汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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立場によって見えるものは変わる。
故に行動も変化しよう。



だからこそ、時にそれが致命傷となるのだろうか?


振り下ろされしもの

マケドニアの王女ミネルバは困惑していた。

 

彼女や彼女の妹であるマリア。ミネルバの騎士であるパオラ、カチュア、エストにとってゲレタという人物は冷静で、時に冷酷と言える程に落ち着きのある人物だった。

 

 

ところが

 

 

「⋯食い過ぎた、腹が苦しい。」

 

「食べ過ぎは駄目ってゲレタさんが言ってたよね!」

 

「貴様は何をやっておるのだ。」

 

 

マケドニアの海から獲ってきた魚を彼は焼いてかぶりついていた。⋯それこそ、普段の振る舞いとはまるでかけ離れた姿で。

 

そして食べ過ぎて苦しいと言っている。

その姿に少し怒っているチキと呆れるモーゼス殿。

 

 

それに対して戸惑う事しか私達には出来なかった。

というより、彼のあまりの変化についていけなかったと言うべきなのだろうか。

 

 

 

 

「あれの生国は平和な国だったと聞く。

そんなところから、泥水を啜って生きていかねばならなくなり、俺に拾われた。

寧ろあれが本当の姿なのだろうな。」

 

兄上にマリアと共に相談しに行くと、兄上は複雑そうな表情をしていた。

平和な国、と言われても全く想像がつかない。

 

 

彼と私やマリア、パオラ達が話をする様になったのは兄上に仕えて暫くしてからの事だったと聞く。

その頃には最初の頃の様な様子は見られなくなったと。

 

「あれもマケドニアで生きる為に必死だったからな。

食事情の違いと言うのは此方が思う以上の負担になっていた様に今更だが思うものだ。」

 

焼き魚を腹いっぱい(誇張抜きで)食べたゲレタであったが、チキに怒られた後

 

「⋯せめて絵を描ける人物を呼んで食べられる魚を判別出来るようにしなきゃならんかったのに、何やってんだ俺は。」

 

と落ち込み、チキに元気づけられていた模様。

 

 

マケドニアとドルーアに変化を齎し、竜人族の希望となった男の姿か、これが?

 

と思う者もいたのかも知れないが、心優しいチキは素直にゲレタを励まし、モーゼスは落ち込むゲレタをチキ()に任せ

 

「⋯ふむ、悪くない。些か小骨が鬱陶しいが中々。」

 

とゲレタが焼いていた焼き魚の残りを摘んでいた模様。

 

 

 

その数日後、魔竜族の間で空前の焼き魚ブームが巻き起こり、チキが使っていた竜人族用のざるの増産をメディウスに要請する事態が発生。

 

メディウスは何を言っているのか理解出来なかったが

 

「⋯恐らくゲレタ殿のした事じゃろうて。」

 

とのガーネフの言葉にさもありなんと納得し、ざるの増産をゲレタを通じてマケドニアの職人に依頼する事となる。

 

 

勿論、サイズが大きい上にある程度の耐久性を確保せねばならなかった為、暫くの間は魔竜族の間で『魚の掴み取り』が実施される事となったとか何とか。

 

 

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正気に戻ったゲレタは魚の骨が肥料になる事を思い出し

 

「これは魚食のブーム来たのでは?」

 

と内心テンションを上げ、試行錯誤(度重なる毒見)を重ね、

 

「アカネイアなんてどうでも良い!食文化の開拓こそ両国の発展に必要だ!」

 

と対応に苦慮しているアカネイアの者達が聞けばブチ切れる事と

間違いない発言をゲレタはして、マケドニアとドルーア国内から絵心のある人物を探し出す事をミシェイルとメディウスに提案。

 

2人はゲレタの真意を問う事なく、それを了承。

 

 

子供の遊びと思われていた絵に新たな価値を付与する事となった。

 

 

 

マケドニア竜騎士団のルーメルと白騎士団のミネルバは少し後にゲレタから「海の魚で食べられるものリスト」を提示され、マケドニアの竜騎士と天馬騎士にそれを周知する事となる。

 

緊急時にはそれを参考に海の魚を食料としたり、乾燥させた魚を携帯させるなどの方策をゲレタは打ち出す。

 

勿論、直ぐに全てが上手くいく。などとは欠片も思っておらず、失敗を重ねて形にしていく事を願っている。

 

 

 

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確かに自分はこの大陸においてかなり進んだ考えを知識として有しているだろう。

