汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
対価を必要とする
血の対価を
「…パオラ姉さん」
「…何かしら?」
「……今私達飛んでる、のよね?」
「………この状態を飛んでいる。そう言える度胸があれば、そうなんじゃないかしらね」
元マケドニア白騎士団所属の天馬騎士2人は平静を装いながら、辛うじて平常心を保つ為に会話をしていた
彼女達は今、空を飛んでいる
愛馬であるペガサスに乗って、ではない
『おとーさん、そろそろ村に着くよー』
「おし。近くの広いところに降りてくれ
…にしても、すまんな」
『お父さんを助ける為だもん
私頑張る』
「…ホント良い子だよなぁ、チキは」
『ホント!チキえらい?』
「勿論だ!流石は俺達の娘」
『わーい、わーい』
と呑気に喋っているゲレタと巨大な竜
そう、チキの背中に彼女達とゲレタ。そしてペガサスが乗っていたのだ
本来誇り高い竜族が人を背中に乗せるなどあってはならないとされるが、チキには関係のない話だ
他ならぬ父ゲレタが困っているのならば、いつでもその背中に乗せるつもりなのだから
なお、チキの変身した姿は村人達にも周知徹底されており、間違って武器を向けない様にされている
勿論ゲレタの妻(チキが娘となった事により変化)であるリンダもこの姿の娘であっても愛している
愛の形とは人それぞれなのだ
因みにペガサス二頭は身を寄せ合う様にして尻尾の近くにいた
何故か二頭はチキとゲレタを恐れている様に見えたのだが、元々そこまで深入りするつもりのなかったゲレタは
「………………まぁ、良いか」
と流している
実はゲレタの世界で見る事の出来ない幻想種とも一部で呼ばれていたドラゴンやペガサスに興味津々(解体して体の中を見たい、という意味では決してない)だったのだが、こうも嫌われてはどうにもならないと内心悲しんでいたりする
それをチキが知らなかった事は恐らくペガサス達にとって幸運だったのだろう
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村の近くに着地したチキはゲレタ達をゆっくり下ろすと人の姿に戻る
一部の紳士淑女諸氏は気になるかも知れないが、チキの身につけている服はどうやら特別製らしく人に戻った際にも問題なく着装される
「りゅうのぎじゅつってすげー」
と思わずネタに走ったゲレタであるが、悲しい事にそのネタに反応してくれる者がいなければ意味がない事を悟ったとか
チキが竜の姿になっている事を知ったリンダは只事ではないと考え、近くの広い場所
つまりチキが降りた場所へと何名かの村人を連れて来ていた
ゲレタは比較的傷の軽い(それでも割と重傷寄りだが)カチュアを村人に任せ、慎重にパオラを運ぶ事とした
なお、様々な理由からお姫様抱っことなってしまいパオラは顔を赤くしていたが、妻であるリンダは然程気にしない
というのも、ゲレタ達の家には裏手に温泉があり家族風呂を楽しんでいるからである
リンダとしてはゲレタとの子供を考えていたが、チキという可愛い娘が出来た事によりそれについては暫く考えない事にしている
まぁチキが
「弟か妹が欲しい」
と口にすればその限りではないし、ゲレタが求めてくれるなら諸手を挙げて歓迎するのだが
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山奥の村であるが故に教会はなく、司祭もいない
だが、彼等なりに先人達の知恵と自分達の経験から自分達なりの治療法を見つけていた
…幸いと言うべきか、ゲレタから見てもそこまで問題となる方法ではなかった為にカチュアについては何とかなると安堵した
…しかし、パオラの方はそうはいかなかった
何せ全身を強く打ち付けており、本来ならば絶対安静となるべき所を無理矢理洞窟まで歩いたのだ
「…多分、折れてるな」
ゲレタとて、専門家ではない
しかし、彼は前世?で骨折の経験が豊富にある(あってはダメなやつ)
その為、何となくだが検討がついた
と言う訳だ
しかし魔法と剣の世界とも言えるこのアカネイア大陸においてならば、骨折の治療も癒しの杖があれば可能
という事なので
「…つまり、カチュアの傷が癒えてペガサス達が飛べる様になればどうにかなる、と?」
「余り期待を持たせるべきではないと思うが、気持ちが落ち込んでしまったら治るものも治らん
アンタの妹さんに負担をかける事になるが」
「…いえ、見ず知らずのパオラ姉さんや私を貴方は助けてくれました。その貴方を疑う気にはなれません
勿論無理はしませんが、なるべく早く回復できる様に努めたいと思います」
ゲレタは包み隠さずパオラとカチュアに話をした
2人については村長らと話し合った結果、何かあってもすぐ対応出来るゲレタ達が預かる事となる
幸いにもリンダとチキがいるのだから、男であるゲレタには言いにくい事ややって欲しくない事はカバーできるだろう
