汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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譲れないものがある。
守るべきものがある。


だが、本当に譲れないのか?
守らねばならぬものか?






責務(果たすべきもの)

「このままでは我等の立場が危うい。

陛下に言上しようにも廷臣どもが邪魔をしおる。」

 

「マケドニアが我等を敵視しているのは明らか。

にも関わらず、兵を出せぬなどと。」

 

アカネイアでは将軍や軍の上の立場の者達は頻りにマケドニア征伐を声高に主張していた。

彼等は「マケドニアを放置するはアカネイアの権威を傷付ける事に等しい。」とどうにかしてマケドニア征伐への流れを作りたいと画策している。

 

 

が、実際に前線に立たされる兵士や騎士はそれに容易く同調しない。

 

 

 

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「騒がしくなったものだ。

正直兵達にとって、この騒ぎは良くない。」

 

「⋯確かにな。弓兵隊(うち)は騎士や従騎士で固めているから士気の低下は抑えられてはいるが、アストリア。お前のところはそうもいかないか。」

 

「⋯ああ。歩兵隊はそこまでの規模がない。

必要となれば、都度補充する事になるだろうが。」

 

「マケドニアの非礼は許すべきでは無いのかも知れませんが、だからと兵を出すのはどうかと私も思う。」

 

アカネイア騎士団弓兵隊隊長ジョルジュは友人である歩兵隊を預かるアストリア。そしてアストリアの恋人であり、アカネイア初の女性聖騎士であるミディアとパレス近くの街の酒場で話をしていた。

 

本来ならば場所を選ぶ話なのだが、この酒場はアカネイア騎士や兵士が多く利用する所であり、話を洩らさない事に定評がある。

 

 

「不安定な船の上でマケドニアの飛行兵を相手にしろ、か。

無茶を言ってくれる。」

 

弓兵隊の練度は高い。そうジョルジュも自負しているが、それはあくまでも平地での話。船上での戦闘、しかもマケドニア騎士相手の戦闘など最初から考慮した訓練はしていなかった。

最悪これから訓練をするとしても、先ずは戦闘をする船が必要であろう。

 

勿論、その様な特殊な状況を想定した訓練の予算が通る筈もない。

つまり、マケドニア征伐が実現すればぶっつけ本番で戦わねばならないと言う事。

 

 

「船上での戦闘か。経験した事はあるが、はっきり言って陸地でのそれとはまるで違う。」

 

傭兵時代に護衛として海賊と戦った経験のあるアストリアも苦い顔。

 

「仮にそれが実現してしまえば、軍馬も共に動かさなければならないでしょう?

軍馬はかなり繊細なのに、耐えられるのか不安ね。」

 

ミディアは騎士としての懸念を口にする。

 

 

 

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現代において、人と最も関わりの深い馬となると競走馬となるだろうか。

 

小柄で体重も比較的軽い騎手を乗せて走るサラブレッド。彼等の体重は個々によって違うものの、平均すると500kgはあるとされる。

 

 

となれば鎧を着込んで武器を携えた騎士を乗せる軍馬がそれより軽いとは思い難い。

仮に500kgと想定しても、その軍馬を数頭積めた程度では船の数が膨大なものとなろう。

 

何せ曲がりなりにも国家相手の戦争となるのだから。

 

馬に負担のあまり掛からない様に輸送する。

 

 

現代で言えば、馬運車が相当するのだろう。

 

馬運車は慎重な運転を要求される。当然だ、馬という生き物は本来環境の変化に強い生物ではないのだから。

 

 

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余談となるが、本邦における競走馬のトレーニングセンター。

その西の拠点である滋賀県栗東(りっとう)市にある通称『栗東トレセン』に作者は昔出入りしていた事がある。

 

 

午前と午後に馬運車がトレセンへと入ってくる時間帯には、工事関係者は基本的に詰め所で待機を命じられている。

 

曰く

作業の物音でも競走馬によっては過度な刺激となり、怪我のもとにもなりかねない。との事。

 

 

