内で不穏な動きを見せている事だろうが、アカネイアから教会に話をする(・・・・)との事。

密かにあの人物に目をつけられたであろう総本山の者には少しばかり同情しなくもない。

 

かと言って、かの人物と対立するつもりは欠片もないが。

 

 

 

グラのこれからは難題だらけだが、それでも先行きは明るいといえるだろう。

 

 

 

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マケドニアは現王ミシェイルによる統治体制で上手くいっている。

 

アカネイアを始めとした各国から支援を受けている。

と言うのも、旧ドルーア領の治安維持。そしてあの戦いで亡くなった者達の共同墓地。これの管理を任されている為であった。

 

流石に亡くなった者を個別に埋葬する事は難しく、仮に出来たとしても、不心得者(墓をあばくもの)が出ないとも限らない。

しかし、マケドニアもそこまで人員を割けるわけでもなく、それは現実的と言えないのは誰もが理解している事。

 

 

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当初ゲレタはドルーアの地に竜人族の国を建国させ、それを各国が承認する形を考えていた。

勿論、それが不可能ではないものの、現実的な手段とは思わなかったので、自分の中で話を終わらせたが。

 

ドルーアとは今生きている竜人族にとって、罪の証とも言えるものであり、過去を想起させるにはこれ以上ないものとなってしまう。

そして、彼等にとって護るべきラーマン神殿。

そこに国家をつくるのであれば、理解もされようが。

 

 

ラーマン神殿はナーガを祀る彼等竜人族にとっての聖地。其処に神器などを戻し、ようやく彼等の中でもヒトに対する意識が変化しようとしている。

そんなある意味では一番精神的に不安定な時に、聖地を捨てろ。

などと言える筈もなかった。

 

 

 

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結果、国力的には他国よりも劣っているマケドニアにその負担が圧し掛かる事となってしまった。

 

 

海を隔てた某国が、もう少し信用するに値したならば、或いはそちらと経済協力をする事でマケドニアの負担も軽くなったかも知れなかったが。

それは、マケドニアの者達の感情が認めなかった。

 

 

あの戦いは、アリティア側とドルーアに付き従っていたマケドニア。双方の騎士達の意識に変化を促す意味もあった。

 

如何に国王やそれに近い者達が納得したとしても、喪った命は戻らない。

騎士だとしても、その凝りは残り続け、そしてそれはやがて世界を憎む種火となろう。

 

 

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不平不満は容易く伝播し、制御不能な事態を招く。

かつて世界が一発の銃弾により、大火に焼き尽くされた様に

 

戦後処理が間違えば、民衆の納得が得られなければ

それが大火に繋がらないと、誰が断言出来ようか?

 

 

勿論、これは極端な例であろう。

しかし、そこに感情や打算があり、複雑に絡み合った事だけは否定しきれない筈だ。

 

 

その感情とは人にとって、普遍的なもの。

故にそれは時に道理を超越してしまう。

 

 

歴史において、疑問に思う事はないだろうか?

 

何故この様な選択をしたのか?

と?

 

 

歴史とは過去であり、過去であるが故に歴史を知る者は状況を俯瞰して見る事が出来る。

 

分かりやすい言葉にするならば、神の視点でものを見る。とも言えるだろうか。

 

 

故に歴史は善悪はともかくとして、正誤を定める事が容易に出来てしまう。その後起きた事を加味して。

 

 

そこに至るまでの仮定(感情)を時に置き去りとして

 

 

喪われた命は戻らない。

そして、それを大量に生み出すのが戦争なのだ。

 

 

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戦争とは何かを手に入れる為の手段である。

 

仮に防衛の為のそれであろうと、国や組織を守るというもの(これまでの日常を)手に入れる(取り戻す)為のものと言い換えられる。

 

 

故にひとたび戦争が起きると恐ろしい事となる。

 

 

止める事が出来ないのだ。

喪われたものの重さと、感情がそれを容易に許さない。

 

 

