汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
マジですか
…オラびっくりしただ
ところで、まだ原作第一部すら終わってないのですが(震え声)
何話かかるの、これ?
と内心戦慄しながらも書けたので投下
これから最大の脅威となるであろう竜人族
その調査(意味深)はとりあえずは完了した
何せ竜人族は2つの姿を持つのだ
人型と竜形態
当然ながら、身体の構造が同じである筈はない
…となれば、当たり前の事だが
また
なにぶん此方は回復手段がないに等しいのだ
寧ろSFCにおける新作
聖戦の系譜における教会。所持金を消費して回復するシステム
の方が余程現実味があると言えるだろう
まぁ、剣と魔法に竜までいる世界に現実味があるかと言われたら、俺の中身としては全力で否定したいところではある
しかし、目の前の現実を受け入れねば先はない
なので現実を直視して、自分にとって不都合なものを集めてそれを対策すれば、多少はマシな状況に持っていけるのではなかろうか?
その代償として
「っ!」
チキに怖がられているのは仕方ない事だろうなぁ
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と言っても、一概にこれが悪い状態という訳でもないと思う
チキは俺達についてくる事を選んだ訳だが、俺に苦手意識を持ってしまう以上
「…もう」
リンダを頼るのは自明
少なくとも、2人から距離を取るよりよほど健全ではなかろうか?
更に言えば
…まぁ?
流石にまだ実戦で慣れないと
そこら辺は
こちとら元山賊だ
嫌われるのにも、恐れられるのにも慣れているさ
なお、恐れられている理由の大半はコレのやった事のせいである
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チキは困っている
彼女の人生の中で恐らく上から数えるくらい大変な事で
(話が出来ないよう)
男の人、ゲレタと話が出来ないのだ
確かにいきなり解体し始めたのには驚いたし、恐怖を感じたのは事実
でも、よく見ていると私を気遣っているのが分かるのだ
…年齢で考えれば、私の方がずっとお姉さんなのに
そう思っているのだが、どうしても苦手意識があった
(あの時私に優しくしてくれたのに)
などとそこだけ切り出してみると、割と問題のありそうな事を思うチキ
しかし、である
敵対した者はあらゆる手段を行使して殺しにかかるゲレタとラーマン神殿での生活が長く、バヌトゥとのささやかな生活を送っていたチキ
そもそもの話として、両者が価値観を共有する事自体がかなり難しいのではなかろうか?
なので、別に彼女の悩みはそこまで思い詰めるものではない
そうリンダとゲレタは考えていたのだ
だからこそ、リンダに相談してみても
「焦らなくても大丈夫だから
ゲレタだって、そこは分かっているわ」
と言われてしまう
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「あの頃の私はお父さんと何とか話をしようと必死だったわ
…今にして思えば、必死に私だけが空回りしていたと分かるのだけど、ね
価値観の違いと分かった時には少し遅かったわ」
「…価値観、ですか」
懐かしそうに話すチキの言葉にあまり実感がわかないのだろう
首を可愛らしく傾けるルキナ
「確かに価値観と言うのは大切だべ
オラもノノと今でこそ夫婦になったけど、最初はお互いの習慣が分からなくて苦労したなぁ」
「…そうね、ドニ
思わず私もあなた達の事を後押しさせて貰ったわ、あの時は」
今回クロムからの懇願でルキナに同行したドニ。彼は自分の妻であるノノとの当時の事を思い出しながらルキナに優しく教えようとする
そんな彼等を当時必死になってくっつけようとしたチキは柔らかな笑みを浮かべたのだ
「た、確かに
ドニさんとノノさんでは余りにも色々な事が違いますね」
ルキナも身近な者達に例えられる事でなんとなくそれを理解出来た様な気がした
「私のお父さんは元山賊で、お母さんは魔道士の集まる国のお姫様の様なものだったわ
普通に生活していれば、決して会う事はなかったでしょうね
…でも、出逢い
そして互いに惹かれあった
そこにいつしか私もいたのよ」
「す、凄い話です」
「魔道士の国?
カダインとか聞いた事があるなぁ」
「あ、それでしたら私も聞いた事があります
確か『風の魔道士と青の姫』の魔道士が育った場所
そうですよね、チキさん?」
チキの話にドニとルキナの2人は何やら心当たりがあった様だ
『風の魔道士と青の姫』
とは現在もイーリスに伝わる英雄王の親友と英雄王の姉の恋物語
既に2000年も前の記録の多くは散逸しており、数少ない英雄王マルス以外の事を記す資料として認識されている
のだが
「あら?
