汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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新章

本日は本編も更新してます。




紅い若き竜と共に
共犯者


「こう申し上げるのは何ですが、流石に無茶が過ぎたのではありませんか?」

渋面を隠そうともせずに言葉をそのままぶつけてくる男。

 

「⋯だが、それでは手遅れになる。

お前とてそれは分かっているだろう。」

そう返した私の言葉に

 

「⋯それは、まぁ。

しかしですね。正論とは必ずしも万人に受け容れられるものではありません。だからこそ、言動には気を付けて支持されるだけの土台を作らねばならんのです。

勿論、俺はミシェイル様の決断を支持しますし、ルーメル、リュッケ両将軍への説得もしますが。」

不承不承頷くのはゲレタ。

父であるマケドニア王を武力で排し、新たなマケドニア王となった私の腹心とも言える人物。

 

 

 

 

----

 

 

 

ゲレタという男は元は山深くで辛うじて生きていた人物であり、偶々国内を巡察していたミシェイルが見つけた男だ。

 

服装はマケドニアでは見たことのないものであり、マケドニアの民なればその様な無謀をする筈もない。そんな愚かな選択をしていた人物。

 

自分を見た時の複雑そうな表情が妙に気に掛かり、つい声をかけたことが全ての始まりと言えたのだろう。

 

 

山奥で暮らすにしては色々な事を知っており、人の行動心理にも詳しかった。

 

(面白い)

当時の自分は興味本位で男、ゲレタを自分の従者として引き上げる事とした。

 

 

 

----

 

 

 

その男が今や己の事を下手をすれば、妹達よりも真剣に案じているというのだから、不思議なものだ。

 

「既に後戻りは出来ん。

それでも尚、着いてくるか?」

 

「率直に申し上げますが、陛下は不器用です。そしてミネルバ様は少々直情径行(いのしし)であり、マリア様はそんな御二人に心を痛めておいでです。

このままでは家族の繋がりが失われぬとも限りませぬ。何が出来るかは分かりませんが、陛下に拾われたこの命。せめて陛下の求めるものの為に使いたく思います。」

私の言葉にゲレタは恭しく頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前にその様な仰々しい言葉を向けられるのは好かぬ。

場を弁える事は出来る筈だ。貴族連中の様な言葉を使うのはなるべくやめろ。」

 

「⋯いや、そこは理解して頂かないと。

というか、ミシェイル様は俺の事をどう思っておられるので!?」

 

「⋯さあな。」

 

「それはあんまりではありませんかねぇ。」

 

 

この日、私はマケドニアの未来を背負うとの覚悟を改めて決めたのだ。

 

 

 

 

「それはそうと、ミネルバ達の事も任せるが構わんな?

そうか引き受けるか。流石だな」

 

「何も言ってませんが!?

家族間の話に何で俺が立ち入らないといけないので!?」

 

その場にミシェイルの楽しそうな声とゲレタの悲鳴が響いた。

 

 

 

----

 

 

 

と言う訳で、主君から無茶振りをされました。

⋯ミネルバ様苦手なんだよなぁ。あとパオラの奴いっっっっつも喧しいし。

 

んな事言ってるとその内、設立予定の白騎士団関係の決裁書類の山に埋めるぞ、コラ。

 

 

その点マリア様はミシェイル陛下とミネルバ様の仲を繋ごうと長年苦労されていたのか、こんな何処の馬の骨かも分からん男にも優しいんだよなぁ。

⋯これであの(・・)教会の教えを受けたというのだから、余程マケドニア担当の司祭が出来た人物なのか、或いはマリア様の人柄が良すぎるだけなのか?

 

 

うん、アカネイアの不思議だなこりゃ。

 

 

あとカチュアとエストは最初の頃こそ慌ててパオラを止めていたのに、そのうち止めなくなったのは何でや。

こちとらバリバリの事務方だぞ?

ペガサスナイト様の力に敵う訳ないやろがい!

 

 

⋯まぁ最悪決裁書類で泣かせてるけどね?

事務職の武器は書類って昔から言われているし?(言われてない)

 

 

というか、ミシェイル様が国王となった以上ミネルバ様逃さねぇからなぁ?