村長も可能な限り力になる、と約束している
パオラは動くのが少し難しいものの、カチュアが介助する事で何とかするとの事
ゲレタ達はカチュアの出来ない家事や食事などを手伝う
というよりも、2人がゲレタ達一家の世話になる
の方が正しいかも知れないが
「…ですが、良いのですか?」
そうパオラは口を開く
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パオラからすれば妹の命だけでなく、自分の命までこうして助けてもらっているのだ
パオラはゲレタに言った言葉
「……私は、どうなっても構わない
…だから、妹だけは」
あの言葉を嘘にするつもりはない
傷が癒えたならば、彼の為にこの身を全て擲つつもりだ
…しかし、あれは妹の命を助けて欲しいと願って差し出した対価であり、自分の命についてはまた別の話ではないか?
そう生真面目過ぎるパオラは考えているのだ
見たところ夫婦仲は良く、娘との関係も良い
…であるならば、愛人となるのは問題しかないだろう
そのくらいの良識はあるつもりだ
しかし、そうなってくるといよいよゲレタの為に何が出来るのだろうか?と考えてしまう
ミネルバ様やエストには悪いとは思うが、大切な妹の命を助けてもらっておいて口先だけのお礼で済ませられる程にパオラは割り切れないのだ
これが戦闘中ならば割り切れただろう
背中を預ける相手を助けるのも
また助けられるのもおかしくないのだから
しかし、今回は全く違う
余り動くことの出来ないパオラはこうして答えの出ない問題を抱え込む事になった
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「村の近くの見回りを手伝う?」
「はい。あの時は不覚をとりました
ですが、今の状態なら足手まといにはならないと」
まだ本調子とはいかないまでも、ある程度ならば動ける様になったカチュアは何一つ恩を返せていないと思い、ゲレタにそう話をする事にした
幸いにも姉であるパオラもある程度歩けるくらいには回復した為、カチュアがいつも側にいる必要が無くなったからである
なお、明らかに回復速度のおかしいパオラの状態を見たゲレタは
「嘘やん
何でこんなに早く治りかけてんの?……怖」
と謎のアカネイア住民の回復力の速さに驚きよりもドン引きしている
話を戻そう
となればカチュアとしても特にお世話になっているゲレタの力に少しでもなれればと思うのは別に不思議ではない
しかも、山賊がまたこの辺りを彷徨いているとなれば尚更
ゲレタが独りで向かうと聞いた時、カチュアは驚きのあまり言葉が出なかった
村人達に言っても
「…いやぁ、俺らがついて行っても逆に邪魔になるんだよ」
とか
「後始末は俺らがやる
ゲレタさんには暴れてもらう。作業分担は必要だぜ?」
などと言われる始末
カチュアはこの村の人達は良い人達だと思っていただけにショックだった
このままではゲレタが死ぬかも知れない
そう思い、彼女はゲレタの手伝いを申し出たのだ
ゲレタと出会った時の事を冷静に思い返したならば、その違和感に気付けただろう
…しかし、彼女にとってあの時の事は山賊達に嬲られた事よりも命の恩人であるゲレタに失礼な事をした
というより強く、彼女にとっては忘れたくても忘れられない記憶が勝っていた
その為
自分があれほど苦戦した山賊達がゲレタ1人に倒された
という事実を彼女は理解していなかったのである
真面目で真っ直ぐに過ぎるが故の落とし穴と言えるのかも知れない
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そして、何とかゲレタを説き伏せたカチュアは槍を持ってゲレタと共に村近くにいるであろう山賊退治に向かう事となる
「…ところでゲレタさん
姉さんから聞いたのですが、本当なのですか?」
「なにが?」
「ゲレタさんが元山賊だという話は」
「事実だが?」
基本的にゲレタという人物は余りコミュニケーションを取りたがらない。例外は妻であるリンダと娘のチキ
それに村長くらいだろうか
特に切り替えた際のゲレタの口数は更に減ると聞いた事があった
なので、カチュアはそれを不快に思う事はない
「その割には魔道士、なんですね」
「…まぁ変わり種という事は自覚しているさ
と言うより、こっちの方が効率が良い」
「効率、ですか?」
カチュアはその意味を図りかねた
「斧を振り下ろして敵を殺す
しかし、殺せるのはせいぜい1人か2人」
「…あの、少し意味が分からないのですが」
カチュアは戸惑う
その言い方ではまるで
「…いたぞ」
カチュアの思考を断ち切る様にゲレタが呟く
「…少し多いですね」
偵察任務を任される事の多い天馬騎士や竜騎士は目が良い
カチュアもその例に漏れる事なくその目で少し先にいる山賊達の姿を捉えた
斧を持つ者が4人
弓を持つ者が2人
そして、身なりからすると盗賊だろうか?
