汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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前半と後半の温度差注意

捏造、独自設定注意(いつもの)


道を探して

「さて、ミネルバとその騎士に灸を据えたそうだな。」

 

「ええ。何処ぞの誰かさんが此方にぶん投げましたからね。

今は危機感を持って取り組んでいると聞きましたが。」

 

マケドニア王ミシェイルの自室で会話を交わすミシェイルとゲレタ。ミシェイルは普段通りだが、ゲレタは全身で不満を現していた。が、ミシェイルはこれを華麗にスルー。

 

流石は自由に空を駆ける竜騎士の面目躍如と言ったところか。

 

 

 

「⋯不満そうだな。」

 

「不満ですが?」

 

打てば響く様な軽妙なやり取り。ミシェイルはゲレタの言葉に少し目を丸くして 

 

 

「⋯⋯好みではなかった、そういう事か?」

 

「なんでそうなりやがりますかねぇ!?」

 

ミシェイル(主君)の言葉にも思わず声を荒げるゲレタ。

勿論、ミシェイルはまるで意にも介さないが。

 

 

 

 

「まぁ良く聞け。

此方の話が上手くまとまらなければ、マケドニアの次代はミネルバやマリアに託さねばならなくなるだろう。

正直なところ、不安しかない。

⋯だが、ゲレタ。お前がアレを公私共に支えるならば、ルーメルやリュッケもいる。文官達も文句は言うまい。

貴族共は⋯⋯まぁ好きにしろ。」

 

「即位したばかりの国王がする話ではないと思うのですが?」

 

ミシェイルの言葉に怪訝な表情でゲレタは応ずる。

 

 

「そもそも、ミシェイル様はまだお若い。

それに簡単には楽にさせませんよ、俺は。」

 

「⋯と言うことはやはりお前は今回の話が上手くいくとは思っていない、か。」

 

ゲレタの表情から真意を読み取る。

この辺りの駆け引きについては、目の前の男から口喧しく言われていた。

 

「まぁ無理でしょうな。曲がりなりにも、先代国王を廃したとなれば、好ましく思う方が難しいかと。」

 

あと陛下は家庭を顧みそうにない。とは口にしないゲレタ。

それに何よりも、今回の話の相手がレナである事を知った時点で

 

「アカンこれ。」 

 

と天を仰いだくらいだ。

 

 

 

「此方の話はさておき」

 

「仮にも国王の話をさておくのはどうかと。」

 

ミシェイルの言葉にゲレタはツッコむが

 

「正直なところ、マリアは良いとしてもミネルバが夫を持てるとは思えんのだ。」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯まぁ、それは。」

 

ゲレタは明言を避けたが、その態度と言葉は如実に彼の本心を示していると言えよう。

このやり取りを仮にミネルバが見れば、恐らく愛用のオートクレール片手に殴り込んで来る事間違いあるまい。⋯涙目で。

 

「あの男はミネルバの武才を好んでいたが、どうするつもりだったのやら。」

 

「いや、知りませんがな。」

 

「はっきり言うな。」

 

「下手に擁護すると嫌な予感がしますので。」

 

 

 

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(相変わらず勘の良い事だ)

ミシェイルは腹心の男の勘の良さを内心褒めつつも、舌打ちもしていた。

此処でゲレタが少しでも隙を見せれば、そのままなし崩し的にミネルバを押し付けるつもりだったのだから。

 

 

普段のやりとりについては、ゲレタからだけでなく侍女や文官達。或いはルーメルやリュッケからも聞いている。

ゲレタ以外は一様に

 

「あそこまでミネルバ様と口論出来るのは大したものかと。」

と口にしており、特にミネルバの侍女からは

 

「ミネルバ様に面と向かって悪い事を指摘出来る殿御がどれどけいるでしょうか。」

 

との高い評価をゲレタは受けている。

 

 

事実、ゲレタがミネルバ達に苦言を呈してからというもの、ミネルバ達は自身の足らない所をどうにかしようとしているそうだ。

 

 

ミシェイルとしては、それこそ目の前の男を頼って欲しかったが。

 

 

 

「いや、忙しいので。

お貴族様達の相手もしないといけませんし。」

 

「そのくらいお前ならばどうとても出来よう。」

 

「⋯わぁい、無茶振りだぁ。」

 