 

が、だからといってそれが全てこの大陸において有用であるとゲレタは考えない。

 

遺すべきものもあり、変えるべきものもある。

全てを上書きするのが正しいとは思わないし、思ってはならない。

 

 

明日への

未来への不安が無ければ、必ず様々な選択をするだろう。

 

それすら今のマケドニアや竜人族には難しい。だからこそ、確かな地盤を築き上げる。

別に大陸各国から何かを巻き上げようと言う訳ではない。あくまでもマケドニアやドルーアの持つポテンシャルを十全に発揮させるだけなのだ。

 

アカネイアがぎゃあぎゃあ騒ごうが、此方に実害が無いなら放っておく。

負け犬と言うつもりはないが、遠吠え程度で気を向けるくらいならば豊かな未来の為に邁進する方が遥かに建設的なのは明らかなのだから。

 

 

アカネイアが崩壊しようが、存続しようがさしたる意味もない。

 

 

 

こっちはこっちで勝手にやるから、そっちもお好きにどうぞ

 

 

で良いだろうに。

 

 

まぁマケドニアなんて小国に存在を無視されたとなれば、アカネイアという大陸秩序の要(笑)の看板に傷が付くから出来る筈もないんですけどねぇ。

 

渡海に伴う騎士や兵士への負担。兵站や船を用意せねばならない財政、経済的負担。

生かして返すつもりは更々無いので、失った者達に対する補償や遺族などへの対応。

 

勿論、アカネイアが用意するであろう軍船など魚礁にする以上の価値は見出すつもりはないので、再度遠征するならまた同じだけの負担。 

 

オレルアンやグルニアを建国したのとは比較にならない負担をアカネイアは負う事になる。

 

 

 

⋯まぁ、ミネルバ王女を手籠めにする様な計画を立てたド畜生どもにかける情けは持ち合わせていないがね。

 

 

 

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先代マケドニア王はミシェイル様ではなく、ミネルバ様にこそマケドニアの王位を継がせたかった。

故にマケドニアの象徴たる竜騎士にミネルバ様をさせ、彼女の下にパオラ達を付けた。

 

本来ならば、嫡男であり次のマケドニア王たるミシェイル様にこそその様な扱いをせねばならなかった筈なのに。

俺がミシェイル様に仕えたのは、本当に偶然からだった。

 

 

が、これはあくまでも先代国王の考えに過ぎず、それを知るのはミシェイル様くらいのもの。

 

 

ミネルバ様が女性の身でありながら竜騎士となり、その配下にパオラ、カチュアにエストが付けられた。

 

故にアカネイアはミネルバ王女を欲した。勿論、パオラ達の身も。

 

 

現在はやっていないが、マケドニアはアカネイアなどに竜騎士を傭兵として派遣していた。

アカネイアからの依頼(意向)を伝えていたのが粛清したマケドニアの有力者達。

 

彼等の屋敷にある書類の中にとある目録があった。

 

 

その内容はミシェイル様と俺しか知らないし、知らせるつもりもないが。

 

 

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ワープの魔法が使えるガーネフ。

彼はドルーアの高い地位にありながら、積極的に大陸へ赴き情報を仕入れている。

 

既にカダインから離れた身であり、同輩であるミロアはともかく師と仰いだ人物が文字通りの『人でなし』であった事を知るに

 

 

「どうやら選択を誤らなかったらしいの。」

 

と人知れず安堵していた程。

 

 

仮にも大陸において屈指の実力を持つガーネフ。その上竜人族が古の時代の魔法をメディウスに預けており、ガーネフはその強力無比な魔法を習得する機会にも恵まれていた。

 

なお、竜人族が古代魔法や強力な効果を持つ杖を捧げるべき相手はチキであり、本来ならばチキを教え導く存在であるゲレタに託すべき。

⋯いや、そうすべし。

 

との意見が竜人族の一部から出ている。

それは火竜族。チキに対する愚か者の行為を座して見ていたであろう同胞(バヌトゥ)と違い、彼女を陽の下で育てるべし。と主張したゲレタへの信仰にも似た感情に依るものだった。

 

 

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特に彼等火竜族は火のブレスを吐ける為にマケドニアやドルーアの各地で大活躍をしていた。

 

「あの時代であっても、我等がここまで満たされる事は終ぞなかった。

この世界を壊させてはならぬ。⋯何が何でもだ。」

 