輸送疲れという言葉もあるそうで、競走馬によっては馬運車での移動すら負担になる事もあるらしい。

 

 

 

戦場での運用を前提とされる軍馬と競走馬を同一視するのは些か乱暴な気もしなくはないが、全く違うとは言い切れないと私は考える。

 

戦国期には種子島の轟音に騎馬が暴れたともあるらしいので的外れではないと思いたいところ。

 

 

 

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「⋯アストリア、率直に聞くが大軍をマケドニアまで送れるだけの船は造れると思うか?」

 

ジョルジュとて、アストリアが詳しくない事は理解している。だが、ジョルジュは弓兵隊の隊長として部下を持つ身。些細な情報であったとしても無いよりはマシなのだ。

 

「⋯⋯アカネイアの船が何処で造られているのかは知らない。が、軍馬も含めた大軍を送り込むだけの船を用意するなら、それだけの職人や資材が要るだろうな。」

 

アストリアが契約を終えて船から降りる時、既に職人達が船のあちこちを見ていたのは覚えている。

商人が荷を輸送する船でもそれなりの数の職人がいたのだ。それよりも規模が大きくなるだろう軍船ともなれば、予想はつかない。

 

「アストリア。マケドニアの竜騎士と戦った事はあるの?」

 

ミディアの問いかけに

 

「いや、無いな。マケドニアの傭兵を雇うなら、他の傭兵まで雇う理由はないだろう。」

 

とアストリアは答えた。

 

 

そもそもマケドニアの竜騎士を傭兵として雇う事は決して容易な事ではない。

金銭面でも他の傭兵に比べれば高額。⋯それでも割に合うとは言えない所にマケドニアの立場の悪さが見え隠れしているとも言えるだろうが。

 

 

「マケドニア征伐など夢物語で良いのだが、どうにも一部の者は功を稼ぎたいと聞くが?」

 

「確かに騎士の中には居るわ。

⋯⋯と言っても貴族の縁者だけど。」

 

ジョルジュの言葉にミディアは不快感を隠せない様子で口にした。

 

 

アカネイア騎士団に在籍する者の多くは貴族やその縁者であり、兵士は臨時徴用で揃えるのが常。傭兵でありながら、アカネイアの歩兵隊の隊長を任せられたアストリアは異例と言える。

 

 

その為、規模に反してその戦力は高いと言えず、質の良い武器や鎧などで何とか補っている状態だった。

 

元傭兵のアストリアはともかくとして、ジョルジュもミディアも有力な貴族の縁者。

はっきり言えば、ジョルジュはそうでないがミディアは聖騎士としての能力について不足していると言わざるを得ない。

 

 

アカネイア騎士という大陸において悪い意味で稀な組織に属する為に、彼女はそれを理解出来ない。

ジョルジュや恋人のアストリアも『アカネイアの中ではマトモ』である彼女を肯定する事はあっても、否定する事は憚られた。

 

 

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アカネイア騎士団はカルタスが頼りとしていたオードウィンがグルニアで建国した後に変化したと言って良い。

 

オードウィンがいた頃はドルーアに抗う為に実力主義でなければならなかったし、カルタスもそれを是とした。

が、結果としてその者達はカルタスではなくオードウィンを選び辺境を鎮定すべく派遣されたオードウィンに従い、そのまま建国したグルニアの一員となる。

 

 

その失敗からアカネイア騎士団は能力よりも、決して裏切らない関係の者⋯縁故主義とも言えるものに傾倒していった。

幸いにも、グルニア建国後アカネイアが大規模な兵を出す事態にはなっておらず、今日(こんにち)に至る。

 

元々受勲(騎士への任命)とは至上の名誉とされていたが、今のアカネイアでは国王自らがする事ではなくなっていた。当然騎士としての自覚に欠ける者が多く、その責の重さを理解している者は数える程。

 

 

 

他国の騎士団とアカネイアの騎士団では残念な事に練度、精神面共に圧倒的に後者が劣るのだが、それをアカネイアが知る事はない。

 

 

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「無理ですわ、モロドフ様。」

 

「⋯⋯やはりそうか。」

 

アリティアのコルネリウス王は念の為にマケドニア征伐に参加した時、アリティアにどれだけの負担がかかるのか?