何やら言っているが、ミシェイルは知っている。

アカネイアに従う事で利益を得ていた貴族の数人が、目の前の男の手によって始末されている事を。

だからこそ、父を倒した時容易く王位を奪う事が出来たのだと。

 

 

 

----

 

 

「この際聞きたいが、ミネルバでは不足か?」

 

「とうとう直球を投げてきたよ。」

 

戦慄するゲレタなどお構いなしにミシェイルは問い詰める。

 

「確かに性格は少々アレだが、お前ならばさしたる問題にもなるまい。

アレは情の深い女だ。⋯⋯それともマリアの方が好みか?」

 

個人的にはその場合ミネルバがいき遅れるだろうから、あまり嬉しくはないが。

 

「⋯ミシェイル様。仮にも主君と仰ぐ方の妹に私が懸想する訳ありますまいに。」

 

「別に気にするつもりはないがな。⋯それともミネルバ付きの三姉妹のうちの誰かが良いのか?

その場合はミネルバを妻として貰い、その上でならば問題ないが」

 

「問題しかねぇですよ。国王が独り身なのに、その腹心がんな事やってたら、つけ入る隙にしかなりませんって。」

 

「ミネルバの夫となるなら、それくらいあっても構わんと思うが。」

 

「⋯仮にも妹なのにこの言い方よ。流石にどうかと思わなくもないのですが。」

 

ミシェイルの言葉にミネルバに少しだけ同情してしまうゲレタ。

 

「そうは言うがな。アレを伴侶として受け入れるのは相当変わり者だと思えるが。」

 

「ならそれを指摘すれば宜しかったのでは?」

 

ゲレタの言葉にミシェイルは

 

「アレが人の言葉を素直に受け入れると思うか?

お前以外はな。」

 

「⋯どうしよう。此処まで警告した事を後悔させてくるなんて思わんかった。」

 

ゲレタは戦慄する事となる。

 

 

 

 

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「⋯あの、これは?」

 

「⋯まさか。」

 

あの日から、ゲレタさんの私達に対する扱いが明確に変わりました。今日ゲレタさんが私達の元に持ち込んだのは。

 

「これからは貴殿らの仕事を肩代わりするつもりはない。

やる事は幾らでもあるからな。⋯だからせめて、自分達の事は自分でやってもらう。

一応やり方は教えているしな?」

 

新設される白騎士団についての書類だった。

 

「各方面への根回しは終わっている。

あとは予算や人事。運用するにあたって必要となる物資などに関する書類の作成だな。⋯提出期限は設けていないが、遅くなりすぎると満額回答は不可能とだけは言っておく。」

 

ゲレタさんはそう言い残し、足早に去っていった。

 

 

「⋯⋯⋯」

 

残されたのは大量の書類の山。

 

「⋯とにかくとりかかろう。」

 

ミネルバ様の疲れた声に私達は頷いた。

なお、ゲレタさんに提出した時

 

「⋯これを通したら、マケドニアの改革が頓挫するわ。」

 

と突き返されて、ミネルバ様とパオラお姉ちゃんがショックを受ける事になる。

 

 

 

 

----

 

 

 

 

「これは、ゲレタ殿。」

 

調練場に姿を見せたゲレタ。その姿を見たリュッケは声をかける。

 

「どうですか?」

 

「戦費を増やして貰いましたからな。

兵達の士気も高く、日々の鍛錬にも皆力が入っております。ルーメル将軍もドラゴンナイト達の士気が目に見えて上がったとも。」

 

「このマケドニアにおいては、軍事力の確保は大事ですからね。無論、少しずつでも農地を増やさねばなりませんが。その安全確保のためにも必要と考えまして。」

 

「ありがたい事です。」

 

 

----

 

 

ミシェイルがマケドニア王に即位し、ミシェイルにより大臣に引き上げられたゲレタ。

彼が真っ先に取り掛かったのはマケドニアの主要産業である傭兵業からの脱却だった。

 

常に命を危険に晒し、にも関わらず口の悪い者達は「戦場のハイエナ」と呼ぶ。

更に武器代なども満足に支払われない事もあり、決して傭兵業は好ましい仕事(もの)とゲレタには思えなかった。

 

 

