汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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チキとの一日はマケドニアに衝撃を与えた


波紋

「⋯それは、どういう事だ。」

 

ゲレタの家に娘が泊まった。

その報はミシェイルやゲレタ。モーゼスも予想しない速さでマケドニアの朝野を駆け巡る。

 

 

 

国王の懐刀として大臣職に就いたゲレタはマケドニアの有力者や兵士達にその存在は知られていた。

 

 

国王ミシェイルから信頼され、現在マケドニア国内で軍民を巻き込んだ形で行なわれている『マケドニア国土改造計画』。その発案者にして、ドルーアとの繋がりも深い。

特にゲレタの側にはドルーアからマケドニア国内に派遣された竜人族達の取りまとめ役であるモーゼス。彼が居る事もあり、実質竜人族すらも動かせるマケドニアでは唯一の存在と見なされていた。

 

 

故にゲレタと誼を通じたいと思う有力者も多い。しかし、相手はマケドニアの大臣として日々激務に追われるゲレタである。

その職務を妨げる事はマケドニアの発展を遅らせる事にも繋がりかねない。

 

 

ミシェイル陛下が先代国王を弑し、王位を簒奪したその日。ゲレタが何をしたのか?それを知らぬ者は最早マケドニアの有力者の中には居ない。

更にミネルバ王女とマリア王女の教育係もしているとも聞く。ミネルバ王女の騎士三名にもそれなりの教育をしているとさえ。

 

 

そんな人物に自身の身内を差し出して、大丈夫なのか?

という疑念が有力者の中にはあったと言える。

 

 

 

何せ王女であろうと、言うべき事は言うのがかの人物だ。

仮に身内を送り込めたとして、自分達は今までの様に安穏としていられるだろうか?

 

無理だろう。王女相手でも容赦のない人物なのだから。

 

 

 

その為、ゲレタに対して積極的に動こうとする有力者はいなかったのである。

 

 

有能さは認めるし、協力を惜しむつもりもない。⋯ないのだが、自分達の思惑をあっさり超えていく人物と対等に付き合える自信は彼等にはなかった。

 

 

 

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と尻込みする者達とは逆に、ゲレタを注視する者達もいた。

 

 

正確にはゲレタの女系関係だろうが。

 

 

 

間違いなく当代きっての出世頭であるゲレタ。

些か話しにくい雰囲気はあるものの、侍女や従者にも高圧的に接する事はない。

 

 

意外と女性からは注目されていたりする。

特にミネルバ王女と堅物として知られているパオラ。二人がゲレタに食ってかかる場面に遭遇した者はそれなりに居た。

 

そしてゲレタは冷静に、淡々と言葉を紡ぎ二人を納得させる。

 

 

 

 

特にミネルバとは

ミネルバ王女の手綱を握れるのは大臣殿をおいて他にない。

 

と一部では言われる程。

 

 

美少女揃いではあるが、マリア以外男勝りな部分が多いので女性視点では捗るらしい。

何がとは言わないが。

 

 

 

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マケドニアの女性にとって、ミネルバの在り方はある種の希望でもあった。

 

 

女性は騎竜に認められない。

 

 

そう思われてきたマケドニア。だが、ミネルバは竜騎士となっている。

 

天馬騎士達がその姿に憧れるのも無理はないだろう。

 

 

 

 

まぁ実際には気性のよい騎竜を選び、それをミネルバに宛てがったのだが。先代国王の命で。

そもそも、竜騎士という職種(もの)自体がまだ成立して百年程度であり、まだまだマケドニアでも完全に理解している訳ではない。

 

 

少し後にチキ(生態系の頂点)やメディウス等が飛竜と意思疎通出来る事が判明し、ゲレタに対する期待値が更に高まる事となるのだが、その話は別の機会に。

 

 

 

そのミネルバがこれからどうなるのか?

下世話な話となるが、ミネルバはどの様な殿方と結ばれるのか?

と言うのは注目を集めていた。

 

 

しかし、一向に男の姿は見えず先代国王もミネルバの伴侶を探す動きを見せない。

 

誠に不謹慎な話となるが、『ミネルバ王女は相手を得られないのか?』という本人が聞けば眉間に皺を寄せる様な心配も密かにされてしまう程。

 

 

そんな中で現れたのがミネルバの兄ミシェイルに近侍していたゲレタだった。

 

ミシェイルとミネルバの不仲はマケドニアでも知られており、二人の妹であるマリアはそれに心を痛めていたのも。

マケドニアの次代を担う者が険悪とあっては王家に心穏やかに仕えられる筈もなく、誰もが戦々恐々としていた。

 

 

だがそれを何とか取り持ったのがゲレタであり、態度こそ頑なではあったが、ミネルバも少しずつ険が取れて穏やかな面も見せ始める。

 

 

そんな中で、ゲレタが家に娘を連れ込んだ。との話が出てきたのだから、ミネルバ達に伝えないと。と焦る者もいたのだ。

 

 

 

 

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「でもゲレタさんだよ?

ミシェイル兄様やマケドニアの為にならない事をするとは思えないよ。」

 

何故か心を乱していたミネルバを落ち着かせたのは妹のひと言だった。

 

「⋯それは、そうだな。」

 

「多分私達が騒いでると知ったら、「そんな事より貴女方にはすべき事があるでしょうに。」って言われないかなぁ?」

 

マリアの言葉にそう言われる光景が目に浮かぶ。

 

 

 

 

 

 

「はぁ、私がですか?

そんな事に気を取られる位には余裕があるのですね?

では、私の方で処理していた書類(もの)もこれからはお任せしましょう。

⋯ああ、文官達にも今後はミネルバ様達の書類の期限も厳守させる様に伝えておきましょうか。」

 

 

⋯言われるだろうな。

 

 

ミネルバは気を持ち直すと、今己がすべき事に取り掛かった。

 

 

 

 

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「これ美味しいね!」

 

「そうか。しっかり食べろよ。」

 

 

起床したチキはゲレタと共に食事を摂っていた。

まぁ食事と言っても粗末なもの。猪肉を焼いて少し塩で味を付けたものと野菜の炒め物。

 

ゲレタ自身食事にはあまり拘泥しない人物であり、味もそこまで気にかける事はない。

 

 

本来ならば肉のみだったのだが、チキがいるとなれば多少考えて食事を用意した。

 

 

柄にも無い事であり、それは未練。

 

 

 

マケドニアの発展の為や、アカネイアを叩き潰す為にはあらゆるものを総動員しなければならない。

だが、一方でゲレタは自身の為に知識を使う気は全くない。

 

 

(未だに郷愁の念からは逃れられんか。我ながら女々しい事だ。)

 

エリスルート完結記念の外伝

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