汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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離れ、結び

「⋯冗談、ではないのだろうな。」

 

「⋯⋯残念だが、事実だ。」

 

 

カダインの一室でミロアとガーネフが沈痛な面持ちで話をしていた。

 

 

ガーネフとて、カダインで魔法を学んだ身。

確かに師であるガトーの元を離れたが、カダインに嫌悪感は勿論、憎悪している訳でもない。

 

だからこそ、カダインの魔道士の中でマケドニアに移住したい者が居るのならばそれを受け入れる窓口をガーネフは担当している。

 

 

 

「それにしても、アカネイアは正気なのか?」

 

「話が事実なれば正気とは思えぬ。」

 

ガーネフの心底呆れた言葉にミロアも重々しく頷く。

 

 

「マケドニア征伐の準備期間にこのカダインを攻める、か。

どうやら、今のアカネイアは我等と見えるものが違うらしいな。」

 

ガーネフはせせら笑う。

 

 

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ガーネフにとって見えるものが違う者として、真っ先に思い至るのはゲレタである。

 

 

ゲレタはマケドニアとドルーア。そして人と竜人族の現実を直視し、その上でその2つを結び付けた。

情と利。双方で。

 

 

だからこそ、マケドニアとドルーアの結び付きはアカネイアと大陸各国のそれとは比較にならない程に強固だ。アカネイアとの戦いこそ想定しているものの、戦う場所を固定。戦闘後の状況も予想しながら未来図を描いている。

 

 

確かに神竜の姫とマリア王女と結ばれる事となったが、あくまでも感情ありきの話。

 

 

マケドニア、ドルーア。両国の民はまだ見ぬ

しかし訪れるであろうより良い明日の為に努力を惜しまない。

 

 

 

それに比べてアカネイア騎士団の動きの何と緩慢にして、理解出来ない事か。

事の良し悪しはさておき、アカネイア王国はこの大陸の要であり、象徴とも言える国家。

 

であれば、その行動には正当性を持たせるべきであり、大陸各国が納得するだけの名分を確保すべきだろう。

 

 

尤も、それを我等がさせるかどうかはまた別の話だが。

 

 

 

 

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目の前の友人は冷たい笑みを浮かべ

 

 

「このカダインを落としたとして、どれだけの価値があると言うのやら。

カダインはその中身たる人材こそが宝と言うに。」

 

と吐き捨てる。

 

その通りだ。カダインの価値は魔法の知識、魔道士の存在にこそあり、カダインを攻め落としたところで旨味などあろう筈がない。

それどころか、砂漠の中にあるカダイン。その保持にはそれ相応の負担がのしかかる。

 

 

勿論、攻めるとして砂漠に適応するのは難しく、かかる物資の多さと過酷な環境に適応せねば戦わずして屍を晒す事となるだろう。

 

 

 

「⋯あまり言いたくはないが、これは好機でもある。」

 

「この地を離れる為の理由となる、か。」

 

 

カダインの象徴である大賢者ガトー。

魔法を学ぶ者にとっては仰ぎ見る極天。その人物がカダインより離れる事を口にした。

 

だが、それに従う事を良しとしない者達もいる。

 

 

カダインは自給自足するには余りにも周辺環境が過酷であり、それを可能としていたのは転移(ワープ)の魔法を操れる者達の努力によるところが大きい。

 

 

 

それはあくまでもカダインの外からの物に頼っていたに過ぎず、アカネイアとの決別を選んだ事で外部からのそれが滞る事は間違いない。

 

だが、カダインの魔道士達はアカネイアの走狗になるよりも、魔道士としての責務。即ち、魔法を無用に広める事をすべきではない事を守るべきと選んだ。

 

 

 

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カダイン誅伐などという世迷言がアカネイアで大きな力を持ちつつある以上、魔道士達の選択の中にアカネイアや教会に与する。というものはなくなった。

 

 

 

更にグラ国王ジオルよりカダインに対しての受け入れ提案もあり、魔道士達はそれぞれの選択を迫られている。

 

