汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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船頭多くして山に登る。

盛者必衰


責任

「⋯どう責任を取るつもりか?」

 

アカネイア騎士団主導で行われたマケドニア征伐の為の軍船の建造。

 

 

つい先日試作艦が出来上がり、実際に港に浮かべたところ船底より浸水が発生。しかし船について素人の集まりでしかなかった為適切な対応が取れず、結果港に沈没。

搭乗していた職人や騎士は船底の浸水対応に気を取られた結果、船と共に水底へと(いざな)われた形だ。

 

 

問題は本来進水式はもしもの場合を考慮して港外でする事となっていたのだが、騎士団は強権を以て港内で進水式を執り行い、そして沈没。

結果、船を着けられる場所の水面下に船の残骸が横たわる事となり、港としての機能に支障が出ていた。

 

 

この地を治める貴族はこの結果に烈火の如き怒りを見せ、今後騎士団が主導するマケドニア征伐の為の軍船建造に対して一切の協力をしない旨を通達している。

 

何せ騎士や職人により街の雰囲気は悪くなり、道理を弁えぬ行商人が至る所で露店を開いていた。

 

 

街の通りなどにはそれぞれが与えられた役割があり、路肩で露店を開く者達は街の治安維持の為の円滑な移動を妨げている。領主として貴族は幾度も警告を出した。

が、行商人の多くは己の立身出世を夢見て自ら家を捨てた者が多い。家業を継ぐ事すら受け容れない彼等が従う筈もない。

 

 

更に行商人達は既存の商店と競合しなければならない為、強引な売り込みが問題視されてもいる。

 

 

 

この様な問題が起きたのは騎士団による無計画で事前準備も調整もなく建艦を進めたからなのは明白。

 

「たとえ国の方針であろうとも、私には領民の生活を守る責務がある。

それに反するならば、今後我が領内での建艦は認められぬ。」

 

 

 

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騎士団は試験艦の沈没と多くの死者を出してしまった事で面目を失った。

 

 

烈火の如き怒りを見せる港町一帯を治める貴族。軍船の建造の為にアカネイア全土から集めた職人や人夫。それらを手配した騎士団に対して多少好意的であった貴族一派。

人夫の損失も大きな痛手であったが、それ以上に職人の損失が彼等の怒りを見せる要因だった。

 

何せ現地で多少(・・)問題を見せていた職人達であったが、その存在は代え難いものであり、協力した貴族達からすれば職人を喪うなど想定外にも程があったから。

 

 

なお沈没した原因は明らか。

船底部には継ぎ目が多く、その継ぎ目の潰しが万全になされていなかった為である。

 

 

船大工達が船を造る場合、船の上部よりも水と接する下部を重要視する。

 

 

水は僅かな隙間すら許さない。隙間があれば、そこから水は浸入し、そこに大きな圧力がかかる。

そしてその圧力に建材が耐えきれなくなれば、その隙間は穴となり船の命を奪う。

 

 

集められた職人が手掛けていたのは、大きくて家くらいのもの。

 

 

家であれば、仮に隙間があったとしてもそれだけで崩壊する事は殆どない。隙間風があると理解して対応しても間に合うのだ。

 

そして職人達は己の腕を誇示する為に船の上部に注力し、下部については『問題が起きてから対応すれば良い』と考えていたのである。

 

 

これが船大工とそれ以外の者達の決定的な違いであると知る事もなく。

 

 

 

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しかし、将軍はこの予想外の事態に対して危機感を持っていなかった。

 

何せ戦いともなれば死者が出るのは当然であり、寧ろその程度の事(・・・・・・)で騒ぐ理由はない。

 

 

ところが、そこまで甘い者達ばかりではない。

 

 

 

 

「⋯何と申された?アドリア伯。」

 

「今回の話を受けて、私は人員を領地に戻す事とした。

人を無意味に失うのは避けねばならぬ故な。」

 

「⋯⋯なんと。」

 

「では失礼するとしよう。」

 

動揺する将軍など意にも介さぬアドリア伯はその場を後にする。

 

 

「⋯ああ、それと私だけとは思わぬ事だ。」

 

そう言い残して

 

 

 

 

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騎士団が主張するマケドニア征伐。

 

 

それに対してアカネイア貴族の多くはさしたる関心を持っていなかった。

貴族達からすれば、マケドニア征伐が被害なく終わるのであれば騎士団の好きにさせても良い。程度の考えでしかない。

 

 

ところが、兵を出す前から既に暗礁に乗り上げつつあり、しかもアカネイア屈指の港町を領する貴族は騎士団への協力を拒否した。

となれば、騎士団や将軍が主張する程にマケドニア征伐は容易ならざるものではないのか?と態度を保留していた貴族や協力していた貴族は騎士団に対して疑念を持つ事になってしまう。

 

騎士団に一門や縁者を多く持つ貴族達はそれでも騎士団の方針を支持した。

 

 

結果、アカネイア貴族の中でもマケドニア征伐の是非で意見が割れる事となる。

そんな中、アドリア伯は軍船建造に出していた人夫と職人を領地に戻す決定を下す。

 

 

 

これはアドリア伯がアカネイア王近くの者から

 

「陛下は騎士団が主張する程にマケドニア征伐に前向きではありません。」

 

との発言を引き出し、更に文官側もマケドニア征伐に懐疑的である事を知り、寧ろ騎士団の暴走に等しい事である事を確認。

 

 

であればこの様な無謀に付き合う理由はないとしたのだ。

 

 

 

 

アドリア伯の騎士団への協力を中止と港町を領する貴族の騎士団への非難。

これらは態度を決めかねていた貴族達の背を押すにはこれ以上ない判断材料となった。

 

 

軍船建造に人員を出していた貴族はその引き上げを

協力するか決めかねていた貴族は協力しないことを決定。

 

騎士団よりの貴族は孤立し、頼る者がいなくなった騎士団は彼等を逃がす事を選べる筈もなく、いつ終わるのかすら定かではないマケドニア征伐の準備の為に振り回される事となるのだった。

 

 

 

 

更に今回の失態を将軍は追及され、苦しい立場に追いやられる事となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




国内が乱れる時にこそ、トップや組織の真価が問われると思います。














現在聖戦の系譜で撃破数を稼ぎ中。
全ての武器に必殺を付与しようとすると、物凄く時間がかかるのが困りもの

ディアドラ様のオーラもめでたく撃破数100を達成し、それでもなお終わらない。

アグストリアの住民絶滅する程度には捕殺している今日この頃

エリスルート完結記念の外伝

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