汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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チキとの生活だけを書くのは違う気がする。

しかし、そうなると筆が進まなくなる不思議。


成長(いぶき)

「おお!また大きくなっておるわ!」

 

「本当か!

⋯確かにそうだ!明日はまた大きくなっているのか、楽しみだ。」

 

マケドニアの国土改造計画。

それはマケドニア、ドルーア間の山岳を竜人族による圧倒的なパワーで切り拓き、そこに両国を結ぶ街道を整備。更にそこで出た土砂を平地の少ないマケドニア国内に輸送。耕作面積を増やすという何とも考えた者の正気を疑うもの。

 

 

 

しかし、ドルーア皇帝メディウスや魔竜族の長であるモーゼス等の全面的な協力により、その無茶苦茶な計画は順調に進みつつあった。

 

 

耕作面積が拡がった事により、マケドニアの食糧事情が改善する。⋯という事はなかった。

何せマケドニア国内における農業従事者。その数は非常に少なかったのだから。

 

 

マケドニアの大臣であるゲレタ。彼は農業従事者を増やす為に先ず『ものを育てる楽しさと難しさ』を理解して貰う事が一番である。そう考えた。

 

そこで比較的育てるのが容易な作物を見繕い、その根を用意し、それを希望者に配り育てる事を提案。

 

 

 

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再生栽培と呼ばれる手法だ。

 

ネギなどの一部の野菜で、根元から根っこを残し土に植える事でその野菜は再び成長する。と言ったやり方だ。(超意訳)

 

 

これは種から育てるよりも時間を短縮でき、更にその成長を目で追う事が出来る。その為、土壌や水といった環境面さえ用意すれば失敗するリスクも小さい。

 

ゲレタはこれを入り口として、ドルーアの竜人族達にも農業に親しんで貰おうと企んだのである。

 

 

 

勿論、ゲレタが養育する事となったチキにも育てさせているし、興味深そうに見ていたモーゼス。彼にもゲレタは声をかけた。

 

 

作物を育てる事は情操教育の一環として有効であり、また命について考える切っ掛けとしても機能するとゲレタは考えているのだから。

 

 

 

ゲレタも元の世界では家庭菜園とまではいかないものの、青ネギやニラ程度ならば育てていた。

 

 

食費の節約にもなるし、場所もそこまで取らない。その上再生栽培となるとある程度の回数までは繰り返す事が出来るのだから。

 

水でやる事も出来るらしいが、ゲレタ的には根腐れが心配なので土で育てる事を選んでいる。

 

 

 

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この手法はマケドニアの民よりも、ドルーアの竜人族達に大きな衝撃を与える事となった。

 

特に戦う事ばかりを考えていた者からすれば、大地の息吹とも言える作物の成長。それは当たり前の事でありながら自分達がそれを意識した事すらない事に愕然とする。

 

 

 

そして、その新しい経験にのめり込む者が出てきた。

彼等はマケドニア国内改造計画に協力を申し出ると、自分達で食べるものを育てようと決意。

 

マケドニアやドルーアの各地で様々な作物(もの)を育てる事となる。

 

 

芽が出れば

作物が育てば喜ぶ彼等の姿は、マケドニアの民からしても微笑ましいものであり、親しみを感じるものでもあった。

 

こうしてマケドニアとドルーアの交流は民間レベルでも進む事となり、結果マケドニアとドルーア。両国による経済圏は強固なものとなってゆく。

 

 

 

勿論

 

 

「ゲレタ!芽が出たよ!」

 

「良かったな、チキ。

でもこれからが大変だぞ?」

 

「頑張る!いっぱい教えて。」

 

それは彼女も例外ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲレタよ。これはまだ伸びるのか?」

 

「ですねぇ。まだまだ伸びますよ、多分。」

 

「⋯ふむ、こうして日々を過ごすのも悪くはないな。」

 

「⋯やってみます?少し農地は用意出来ますが。」

 

「⋯⋯⋯⋯考えておくとしよう。」

 

 

 

マケドニアにあるモーゼスの家。

その裏庭に若芽が芽を出すのはもう少し後となる。

 

 

 

 

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「人を増やしてはどうかと思うが?」

 

「⋯その為のノルダ、ですか。

理解はしますが、拙速に過ぎる気はしますね。」

 

「うむ?

