汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
寧ろこれが書きたかったが為のエリスルートまである。
「…なんだ此処は」
妻や娘、弟や妹。弟子や孫に看取られ漸く休めると思ったら、良く分からない所にいた。
「もうお腹いっぱいなのだが」
しかも妙な事に自分の姿は若い頃。
それこそ、策謀の限りを尽くしてアカネイア大陸の
「…何が起きるか解らんし、取り敢えず身体を動かしておくか」
常在戦場、などと言うつもりはない。が、最低限の力無くして交渉の場すら用意できないのも事実。
幸いにも、己の武器たる
一先ず、若い頃の感覚を取り戻すべく素振りならぬ素蹴りを始めた。
妹であるナギやチキが言うには、何らかの加護があるらしい。
…まぁ、ナギは言葉を濁していたが、十中八九ナギの加護だろうが。
----
マルスとシーダの子が産まれて、エリスと肌を合わせる機会は増えた。
リーザ様からの圧もあったし、マルスとシーダからの温かい目もあった。
それに何よりも、
政治的な事情もあったものだ。
マルスとシーダの子はアリティアに生きる。…となれば、タリスに世継ぎが居なくなる事であり、大恩あるタリス王やタリスの民にそれは憚られる。
そこで、タリスに縁の深い俺がタリス王の養子となり、妻との子を次期後継者とする。それは大陸会議において認められた。
が、俺が思う以上に『種族の壁』は大きかったらしい。
何度エリスと肌を合わせようとも、子供が出来る様子はなかったのだ。
肌を合わせる回数が増える毎に妻の表情は翳り、マルスやシーダも落胆を隠そうとする。
そんな中、妹として扱う事になったナギが提案してきた。
「…血の契約を交わすべき」
と
----
血の契約。
このアカネイア大陸において
だが、それは祝福であり、呪いでもある事を俺は知っている。
レヴィン…いや、フォルセティは『聖戦』などと言っていたが、ユグドラルにおける親子二代に渡る戦い。
あれを
元凶はアカネイアに来たガレとそれに便乗した
が、そのロプトウスの後始末としてナーガ達のした事が本当に正しかったのか?
と考えると、俺にはそうは思えないのだ。
ロプトウスを打倒し、闇の時代を終わらせるのは正しいのだろう。
が、ナーガ達は己の血とその血により振るう事の出来る圧倒的な力。神器を授けたのはどうかと思う。
結果、僅か100年程度でユグドラル大陸において血統主義とも言える
100年と言えば、精々二、三世代。多く見積もっても四世代程度の話の筈。
たったその程度の時の中で、十二聖戦士と謳われた者の血族は歪んだのだ。
ユグドラルにおける聖戦とは、親族同士や友人が敵となり、殺し合う凄惨極まるものだった。
そして、その中心には神器があり、戦いを終わらせた中心人物であるセリスとユリア。
ロプトウスの依り代となったグランベル帝国皇子ユリウス。
セリスとユリア、そしてユリウスは異父兄弟であった。
この陰惨極まる自体を知りながらも、生者のフリをして見守っていたフォルセティ。
自身は戦う事なく、軍師としてセリス達の側にあった。
おぞましいとは思わなかったのか?
気の毒と感じなかったのだろうか?
竜族に人間性を求めたところで無意味な話だろうが。
だからこそ、ゲレタは血の契約に良い考えを抱いていなかったのだ。
----
元々記憶のないナギ。
ともすれば、竜人族の中で感受性は高くなる。
…いや、
記憶がない。
それは即ち、己の存在証明すらも覚束ないもの。
故に己をどの様な形であれ、認める者に己の
それが善であれ、悪であれ、そんなものは些事にしかならない。
ヒトは独りで生きてゆけぬのだから。
そして、彼女は神竜族のものとしての力があった。
その者の魔力を見る事が出来たのだ。色として。
ゲレタの居た世界に魔法は存在する。
…あくまでも
故に文字通り異界の者であるゲレタに魔力などあろう筈がない。
それこそ、常に多大な
それで得られる
----
血とは証明である。
己がこの世界の一員である事の。
それは並大抵の方法では破られぬ
ナギはバヌトゥから聞いた。
それを破る事の出来るものはある、と。
それこそが『血の契約』。
しかし、当初ナギは乗り気ではなかった。
兄は遠き地における凄惨な未来を
それは未だに兄の血が滲む傷を抉る事になるだろう。そうナギは直感していたから。
----
血の契約を交わした代償として、兄の子供は全て女の子だった。
ナギもかなり神経を使ったのだが、そんな事をした事がある筈もない。
或いは完全な契約なれば、その様な事はなかったのだろうが。
それは家族として兄を愛し、慕っているナギには認めがたいものだった。
故に
エリナとエレナ。
エリスとナギの血を継ぐ
エリスとナギと
…まぁどうにも妹の影響からか、二人ともファザコンの感が強かったが。
----
「…そなたがゲレタか」
何やら尊大な態度の御仁が現れた。
…とは言え、この姿に見覚えはないが、数多く聞いている姿ではある。
「そういう貴殿はナーガ殿、でよろしいのかな?」
俺がアカネイアに紛れた理由を知っているかも知れない存在に、俺はそう返した。
なお、その数秒後
その空間に鈍い打撃音が響き渡る。
皆様が思う通り、此方のチキもあちら程ではありませんが、拗らせております。
ナギはそのストッパー役だったので、比較的(意味深)兄への思慕の情は軽め。
人基準なら?
………目そらし
エリスルート完結記念の外伝
-
いる
-
いらない
-
そろそろリンダルート書いて、どうぞ?
-
そんなことよりチキを出せ
-
その他