汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
完全なお遊び回なので適当に読み飛ばしても大丈夫です
チキを保護する事になった俺とリンダ
あれ以来、俺達の顔色を窺う様になった
「…お嬢」
「な、なに?」
「言いたい事があるならはっきり口にしな
俺達は心の中まで分からんのだから。話をしないと始まらないぞ?」
「そうよ、チキ
確かに少しゲレタは怖いけど」
「おいこら」
「…でもちゃんと貴女の事を考えてくれているでしょう?」
「う、うん」
解せぬ
…確かにちとばかり怖いのかも知れないが、別にそこまで怖がられる事したか?
などとこの男は宣っているが、既にあれから2人程チキを狙ってきた竜人族を返り討ちにしている
曰く
「少し掴めた気がする」
との事
単独で
しかもチキから見てそこまで魔力を持っていない(長命種特有のガバガバ判定+
そりゃあ、ビビる
そんな訳でチキは少しばかりゲレタに苦手意識を持っていたのである
ゲレタの自業自得と言って良いだろう
しかし、それでもチキはゲレタが自分を守る為に戦っている事もまた理解していた
物腰の柔らかいリンダとは少しずつだが、仲良くなれた
…ならゲレタとも
そうまだ精神的に幼い部分のある彼女が考えたとしても不思議ではないだろう
…それに
ポンッ
「気にすんな。子供受けする性格じゃねぇのは自覚してる」
そうチキの頭の上に手を乗せて笑うのだ
チキはこのゲレタの笑顔が好きになっていた
そして、今日彼女は自身の願いを口にする事となる
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「…あの
もしも
…もしも、ゲレタとリンダが良かったら
…………お父さんとお母さんって呼んでも良い?」
チキは親の温もりをほとんど知らずに育ってきた少女だ
親であるナーガの死後、ナーガの従者であるバヌトゥが神殿から連れ出してくれるまでの間、彼女は他者との関わりもその温もりも知らなかった
バヌトゥと過ごして彼女は他者の温もりや優しさを知る事となる
…だが、たとえナーガの死からどれだけ経ったとしても、バヌトゥは自身がナーガの従者である事に誇りを持っていた
その為チキに優しく接するものの、彼女が本当に欲しかったものを用意する事が出来なかったと言えるだろう
しかし、この2人は
ゲレタとリンダは
出会ったばかりのチキを慰める為にとは言え、抱擁している
その温もりはチキにとって欲しかったもの
手放したくない
もう一度抱きしめて欲しい
そう、思ったのだ
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顔を俯かせておきながら、はっきりと分かるチキの真っ赤な顔
ゲレタとリンダは視線でお互いの意思を確認すると
「リンダ、子供が出来たぞ
驚いたもんだ」
「そうね
…でも強くて可愛らしい女の子よ?」
そう笑ってチキを2人とも抱きしめた
「…お父さん、お母さん
これからよろしくお願いします」
2人に抱きしめられた私はそう笑ったの
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「そんな事があったのですね!
そのお2人は凄いと思います」
「ええ、本当に」
興奮するルキナに微笑むチキ
「お父さん
…ゲレタと言うのだけど、本当に強かったわ
竜人族相手でも倒し切れるくらいには」
「…あの、チキさん?」
「何かしら?」
チキの言葉にルキナは耳を疑った
聞き間違えか、失礼だとは思うが彼女の記憶が少々美化されているのではないか?と
「今の話だと
…その、チキさんのお父様がおひとりで竜人族を倒していた
そう聞こえるのですが」
ルキナの尊敬する父クロムならばファルシオン片手にそれくらいは
…それ、くらいは
この時、ルキナの脳裏にはンンの母親であるノノにファルシオンを向ける父クロムの姿があった
…しかし、何度彼女が考えてもノノの尻尾アタックで弾き飛ばされる光景しか思い浮かばない
それがノノに咥えられる父の姿と慌てふためく母の姿
その為、ルキナは意を決して口を開いた
「…その人は
本当に人間ですか?」
失礼とは思っている
…しかし、あの『クロム軍最強夫婦』の1人であるノノを倒せる者がいる様には思えなかったのだ
ルキナの言葉に目を丸くするチキ
そして
「…そうね。貴女が想像する竜人族は彼女しかいないものね」
くすくすと楽しそうに
そして
「ルキナ
大丈夫。私のお父さんとノノ相手に単独で勝てるとは思わないわ
…当時の竜人族の事よ」
おかしそうに笑うのだ
「…あ、安心しました
もしそうならば、マルス王の時代はどんな人外魔境かと」
恐らくかの人物が彼女の言葉に聞けば引き攣った笑みを浮かべる事間違いない事を口にするルキナ
…そこへ
「…でも、案外的外れでもないのが不愉快ですね」
1人の美しい銀色の髪をした女性が現れた
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「…あの、どちら様でしょうか?