 

 

その時鍛錬中だったミネルバの背筋に冷たいものを感じたらしいが、因果関係は不明である。

 

 

 

----

 

 

 

「父上を何故!」

 

「先の国王陛下のやり方ではマケドニアは先細るだけ。

マケドニアは血によって賄っているのです。」

 

 

ミネルバ姉様のところにミシェイル兄様の腹心であるゲレタさん。あの人が来たとエストからの知らせを受けて私は駆けつける。

元々兄様と姉様の仲は悪くなかったと思っていたのだが、年々関係が悪くなってしまった。

顔を合わせば口論となる事もあった為に、兄様は信頼しているゲレタさんを姉様の元に向かわせる事が増えていく。

 

 

ゲレタさんは兄様の腹心らしく、良くマケドニア城の中で駆け回っているのを私の侍女達が見かけるという。

 

時に将軍。ある時は文官達。

また別の時には貴族とも話をしていると聞く。

 

それは良いんだけど、どうにも姉様や姉様の騎士である三姉妹の姉パオラとは合わないらしく

 

 

 

 

「だからと言って!」

 

「ミネルバ様の言わんとする事は分かります。

⋯ですが、この様な場でそれ以上を口になさいますな。

騎士パオラ。貴殿もミネルバ様の騎士なれば、この様な時にお諌めせずして何とする。」

 

「ですが。」

 

こうやって姉様が直ぐに熱くなる。

ゲレタさんは基本的に冷静に話をするから、余計に姉様が。パオラ達も立場的に姉様の味方だし

 

 

----

 

 

「この際はっきり申し上げて置きます。ミネルバ様、貴女が私以外から口喧しく言われないと思っておりましょうな。

私とて、仮にも主君の妹君にこの様な事は言いたくない。ですが、私が言わなくなって貴女は理解されましょうか?」

 

「⋯何の事だ。」

 

「貴女はマケドニアの者から見放されつつあるのですよ?

貴女にものを言わぬのは、もう無駄と見限られているだけの事。

騎士パオラ、騎士カチュア、騎士エスト。心して聞け。

貴殿らは確かにミネルバ様の騎士であろう。だが、近衛とも言える貴殿らは主君たるミネルバ様を時にはお諌めせねばならぬ事もあるのだが、理解しているのだろうな?」

 

その場が凍りつく。

 

 

「それ、は。」

口が上手く動かない。いつもならば、直ぐに反論出来たのに。

 

 

「ミシェイル様がマケドニアの王となりました。

今までの様な事はもう出来ぬのです。私も今まではミネルバ様やパオラ殿達が自分で気付くべきと思い、控えておりましたが。事此処に至ってはやむを得ませぬ。

本来なれば、この程度の事は自分達で気付いて欲しかったのですが。

マリア様に置かれましては、いつも御足労をおかけし申し訳ありませぬ。」

 

「ううん、それはいいよ。

今はさっきの言葉の意味を教えて?」

 

マリア様の言葉に

 

「⋯本来、王家の一員たる者が武の鍛錬のみに傾倒するのは褒められたものではありませぬ。

王族とは象徴であり、余程追い詰められでもしない限り武を振るう機会があってはならぬのです。無論、マケドニアのやり方として武を否定するつもりはありませんが、それこそパオラ殿達の役割でしょうな。

ミネルバ様が好まれぬ政務。それとて、臣下の役目となりましょう。ミシェイル様にとっての私のように。

されど、無知では何が正しいのか分かりますかな?」

 

そう口を開いた。

 

「兄上の信ずる貴殿の言なれば、それで良いのではないか?」

 

ミネルバ様の言葉には

 

「無論私とてミシェイル様の信を裏切るつもりはありませぬ。なれど、内容を理解しているのとしていないのでは色々と違いましょう。

戦場とてそうではありませぬか?偵察もなく戦うのと、偵察してから戦うのは同じと?」 

 

と返す。

 

「そう、だな。」

 

「考えたくもありませぬが、仮にミシェイル様がお倒れになればミネルバ様。貴女がマケドニアを導かねばなりませぬぞ。

何も知らぬでは許されぬのです。⋯もう少しお考え下さい。

そして、騎士パオラ」

 

「っ!」

 

いつもとはまるで違うゲレタさんの言葉に身が震える。

 

「それを一番近くでお支えするのが貴女方だ。

どうして主君の足らぬ所をお支えしようとしないのか?」

 

「⋯すみません。」

 

何も言えない。確かにゲレタさんは時折ミネルバ様や私達に政務の話をしていた。その度に私達は答える事が出来なかったけど。

 

「⋯⋯まぁ良いでしょう。

今後ミネルバ様や騎士パオラ達はしっかり学んで貰わねばならない。覚悟しておく事だ。私はかなり甘くしたが、他の者達がそこまで甘くしてくれるなどとは思わぬ様に。」

 

その翌日、ミネルバ様と私達はゲレタさんがマケドニアの大臣となった事を知る事となる。

 

 

 

 

 




マケドニア編。

マルチエンドの予定。そこまで長くはならない筈。

エリスルート完結記念の外伝

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  • そんなことよりチキを出せ
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