人には理性がある。故に止めるのは簡単だと思われるかも知れない。

 

人は他者を慮る事が出来る。相手の立場になって考える事が出来る。

それは間違いなく人の良さと言えよう。

だが一方で人は時に利己的となる。都合良く物事を考える。

 

 

その結果、相手が戦争を止めようと提案しても

 

 

相手はもう余裕がない。だからこの様な提案をしてくるのだ。と

 

心の中の悪魔が囁く。

 

 

もう少し粘れば、相手が膝をつくのではないか?と。

 

 

 

 

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故にこそ、ゲレタは周囲を巻き込み

世界の理すらも変えようとした。

 

感情の恐ろしさを知るが故に。

 

 

 

だからこそ、あの戦いの場にマケドニアの騎士達も動員する事を選んだ。

 

ほんの少し前まで敵同士であった筈の者達を同じ戦場に出す。

それは賭け。仮にどちらかが暴発すれば、或いはマケドニアが指揮に従わねば終わり。

 

グルニアを加えなかった決定的な理由は此処にあった。

ミシェイルの率いるマケドニア軍。マケドニアはたとえ祖国を裏切ったミネルバ達であろうとも、手を出さなかった。それどころか、関わる事も避けた。

 

ミシェイルがニーナの親書を持って、アリティアに訪れた時に。

 

 

あの時ミシェイルの護衛を務めていたのはルーメル将軍。聞けばミネルバ達が裏切った事で動揺していたマケドニア騎士団をリュッケ将軍と共に統率を維持した人物であり、三姉妹の中で唯一マケドニアに戻ったエスト。彼女を国外まで連行した人物。

 

エストが無事にミネルバ達と合流できたのは、ルーメル将軍の理性的な行動の結果と言えるだろう。

 

 

その様な判断を下せる前線指揮官。感情を飲み込んで従った騎士達。 非情であろうとも、常に最善を選ぼうとする国王。

それが存在し、機能しているのがマケドニアなのだ。

 

 

それに比べるとグルニアの惨状は目に余る。

 

 

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グルニア王は文武両官を掌握しているとは言えず、文武両官の円滑な意志疎通が出来ているとは到底思えない。

 

その上、一将軍でしかない筈のカミュが己の信条に従い、それを周りの騎士は止めようともしなかった。

国王の信任厚いロレンスは迂闊に発言出来ない。…その影響力の高さを知るが故に。

 

 

カミュ自身が自覚しているのかは定かではないが、彼は国王からの信任を受けている。その事を意識しているのかは知らないが、その事を軽く見ている様にも思える。

 

つまり、国王、官吏、将軍に騎士。

その全てが同じ方向を向いて動いているという意識が薄い様に感じられた。

 

 

そんな爆弾でしかないものを、どうしてあの戦いに参加させようと思うだろうか?

 

 

戦後の平和を維持せねばならない関係上、グルニアも大陸会議に招かざるを得なかった。が、逆を言えばそうでなければ顔を会わせたいとも思えない。

 

その上、グルニア王の子供はまだ幼く魔法の修業をさせているらしい。

 

 

「他にやる事があるだろう」

思わずゲレタは呆れ返った。当然、グルニアの騎士のあり方を見るに、精神を重視しているとは思いがたい。

 

話によれば、グルニア王は最近急に体調を崩しつつあるらしいと聞いた。高齢の上に精神的な負荷が尋常でない程にかかっているからだろう。

何せ、グルニアが自分の思う以上に危うい事をまざまざと思い知らされたのだから。

 

本来ゲレタが使者としてグルニアを訪れた時。グルニア王が発言してはならなかった。王がアカネイアからの使者に懇願する事。

それは、王の権威にとって最もしてはならない。

 

この場は文官か武官が王の意を受けたとして、謝罪するのが良かっただろう。

 

つまり、グルニアは王家の絶対性が既に揺らぎつつあったのに、あの場でそれを他ならぬ王が認めてしまった。とも言えるのだ。

 

