汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
人は真実を知りたがる。
それが自身の持つ価値観を砕くものとしても
「大惨事ではないか、それは。」
ドルーアより戻ったゲレタとチキ。
当然ながら、フォルセティとの件についてミシェイルにも共有する話として、レナを使者として報告した。
ミシェイルは他の大陸の出来事とは言え、それを知る事でマケドニアの気を引き締めるべきと判断。
マケドニア城にゲレタを召還。詳しい話をさせる事となった。
⋯ミネルバ達も同席させた上で
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「血の祝福などではなく、呪いですよ。これは」
ゲレタからすれば、血統主義に神器が絡めば碌でもない事になるのは分かりきっている事。
悪魔合体もびっくりな合体事故と思いたい話だ。
とは言え、この話がこの大陸において他人事にならない国家がある訳で。
「⋯兄上、確かアリティアのファルシオンも。」
ミネルバは顔を青褪めながらも口にする。
アリティアのファルシオン。
これは血を受けて継承者が決まった訳では無いものの、その危険性はユグドラルのそれと変わらない。
「まぁそうでしょうね。
とは言え、それは『力に伴う責任』でしょうよ。」
ゲレタからすれば、ファルシオンの継承者が
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原作において、アカネイア再興の手段としてハーディンをニーナの伴侶としている。
が、アカネイアの事を何よりも優先するのであれば、もっと良い方法があったと思う。
そう、ニーナとマルスの結婚だ。
エリスは生きていた以上、アリティアの後継者はエリスの夫にしても良いし、マケドニアの様に女王としてエリスを擁立する手もある。
マルスの婚約者であるシーダはマルスがニーナの伴侶として確固たる地盤を固めた後に側室として迎え入れても良い。
そうなれば、神器は全てアカネイアの元に集まる事となりアカネイアは安定するだろう。
⋯ニーナとマルスの代までは
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神器とは絶大な威力を誇る理外の武器。
となれば、それを有する家の場合
それを使いこなせるか?と言うのはかなり大きな影響力を持つ。
仮に本人達が納得していたとしても、従う者達からすれば納得できるものではない。
仮に長男が神器を使えず、次男が使えたとなれば
果たして次男を次期当主に推そうとする者は出ないだろうか?
この様な問題が常に付き纏う事となろう。
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「⋯それよりも本当なのでしょうか?
いえ、ゲレタ殿の話を疑いたいとは思わないのですが。」
パオラはそう口にする。
それはそうだろう。仮にも一国の皇子が
「まぁその結果大惨事になった訳で。⋯仮にもナーガから血を与えられた末裔の姿と思うと情けないにも程があるだろうが。」
「⋯⋯その人を探そうとしたのかな?」
ゲレタの言葉にチキはぽつんと呟く。
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そもそも、物語の発端となるグランベルによるイザーク遠征。
その指揮官がクルト皇子である必要はない様に思える。
クルトがその時点でも妻帯者でなかった事(※1)も、シギュンを探していたのではないか?と思えなくもない。
既に国王アズムールは老齢であり、本来ならばクルトは皇子として宰相レプトールと共にグランベル本国に居るべきだろう。
だがそうしなかった。
クルト皇子に対抗馬、つまり皇位継承争いの相手がいたのであれば目に見える功績は必要。⋯だが、そうではない。
ではイザーク遠征の看板として必要とされた?
