汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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前話とセットにしたかった(敗北)


変われぬもの

アカネイアはマケドニアがアカネイアへの礼を欠いた事に不満を覚えた。

 

 

しかし、アカネイアからマケドニアに使者を送る事はない。

あくまでも、マケドニアが自ら使者を出すのが道理なのだから。

 

 

マケドニアに仕込んだ毒。つまり、マケドニアの竜騎士や天馬騎士を消耗させ、マケドニアの国力を削る為の者達。

埋伏の毒とも言える者達からの連絡は途絶え、マケドニアの傭兵(生贄)も全く姿を見せない。

 

 

これに対してアカネイア王や宮廷の者達は違和感や気分を害してはいたが、一部のアカネイア貴族にとっては非常に好ましからざるものだった。

 

 

マケドニアの傭兵はアカネイア貴族にとって使い勝手の良い捨て駒であり、苛政に耐えかねた住民が決起したり暴徒となったりした場合最前線で戦う事を求められた。

 

 

 

 

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その地を治める者にとって不都合なのは領民からの信頼を失う事。⋯⋯では決してない。

領民かは侮られない事だ。

 

要するに領主(じぶん)の言うことに従う者。それこそが彼等にとっての領民(良民)である。

 

 

 

己の戦力を動かし、反乱を鎮圧する。一見すれば正しい事に見えるが、ことアカネイアではそうはならない。

仮に領主の兵を動かし鎮圧したとなれば、抑えつけられた民の怒りは領主やその兵に向けられるのだから。

 

真っ当な統治をすれば良いだけなのだが、彼等にとって領民とは「搾れるだけ搾る」のが当たり前であり、領民に寄り添う治世など『領民を甘やかし、つけ上がらせる』ものでしかない。

ではどうするか?

 

傭兵を雇入れ、彼等にその鎮圧をさせるのだ。

特にアカネイアの事情など全く知らないマケドニアの傭兵は領主にとって都合が良かった。

何せ物理的に離れたマケドニアの者が此方の事情を知る筈もなく、また説明してやる義理もない。

 

マケドニアの傭兵にとっては依頼を受けたから制圧するだけ。

しかし、領民からすれば領主の手先となり自分達を苦しめる存在に映る。

 

領主がマケドニアの傭兵の事を彼等が去ってから悪しざまに謗れば、その怒りは少なからずマケドニアの傭兵へ向く。

そして、何も知らぬマケドニアの者達へ領民は怒りを覚える。

 

更に質の悪い武器を傭兵達に使わせる事で、武器職人にとっては粗悪品を処分させ、マケドニアの傭兵の万が一を誘発させる。

 

 

領主にとっては、非常に都合の良い存在だったと言える。

 

 

 

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一部の領主にとって、マケドニアの傭兵とは免罪符であった。

反乱が起きても、マケドニアの傭兵を使って鎮圧すれば良い。と言う

 

 

そしてアカネイアとマケドニアの力関係が拒む事すら許さなかった。⋯今までならば

 

 

本来ならば統治方法の見直しや子飼いの者達による鎮圧のやり方を考えねばならないところ。

だが、彼等は余りにも『甘え過ぎた』。頼り過ぎたと言い換えても良い。

 

 

故にマケドニアが傭兵の派遣を停止してから、アカネイア各地で領民による反乱や賊の活動が活発化。

領主達はその鎮圧に乗り出す事となる。

 

 

マケドニアの傭兵ならば、余計なところにまで手を出さない。武器を使えば使う程に利益が減るのだから当然だ。

ところが、領民の兵となると勘違いする者も現れる。⋯無用な殺生や略奪。そして、武器職人は傭兵に売りつけられた品質の悪い武器(粗悪品)の始末に困る事となる。

 

 

現代の様に高度な機械化や規格が画一化されていない大陸。武器は全て職人の手により生み出される。

鍛冶とは様々な要素が複雑に絡み合うもの。火加減、素材の質、槌の打ち方。それらを全く同じとするのは不可能であり、武器の価格が統一されているとなれば尚の事。

 

失敗作が出来るのは当然だ。しかし、武器とは命を預けるもの。傭兵は勿論、騎士や兵士ですら生きる為に良い武器を求める。同じ鉄の剣としても、その出来は個々に異なるとなれば、選ばねばならない。

しかし、武器を作る側としては出来が悪かろうと売らねばならぬ。材料費は掛かっているのだ。

 

 

溶かして再利用するとしても、製作にかけた時間は戻らない。

武器職人にとってもまたマケドニアの傭兵は必要な存在と言えたのだ。粗悪品を定価で買わせられる存在として。

 

 

 

それは彼等にとって罪ではない。

それが既に当たり前(じょうしき)となっていたのだから。

 

 

 

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この様にアカネイアとマケドニア。両者は単なる食糧だけに留まらず、関係の深い間柄だった。

 

対等では決してない。搾取する側とされる側としての話だが。

 

 

 

しかし、多くの貴族達はそれを言い出せない。

仮にそれが露見すれば、自身の立場が危うくなるのだから。

 

だが、アカネイアがマケドニアに敗北してもアカネイアは揺らいでしまう。

 

 

 

今回のマケドニアに対する軍事行動とて、その正当性は怪しいものだ。

本来ならば、その正当性を各国に対して示し、納得させた上で兵を求めるのが筋。

 

