汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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外伝。

なお、ある程度のネタバレがあるのでヨロシク


想起 遥かなるもの

「なんだ、それは?」

 

アスク王国にて、自身の価値観全てを壊しかねない情報を叩きつけられたロプトウスは冷や汗を盛大に噴き出す事となった。

 

 

因みに依り代であるユリウス皇子の姿で召喚されたのだが、ある人物から出会い頭に『妙に腰の入った蹴り』を叩き込まれて悶絶したのは、彼の名誉(笑)の為に黙っておくとしよう。

 

 

 

 

なお、それを目撃したセリスとアレスであったが、余りの容赦の無さに一瞬だけ同情したのは此処だけの話。

 

 

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ユリウス…いや、此処ではロプトウスと統一させて貰おう。

ロプトウスを無表情で蹴り抜いたのは

 

 

「…ゲレタさんから聞いた。

大陸から逃げ出した悪い奴だって」

 

神竜族の女性ナギであった。

 

 

 

 

「いや、まぁそれは否定しないが。…面識あったか?」

 

「ない」

 

「ないのに、出会い頭に蹴りを叩き込まれたのか我は」

全く迷いのない凶行。にも関わらず、まるで頓着しない彼女の様子にロプトウスもドン引きである。

 

「バヌトゥも会ったなら容赦しなくて良い。

そう言ってた」

 

「…つまりお前はアカネイア大陸の者か」

ならば、蹴られたとしても

 

 

「いや、そんな訳ないだろう!」

相手の独特な空気に流されそうになったロプトウスだが、流石は腐っても暗黒神などと名乗ったロプトウス。

彼女の暴虐(お前が言うな)に立ち向かう。

 

まぁ

「ほう、これはまた懐かしい気配がすると思えば貴様だったか」

 

それもロプトウスの背後からそんな声がするまでの間であったが。

 

 

 

 

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暗黒竜

…いや、竜の守護者メディウスは心地の良い闇の中にいた。

 

 

元より、旧き世からの(ことわり)に従ったまでの事。勝ち負けに後悔はなかった。

 

寧ろ心残りがあるとすれば、己の不甲斐なさに尽きる。

 

 

相手は持ち得る全てを駆使して挑んできた。

にも関わらず、己や配下達は何処かに慢心があったのだろう。

 

それは間違いなく、あの戦いの場にいた同胞達ならば誰しもが思う事。

が、それは所詮敗者の戯言(たわごと)に過ぎない事も理解していた。

 

 

後から来た同胞達はヒトの確かな変化を喜び、満足げにヒトの世を誇った。

 

無駄に高い生命力を持つ己であっても、口内から頭部を貫かれてはどうしようもない。

 

 

が、それで良かった。

あれだけの戦いをしておきながら、のうのうと生き返った。等と認められない。

 

あの戦いで死んだ同胞達。

そして、覚悟を持って挑んできた勇者達。その全てを否定する事であったのだから。

 

 

本来ならば、己への呼び掛けなど考慮するにも値しない。…だが、気のせいでなければ

 

知っている気配があった。

しかも、同胞の恥と言える者の気配が。

 

 

なれば、それを始末するのも己の役目であると考え直す。

…それに

 

 

 

----

 

 

 

「我が名はメディウス。

竜の守護者メディウスよ。…ヒトよ、その強さを見せてみよ」

エクラは召喚のオーブから現れた人物に頭を抱えたくなった。

 

 

暗黒竜メディウス。

アカネイア大陸を一度ならず、数度も地獄に落とした人物。ギムレーやロプトウスよりも遥かに危険な存在。

 

…の筈なのだが、どうにもそう思えなかった。

名乗りからして、どうにもマルス王子達から聞いたそれと重ならない部分があったのも事実。

 

 

 

これでもエクラは召喚士として、多くの英雄を召喚。その者達と関わりを持っている。

勿論、全員と友好的な関係が築けているとは言いがたいが。

 

(マルス王子達にどう説明しようか?)

と現実逃避ぎみな思考に逸れたのだが

 

「ふむ。

済まぬとは思うが、先ずやらねばならぬ事がある。

それを片付けてから、詳しい話を聞こう」

とメディウスはその場を離れた。

 

 

(あれ?意外と話が分かる?)