その現実を以てアカネイアの要請を断る事を考えている。

 

 

そこでアリティア国内の商人に声をかけ、船大工の棟梁に話を聞く事とした。

 

話を聞いた棟梁は少し考え込み、それは無理であると口にする。

 

 

「確かに船は造れます。ですが、一隻ずつ造っていますので時間がかかるでしょう。

その上、軍馬まで運ぶとなると今までの船とはまた違ったものになるかと。」

 

「やはり時間がかかると?」

 

モロドフも予想はしていた答えが返ってくるだけ。

 

 

 

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海上戦力の整備

 

それは確かに各国との結び付きを強め、結果として交易を増やし国力を強化出来る話ではあるのだろう。

 

 

だが、島国でも無い限りその優先度は決して高いものではなかった。

 

何せ国家間の戦闘⋯戦争については考慮されていたが、陸上で戦力を整備するのに比べて圧倒的に海上戦力の整備にかかる負担が大きかったのだから。

 

勿論、海賊討伐などにおいては戦力を出すのは当然ではあるが、いつ使うのかすら定かではない海上戦力を維持し続けるのは負担が大きく、また士気の低下をも招きかねないもの。

 

 

 

何せ動かすだけでも陸上と違い人員や物資が余計にかかる。

余程国に余裕がなければ、その負担は馬鹿にならない。

 

しかも、海上を航行する時に海面下にある岩礁などにより船が損傷する可能性もある。

これが商人達の商船ならば、ほぼ決まった航路を使うので滅多に起きないが。万一起きたとしても、彼等の航路は常に陸地から然程に離れていないところ。

 

浸水が酷くなる前に最寄りの陸地へ退避出来るのだ。

 

 

 

船と言うものは航路を定め、それを沿えるだけの航海技術があって初めて意味を持つ。

 

川の渡し船とて、対岸へと渡らねば意味はないだろう。

 

川ですら上流からの流れが存在し、それに上手く対処せねば転覆の恐れがある。

それが海となれば、その難易度は跳ね上がろう。

 

 

マケドニアまで向かうと軽く考えている者もいるが、正確な方角も怪しく大海ともなれば指標すらない。

仮に小島があったとしても、その小島とマケドニアの位置関係が分からねば航海にも支障が出よう。

 

その上、軍馬を輸送するとなると通常より多くの食料と水が必要。更に軍馬を繋げておく空間や糞尿の処理も避けては通れない。

 

 

商人達としては交易の為に多く船を走らせたいし、それが汚されるのは到底受け入れがたい事。

 

 

モロドフもある程度予想していた答えが返ってきたので、それをコルネリウス王に伝える事とした。

 

 

 

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「⋯何処に行ったのだ。」

 

大賢者ガトーは必死で神竜の娘の行方を追っている。

神竜族のチェイニーにも捜索の手伝いを頼み、大きな街を巡った。⋯だが、娘の目撃情報はまるで無い。

 

何せ力の制御が未熟な者なのだ。仮に力の制御を誤れば惨事を引き起こしかねない。

 

 

本来ならば、嘗ての同族たる竜人族を頼るところではあるのだろう。⋯しかし、ガトーはそもそも神竜の娘を預かりながら人知れず封印したままにする。という事情を知らぬ竜人族からすれば顔を顰める事をしていた。

 

その上、ファルシオン(ナーガの最後の遺産)を持ち出し、アンリに与えた。

 

 

其れ等の事実を知れば、竜人族の中にもガトーを敵視する者が現れる可能性はあり得る。

勿論遅れを取るつもりなどないが、出来る限り揉め(面倒)事は避けねばならない。

 

「急がねばならぬ。」

 

ガトーの脳裏に少し落ち着くべきでは?との考えがよぎったが、今はそれどころではないと思い直し、ガトーは足を進める。

 

 