アレは半分くらい創作の代物よ?」
当時を
「そうなのですか?」
「だとしたら、ミリエルやマリアベルはショックを受けるだろうなぁ」
ルキナは驚き、ドニは戦友であり妻の親友でもある2人の姿を思い浮かべて苦笑いした
「私もヴァルハルトからその話を聞いて思ったわ
いつの世もヒトは変わらないって」
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風の魔道士と青の姫
これは所謂英雄戦争後に結ばれたマリクとエリスを題材とした物語
…とされている
そもそも、この作品の発表はマリクとエリスの死後数年経っての話
この物語ではマリクがアリティアを滅ぼした組織から単身エリスを救い出したことになっている
その後、暗黒竜復活の為の生贄として囚われた彼女をマリクはマルス達と共に助け出し、そして結ばれた
と大まかに言えばそんな内容
暗黒竜のくだりは間違いではない
しかし、アリティア云々の事は事実にない事
アリティアを滅ぼしたグラ王国の兵により、奴隷に落とされ
そしてゲレタ達により救われてマルスに再会したのだ
そこにマリクの姿はあろうはずがない
にも関わらず、これが発表された理由
それは簡単だ
ガーネフにより落ちたカダインの世間からの評判を上げる為に創作された物語
なのだから
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アカネイア大陸において魔道士を多数有し、尚且つ優秀な魔道士を輩出する組織
それがカダインだった
野良の魔道士も居なくはないが、大抵何らかの功績を残した魔道士はカダイン出身
それはカダインで教鞭を取る者達だけではなく、カダインで修業する見習いたちにとっても素晴らしい事だった
カダイン出身というだけで、多くの国や組織から求められる
ある意味ではカダインがブランドとして成立していたと言い換えることも出来るかもしれない
…ところが、暗黒戦争におけるガーネフによるミロア殺害
これによりカダインはガーネフの意に従わねばならなくなった
その結果、ドルーア帝国の尖兵として多くの魔道士がその命を落とす事になる
加えて、ドルーアの尖兵である為にカダインに対するイメージも急速に悪化してしまったのだ
暗黒戦争、英雄戦争という2人の動乱を終えた世界は平和と秩序を取り戻していった
しかし、カダインの汚名は拭い去る事が出来なかったのだ
何せ魔道士の聖地などと自称していても、結局のところは独占している事に変わりない
反発は元々あったのに、それを無理矢理押さえつけていたのだから
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マルスと共にエリスを助け出し、メディウスを倒す一助となったマリク。
彼はウェンデルやエルレーンに感謝する事はあっても、カダインに対して感謝する事はなかった
それも当然だろう
カダインの魔道士達は明確な殺意の元に自分達の敵として立ちはだかったのだから
カダインとしてはカダイン出身のマリクの事を広く世界に知らしめる事でカダインの負のイメージを払拭しようと考えた
その場合、
という方が何かと都合が良い
しかし、いざ発表したとしても本人から否定されては意味がないどころか更なるイメージダウンに繋がる
その為、当事者の多くが亡くなり
またマリクとエリスもこの世を去ってから発表する事にしたのだ
勿論、カダイン主導で行なわれた
などという事が露見しない様に細心の注意をした上で
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「『歴史は勝者が創るもの』
そうお父さんは言っていたわ。本当にその通りね」
「そんな」
「流石にそれは実際に助け出したチキの両親に失礼だな」
「別に構わないわ
誰が知らなくても、虚飾に塗れたものが語り継がれたとしても
私が
2人の娘である私が知っているのだから」
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「さて、街に着いた訳だが」
「随分と活気のない街ね
直ぐそばにあんな立派な城があるのに」
「寂しい雰囲気、ですね」
ゲレタ達は街に到着した
某国民的RPGの様に村人が街の名前を教えてくれる訳もないので、ゲレタ達はそのまま街へと足を踏み入れる
「…物の値段が高いし、なんだろうなコレは」
ゲレタは妙な感覚を覚えるが、中々表現しづらいものだった
「投げやりになっているのかしら?
…あまり長居したくない雰囲気ね」
「…嫌な空間です」
リンダは勿論の事、チキですら此処の雰囲気に参っているらしかった
なので
「予定変更だ
すぐに此処を出るぞ」
ゲレタがそう判断するのも仕方のない事
…だが
「敵だ!
ド、ドルーアが攻めてくる!」
「何だと!?
なんでだ!俺達はドルーアに協力してるじゃないか!」
「知るかよ!既に砦は落ちた
早く逃げないと」
凶刃はすぐそこまで迫っていたのだ
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シーマは急ぎ街へと向かい、混乱を収めようとしていた
と言っても、ドルーア軍を退けない事にはどうにもならない
…しかし、国王は城から兵力を動かす事を認めなかった
その為彼女は単身、ドルーアへ立ち向かわねばならなかったのである
勿論、聡明な彼女はそれが無謀でしかなく無駄死にすると理解している。…だが、それでもやらねばならない
震える体を何とか抑えて、痛いほど堅く手にした槍を握りしめる
こんな絶望的な状況での初陣など
でも、やらねばならないのだ
ドルーアが私達に滅べと言っていても、私達はまだ生きていたいのだから
ドルーア軍と言っても、その内情が酷いものである事は一応彼女も知っている
マケドニアやグルニアに比べて、軍律は保たれておらずアカネイアでは何度となく虐殺が行われているとも聞いた
…間違いなく、捕らえられれば無事ではすまないだろう
そうと知りながらも、彼女は抗うと決めたのだ
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「…退けや、ゴラァ!」
ゲレタ無茶苦茶不機嫌ね
気持ちは良く分かるけど
突然ドルーアが攻めてきた事で私達は自分の身を守る為にドルーアと戦わざるを得なくなったわ
とは言っても、基本ゲレタが問答無用で薙ぎ払っていくのだけど
チキは初めての大規模な相手に怯えているわ
無理もないわ
私は此方に向かってくる相手を警戒しないといけない
…目の前を惨状を見て、それでも挑んで来る者がいるのかは分からないのだけど
出来れば、私達の事は放っておいて欲しいわね
無理でしょうけど
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ゲレタ達は足早に街の外へと向かおうとした辺りでドルーア軍に見つかってしまい、そのまま交戦状態に突入している
結果として、ゲレタは意図せぬままに街を守る形となっていた
…本人からすると甚だ不本意でしかないのだが
そこへ
「大丈夫か!私も手伝う」
とシーマが駆けつける
「要らんわ!下がってろ、邪魔だ!!」
ゲレタは彼女のぎこちない動きから戦場なれ(そもそも慣れて良いものではないが)していない事を察して、援護など寧ろ邪魔だと口にする
しかし
「だが、1人ではっ!
