汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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変化とは、誰かに取っての理を変える行為。


大きな変化は必ずしも受け入れられる訳では無い。


理外

ガーネフによる教育

 

それはアカネイアという国家に対する印象や自らの在り方をも考えさせるものとなった。

 

 

彼等は教わった事を自分の中で消化、受け入れねばならない。

用意された住宅に向かう彼等の表情は浮かないものであった。

 

 

少し前の彼等であれば、受け入れなかっただろう。

⋯だが、彼等はアカネイアの粗暴さを知った。

 

 

 

アカネイアによるカダイン誅伐

 

 

それはアカネイアや教会に対して協力してきたカダイン(じぶんたち)に対する裏切りであり、許す事など出来よう筈もない。

 

 

確かにカダインの指導者であるミロアはアカネイアの最高司祭の地位を返上し、カダインはアカネイアから距離を置く事とした。

 

 

だがそれは最近のアカネイアの動きが大陸秩序を乱すものであり、その様な行為に手を貸す事はカダインとして認められないもの。

 

 

非を咎めたのではなく、離れる事を選んだに過ぎない。

 

 

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故に魔道士達はアカネイアに対して反感を持っており、そのアカネイアの歴史が都合の良いものとされている。としても反発よりも先にある種の納得をしてしまう事となった。

 

 

だが、それでも今までの常識が覆るとなれば戸惑うのは無理も無い話であり、ガーネフは勿論ミシェイル達も理解を示す事であろう。

 

 

 

カダインの魔道士達の受け入れ。

 

 

それはマケドニア、ドルーアの今後を見据えた上で必要は試金石となる事業とも言える。

 

 

マケドニアの人口は決して多いとは言えず、本来戦いに出すべきではない女性をも天馬騎士として戦力化している。

現在、マケドニアは他国との戦争状態に入っておらず、兵員の損失は皆無と言えよう。

 

しかしながら、マケドニアの気風は国民皆兵であり、次代への繋ぎ手である女性であろうと例外ではないところがある。

 

 

如何に国内を発展させ、他国との戦争を回避したとて、人口が減少し続ければその国に未来(さき)はない。

 

 

 

故に国外からの流入に頼るところ。

しかし大陸各国とは海を隔てた立地である。となれば自然な流入は有り得ず、移民を募ろうにも各国にもある程度配慮するべき。下手に手を出して反感を買うのは好ましい事ではないのだから。

 

 

となれば、以前ガーネフが話したように奴隷を購入するのが妥当ではあるだろう。

 

 

 

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カダインの者達はマケドニアに移住し、ドルーアとの共生を受け入れて貰わねばならない。

 

が、相談出来る相手に彼等は困らない。

旧き世から今を生きるガトー。ドルーアの要人であり、カダインで学んでいたガーネフ。自分達の戸惑いを最も理解出来るだろうミロア。

 

 

であれば、問題が起きる可能性は低くなろう。

仮にこれでも問題が起きるとなれば、移民政策そのものを見直す必要もあるとゲレタは見ている。

 

 

そして、問題は何も彼等から起きるだけではない。

 

 

マケドニアの民やドルーアの竜人族から起きぬとも限らないのだ。

 

 

それらの問題の洗い出しは移民政策を議論する上で欠かせないもの。

 

 

マケドニアの民とドルーアの竜人族は情理双方の面によって結びついた。

カダインの者達はその苦労を乗り越えた後に移住してきた。となれば、マケドニアの民はどう彼等を思うだろうか?

ドルーアの竜人族はどう見るだろう?

 

 

ミシェイルやメディウスの命。

或いはゲレタやチキが願えば共生は叶うだろう。

 

 

だが、それでは不満があったとしても押し隠される。

そうして隠された不満は汲み取る事が難しくなり、それが続けば混乱を招きかねぬ。

 

 

王や貴族あっての国ではない。

民が支えるからこそ、貴族や王。国があるのだ。

 

 

 

それを忘れてはならない。

 

 

 

----

 

 

 

マケドニアとドルーアは外征をするつもりはなく、防衛戦のみに専念。

海を堀として、敵は堀の底に落とす事を主目標としている。

 

 

となれば、懸念すべきは内部からの崩壊。

それを防ぎつつ、国内を更に発展させ未来への希望を絶やさない様にしなければならない。

 

 

幸いにもドルーアはメディウスを頂点とし、モーゼスがそれを支える体制が確立している。

それをガーネフやガトーが補佐。竜人族も概ねドルーアの方針に賛成しており、今のところ問題はないと言えよう。

 

 

マケドニアも豊かになりつつある事から、概ねミシェイル体制に対する批判的な話は聞こえてこない。

 

 

 

 

が、気になる事もまた存在している。

 

先のマケドニア城における話し合い。その最中、マリア付きの侍女であるレナ。彼女に対して兄であるマチスが接触出来たという事実だ。

 

マケドニアの中心であるマケドニア城。確かに門番に対しては『不審人物は通すな』との命が下されている。

マケドニアの騎士であるマチスならば、マケドニア城に入る事は許されよう。

 

 

しかし、マチスはあくまでも一騎士に過ぎず、マリア(王族)の侍女に会える立場にはない。

身内が国の要職にあるからと自由に会えるとなれば、機密情報の流出や職権の濫用にも繋がりかねないのだから。

 

 

 

ましてや、先王の時には王子であるミシェイルであっても、妹であるミネルバやマリアに会う事は許されなかった。

だからこそ、ミシェイルの意を受けたゲレタが動いたのだ。

 

国王こそ代わったものの、マケドニア城内の人員については必要以上に動かしていない。

 

 

⋯つまり、王族ですら自由に身内と会えなかったのは城内で働く者は知っている筈なのだ。

にも関わらず、有力者の子息でしかないマチスをレナに会わせる判断をすると考えられようか?