世界を守らねば

そう強く思い。

 

 

 

 

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「人を出す?何を言われるのだ、ミロア殿。」

 

「マケドニアとの戦?アカネイアの勝手な都合に我等を巻き込み、弟子達を死地に送るつもりか!」

 

カダインに戻ったミロアはアカネイアでの話をしたのだが、勿論賛同される事はなかった。

ミロアとしても予想出来た事ではある。

 

「私としても、カダインから人を出す理由はないと思っている。」

 

ミロアの言葉に冷静を皆取り戻し

 

「それでカダインの立場が悪くなると言うのならば、いっそアカネイアとの関係を見直すべきではないか?」

 

カダインの今後について話し合いを始めた。

 

 

 

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「確かにアカネイアは強大だろう。

が、そこまでカダインがアカネイアに寄る理由はないのではないか?」

 

ミロアへの言葉に何人かは賛同する様に頷く。

 

「此処はあくまでも魔法の技術を身につけ、磨く場所。

確かに外部へ出た者もいるが、アカネイアで地位を欲する必要があるとは私には思えん。」

 

「⋯確かにそうかも知れないが。」

 

実のところ、魔法技術の過ぎた拡大を防ぐというものは既に空論となっていた。

カダインから教会へと所属を変えたボア。今となっては所在も分からないガーネフなど実力を付けてカダインから離れる選択をした者もいるのだ。

 

高位の僧侶やシスターは魔法を行使出来る。しかし、必ずカダインを通す訳では無い。カダインから出た高位の魔道士ならば魔法の指導が出来るのだから。

 

勿論、杖の扱いもまた同様。

 

 

しかし、魔法については師弟制となっている。

これは魔法を教えた者として取るべき最低限の責任を果たす為のものであり、カダインにおいて主流となっている考えだ。

 

 

彼等が知る由もない事だが、事実教会で活躍していた某女性は教会のあまりの腐敗ぶりに絶望。

孤児を育てる過程において、精神を病み結果その技術を暗殺という最悪の形で継承させる事となる。

 

 

まぁ、並行世界での話だが

 

 

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「アカネイアや教会が戦争を望むなら好きにさせれば良いだろう。我等まで付き合う義理も理由もない。

それとも何か?貴殿は自分の娘(リンダ)をその様な事に巻き込めるとでも?」

 

「⋯⋯そう、だな。

確かにそうだ。」

 

ミロアにとって娘のリンダは弟子でもある。

カダインで弟子を持つ者達にとって、弟子とは家族にも等しい存在と見る者は少なくない。

自らにとっての大切な存在を喪えるだけの覚悟をもってアカネイアの蛮行(・・)に付き合えるか?そう問われて彼は頷けない。

 

「この際アカネイアと距離を取るべきだ。

マケドニアがアカネイアと関係を絶った事は我等にとって関係のない話。アカネイアがマケドニアから敵意を持たれるだけの事を今までしてきた。それだけではないか?」

 

「分かった。アカネイアに向かい、役職を返上するとしよう。」

 

 

この数日後、ミロアはアカネイアの王国司祭長の地位を返上。アカネイアから去る事となった。

後任の王国司祭長については、教会が出す事を希望するもその選定は難航する事となる。

 

 

 

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「時に将軍達に伺いたい。」

 

「⋯何か?」

 

アカネイア宮廷内や貴族の中に未だマケドニア征伐を望む声が後を絶たない事に苛立った文官達は動く。

 

ある人物は「そこまで言うのならば、マケドニア征伐にかかる準備もある程度目処がついているのでは?」と将軍達の元を訪ねた。

 

「この際マケドニア征伐の是非は置いておくとして、陛下に奏上するとなればある程度の見通しを用意せねばなりませぬ。

そちらが求めるものについて話を伺いたいのですが。」

 

そこで判明した驚愕の事実。

 

 

 

「⋯マケドニアへどのくらいかかるかご存知ないと仰るのか。」

 

唖然とする話だった。

何とマケドニア征伐を声高に叫ぶ将軍達であっても、マケドニアへの道のりについて全くの無知であったのだから。

 