「マケドニアの犠牲で詰まらぬ意地の張り合いをされるなど、到底看過出来るものではない。

⋯そして、その様な仕事を斡旋し私腹を肥やす者も。」

 

ゲレタはミシェイルに対して恭順しなかった貴族。アカネイアに取り込まれていた者達を粛清。彼等の財産を国庫へ入れる事で各方面への予算を増額させた。

その代償にアカネイアとの関係が悪化したが、現アカネイア王はマケドニアの食糧事情を考え、マケドニアに対してアクションを起こすことはなかった。

 

 

マケドニアの食糧はアカネイアが握っている以上、今は反発出来ていてもそのうち根をあげる他にないとの判断からだった。

更に言えば、マケドニアに懲罰をあたえるとして与えるとなるとアカネイア騎士団を動かさねばならない。そうなると当然功績を挙げた者には褒美を与えねばならず、それはアカネイア内の派閥争いを誘発しかねなかった。

 

グルニアを動かす事も考えられたが、それもグルニアが満足するだけの褒美を出すには難しいとも。

 

 

 

ゲレタからすれば、グルニアの黒騎士団やアリティアの騎士団(テンプルナイツ)ならいざ知らず、アカネイアの腰の引けた戦力ならば脅威足り得ない。その判断からだった。

 

「そもそも、他国に食糧を握られてはどうしようもない。

一生アカネイアの忠実な狗として過ごすならば問題あるまいが」

 

マケドニアの未来を案ずるが故の行動とゲレタのそれをミシェイルは良しとした。

 

 

----

 

 

 

「兵達や我等は心ひとつ、ミシェイル陛下に命を預けております。陛下の腹心たるゲレタ殿にも。

必要とあれば、何なりと命じて頂きたく。」

 

「陛下はまだお若く、先王である御父上を討たねばならなかった。それに反発する者も多かろうとは思うが、陛下はマケドニアの明日を案じた上で事を起こされた。

それだけは理解して貰えると陛下も心安らかにマケドニアを導けよう。

将軍の権限で解決出来ぬ事があれば、直ぐ知らせて欲しい。」

 

兵達の調練を見やりつつ、リュッケとゲレタは会話を交わす。

リュッケは目の前の人物が凍える様な冷たい炎を内に宿す事を知っている。

 

アカネイアに従う事を良しとしていたマケドニアの貴族や有力者達。

当然ながら、その者達はアカネイアに従い続ける事を良しとしていた先王の協力な支援者だった。

 

 

ほんの一握りの者達の豊かな生活の為に、多くのマケドニアの若者達がその命を危険に晒さねばならない。それが先王時代のマケドニア。

 

その流れを断ち切ろうとすれば、血に塗れる事を躊躇ってはならない。

 

 

リュッケはミシェイルが前王を弑した時、ゲレタと共に前王とミシェイルを廃嫡しようと企んでいた貴族達を始末して回っていた。

 

ミネルバ王女が武に偏っていたのは、先王が彼女を次期マケドニア王とし、己はその裏で実権を握るつもりだった為。

マリア王女はアカネイアへの手土産とする話すらも、その中で話し合われ、ミネルバ王女配下の三名もまたそれに沿った扱いをさせるつもりだったと。

 

 

「陛下が真にマケドニアを思い、政をなさるならば私とてミシェイル殿下の側でマケドニアの為に働こう。

が、殿下を弑する企みまでなさるならば陛下やその支持者達も尽く始末するしかあるまい。」

 

その苛烈とも思えるミシェイルへの忠誠。それはリュッケやルーメルが信頼するに足るものと見たのである。

 

 

「頼りにさせて頂きましょう。ゲレタ殿。」

 

「ミネルバ様達にも言う事は言った。幸いミネルバ様達も真剣に受け止められておられる。

今しばらく待って貰えると助かる、将軍。」

 

「勿論ですよ。」

 

ゲレタの言葉にリュッケは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋯ドルーア、か。

はてさてどうしたものか。」

 

マケドニア王ミシェイルの元に使者が訪れた。

それはドルーア帝国。

 

嘗て大陸を暗黒に落としたとされる暗黒竜メディウスが興した古の国。それが現代に蘇った。

 

 

マケドニアは選択を迫られる。

 

 

 

 




ミネルバ達が政治などに明るくなかった事に対する私なりの解釈。


エリスルート完結記念の外伝

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