短剣を持っている者が2人
此方は2人しかいない
相手には距離をとって戦える弓持ちが複数いるとなると、厳しい
そう考えたカチュアはゲレタの方を向くと、何やら
手を相手に向けて振り下げていた
何かの魔法だろうか?
そう思ったが、その割にはその魔法が見えない
不思議にカチュアが思っていると
「…えっ?」
少し向こうにいる山賊が3名倒れた
弓を持つ2人と、恐らくリーダー格の人物なのだろう
目に見えて彼等が狼狽しているのがわかった
カチュアには何が何だか理解できず、ゲレタの方を見ると
再度、手を振り下ろした
そして、残りの5人が倒れ伏し
「帰るぞ、終わった」
そうカチュアに告げた
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カチュアは目の前で起きた事が現実のものか理解出来なかった
…いや理解出来ないのではなく、理解を拒んでいるのだ
おおよそ騎士である自分がして良い行動ではない
…だが、それでも頭が理解を拒むのだ
たった1人の魔道士で8人もの山賊を抵抗すら許す事なく殺しきる
などという事は
しかもその本人は全く疲労の色を見せない
「…貴方はそれで良いの?」
思わず口から出た言葉
それは彼を否定するものであり、不愉快になってもおかしくないもの
…だけど
「良いも悪いもない
俺にはこのやり方が必要だった
名誉?誇り?卑怯か?
んなもんには興味がない。名誉や誇りを守れば大切なものを守れるかよ」
そう冷たい笑みで答えた
でも、何処か疲れ果てた様な笑み
「…ごめんなさい」
「ま、こんな事をしなくて良い世界が1番なんだがなぁ
…中々難しいもんだ」
そう言いながら、ゲレタさんはこの場を後にする
私もそれを追いかけた
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チキにとって、村での生活は驚きと楽しさの連続だった
畑仕事を手伝ったり、交易品となる木彫り細工を作ったり、父と母に料理を教わったり、カチュアとパオラも交えて遊んだり
バヌトゥと共に過ごした10年も楽しかったが、今のチキは自然に笑顔になれる
あの冷たく寂しい神殿での生活
今の生活を知ってしまうと、何とも長い時間を無為に過ごしてしまったものだと思う
家族でお風呂に入り、寝る時は父と母の間で眠り、家の中の掃除やパオラの生活の手伝いなどをする
些細な事であっても、大切に思える人とするならば楽しい事をチキは知った
愛される喜びを
愛する素晴らしさを
チキは知ったのだ
例え彼女の生きる時の中で、それがほんの僅かな時間だとしても
チキはそれを大切に胸に抱いて生きていける
そう思った
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パオラにとって、村での生活は不慣れな事の連続だった
元々妹達と生活していたから、そこまで困る事はないだろうと思っていた。勿論、自身の身体が万全でない以上は妹やゲレタやリンダにチキにも負担をかけてしまうと考えると気持ちは落ち込むのだが
どちらかと言うと、騎士として受勲してからは妹達共々強くなろうと懸命になっていた
自分達を騎士として引き上げてくれたミネルバからの信頼に応える為にも
故に私生活についてはおざなりになっていたと考えてはいたのだが
「え、えっと
リンダさん、これはどうすれば良いでしょうか?」
「え?