「商人が知っているのではないか?」

 

「⋯⋯であるならば、先ずそれを調べて頂きたい。

戦場までの進軍経路については我等の管轄ではないでしょう。」 

 

「⋯⋯承知した。」

 

文官達に強い反感を抱く将軍達も素直に受け入れた。

何せ文官達(奴等)に任せれば想定外の事態に対応出来ると思えなかったのだから。

 

 

が、この時将軍達はこの事態を甘く見ていた事を後に痛感する。

 

 

 

 

 

「マケドニアへの正確な航路が分からない、だと?」

 

「そりゃあ、こっちからすれば用事のない所への航路なんて知らないし、興味もないからな。」

 

「以前はマケドニアまで食料を届けていただろう。」

 

将軍達は直ぐに配下の者を近くの港へ派遣し、情報を集めさせる。

が、水夫達からすれば忙しい中突然詰問されて気分の良い筈もない。その上、マケドニアへ行きたいと宣う物好きにかける時間すら惜しい程に彼等は忙しかった。

 

「んなもん、マケドニアの竜騎士が先導していたからだよ。

目立つものも無いのに、どうして知らない場所へ行けるってんだよ。」

 

水夫達は知っている。海とは危険が潜む恐ろしい場所であると。

 

 

船の足を進ませる風は気まぐれだ。上手く捕まえなければ船足は遅くなるどころか、航路を外れる事もある。

それを補う為に漕ぎ手がいる。しかし、漕ぎ手の呼吸が合わなければ速度は上がらないどころか足が止まる事すらあり得る。

 

何故航路に拘るのか?

そこは船が行き来し、安全であるとされているから。

 

 

だが主要航路とされる陸地沿いにある航路の場合、海賊を刺激する可能性もあり、撃退するにしても船に被害が出てしまう事も。

 

船乗り達は海賊の討伐を願っているのだが、上手くはいかない。

⋯それどころか、一部の海賊は貴族や商人と繋がっているのではないか?とすら言われているくらいには(アカネイア)の動きは鈍い。

結果、海賊討伐は進んでいないどころか野放しになっているのだから。

 

 

その手足となっていると考えられるのが騎士。

故に海で仕事をする者や商人は彼等とマトモに付き合う気は更々ない。

 

 

 

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「航路?その様なものは切り拓くべきものではないのか?」

 

報告を受けた将軍達は首を捻った。

まぁ無理もないだろう。彼等が想定しているのは陸路であり、別に転んだ所で怪我はするが死ぬ事は滅多にない。

 

だが、船の上となるとバランスを崩して万一にも船から転落すれば命は無いと思わねばならない。軽装な水夫ですら助かる可能性は決して高くないのに、鎧を着込んだ騎士ともなれば結果は考えるまでもない。

 

更に海には目に見えない障害物、岩礁がある。

海面から少し顔を出していたとしても、海面下ではそれより遥かに大きなものとなる事もあり得る。

 

陸路よりも危険と一概に言い切れないが、危険と隣り合わせなのだ、航海とは。

しかも船にダメージを受け、喫水線つまり水面より下部で損傷が発生すれば沈没の危険すらある。

 

可及的速やかに浸水を防ぐ。或いは近場の陸地に避難する以外の解決法はない。

当然だが、水夫を纏める船長の判断となるが、その決定に果たして気位の高いアカネイア騎士が従うだろうか?