エクラは少しだけ意外に思えた。

と言うのも、各大陸の大敵。とも言える者達の多くはその力を貸してくれるまでに、それなり以上色々と(・・・)あったのだから。

 

召喚早々好き勝手に動くのもまた英雄あるあるであるとエクラは思っている。…今までの経験から。

なので、今更とやかく言うつもりはなかった。

 

「アルフォンス達にどう言おう?」

それがエクラの悩みだった。

 

 

 

 

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「ほう、これはまた懐かしい気配がすると思えば貴様だったか」

 

「っ!」

背後から聞こえた言葉にロプトウスは思わず身体を震わせる。

何せそれは

 

「…まさか、ナーガ達より貴様を見る事になろうとはな」

それは

 

 

「…メディウス」

嘗て彼が生きていた大陸における絶対者の1人。

 

地竜の長でありながら、高い知性と理性。

そして絶対的な魔法に対する耐性を持つもの。

 

 

自身がユグドラルにて暗黒()と名乗ったのも、決して届きはしない高みにいる者への複雑な感情あっての事。

 

 

 

「…邪魔しないで欲しいのだけど」

決して会う事の無かった絶対者に凍りつくロプトウス。…だが、それを全く意にも介さない人物は口を開く。

 

 

----

 

 

 

「…ふむ、此方としては地竜族の恥知らずに言いたいこ事が山の様にあるのだが

…して、何をするつもりなのか?」

 

「気の済むまで、蹴る」

メディウスの問いかけにもまるで怯まないナギ。

 

「見たところ、お主も竜人族であろう。

これ(・・)を好ましく思わぬのは理解できるが」

 

(あに)さまから聞いた。

自分より強いものから逃げて、神を気取った闇のもの、と」

 

「一応、私も此処に召喚された。だから、私なりに納得したかった」

 

「…うむ」

ナギの冷ややかな言葉にもメディウスはまるで動じる事

ひとつ無く応じた。

 

 

 

「して、お主の兄とは?」

 

「『竜と在りし者』ゲレタ。

貴方にとって、この名前は忘れられないのではない?」

メディウスは彼女の言葉を目を丸くするのだった。

 

 

 

 

----

 

 

 

ナギにとって、ゲレタとは同じ様な境遇にありながら、その険しい道を歩き切った尊敬すべき存在だった。

 

勿論、色々な事を教えてくれた事。

家族の温もりを与えてくれた事。

 

 

それに比べて、彼女が出来た事と言えば些細な事。

幼い義妹(いもうと)を育て、エリナの誕生の手助けをしたに過ぎない。

 

アリティアを離れ、タリスに移った後、彼女はエリナの(叔母)として様々な事を共に学んだ。

ともすれば、義妹よりもエリナは覚えが良く、やんちゃだったものだ。

 

 

兄に付けられたパオラが(相手を)を見つけ、マケドニア女王として即位したマリアが新たに従者を付けるべきか聞いてきた時には義妹と共に反対した。

 

飛竜便や天馬便が普及しつつある中、彼女は彼女の家族を背に乗せて大陸各地を飛び回った。

 

 

 

兄が密かに『竜と在りし者』と呼ばれた時には、義妹やバヌトゥ達と笑ったものだ。

 

死に別れたとしても、私は兄を忘れない。

たとえ人々が兄を忘れたとしても。

 

 

 

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「…そうか。

あの者は天寿を全う出来たのだな」

ナギの話を静かに聞いていたメディウスは感慨深そうに、呟く。

 

そして改めて思うのだ。

 

「…佳い現実(ゆめ)を見せて貰ったものよ」

メディウスは目を細めて、ナギに語りかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あの、我帰ってはダメ?」

何やら良さげな空気になったと察したロプトウス。彼はこの場(死地)離れる(脱する)べく、なるべく刺激しない様に提案する。

 

 

こんな姿を見られてしまえば、暗黒神としての威厳もあったものではなかったが、今の彼にとっては些末事。

 

まぁ

 

「ダメ」

 

「帰らせると思うてか」

現実とは非情なものであるのが、常であるのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、その後ナギ(ゲレタ式蹴撃術師範)による指導をメディウスは受ける事になる。

 

練習相手?

 

そこに丁度良く、醜態を晒した者がいるじゃろ?

 

 

 

 

 

 

ロプトウスの絶叫がアスク王国に響き渡るまで、あと数分。

 

 

 

 

 

 




蹴りに慣れていないと、割りと加減が効かない。

それを放つのはメディウス。
そしてナギもメディウスもロプトウスにはさして良い感情を持っていない。





ロプトウス、震えるが良い。
お前の絶望はこれからだ(ニッコリ)

エリスルート完結記念の外伝

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