にも関わらず、アカネイアは派兵の根拠を明らかとしないまま協力を求めた。

 

結果どの国もアカネイアの行動に対して呼応しようとしない。

 

 

 

アカネイアに国是として従うべきとされているアリティア。しかしながら、アリティアはグラと言う不安材料がある。

グルニアもまたその国土を維持する為には、抑止力となる戦力が必要。

オレルアンは比較的動かせる戦力が整っていたが、それでもサムスーフに巣食う凶悪な山賊集団への備えは必要だ。

そもそも狼騎士団のハーディン。彼は今回のマケドニアへの攻撃に必要性を感じていない。

 

余剰戦力としてはやはりアカネイアが一番なのだが、アカネイアは自国の影響力保持の為に動かしたくない。

 

 

これでは纏まるものも纏まる筈もない。

 

 

 

 

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アカネイアは大きくなり過ぎた。 

国力に見合わぬ影響力を持ってしまったが為に、アカネイアを変える事すら叶わない。

 

⋯まぁ、今のアカネイアが崩壊する規模の打撃を受けたならば変わる事も可能だろうが。

 

 

そもそも大陸各地にある国家の半数近くはアカネイアの中興の祖たるカルタスに近い者達が建国している。⋯アリティアとマケドニアは異なるし、グラも違うが。

 

そしてアリティアも勇者アンリの遺訓によりアカネイアに対して従う姿勢を貫いている。

 

 

 

なのに、僅か百年程でこの有り様だ。

 

 

 

 

マケドニアはアカネイアとの関係は絶った。

アカネイアとの関係がマケドニアの発展を妨げるものだったから。

 

 

 

「足元がぐらついているのに、戦争しようとする奴は大抵碌な奴ではない。」

 

自国の民の不満を逸らす為に戦争したとして、それで本当に民が幸せになるだろうか?

過剰な搾取を強行すれば、自国民は満足するかも知れない。

 

が、必ず犠牲となる者が出てこよう。

 

 

 

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必要な犠牲と言う者もいよう。 

であれば、そう宣う者が率先して犠牲となるべきではないか?

 

 

しかし、歴史を紐解けばその様な大言壮語を吐く者程、死から逃げるもの。

 

 

彼等は本心ではこう言っているのだ。

 

『自分の為にお前達は死ね』と。 

 

 

当然その様な事を口にすれば、間違いなく命は無い。

だから隠す。

 

 

 

賢しらにアンリを導いたとされるガトー。

彼も本質的にはヒトと変わらない。

 

何せ、チキを導くという責任から逃げ、彼女の理性を保つ為のものを知りながら、それを集められなかった。

 

挙句、それをマルス達に丸投げ。口だけは達者だが、ガーネフの件も加味すれば、人格者とは到底言えぬ人物だろう。

 

 

 

背負うものが多くなれば身動きが取れず

大きくなれば、全てに目を届かせる事は叶わない。

 

 

だから、見ないふりをする。

己は責務を果たしたと心の中で逃げ道を作る。

 

 

そうして少しずつ

だが、確実にナニカが狂い、やがて腐り落ちる。

 

 

 

最早手を施せぬと理解しながら、何かを言い訳にして逃げ続ける。 

 

 

現状維持。

それは水平ではなく、緩やかに下降してゆく。

 

 

楽な方へと流されるのもまたヒトなのだから。

 

 

 

 

 

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人を育てる。

 

それは難しい事だ。いつの世も教育者とは大きな責任を負わねばならない。

特に教育というものが定義されていない社会ならば尚更。

 

 

ガトーはミロアとガーネフを育てた。

だが、それは二人の資質によるところが大きく、人として当たり前に持つ闇。ガーネフはそれが他者より大きかったのかは定かでないが、それを理由にガトーは自身の後継者をミロアと定めた。

 

 

ゲレタはミネルバやマリア。パオラにカチュア、エストを多少鍛えはした。

が、ゲレタにはそれが恐ろしくて堪らなかった。

 

 

 

教えると容易く言うが、それは教える側の思想をも押し付ける事にもなりかねない。

 

物事は球体ではない。

となれば、見る位置によって見え方は変わる。

 

 

アカネイアにとっての正義がマケドニアの正義で無いように

メディウスの怒りがアカネイアにとっての災いであるように

 

 

だからこそ、ゲレタはチキの幼さが恐ろしい。

 

 

ミネルバ達はある程度の自分を持っている。その基準が正しいかはさておき、彼女達なりの物差しはあるのだ。

しかし、チキにはそれがない。

だからこそ、ゲレタはチキの情緒や意思を尊重し、出来る限り力に依存しないやり方を教えるつもりだ。

 

 

もしかしたら、ガトーはチキを思うがままに操りたいが為に敢えてこうしたのではないか?

とすら思えてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わらねばならぬものがあり、変わってはならぬものもある。

 

生きる事は選択し続ける事。

 

 

 

ヒトは正しさを求め、足掻き続ける。

 

 

 

 




何かを変える事は恐ろしい事だと思うのです。

ましてや、真っ白とも言えるチキならば尚更。



何故かチキがメインヒロインとなりつつあるので、多分私は苦悩する事になりますねぇ(ため息)

日常回も挟みつつのんびり書いていこう。
何せ、原作キャラがほぼ役に立たないルートなので。










なんでやねん

エリスルート完結記念の外伝

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