…ああ、これね。これはね」
と事あるごとに手を借りねばならないのは、やはり少しばかり辛いものがあった
別にゲレタさん達が嫌な顔をしている訳ではない
ないのだが、やはりしっかりしないとならない。そう思っているだけに気分が落ち込んでしまうのだ
そして、ここの生活で1番驚いたのは
「…いいお湯ね」
「本当に」
家の裏手にお風呂があるという事だろう
マケドニアどころか、アカネイアですら貴族階級にでもならないと縁の無いとすら言われている贅沢品
しかし、どうやらこの村では珍しいものではないそうだ
衝立もある為、出入りはゲレタさん達の家からしか出来ないし、衝立の外側には低木などが植えられている
その為、安心して入れるのだ
流石に一家団欒の邪魔になるからと私とカチュアは一緒に入る事は遠慮した
確かにお風呂ともなると少しばかり危険性は高まる
カチュアに負担をかけたく無いと無理をして、私が怪我をする可能性もあるだろう
勿論、私達のあられも無い姿をゲレタさんに見せる事に抵抗が無いとは言えないのも理由だ
ゲレタさんは元々家族風呂ですら余り良い顔をしなかったと聞く
私達まで加えるとなると、1人でお風呂に入る
と言いそうではあるとパオラは思っていたり
「…情けないわね」
「そう、ね」
本来ならば、主君であるミネルバの元へ駆けつけて、支えねばならないのが自分達の役目
しかし、今自分達には何も出来ない
2人の愛馬であるペガサス
幸いにも大事に至る事こそなかったが、やはり高所からの落下によるダメージは大きく、まだ暫くは飛ぶ事は出来ないだろう
ここの人達は良くしてくれる
それには感謝しているし、特に命を救ってくれたゲレタに対してパオラは自分の身全てを差し出してなおも足りない程の恩を感じている
もし、許されるならば
この戦争が終わって平和になれば、残りの人生を彼を支える為に使いたい
そう思える程にはゲレタに恩義を感じていた
「……重過ぎんだろ」
恐らくパオラの心中を知ったとなれば、ゲレタは思いっきり顔を顰めてこう言う事だろう
それは少し彼に関わればわかる事だとパオラも思っている
我ながら不器用な生き方しか出来ないと自嘲するが、これが自分の生き方なのだ
だからこそ、余計に歯痒く思う
恩を返す事も、敬愛する主君の力にもなれない。そんな今の自分は何なのだろうか?
そう思ってしまうから
「…これからどうなるのかしら?」
「分からないわ。多分ゲレタさん達は積極的に戦争に関わり合いたくないと思っているでしょうし」
カチュアとパオラは少し沈んだ顔で星空を見上げた
いつもは届いていた空
それを見上げる彼女達は何を思うのか?
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「…グラへの救援、ですか?」
「………うむ。貴殿らアリティアの者達にとっては複雑な思いだろうが」
その頃、マルスはアカネイア貴族の1人であるラングの訪問を受けていた
ラングは思慮のないアカネイア貴族達のシーダ達への身勝手な縁談の件などを詫びた上で、言いにくそうに本題を切り出した
「勿論、それが必要と言われるのであれば
…しかし」
マルスが言葉を濁す
「マルス王子のご懸念は尤もな事
お世辞にも我等アカネイア貴族が信用に足るものとは言えませぬからな。…加えてニーナ様にお会いできるのはごく一部の者のみ
本来ならば、ニーナ様をこのアカネイアまでお連れしたマルス王子やハーディン殿に会えぬ理由などあってはならぬのですが」
ラングも苦い表情を隠しきれない
「…ラング殿。貴殿が我等に心を砕いてくれる事、感謝しております
しかし、何故この様な事に?」
マルスの腹心の部下として同席しているジェイガンは疑問を口にする
「まこと、ジェイガン殿の疑問は正しく思えます
…しかし、このアカネイアにおいては国王に上奏する役割を果たす者がおりまして
我等貴族であろうとも、その者を通さずにニーナ様にお話する事は叶わぬのです」
ラングはため息混じりにそう答えた
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この歪とも言える制度はかの建国王アドラ一世の御代から始まったとされる
何せ一つの組織を作り上げて、国を興したのは事実であった
しかし、そうであるからこその問題
これだけの軍を整えるだけの資金
メリクル、パルティアそしてグラディウスの様な素晴らしい武器を
何故全く無名であった男が用意出来たのか?