しかし、遠征にはシアルフィ公爵バイロンとその騎士団にユングヴィ公爵リングとユングヴィ公爵騎士団主力が参加していた。
その上、バイロンはティルフィングを使いこなせ、イザーク遠征においても持参している。
コレ以上ない格があるだろう。
相手は剣士の国イザーク。
ともなれば、グランベル王国内の騎士団で有利に戦えるのは遠距離から射撃出来るユングヴィ騎士団。近距離の戦闘ならばドズル公爵騎士団も選択肢に入る。が、斧と剣では相性が悪く、その上歩兵が殆どのイザーク軍に騎兵で武器の相性も悪いとなれば有利に立ち回れるのは難しい。
つまり、クルト皇子がイザーク遠征に参加する意味はないに等しい筈なのだ。
それよりも、クルト皇子が
という方が理解出来るだろう。
勿論、そうであったならば廃嫡待った無しの話なのだが。
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「否定出来んのが恐ろしいな。」
チキの言葉にゲレタは苦笑するしかなかった。
「⋯それは、流石に。」
パオラも啞然とするしかない。
そして
「後継者争いに嫌気がさして、国を出る王子がいるのか。
⋯ゲレタ、これはその、本当なのか?」
「⋯⋯⋯⋯ですよねぇ。」
ミネルバの問いかけにゲレタは盛大な溜息をつく。
「そして国に戻って王弟達を倒し、神器を継承。
そのまま他国の問題に最期まで付き合った。⋯私達が言える話ではないのかも知れませんけど。」
カチュアも理解の外の話に困惑の色を隠せない。
「ミネルバ、良い機会だから言っておく。
我等は王族、国の発展の為ならばその命すらも差し出さねばならない立場だ。
⋯忘れるな、常に我等の行動一つ一つが見られている事を。」
「⋯⋯はい。」
ミシェイルの言葉にミネルバは真剣な面持ちで頷く。
「まぁ、実際はミシェイル陛下に詰め腹を切らせるなんて事になる前に自分が先に死ぬべきなんですけどね、本当は。」
「「それは駄目」」
ゲレタの言葉にチキとマリアが全力で抗議の意思を示す。
「⋯ゲレタ、お前の気持ちは嬉しく思うが、仮にも妻を持つ身だろうが。
もう少し言い方があるだろう?
そもそもお前がその様な下手をうつとも思えん。」
「⋯確かに。
ゲレタなら、そうなる前に私やパオラ達を沈めそうだな。」
ミシェイルとミネルバはそれぞれ軽口を叩く。
何せ、マリアの夫となるのであれば、二人にとって義理の弟とゲレタはなるのだ。
多少は浮かれるのも仕方ないだろう。
「そうですね、そうなる前に
「ミネルバ様、私達を巻き込まないで。」
エストは引き攣った笑みを浮かべる。
エストは良く知っている。
ゲレタという人物がやろうとすれば、自分達を書類の海に沈める事など容易い事を。
そして、マリア様とレナという貴重な戦力を失った自分達で白騎士団関連の事務作業を全てこなせない事も。
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「レナ!」
「マチス兄さん、どうして此処に?」
ミシェイル達が集まって話をしている時、マリアの侍女であるレナはマケドニア城の一室に控えていた。
そこにレナの兄であるマチスが入って来る。
「いや、お前の事が心配で。」
「心配する事は無いと思うのだけど。」
レナの言葉にもマチスの表情は晴れない。
「⋯だが、お前の仕えているマリア様の」
「それ以上は言わないで。」
レナは兄の言葉を強い口調で遮り
「兄さん。
私はマリア様の侍女で、兄さんはマケドニアの騎士。
兄さんが今口にしようとした事は誰もが不幸になるだけ。」
「⋯だがな。」
「騎士マチス。貴方は仕事中の筈よ。
直ぐに戻って。」
マチスは暗い表情のまま、部屋を出て行った。
⋯その姿をミシェイルに仕えている者達が目にしている事をマチスは最後まで意識する事なく。
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「ルーメルからの報告では、マケドニアとドルーア近くに船影はなく、騎士達は魚の捕獲にも慣れたとある。
アカネイア沿岸への偵察は現在中止しているそうだ。」
「白騎士団は国内の巡回を竜騎士団と共に継続して実施しています。今のところ、ドルーア沿岸に『例の部族』は隔離出来ているのを確認しました。」
「マケドニア国内の造成も順調です。
地固めが終わった場所から家の建設と栽培を開始、来年にはある程度収穫出来るのではないかと。」
「共同回廊の整備も順調かな。
回廊周辺も整備し、家屋の建設や畑の整備と拡張も進めては?という話も出ているよ。」
ミネルバ達の報告をミシェイルとゲレタは真剣に聞く。
「此方からは無地の魔道書、スクロールの生産をガーネフ殿が提案。現在、ガーネフ殿とガトー殿。カダインから移住するミロア殿を中心として行なう事になるかと。
識字率の向上や文化、娯楽面への梃入れに歴史書の作成を考えております。」
「氷竜族からは氷で作った保管庫の整備と保持。
火竜族からはマケドニア各地に人員を配備して、生活の補佐をしてはどうか、と聞いているよ。
あと、氷竜火竜両族が協力して温泉の整備もしたい、と。」
ゲレタとチキの報告を受けて
「⋯任せる。」
ミシェイルは頷き
「それにしても、変わるものだ。」
そう感慨深く呟いた。
その言葉にミネルバ達は重々しく頷く。
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今のマケドニアは先王の時に比べて明らかに良くなったと言えるだろう。
ミシェイルは先王以外に責任を問わず、
「責任を取りたい?