 

 

将軍達やアカネイア貴族の殆どや騎士にとって船とは縁遠いものであり、それを理解する事すら難しい。

 

無理もない話ではあろう。

アカネイアという大陸の中心の国家に属し、更に騎士などの立場を持っているとなれば、自然と傲慢にもなろうというもの。

 

 

 

故に彼等は調整というものに対する理解が浅かった。

貴族社会ならば、根回しする事はあれど、己よりも立場の弱い者に対してその様な事をする必要はない、と。

 

その結果、どうなるかすら考えもせず。

 

 

 

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世界が違えど古今東西文官と武官の対立が絶える事はない。

何せ重要視するものが違うのだから、仕方のない話であり、それを仲裁出来るするのは並大抵の苦労では収まらぬ。

 

 

かの人たらしの名人とも若い頃はされた天下人豊臣秀吉とて、晩年豊臣家内部に深刻な対立があった。

 

戦場において存在感を示せる武官

平時においても功を挙げられる文官。同じ組織を支える為の柱でありながら、対立してしまうのである。

 

それはアカネイアでも変わらない。

寧ろアカネイア王がアレな為、その確執は深刻とも言えるだろう。

 

苦慮する将軍達に更なる凶報が齎される。

 

 

「カダインの戦力が動かせなくなった、だと?」

 

アカネイア王国司祭長であったミロア司祭。彼はその職から退き、カダインへ戻ったというではないか。

言うまでもなく、カダインへ使者を出そうにもこれまた正確な位置を将軍達は知らない。ミロアはアカネイアとカダインを頻繁に行き来していたが、それはワープによるものであったのだから。

 

「後任は強欲な連中(教会の者)か。」

 

しかもミロアの後任の選定に時間がかかるとの事。

 

 

 

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教会に対して将軍達は好意的にはなれなかった。

 

確かに回復役を手配する事はありがたいこと。が、それを恩着せがましく言い、それをアカネイアでの勢力拡大に利用している。

 

 

しかも、回復役として従軍しているのに此方の指示よりも自分の意思や教会の意向を優先する事が多いのだから。

 

 

 

まぁ同族嫌悪と言えなくもないのだが、勿論そんな事を将軍達が認めよう筈もなかった。

 

 

 

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海に詳しい水夫からのいっそ冷淡とすら思える話を受けて将軍達は焦った。

 

何せそのまま伝えたならば、確実にマケドニア征伐が通る筈もなく、通らなければ彼等の立場や発言力は弱くなる。唯でさえ「マケドニア征伐も結構だが、街道の安全確保や賊討伐にもう少し注力出来ないものかな?」と言われているのだ。

 

加えて、貴族の子弟や一族の溜まり場となりつつあるアカネイア騎士団。その維持はアカネイアの財政を圧迫しつつあり、可能(責を果たさぬ)ならば、騎士団の縮小なども考えるべきではないか?

との話も文官達の間で議論されているらしい。

 

将軍達からすれば、『戦うべき場』がないだけであり、飾りではないつもりなのだが

 

 

『アカネイア騎士団(の飾り)は随分と金のかかるものらしい』

 

と某国からは思われていた。

 

 

特に国境を接するオレルアンにとって、アカネイアから流れてくる貧民や賊の存在は決して無視し得ぬ問題となっている。

 

 

 

 

 

 

 

アカネイア騎士団はマケドニア征伐は実現可能なものであり、大陸秩序維持の為にも必要不可欠なものである。

との見解を示した。

 

文官達は処置なしと見て、騎士団に対し

 

 

「ならばマケドニア征伐の為の軍船を手配されよ。

そこまでするのならば、我々はもう何も言うまい。」

 

と告げる。

 

 

 

廷臣を通じて、将軍は国王に上奏。

 

国王は

 

「⋯好きにせよ。」

とだけ告げ、将軍は速やかにマケドニア征伐の為の準備に取り掛かる事となる。

 

 

 

後世からは

『アカネイア最大の失敗』として歴史に拭い去れない汚点を残すことになる事態が動き始めた。

 




と言う訳でアカネイアが泥沼ルートに入りました。

今回のタイトル回収の役目はアカネイアに担って貰うことになるでしょう。



まぁ、アカネイアは『腐った納屋』なので放っておいても自壊するでしょうが。

それよりマケドニアやドルーアの日常回の方が大事なので。


特にチキルートとなった以上、そっちの方を優先して書こうと思う次第。
考え過ぎた弊害なのか、夢でチキ(覚醒時代)の事を最近見るようになったので

エリスルート完結記念の外伝

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  • そんなことよりチキを出せ
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