と言う疑問
当然、アドラは答えられない
素直に答えてしまえば、竜族。しかも人間の味方をした神竜ナーガの墓を荒らした事実が露見する
そうなってしまえば、英雄から一転して大悪党との誹りは免れない
と
そこで彼は思い付いた
そうすれば、自分の下手な言葉は全てその人物のみしか知る事なく終わるだろう
アドラは自身と共にラーマン神殿に侵入して宝を盗んだ者達をあらゆる手段を用いて排除した
当然だろう。秘密は知らない者が多い方が守られるものなのだから
そしてこの制度は一度アカネイアが滅んでなお、続いている
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メディウスは夢を見ていた
彼にとっては消したくあり、己の無能さと無力さの証
「メディウス!貴様我等に歯向かう気か!」
「我等はヒトなどよりも優れている
何故ヒトなどに構う理由があるか!」
ヒトの記録には残ってすらいない竜とヒト
そしてヒトを守らんとした竜族との戦い
あの時、己はナーガらと共に唯一地竜族の中でヒトに味方した
…それが正しいと信じていたから
その為に理性を捨てた同胞達をこの手にかけた
同族殺しとは本来最も忌むべき事であり、それはメディウス達竜であっても変わらない
寧ろ高い知能と理性を持つが故に、それに対する嫌悪感は他の生物と比べても大きなもの
それでも、若き日の己はヒトとの共存が叶うと信じていた
…願っていたのだ
ナーガは次代を担う子を残し、我等竜族にヒトとの共存を願い永遠の眠りについた
ナーガを慕う者達は祀る為の神殿を作り、そこに再び竜がヒトを滅ぼさんとする時に備えて用意された神器と畏れ多くもナーガの牙より作り出した『竜殺しの剣』そして、我等が同胞の封印を守る為の盾を祀った
己はナーガの安らかな眠りとヒトと竜の世界を願い、その神殿の長として世から身を引く事を選んだ
…ところが、あろう事かヒトが神殿に迷い込み
愚かにも我はその者の言を信じてしまった
…全てが奪われ、失われた
ヒトとの共存を望んだナーガを慕う神殿の者達は残らず殺され、我は辛うじてその命を保つ事が出来た
許せぬ
我等がナーガの思いを
多くのヒトとの共存の為に散っていった同胞達を
人間などを信じようとした愚かな己が
ラーマン神殿という竜の聖域を荒らされた事でナーガを慕う一部の竜達も我等と共に戦う事を選んだ
封印の盾を持ち去った薄汚い盗賊は、あろう事か古き世にヒトを滅ぼさんとした同胞達の封印の鍵となる宝玉を外したのだろう
かつて我と敵対し、封印された地竜族は目を覚ました
それらの戦力を持ってすれば、アカネイアとやらを滅ぼす事など造作もなかった
ヒトはナーガの、我等の信を裏切った
ならば我等がヒトを守る道理などありはしない
我等は徹底的にヒトを滅ぼさんと動き始めた
…だが、アカネイアの生き残りが辺境にて我等を倒さんと兵を挙げる
そして、我を討ち倒し封印したものこそが
あの様な事があってなおも、ヒトに味方するか!
メディウスが最期に感じたのはナーガに対する失望と激しい怒りだった
「…ふん」
目を覚ましたメディウスは余りにも不愉快な夢に苛立ちを隠せない
聞けば、封印の盾はファイアーエムブレムと呼ばれ、神器の1つパルティアはあのアンリの末裔たるアリティアの小僧に味方する者の手にあると言う
ファルシオンは既にメディウスの手の内
「……ならば構わぬ
大陸を真に統べるは竜か、それともヒトか」
メディウスの双眸が怪しく光る
そして、その翌日ドルーア本国よりマムクート部隊がアカネイアに向けて進撃を始めるのだった
という訳でアカネイアの予想に反してアカネイア攻撃(ガチ)を行おうとするメディウス君でした
次回更新の予定は不明です