汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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何やら需要がありそうなので投下




異章 虚空

「⋯そうか。」

 

 

マケドニア王⋯いや、()マケドニア王ミシェイルが目を覚ました時には全てが終わっていた。

 

 

 

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自身の妹であるミネルバとその騎士によるニーナ王女救出。聞けばグルニアの黒騎士とその騎士が主体だったそうだが、何の慰めにもなりはしない。

 

 

ゲレタはその事実を知るや、単身ドルーアへと赴き事の次第とマケドニアの不首尾を謝罪。

その上で

 

 

「この失態は偏に事態を予見しておきながら、対策出来なかった我が身の不徳の致すところ。

⋯ドルーア皇帝メディウス殿。我が命ひとつでご堪忍頂きたい。

何卒。」

 

と己の命を差し出そうとした。

 

 

メディウスにとってはさして意味のない話であったが、ガーネフはマケドニアにおけるゲレタの影響力とミシェイルの心証の悪化を理由にゲレタの助命を進言。

 

結果、マケドニアは事実上ドルーアに対してものを言う事すら叶わなくなってしまう。

 

 

 

ゲレタはその後、人が変わったかの様にマケドニアを守る為にあらゆる手を講じる事となる。

 

裏切り者であるミネルバに理解を示す者達への配置転換。

孤立するであろうマケドニアの為にグラやグルニアを通じて食糧を買い集め、民への負担を可能な限り軽減した。

 

 

その余りにも過ぎた働きは一部の者から

 

 

「ゲレタ殿は陛下を蔑ろにしているのではないか?」

 

との疑義を受ける程だった。

 

 

 

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「⋯馬鹿者が。

死にたくない。そういつも貴様は言っていたであろうが。」

 

 

 

ミシェイルは己に未だ従うルーメルとリュッケより何があったのかを聞き、天を仰ぎ。⋯⋯そして呪った。

 

 

 

 

聞くにゲレタはあっさり殺されたらしい。

無理もない。

 

あの男は「戦いという選択をした時点で俺は役立たずなんで。」といつも苦笑していたから。

 

 

だが、その後

 

 

 

 

 

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「⋯ジェイガン、本当に私はこれで良かったのだろうか。」

 

 

マケドニア本城を制圧したマルス率いるアリティア軍。

本来ならば、一刻も早くドルーア皇帝メディウスを倒さねばならないと兵を進めたいところではあった。

 

しかし、常軌を逸したとも言える程に苛烈

⋯⋯いや激烈なマケドニア軍の反撃を受けて、マルス達は心身共に大いに疲弊してしまう。

 

 

特にマケドニア城門前で国王ミシェイルからその地位を簒奪した人物を倒し、マケドニア全土にそれが知れ渡ってからのものは

 

 

マケドニアの王女であるミネルバ王女とマリア王女。ミネルバ王女の騎士であるパオラ、カチュア、エスト。

マケドニアの人間であるマチスとレナ。

彼女達の様子は見ていられない程に憔悴していた。

 

 

 

その他の者達とて、彼女達程ではないにせよ疲労の色が隠しきれず、平静を保っているのはジェイガン、オグマ、ナバール、ハーディン、シーザとラディくらいのもの。

それもあくまで精神的なものに過ぎず、疲労は隠し切れない。

 

 

マルスとしては、国王ミシェイルから国を簒奪した人物であればマケドニアの民や兵からの支持などないと思えたのだが

 

 

 

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「貴様らがっ!貴様らが全てを奪うと言うのか!」

 

「死ねい、裏切り者が!」

 

「他国人であるあの方がどれだけ心を砕いていたか。

それを他ならぬマケドニアの王女が不意にするか!」

 

 

ミネルバはマケドニア城の自室の枕に頭を押さえつけて、必死に嗚咽を押し殺していた。

 

あの者は兄を、マケドニアを裏切ったのではなかったのか?

兄に近付き、兄を唆したのではなかったのか?

 

 

少なくとも自身はそう感じた。

だからこそ

 

 

「御自身のお立場を良く考えて行動して頂きたい。」

 

出立の時にそう言われてもそこまで深くは考えなかった。

変わり果てたと思っていた兄の元に戻ろうともしなかった。

 

 

⋯⋯それがこのザマだ。

 

 

城の者達からは白い目で見られ、兄の自室に入る事は許されず、あの者が何かを残したのではないかと調べようにも、その全ては焼き捨てられていた。

 

 

「⋯⋯何の為に私は。」

 

 

その問いに応える者は、もういない。

 

 

 

----

 

 

 

 

針の筵

それが彼女達の今の状況を示すに足る表現だろう。

 

 

 

パオラ、カチュア、エスト。彼女達は自分の選んだ道がミネルバ王女とマケドニアを守る為に必要と思い、必死に戦ってきた。

 

 

マケドニア各地を天馬騎士や竜騎士が領内の巡回の為に駆けている。

だが、誰一人として彼女達に声をかけるどころか、視線すら向けようとしない。

 

 

嘗ては愛馬を預けていた者の姿はなく、彼女達は自身の手で愛馬の管理をするしかなかった。

 

 

 

そして竜騎士と天馬騎士の数は目に見えて減っており、その士気も高いとは見えない始末。

 

 

故郷に帰ってきたと言うのに

国を取り戻した筈なのに、まるで高揚感などあろう筈もなく

 

ただ虚しさだけがそこにはあった。

 

 

 

 

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「⋯戻りました。父上、母上。」

 

「⋯⋯まさか此処まで息子と娘の帰還を喜べない日が来るとは思わなかった。」

 

マチスとレナの二人は実家に戻っていた。

とは言え、二人を見る両親の視線は厳しい。母親に至っては、口を開こうともしない程。

 

「お父様、お母様。⋯その。」

 

「お前達がどの様な心で国を裏切り、このマケドニアを必死に守ろうとした方々を討とうとしたのか。

聞きたくもないし、聞く気もない。⋯マチス、レナ。お前達は二度とこの家の門をくぐる事は許さぬ。」

 

「っ!」

 

「⋯っ」

 

二人の喉から声にならない悲鳴が漏れる。

 

「己の国を裏切るとはそういう事だ。

新たに国王となるのはミネルバ王女だろうが、我等は心ひとつにしてお支え出来るとも思えぬ。

好きに生きよ。」

 

 

 

 

----

 

 

 

 

 

光があった。

 

 

それはマルス達やミシェイル達にも視えない程に薄く、壊れそうな仄かな光。

 

それはマケドニアの空をまるで見回るかの様に

 

 

 

「⋯あれ?」

 

「どうしたのじゃ、チキよ。」

 

 

「いま、ひかりが」

 

 

 

その光は溶けるように空に消えた。

 

 

 

 

 

 

 




(速報)チキルート絶賛苦戦中(いつもの)《28連敗》


今のメンタル的に割とダウナー系の話の方が指が進む悲しみ。


でも、中途半端に試作品の山は積み重なる。
気長にお待ちください。

エリスルート完結記念の外伝

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