ブレスを吐けばマケドニアの民や子供達に感謝され、その火が彼等の知らぬものを生み出す原動力となる。

それはもう、氷竜族が嫉妬のあまり竜化して己の牙を噛み砕かんばかりの充実ぶりであった。

 

 

まぁそれもゲレタが水産物を猛烈にプッシュするに及び、氷竜族達の氷のブレスが冷凍保存や鮮度を保つ為に有用であると示された事で雲散霧消したのだが。

 

魔竜族は最初期から『マケドニア国土改造計画』に協力していた事もあり、ヒトとの共存の中で自分達の立ち位置を彼等なりに見つけていた。

 

 

結果、まわりに回ってガーネフが古の魔法を会得するに至ったのはある意味では皮肉とも言えよう。

 

勿論、ガーネフとて余計な波風を立てるつもりはない。

元々危ういところで大陸秩序は維持されていたのはガーネフも知っていた事もあり

 

 

「我等に被害が及ばぬなれば、構わぬか。」

 

と言うのが今の彼の偽らざる本音。

魔法にせよ、戦いでしか活用しようとしない今の大陸よりも、突拍子もなく道なき道を往こうとするマケドニアやドルーアの方が

 

「やり甲斐があろうよ。」

 

 

 

ガーネフは街を巡りながら、民の間の話を仕入れ、ドルーアへと戻った。

 

 

 

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「⋯妙だ。何故此処にも誰もおらぬ。」

 

ガトーは北方にある神殿へ赴き、そこにも誰の姿がない事に違和感を覚え始める。

 

「⋯⋯まさか、メディウスが復活したとでも言うのか。」

 

それはガトーにとって最悪の状況だろう。

確かにガトーは大賢者と言われるだけの魔力を持つ。が、その魔力を以てしてもメディウスと戦い、勝ち切れるとは断言出来ない。

 

倒せるとすれば、ファルシオンだけであろう。しかしアレは既に己の手から離れている。

 

 

勿論、自身が警鐘を鳴らせばどうにか動かせるとは思うが、此処まで姿が見えぬとなれば嘗ての勢力よりも強大になった可能性は大いにあり得よう。

 

あの時は、切り札たるファルシオンをメディウスとて動かすとは思っていなかったからこそ、アンリはメディウスを討ち倒せたところが大きい。

が、今回は間違いなくファルシオンが敵の手にある事を理解しているだろう。

 

「⋯あのマケドニア王子ならば、或いは」

 

 

マケドニア王の息子であるミシェイル王子。かの人物がアンリの子孫(アリティア)と結ぶならば、薄いだろうが可能性はある。

 

 

ガトーはそう考え、マケドニアへと向かう。

 

 

 

既に彼が考えている方策は不可能となっている事を知る由もなく。

 

 

 

 

 

言うまでもないが、現在のマケドニアとドルーアの関係は最早一つの国家とすら言える程の纏まりを見せている。

 

チキの養育者にして、竜人族の明日をも担うゲレタ。

マケドニアの国王であり、そのゲレタが主君として仰ぎ、並の国家ならば成し得ないであろうヒトと竜人族による共存を実現させたミシェイル。

 

謂わばマケドニアの双璧とも言える存在。

 

既にゲレタにはモーゼスのみならず、竜人族の古強者達が護衛としてついている。

となれば、ミシェイルにも同程度の護衛が付けられるのは自然な事。

 

 

 

 

故にこれは必然だったのだろう。

 

 

 

「⋯どういう事だ、これは。」

 

「やっと姿を見せおったか。この薄汚い裏切り者が。」

 

「ナーガより託されし、手中の玉ひとつ導けず、さりとて護れもせぬ。

如何に貴様がナーガからの信を受けていようとこれは許されぬ事ぞ」

 

「死ねとは言わぬ。が、貴様に最早価値はない。我等が道を阻む事罷りならん。」

 

マケドニアのミシェイルの元を訪ねたガトーの周囲に凍える様な殺気を纏う竜人族の姿があった。

 

 

 

「視野が広いのは結構な事だな、大賢者ガトーとやら。

だが、そうであるからこそ、見落とすものがある事。⋯どうやらそれを忘れた様だな。」

 

 

 

 

 

 

 




アカネイア解体RTAは置いておいて、面倒くさい奴の処理に入ります。


エリスルート完結記念の外伝

  • いる
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  • そろそろリンダルート書いて、どうぞ?
  • そんなことよりチキを出せ
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