汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
その影響は殊の外大きなものとなり
マケドニア王ミシェイルは嘗て無い苦悩の中にいた。
ガーネフより、ゲレタが悩んでいる事を聞きそのケアを誰に任せるべきか考えていた矢先。
「あのゲレタに懐いていた神竜の娘が成長してゲレタの伴侶になりたいと口にした?」
流石のミシェイルもこの事態の急激な変化について行くのは不可能といえた。
(侍女達もある程度動いていたと言う。にも関わらず、何をやっていたのだ?)
とは言え、事態は大きく動いた。
となれば、いつまでも留まる事は出来ないだろう。
ミシェイルは大きな決断を下す事となる。
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「私がゲレタさんの?」
「⋯そうせざるを得ない。俺は少なくとも、そう判断している。
マリア、お前には悪いと思うが。」
ミシェイルから呼び出しを受けたマリアは
「それは別に構わないけど、ミネルバ姉さまは。」
別にマリアはゲレタを嫌っているという事はない。
寧ろ不器用な優しさを持っている人と見ている。
何だかんだと気難しい兄と姉がぎこちないながらも話をする事が出来るようになった。
それは間違いなくゲレタのお陰であり、マリア自身嫁げと言われたらば。意外にこそ思うだろうがそこまで嫌ではない。
⋯ただ、正直相手に困るだろう兄と姉をさしおいて
という点は気になるところではある。
特に姉のミネルバは⋯⋯あまり言いたくはないが、気丈過ぎるところがあり、相手を素直に頼れないところがあった。
王女であり、マケドニア初の女性竜騎士だ。
その上白騎士団を指揮下に置いている。ともなれば、その相手は能力よりも人格者でなければならないだろう。
そういった意味でゲレタさんが一番良いと思っていたのだが。
「ゲレタが娘をひとり養育しているのは知っているな?」
「うん、チキさんだったよね?」
話を聞いた時は怪訝に思ったものだが、ゲレタさんから申し出た訳ではなく、ドルーアの皇帝からの話だったそうだ。
断れる筈もないし、断るべき話ではない。それくらいは私にも分かる。
ミネルバ姉さまがゲレタさんを意識していない事はない。パオラも何だかんだとゲレタさんだけ態度が違った。
⋯⋯憎からず思っていたのだろうし、それはカチュアとエストも理解している事。
だけど、2人はそこから先に進めなかった。
理由は沢山あったとは思うけど。
まだそういう対象として見る事は出来ないけど、近くであの人を支える事には躊躇いはない。
こうして、マリアとその侍女の中でレナがゲレタの補佐役として付けられる事となる。
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チキの想いの発露と力への願い。⋯そして〇〇〇の祝福とも言えるものにより、彼女はその想いを果たせるに足るものを手に入れた。
元々彼女は強大な力を宿しており、長い年月をかけてその姿を相応しいものに変化させられる⋯⋯筈だった。
赤子が立ち上がるまでに失敗を繰り返す様に
竜人族とて、力の制御には少なからず失敗する可能性はある。
その為に親なり、サポートする者が居て、そうやって少しずつ力の制御に慣れていくもの。
確かに神殿からバヌトゥが彼女を連れ出して5年以上経つが、その間彼女の意識は『受け身』であった。
バヌトゥは彼なりに彼女を案じていたのだろうが、結果としてそれは彼女の内面的な成長を極めて緩やかなものとしている。
勿論、その時間が彼女に必要なものであったのも間違いではない。その時間があったからこそ、ゲレタとの生活も支障なく送れただろう。
とは言え、僅か一日どころか一夜での急激な変化は彼女にとって良い事ばかりを齎した訳ではなく
「⋯話し方?