 

 

----

 

 

 

陛下に対して従いながら、この様な事態となった。

 

 

となれば、レナに対する

そしてレナとマチスの実家に対する厚遇に対する反発と考えるのが自然となる。

 

 

特にマリアがゲレタの側に行く際、マリアの侍女達は配置換えを受けている。

その中で最も経験の浅いレナのみが同行を許された。それは過ぎた厚遇と受け取られても否定出来ない。

 

 

ゲレタに対する反発はあったとしても、それを口にする事は今のマケドニアにおいて不可能だ。

 

仮にゲレタを否定したとなれば、ゲレタの挙げた功績以上の働きを求められるのは必至。

しかも、目に見える形での成果を求められるだろう。

 

 

 

 

実のところ、マケドニアはひとつに纏っているとは言い難く、足の引っ張り合いは確かに行なわれていたのだ。

 

それがマチスの一件で表面化しただけに過ぎない。

 

 

 

確かにゲレタはレナを重用し、彼女の実家を守った。

だが、そこまでだ。

 

 

仮に彼女の実家がこれから目立った功績を挙げたとしても、ゲレタはそれを称賛する事はあれど、その功に対して何らかの褒賞を出すつもりはない。

 

たとえ、かの家がマケドニア社会の中で孤立したとしても、それについて手を出すつもりも更々なかった。

 

 

一度助けたのは事実。

だが、何度も助ける理由も義理もない。

 

 

 

----

 

 

 

「⋯⋯馬鹿者が。」

 

 

息子を呼び出し、叱責した男はため息混じりに呟く。

出来の悪い息子であっても、向上心があるならばマケドニアの為になると思い跡継ぎとしていた。

 

 

本来国王からの話を受けぬと言うのは相当な理由がなければやってはならない事。

 

更に言えば、婚約の話だとしても本来家長たる自分が国王と話をして、受けるかどうかの判断をするのが筋。

 

 

にも関わらず、そうしなかったのは陛下からの気遣いがあったからこそ。

断るとしても、断り方というものがあり、娘が断ったとなれば様々な問題が出てくるのは明白だった。

 

 

それがなかったのは、陛下や大臣殿が此方に器量を見せたからに他ならない。

 

本来話を断った娘を王族の侍女に取り立てる

等というのはあり得る話ではない。

 

それこそ我等がマケドニアでも屈指の影響力を持っているならば話は変わるだろうが、そうではなかった。

 

 

 

であれば、我等は陛下やマケドニアの為に励まねばならぬ。

それだけの温情をかけてもらったのだから。

 

それをアレは事もあろうに不満に思い、それをマケドニア城において口にしようとした。

 

 

娘は大臣殿に報告したとある。

勿論、陛下の耳にも届いている筈。

 

にも関わらず、何も息子にも私にも沙汰はない。

 

 

それが何よりも恐ろしい。

 

 

 

陛下は寛大であろうとなさっておられる。

⋯だが、大臣殿はそうではない。

 

 

----

 

 

 

陛下が先王を弑したその日、大臣殿はマケドニアの有力者。先王からアカネイアとの交渉を任されていた者達を殺している。

 

しかも、リュック将軍らを引き連れ、その一族全てを余さず殺しきった。

 

 

陛下⋯いや、当時は王子であったミシェイル様の従者であり、不仲であったミネルバ様との橋渡し。そして、先王が考えておられたミネルバ様直属の組織。

その手続きや調整、書類作成などを行なっていた。

 

実のところ、先王はミネルバ様やその騎士達と文官の仲が思わしくない事はご存知だった。

故に大臣殿が居られねば、ミネルバ様は国王つまり先王に対して人を頼まねばならなくなっていただろう。そして、先王は自身の手の者を『ミネルバ様の要請に応じて』ミネルバ様の元に出す事が出来る様になった筈。

 

そうなると、ミネルバ様やその騎士は先王が用意した者の意見を受け入れねばならなくなる。

自分達が出来ない事を任せる上、国王からの人員ともなれば否やと言える事は不可能だ。

 

 

だが、その目論見は大臣殿の存在により外される事となる。

 

 

 

 

そこまで手を回せる人物が、息子の不満を理解しながら何もしない。

とは思えない。

 

 

家の事を考えるならば、娘を大臣殿の妾にでもして貰えば良いだろうが。

 

 

アレでも跡継ぎなのだ。

男の苦悩は続くこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エリスルート完結記念の外伝

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