何か懸念があると見えるの。」

 

チキの養育に勤しむゲレタではあったが、ゲレタにはマケドニアの大臣としての職務もある。

流石に初日の様に四六時中一緒に居られる筈もない。

 

今はガーネフと共に今後の事を話し合っている。

 

 

ガーネフは優秀な魔道士。だが、国家相手の戦争ならばともかくとして、今回の様な戦い方は経験した事がなかった。

⋯まぁ、それはゲレタ(発案者)も同じではあるのだが。

 

ただし、ゲレタには此方の世界の知識と共に、元の世界の歴史の知識があり、それを組み合わせてこの図面を描いたといえる。

 

 

「正直なところとして、現体制側と交易でもしない限り、マケドニアやドルーアにある通貨は無用となりますね。

率直に言えば、同じ重量の土や布の方が遥かに価値があるかと。」

 

「大陸で使用されている通貨。これを否定するなどと狂人の発想であろうよ。」

 

「アカネイアの体制から脱するのであれば、アカネイアの定めたあらゆるものを再度我等に必要なのか吟味せねばならぬ。私はそう考えます。」

 

「⋯うむ。全てを否定するのではないのか?」

 

ガーネフの問いに

 

「本音を言えば全て否定したいところではありますね。

しかし、それは時間をかけてやらねばならぬとも思います。これからの我等の基準となるのですから。

とは言え、通貨についてはアカネイアが発行の権限を持つ以上、我等も独自の通貨を造るべきでしょう。」

 

 

何せアカネイアは財政が苦しくなれば、最悪通貨を新たに製造すれば良いのだ。

それにより貨幣価値が下がったとしても、造る側であるならば問題となりにくい。

 

それによって振り回される者達からすれば、勘弁して欲しいだろうが。

 

 

事実として、アカネイア国内の徴税。調べたところ、これも一定ではないらしい。

 

 

 

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そもそもアカネイアの税制とは基本的に各地の貴族や領主により決められるものらしく、その中から王国へ上納する形。

 

つまり、民による大規模な反乱。それこそ王国軍を動かす様な規模でなければ、貴族や領主の胸先三寸で収まる話らしい。

 

 

それ故に酷い所ならば、七公三民などという所もあるそうだ。更に臨時の徴税や労役も課されるのも珍しくないだとか。

 

マケドニアの場合はそもそも稼いだものは一度王国へ渡し、それを王国内で分配する形。各家庭などで余った物はそれぞれ使えるのが救いだろうか。

⋯まぁ健全ではないだろうが、やむを得ないところもあるのでとやかく言えなかったりする。

 

 

将来的には勿論、それを改善しなくてはならない。

 

 

 

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マケドニアとドルーアによる経済圏の確立。

まぁ要するにアカネイア側と貿易せずに生きていけるだけの体制作りとも言い換えられるだろうが、その為には人が必須となる。

 

マケドニアの人口を減らす要因であった傭兵業は既に停止しており、長い目で見れば人口減少に歯止めをかけたと言えなくもないだろう。

 

が、問題はドルーア。

 

 

ドルーアの人口の大半は竜人族であり、彼等は長命種。だが、彼等が子孫を残さなければやがてドルーアという国家は行き詰まる。

勿論、竜人族は長い時を生きる以上それこそ自分や目の前のガーネフが生きている間は問題にならないだろう。

 

が、将来必ず起きる問題ならば、それを放置するのはどうかとも思う。

 

 

確かにガーネフの言うようにそれも手段のひとつだろう。

原資として、両国にある通貨を使えばそれなりの数の奴隷を確保する事は可能。

 

 

が、問題もある。

 

彼等はマケドニアやドルーアの民ではなく、アカネイアを中心とした体制の中で生きてきた者達。

当然竜人族に対する差別意識も無意識レベルで刷り込まれている可能性は否定出来ない。

 

 

その辺の切り替えが出来るのであれば杞憂となろうが、それで揉め事を起こされては堪らない。

折角マケドニアの民と竜人族は上手くやっていると言うのに、そこに余計なノイズを入れるのは正直不安。

 

 

大陸の常識で言えば、寧ろマケドニアが異端。誤った歴史観によってつくられたものだとしても。

更にアカネイアの考えに染まっていれば、マケドニアの者を下に見る可能性も考えられる。

 

 

時期尚早ではないだろうか?

 

 

 

 

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ガーネフはゲレタとこれからについて話し合い、今後両国が何を目指すのか?についてお互いの認識を共有出来たと思っている。

 

しかし

 

 

(考える事が壮大よな。

アカネイアを倒すのではなく、自ら崩れ落ちて貰おうなどと。)

 

 

その発想には驚いた。

その上

 

 

「山に詳しい人物を探さねばなりませんね。

果実でも生命力の強いものがあれば、民が育てれば面白い事にもなりましょう。」

 

と個人レベルでも作物を育てる事を推奨していた。

兵站という意味ならば理解できなくも無いが、そういった面から解決を図ろうとするのは少なくとも自分にはなかった。

 

とは言えやはり

 

 

面白い。

そう思えるから、始末が悪い。

そうガーネフは苦笑した。

 

 

 

 




なお、雑兵は学生時代に自宅の庭にビワの種を植えた事がある。



約十年後、その苗を譲った方の家に行ったのですが
普通に見事な木に育っていました(白目)


植える時には後の事を考えておきましょう(1敗)

エリスルート完結記念の外伝

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