別に気にする事はないと思うが。」
「⋯⋯そう、かな?」
昨夜こそ必死になっていたからそれなりの話し方が出来ていたものの、まだやはり彼女の中に『ゲレタに甘えたい』という気持ちは確かにあった。
その一方で想い人であるゲレタには自分の側で安らいで欲しい、とも思っている。
その折り合いを彼女の中ではつけられなかった。
だから、彼女は素直にそれを相談する。
「そこまで焦る事はないだろう。
正直な話、チキに昨夜言われた事は素直に嬉しかった。が、お互いまだ知らない事もある。
⋯⋯⋯俺達のやり方でやっていけば良い。⋯⋯と思うが。」
「⋯うんっ!」
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ゲレタとチキが互いの仲を確かめていた頃
「しかし、まさかアレがそこまでするとは。」
「仮にも娘だ。その娘を残して去らねばならなかったとなれば想いのひとつくらいは遺しておいても不思議ではあるまい。」
メディウスはチキから聞いた話をモーゼスに伝え、モーゼスは呆れとも感嘆とも言えぬため息を漏らす。
「⋯それで、どうする?」
「⋯⋯素直に言えば悩みどころよな。」
竜人族の居場所を創り、チキの事を常に気にかけていたゲレタ。そのゲレタとチキが
本来、メディウスとモーゼスはチキがゲレタと結ばれるとしても年単位どころか10年以上かかると考えていた。チキの情緒が余りにも幼かったからである。
その間に
何せガーネフやゲレタの言うところには、ナーガはあちらの思想の根底である
寝言にも程があるが、であればそのナーガの娘たるチキに刃を向ける事はアカネイアの正統性そのものを揺らがしかねない事となろう。
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「我等からすればこの上ない慶事であろうが、マケドニアの都合もある。」
「⋯マケドニアか。」
忘れがちではあるが、ゲレタはマケドニア王ミシェイルの腹心にして重鎮中の重鎮。
マケドニア王ミシェイルが婚約していない以上、王妹であるミネルバ或いはマリア王女の伴侶が次のマケドニア王となる。
にも関わらず、国王も両王女も良い年齢だと言うのに浮いた話ひとつない。
一番早い話は国王ミシェイルが妻を持つ事。
だが、厳格で先進的な考えを持つミシェイルに相応しい相手となると難しいのが実情らしい。
そこでミシェイルは己の片腕とも言えるゲレタにミネルバ、マリア王女のどちらかを嫁がせ、その子供をミシェイルの養子としようとしていた。
まぁ、ゲレタの出自からそれが叶わない事が判明した事で養子縁組とすべきとしたらしいが。
ミシェイルの養子でも良いのではないか?とメディウスは思ったが
「その場合、その者がゲレタの出自の怪しさなどから遠ざける可能性がある。
仮に言い聞かせたとしても、それが長続きするとは限らん。」
確かに今のマケドニアは革新的な政策を主導しているゲレタを認め、感謝している。マケドニアから貧しさを無くそうと心ひとつに団結している。
だが、その豊かさに慣れ溺れてしまえばどうなるか?
ミシェイルはそれこそマケドニアが真に立ち向かわねばならない問題である。
そう確信していた。
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ゲレタやガーネフ、更にメディウスら竜人族から聞いたこの大陸の辿った歴史。
それを知るが故に、ミシェイルは危機感を抱いていた。
ゲレタは情でドルーアとの共存を訴えた訳では無い。
実利を以て、情を挟む余地を生み出し説得したのだ。
となれば、大陸の歴史も鑑みれば竜人族との共生関係が代を経ても続く方法を統治者として模索せねばならない。
勿論、こうなってはミシェイル自身も婚約の話を進めねばならないだろう。
が、マケドニア王の妻ともなれば下手な人物を迎える訳にはいかない。⋯下手な野心など持たれてしまっては元も子もないのだから。
その為時間をかけて精査せねばならず、有力者達も今のミシェイルの勢威に手を入れる事を躊躇っていた。
何せ、ドルーアと結び竜人族との関わりを積極的にする事など彼等もまたマケドニアの変化に適応しなければならない。
「竜人族の意識を変え、我等マケドニアもまた変わらねばならない。⋯決してマケドニアの民に全て合わせる様な事になれば遠からず今の体制は破綻します。
双方が譲り合い、互いを助けるからこそ結び付きとは強くなりましょう。」
皮肉ではあるが、異邦人たるゲレタ程マケドニアの将来を感じている者は居るのだろうか?
それはミシェイルが何度となく己に問い掛け続けた
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年齢を考えるならば、
相性で言えば、末妹であるマリアの方が良いだろうが。
ゲレタという男は余りにも切れ味の良すぎる武器なのだろう。
その切れ味故に、その刀身とも言えるものが徐々に磨耗していく。
だからこそ、安らげる場所が必要。
縛り付ける鎖、とも言えなくはないかも知れないが。
ミネルバならば後者。マリアなれば前者となろう。
時間をかければ、両者の役割を果たす事も期待出来よう。
「⋯上手くいかんものだな。」
精々がマリアをゲレタの側に置く事くらいしかない。
ミネルバは白騎士団のトップであり、竜騎士団を率いるルーメルと共にマケドニアの飛行部隊を任されている。
⋯実務については、ミネルバよりも配下のパオラかカチュアが行い、実働をミネルバとエストが担う形となっていた。
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今のゲレタの立場はマケドニアのみならずドルーアや両国の将来的な問題。
曰く『中長期的問題』について動く立場だ。
勿論、その上でマケドニアの大臣としての役目もこなしている。
ゲレタが養育しているチキの存在もあり、ドルーアからは魔竜族の長であるモーゼスが基本的に側についていた。
であるならば、マケドニアもまた人を出さねばならぬと強弁出来よう。
言うまでもなくこの様な事態となったのは己が至らないところが大きい。
そうミシェイルは思っていた。
だからこそ、せめて自分の出来得る限りの事はせねばならない。
それがミシェイルというひとりの人間が果たすべき責務なのだから。
エリスルート完結記念の外伝
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いる
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いらない
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そろそろリンダルート書いて、どうぞ?
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そんなことよりチキを出せ
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その他