私はルキナと言います」
その女性はルキナの言葉に更に不快そうな顔をして
「…そう
貴女があの英雄王の次代なのね
…私はギムレー」
「唯の穀潰しよ」
「…貴様ぁ」
女性、ギムレーは自己紹介をするがチキの言葉に青筋を浮かべる
「…そこまで怒るなら、また
しかし、チキの言葉に
「……遠慮しておこう
やっと傷口が癒えると言うのに、態々傷口を広げる愚か者はおらん」
そう心底不本意そうに下を向く
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「…あの、そちらのギムレーさんはいったい」
ルキナが疑問を口にするのも無理はないだろう
何せ此処は神竜の巫女であるチキのいる聖域
そこに入るにはヴァルム帝国や巫女の護衛を務めるサイリなどの許可が必要である筈
「一応そちらの大陸にあるペレジアの邪教に信仰されている邪竜になるわ
もっとも今となっては何もする気が起きないらしいけど」
「我の苦労も知らずに好き勝手騒ぐ連中など信徒でもないわ」
「はぁ」
苛立っているギムレーを見てもルキナには何の感慨も浮かばない
寧ろ
(大変ですね)
と少し彼女を労いたいとすら思うくらい
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「…しかし先程から不愉快な話をしていたわね」
「マルス王の話、でしょうか?」
何故か話に入る事となったギムレーだが、チキはさもどうでも良さそうにしていた事でルキナも緊張感が薄れてしまった
その為なし崩し的にギムレーも話に参加している
「別に英雄王の事はどうでもいい
負けたのはメディウスだし」
(それで良いのでしょうか?)
ルキナはそう思ってしまう
イーリス王国に伝わる記録によると、今生きている多くの竜人族や竜は地竜族だとされている
そして先程からの口ぶりでは
ならば思う事の一つくらいありそうなものだが
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「それよりも貴様の父親だ!
未だに納得できん、何だ奴は!」
「…何だと言われても
お父さんはお父さんだと思うけど」
「アレが人間?ふざけるな!
竜人族をああも容易く狩れる奴が人間な訳がないだろうが!」
「…そう言えば貴女、お父さんのアレを見て雲隠れする事にしたんだったわね」
チキは少し懐かしそうに呟く
「当たり前だ!あんな手軽に我等の同胞を殺せる奴がいる所に居られる訳がないだろうが!」
ギムレーは見た目が良いだけに、その形相は迫力のあるものだった
「我の先達について行ってみれば、その先達が人間によりあっさりと殺されたのだぞ!
逃げたくならぬ訳がなかろうが!」
「…あの、竜人族は私達よりも能力が高いと聞きましたが?」
ルキナはつい口を挟んでしまう
「まぁ知らぬ者からすればそうでしょうね
確かルキナとか言いましたか?」
「?
…はい」
ルキナはギムレーに見つめられて
「仮に貴様の目の前で騎士が突然全身から血を噴き出したとしよう
…貴様はそれでも逃げずに抗うか?」
そう問われ、ルキナの目が驚きで見開かれた
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…2000年経った今でも鮮明に思い出せる
我は当時ドルーア帝国の皇帝をしていた地竜族の王、メディウスに従うまだまだ若い竜人族だった
…あの頃の我は血の気が多くてなぁ、グラ王国を滅ぼせ
との命令に嬉々として従った
しかし、王国へと向かう途中命令が来た
ナーガの娘を捕らえよ
と
…因みにそこにいるのがナーガの娘だ
そして我は部隊を率いる者に率いられ、その任に就いた
その時までは人間がいたところで何の障害にもならぬ
そう思っていたわ
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「…ううむ、まだいまいち感覚が掴めないな」
『ナメルナ、ムシケラゴトキガ!』
「虫ケラ、ねぇ
…じゃあ、弱者の戦い方ってのを竜に教えてやります、か!」
最初こそ優勢であった
我は人間如きに複数でかかるなぞ我等の恥と思っていたし、それは戦っている者もそう思っていた
…しかし
『…ナ、ナニヲシタ!』
「何って、そりゃあ
生憎正々堂々とか、そんなものを俺に求められても困るんだよなぁ
…運がなかったと思って諦めな?」
脚に深い切り傷を負わされ、翼の根元にも深い傷をつけられ
片目を潰され、そして
『ニ、ニンゲンゴトキガ!』
ブレスを吐こうと口を開いた瞬間
「はい、お疲れ」
そのブレスが口の中で弾けた
目の前の脅威を跡形もなく消し去ろうとしたブレス
それが自分に牙を剥いた訳だ
『ギ、キサマァ』
それでも生きておったのだが
「流石に火力が足らんか
…リンダ!」
そう男が他の者の名前を呼んだ次の瞬間、巨体は光に呑み込まれた
我は恐ろしくなった
圧倒的強者である己が死ぬなど想像した事もなかったからな
そして逃げ出した
ナーガの娘もメディウスもどうでも良かった
死にたくない
ただそう思って、な
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「で、それをやったのがこれの父親という事だ
私は今でもあの時の事を偶に夢に見る」
「…お父さんの夢を見るなんて
………ギムレー、代わりなさい」
「無理に決まっているでしょう!?」
ルキナは驚き、そして歓喜した
聞けばその人はどこかの王族でも何でもなかったと言うではないか
…なら私にもそれだけの強さが身につくかもしれない
ルキナはそう決意し、その後ギムレーにその時の事をしつこく聞き回る事となる
大陸一の騎士姫 ルキナ
彼女は後にそう呼ばれる事となる
と言う訳で絶望の未来回避ルートでした
なお、ギムレーの姿はルフレ(女)となっています
しばらく更新が停止すると思いますのでご了承下さい