マケドニアに向かう者はガトーやカダインを去ったとはいえ、確かな実力を持つガーネフ。娘リンダと共にマケドニアで生きる事を選んだミロアと共に

 

 

少し前にアリティアの若者の師事を受け入れたウェンデルは弟子の国であるアリティア

 

自身の実力を高めたいと願い、師の元を離れる事を選んだエルレーンなどはグラ

 

それぞれ道を選ぶ事となった。

 

 

 

 

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アカネイア国王はひとつの決断をした。 

 

末の姫であるニーナ。彼女の継承権を剥奪し、アカネイアから追放するというもの。

 

 

と言うのも、余りにもアカネイアが混乱している事に心を痛めた彼女は父であるアカネイア王を説得しようとした為である。

 

これは彼女の側仕えの者達が混乱するアカネイアの事を彼女に教えた事によるものであったが、王位継承権のないに等しい彼女に国王は元より彼女を敵視する筈の王位継承者達すらさしたる関心を持ち合わせていなかった。

 

 

それよりも、自分こそがアカネイア王家を継ぐに足る存在であると示さねばならず、騎士団や貴族などとの繋がりを強化すべく各々が動いていた。

王子のみならず、王女も積極的に動き回り

それが教会の付け入る隙、そして派閥力学による将軍就任などという情けないにも程がある事に繋がっていた。尤も、それを気にする王族は居なかったが。

 

 

事実上王位継承争いから蚊帳の外扱いされたニーナ。そんな彼女の側に仕える者達。彼等は己の立身出世よりも、ニーナの安全やアカネイアの安寧を願う者達が集まっており、ニーナに対する沙汰に対して不満を抱く事となる。

 

 

 

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「お初にお目にかかります。アドリア伯。

私はエレミアと申します。」

 

「その装束からするに教会の者であろう。

⋯幾ら理屈を説かれようと、マケドニア征伐やカダイン誅伐に賛同出来ぬ。」

 

「それは勿論、承知しております。」

 

アドリア伯ラングの元に教会の司祭である女性エレミアが訪れていた。

 

 

「であるならば何用か?」

 

「実は総本山においても、此度の事について意見が割れております。ボア司祭を始めとしたカダイン出身の司祭。そして私の様な少数の者は賛成出来ぬとしておりまして」

 

「⋯なるほど、我等と協力出来る。

そう言うのだな?」

 

ラングの言葉にエレミアは神妙な面持ちで頷く。

 

 

 

 

 

悪くはない話ではある。

 

 

新たに将軍となった人物は功を挙げる事にしか興味のない人物。

マケドニア征伐など夢物語でしかなく、間違ってもカダイン誅伐などという難事と共に考える話ではない。

 

 

マトモな者は口を噤み、身の程知らずな連中ばかりが喚き散らす。それが今の騎士団。

 

⋯まぁマトモな者達とて、民からすれば同じ様なものだろうが。

 

 

 

何せ自分の様な者ですらマトモに思えるのが今のアカネイア。

はっきり言って最早アカネイアは末期としか言えまい。

 

 

何とか文官達が気を吐いているからこそ、国として成り立っているだけで、その文官達の中にもいつまで経っても一向に良くならないアカネイアに失望する者も出ているそうだ。

 

 

寵姫などにうつつを抜かし、政治にも軍事にもさしたる関心も持つ事はない。

最早お飾り以上の意味は無いというのに、それでも絶大な権限を手放そうとはせず、マケドニア征伐を画策した人物の様に大した功も挙げた訳でもない者を将軍とする。

 

 

王位継承権を巡って王子達も好き勝手動き、アカネイアという国は千々に乱れる事を許容。

 

 

教会もまたその争いに口を出し、混乱を助長しているとなれば

 

 

 

「⋯⋯やむを得ぬ、か。」

 

どうやら多くの血を流さねばアカネイアは目を覚まさないらしい。

 

 

「エレミア殿、今度はボア司祭と共に今後の事を話し合いたい。場を設けるが宜しいか?」

 

「必ずお伝えしましょう。」

 

 

 

 

 

エリスルート完結記念の外伝

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