!?!?」
シーマはゲレタに近付くとその異質さをようやく理解した
何せ目の前の人物は手を振るっているだけ
なのに、ドルーア兵達は次々と倒れていくのだ
しかも、殆どが傷ひとつないまま倒れ伏し、動かない
それだけでも異質なのに、時に内側から刃で切り裂かれた様な凄惨な死体があるのだ
戦場に慣れている筈の騎士ですら動揺するのに、初陣である彼女が動揺しない訳が無い
シーマはその異様な光景をただ見つめるだけとなってしまう
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「今思い返しても、お父さんの戦い方は異質だと思うわね
2000年も経った今でも同じ様な事をする魔道士はいないもの」
「…何度聞いても恐ろしいなぁ
オラやノノでも勝てないだろうし、ロンクーでも難しいと思う」
「…あの、本当にその人は人間なのでしょうか?
……確かに圧倒的大軍を1人で相手をするというのには憧れる気持ちがない訳ではありませんが」
チキの話を聞いて、ドニは当時チキの父親と敵対した者達の末路を思い、遠い目をした
クロム達の仲間の中で最も素早く敵を倒せたフェリアの傭兵
彼ならば或いは?と思ったが
流石に体内への直接攻撃など防げるとは思えない。恐らく速度で撹乱するしかないのだろう
そうドニは思ってしまうのはやはり彼も一流の戦士なのだろう
ルキナは本当に失礼な事とは分かっているが、思わずそう口にしてしまう。…まだ彼女は若いのだ、仕方のない事だろう
因みに敬愛する父の真似をしようとチキも2000年にも及ぶ長い時の中で研鑽を重ねたのだが、遂に父の完全な模倣をするには至らなかった
それ故に更にチキは父への尊敬と憧れの思いを強くしていたりする
仮にゲレタがその場にいたならば
「こらこら、真似をしようとするな
これは弱者の戦い方で、正道からは最も遠く離れた外法だぞ?」
と顔を盛大に顰めながら止めた事だろう
血は繋がっておらずとも、父親としてゲレタは
悲しいかな、その切なる思いは果たされる事がなかったのだが
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「…面倒な」
「そうね、彼女に悪気がある訳じゃないのは分かるのだけど」
ゲレタとリンダ、そしてチキの3人はシーマの
「せめてお礼だけでもさせて欲しい
あなたが居なければ」
との事でグラの城へと来ていた
正直、ゲレタはグラ王国に良い感情を持っていないし、シーマは不憫だと思うがそれだけだ
何せアレな男が国王なのだ
マトモではないだろう
…理由はどうあれ、復讐をしなかった自分がどうこう言える立場ではないのかも知れないが
そもそもゲレタはリンダとチキを守ろうとしただけ
仮にグラの街中にドルーア兵が侵入したとしても気にも留めなかった
ただ、そうなると最悪の場合挟み撃ちになりかねないからやっただけに過ぎないのだ
勿論ジオルに逢おうなどもは欠片も思わないし、そんな事を言われたら即座にグラを出るつもりだ
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シーマは結果として国を守った男、ゲレタに何らかの褒章があるべきだと考え、彼の仲間と思われる2人にも声をかけて城の自室へと招いた
シーマとしては出来れば国王直々に労って欲しいと思っていたが
いや、彼の存在を知れば何としても手元に置こうとするだろうな
それこそあの2人を人質としてでも
そう思い直し、自分の出来る範囲で最大限労おうとしたのだ
彼女に悪意はなかった
あるのは罪悪感混じりの善意のみ
しかし、彼女も頭の片隅ではこうも考えていた
『もし、彼が協力してくれたなら』
と
人の思いは交差し、絡み合い
そして思わぬ方へと向かう事がある
まるで風に翻弄される木の葉のように
人は何処へ向かうのだろうか?
多分文量が増えたのは覚醒時代の描写があるからだと気がついた今日この頃
しかし、やってしまった以上やり切らねばならないと思う
信じてもらえないかも知れないが、これ本来なら10話程度で終わる予定だったんですよ(冷や汗)