その状況のまま、まだ年若いどころか幼いユミナ或いはユベロにバトンが渡される。

 

その時支えるのが、あの頼りになるか怪しい者達ともなれば、面倒な事になるのは目に見えていた。

 

 

さて、どうなる事やら。

 

 

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そして、アリティアにとって最も重要な同盟国となったタリス王国。

 

血縁的に考えれば、タリスの王女であるシーダ。その夫であるマルスとの間に生まれるであろう子供がタリスを継ぐのが一番角の立たない選択だろう。

 

とは言え、マルスはアリティアを解放した中心人物であり、今は亡き先王コーネリアスの息子。

確かにエリスも戦ったとはいえ、マルスに衆目が集まるのはどうしても避けられなかった。

 

そのマルスがタリス王家を継ぐとなれば、アリティア国内から異論が出るのはどうしようもない。

 

 

そして、既に国王として即位している以上、この様な事になれば宰相による簒奪(・・・・・・・)を疑われかねない。

 

 

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アリティア軍の人間や、モロドフと共に地下組織としてグラの支配に抗った者であれば、ゲレタの功績は理解していよう。

が、まだゲレタの功績を知らぬ者はアリティアにも多い。ゲレタとは宰相ではなく、エリスの夫(王族の伴侶)と認識している者の方が多いのが実情。

 

これもある意味仕方のない事である。

王子であり、アリティアの正当後継者であるマルス。そのマルスよりもゲレタが功績を挙げ続けるのは、国民感情や王家の権威や信頼を損ねかねない。

 

故にゲレタの功績は主に内務面ではなく、外交面で目立つものとなった。

 

これに関しては、マルスやエリス。シーダやジェイガンにモロドフさえも苦い顔をするしかなかった。

リーザもゲレタの危惧するところが理解できるだけに反論はしづらい。

 

 

結果、マルスはとても

…そう、とても不本意であったが、ゲレタ(尊敬する兄)の提案していた政策を自身の名の下に実施せねばならなくなった。その度に妻であるシーダに弱音を吐く事となり、結果として世継ぎの問題は解決する事になる。

 

 

そうなると、その子供がアリティアを継ぐのか?或いはタリスを継ぐのか?で大いに悩む事となるのだが。

 

 

シーダの懐妊。それはアリティアの人々にとって喜ばしいものであり、また王族の伴侶たるゲレタの退路を完全に封じるものでもあった。

 

褥を重ね、とある事(・・・・)があったせいかも分からないが、エリスは無事にゲレタとの間に子を授かる事となる。

 

 

エリスとゲレタはリーザやマルスとシーダにタリス王とも話し合った上で、自分達の子をタリス王の養子として成人すれば出す事を選ぶ。

更にその時、ゲレタとエリスはタリスへと移住し、そこを終の場所とする事を決断。

 

「まだ働かせるつもりか?

…困ったものよな」

その話を受けたタリス王はその言葉とは裏腹に満面の笑顔であったとされる。

 

 

 

 

 

 

 

人の歴史は紡がれてゆく

汚泥の中であったとしても

 

 




これにて終幕となります。

あとはしばらくのんびりと外伝的な作品を書きつつ、本編を仕上げたいと考えています(予定は未定)


流石に連日投稿は自分でもやり過ぎた気がするので、今後のペースはかなり落ちます。
でも、クオリティが上がる気がしないのは、バグかな?(白目)
















雑兵の秘密


端末を変えた事により、端末のスペックが大幅に低下。変換機能が目を覆わんばかりのものとなった。

その端末ではアスク王国での活躍が出来ないので、意気消沈中。

好みはハッピーエンドよりもバッドエンドかビターエンド。


英雄とは独りであってはならない。
戦争とは陰惨で悲劇的で、救いのないものであるべき。

が信条。



恋愛描写はとても
とても苦手。

それこそ書かなくて済むなら、スルーしたいと思う程度には(オイコラ)

エリスルート完結記念の外伝

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