汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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何故か(強調)!チキルートが始まりそうで困惑している。


感想であった様に並行世界のチキの思念が収束しているとでも言うのか!?



作者はこんらん、している!


闇の中の(あなた)

ゲレタと出会ったチキが最初に感じたのは、自分と同じ。であった。

 

 

ナーガの娘である彼女の潜在能力は非常に高く、仮にメディウスと同じ年月を生き、似たような経験をしたならばメディウスと拮抗するだろう。

そうメディウスに思わせる大器である。

 

その感受性も決して侮れるものではないのだが、如何せん経験が圧倒的に不足していた。

 

 

だが、それでも彼女に流れるナーガの血のなせる業か、ゲレタの本質を朧げながらに察する事が出来た。

 

 

 

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ゲレタがマケドニアの発展に必死になるのは、自身の居場所を求めての事。

これはゲレタが意識すらしていない本能的な衝動(もの)

 

 

人は孤独の中で生きるには余りに精神(こころ)が脆く、その孤独を本当の意味で理解するには、同じ孤独を感じる必要があった。

 

 

ミシェイル達にとって、マケドニアとは故郷。更に多少関係がギクシャクしていようとも、家族もいる。

特にミネルバとマリア。パオラ達三姉妹。彼女達は仲が良く、それがゲレタの中にある孤独を際立たせていた。

 

 

当人の知らぬ心の深い部分で、その孤独に苦しんでいたのだ。

 

 

 

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ある世界では山賊として

別の世界では軍師として、その世界に居場所を求めたゲレタ。

 

 

ミシェイルはゲレタを受け入れた。

ゲレタの孤独への恐怖は薄れた。⋯かに見えた。

 

しかし、そうはならない。

その在り方を否定する者がいたのだから。

 

 

 

 

ミネルバ達にその様な意図がないのはゲレタも解っている。

だが、特にパオラ達三姉妹の存在は嫌でもゲレタの中にある孤独を鮮明にしてしまった。

 

 

 

山賊として生きた時には優しき魔導士(リンダ)

軍師として生きた時には強く優しい姫(エリス)

 

それぞれ壊れそうになったゲレタの精神(こころ)を守った。

 

 

 

ゲレタは強い人間ではない。

強く見せかける事は上手く、自身の心すら偽れる程に器用だが、いつまでも過去に囚われ続ける弱い人間。

 

 

それでもゲレタが壊れないのは、マケドニアを豊かにする(恩人の悲願を果たす)事を己の存在意義と定義しているから。

 

 

 

 

しかしそれは荒れ狂う海を闇の中、がむしゃらに藻掻いている様なもの。

守るべきものはあろう。支えるべきものもあろう。

 

だが、その身にかかる負担(不安)を分かち合える者はなく、届かぬ理想(ひかり)へ手を伸ばし続けるものでしかない。

 

 

 

自分とは違う様で同じ。

 

それがゲレタを見てチキが抱いた思いだった。

 

 

 

 

 

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竜人族(自分達)とヒトの共存。

 

僅か数年程度ではあるが、外で暮らしたチキにとってそれはとても難しいものだと思えた。

 

 

でも、此処(マケドニア)は違う。

 

 

土を(なら)し、山を削るのは竜人族。

均された大地に種を植え、食事を作り建物を造るヒト。

 

 

そして事あるごとに笑い合い、共に食卓を囲む。

 

 

 

 

 

チキもまたモーゼスから

 

 

「姫よ。お主の力の制御の一助ともなろう。

ゲレタ、姫も作業に加えてはどうか?」

 

とすすめられ

 

「⋯まぁ移住してきた竜人族から竜石は確かに貰っているから、出来なくはないが。⋯⋯どうする?」

 

とゲレタからは自身の意思を訊ねられた。

 

 

 

 

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チキにとって、自分の意思を問われた事はないに等しい。

あってバヌトゥと共に神殿から出た後の生活の中であるが、外の世界の知識のない彼女だ。

 

選択肢を与えられたとて、本当の意味で『自分の意思での選択』となろう筈もない。

 

 

だが、今は違う。

 

モーゼスもゲレタも自分の意思の確認しようとしているのが他者との関わりの少ない自分にも分かる。

 

 

⋯だから

 

「⋯⋯もう少し、詳しく教えて欲しい。」

 

そう口に出来たのだ。

 

 

 

 

 

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ゲレタとチキの辿々しい会話をモーゼスは薄目で眺めていた。

 

これで良いのだ、と。

 

 

 

あの愚か者(ガトー)は姫の意思をまるで汲む事は無かった。そうでなくば、生まれてより千年は経つ姫。その情緒があそこまで幼いままの筈はない。

バヌトゥも万死に値するところだが、メディウスから聞くに姫を神殿から連れ出したのはバヌトゥらしい。

 

ならば、バヌトゥは少なくとも心を痛めてはいたのだろう。

 

 

力に呑み込まれた者の末路。それは竜人族なればこそ理解していなければならない。

 

 

己の確たる意思も持たぬ者は必ず誰かに良いように利用される。⋯まぁアレならば、無知な姫のままで良いと思っていた可能性はあり得る。

情けない事であり、恥ずべき事でもあるがそう思わざるを得ないだろう。

 

 

嘗て勇者と言われた男は確かにメディウスを打倒した。

が、その者を動かしたであろうアレは終ぞ我等の前に立ち塞がる事はなかった。

 

 

所詮、己よりも弱い者や何も知らぬ者相手ならば良く吠えられても、己と互角の相手には戦おうともせぬ臆病者なのだ。

 

 

ナーガに姫を託された意味すら解せぬ愚者。

ガーネフが言うには『大賢者』、『白き賢者』などと持て囃されているらしいが、お笑い種だろう。

 

 

「⋯失礼とは思いますが、それ皮肉ではないのですか?

少なくとも、ガーネフ殿や姫の事を考えるととてもではありませんが『他者を導ける』器とは思えないのですけども。」

 

その通りだと思う。

 

 

 

慌てながらも姫と話をしているかの者の姿を見ると、我等も変わらねばならぬ時が来たのだろう。そう感じた。

 

 

 

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チキはゲレタと話し合い、先ず力の制御を確実とする為にマケドニアとドルーアの国境にある山へ向かった。

 

勿論、モーゼスも付いてきているが基本口も手も出さない。

 

 

『じゃあ、やるね?』

 

チキはモーゼスから渡された火竜石で竜となり、その爪で木々をなぎ倒そうとした。

 

「いやいやいや。木は資源だから、一本ずつ丁寧に引き抜いてくれないか!?」

 

ゲレタは慌ててチキに制止の声をかけた。

 

『⋯一本ずつ?』

 

「そう。

んで、上空(うえ)で待機している者達にそれを運ばせるから。」

 

『⋯⋯⋯やってみる。』

 

チキは恐る恐る、木を引き抜こうと力を少し込めた。

 

 

 

なお力加減を間違えて、木を折ってしまい人型に戻るとゲレタに泣きついている。

 

 

 

 

 

 

 

「長生きはするものよな。

まさかこの様な光景が見られるとは。」

 

 

 

竜とヒトによる新たな未来(みち)が拓かれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリスルート完結記念の外伝

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  • そろそろリンダルート書いて、どうぞ?
  • そんなことよりチキを出せ
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