そう思うならば、今のマケドニアに協力せよ。
あいにく個人的な感傷の為に人を遊ばせる程、マケドニアに余裕はない。
これからの働きを以て、その責を果たせ。」
としている。
故に先王からミシェイルに王権が移ったとしても、殆ど血が流れる事はなかった。
だからこそ、より奇妙に映る。
「⋯兄上、ひとつお聞きしたい。
何故、ゲレタはあの様な事を?」
その場を
パオラ達は見た。
ミネルバのその言葉にマリアの表情が翳った事を。
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「⋯マケドニアの者として見過ごせぬ事を企んだ為。
そうなっている筈だが?」
「それは理解しております。
ですが、よくよく考えれば不自然極まる話だと思いまして。」
鋭い射抜く様な視線を向けるミシェイルに臆する事なく対峙するミネルバ。
ゲレタは頭を抱えて、チキはそんなゲレタを心配している。
マリアは視線を下に向けており、その表情は伺い知れない。
パオラ達はその様子に何故か寒気を感じた。
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「真っ直ぐなのはお前の長所だな、ミネルバ。マリアとてそうだろうが。
俺は当時王子であり、マケドニアを変える為には兵達の支持が必要だった。
⋯だからこそ、ゲレタが汚れ役を買って出ねばならなかった。」
「担ぐ神輿が血に汚れては困ります。
それを担うのは我等臣下の役目であるべきでしょうよ。」
ミシェイルの苦悶に満ちた言葉。だが、ゲレタはそれに対して冷淡に言い切った。
「無用な血を流す必要はありませぬ。
⋯なれど、他国の狗と成り果てたのみならず、あまつさえアカネイアに売り渡そうとする者達。そんな連中にかける情けは無用かと。」
「⋯どういう事だ、それは。」
ミネルバは雰囲気の変わったゲレタに疑問をぶつける。
「どうやら、陛下はこの場で明らかにしたいご様子。
なれば、当事者である私から説明する方が良いでしょうな。
⋯但し約束して頂く。
此処で聞いた話、その全てを貴女方の心の内に留めて貰い、他言する事は決して許されぬと。」
「⋯それだけの事、なのか?」
ミネルバの問い掛けにも
「お約束頂けねば、話は出来ませぬ。
王妹ミネルバ、騎士パオラ、騎士カチュア、騎士エスト。
返答は如何に。」
ゲレタは答える事なく、ただ問うのみ
「⋯分かった。約束しよう。」
「分かりました、必ず」
「はい、分かりました。」
「⋯はい。」
ミネルバとパオラ達は己に課せられていた役割を知る事となる。
そこに彼女達の意思は介在せず、全ては整えられたシナリオの為
次回
悪意
エリスルート完結記念の外伝
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いる
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いらない
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そろそろリンダルート書いて、どうぞ?
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そんなことよりチキを出せ
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その他