汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
「敵が多い!
ミディア殿の部隊はどうしたか!」
ラングは必死で敵を押し留めながら、伝令兵に言葉を投げかける
「はっ!
ミディア様率いる騎士隊は、現在補給の為に後退していると
ミシェラン様とトムス様の重騎士隊が穴埋めに」
(やはり人員の質の悪さは否めぬかっ!)
ラングはそう内心で悪態をつく
元々ドルーア軍による再侵攻というものは考慮されておらず、寧ろアカネイア軍としては軍を再建次第、ドルーア領へと兵を進めるつもりだったのだ
…余りの自身の愚かさ加減に怒りすら覚えてしまう
ドルーアが占領したパレスを奪還したのだ
何故、相手がそれを放置するなどという馬鹿な話を考えたのか?
結局、アカネイア軍は自分やジョルジュ、ミディアやトムス達も含めて戦争というものを理解していなかったのだろう
(マルス王子達に早馬を贈ったとは言え、早晩戻れるとは思えぬ
このままではジリ貧か)
ラングは敵を槍で薙ぎ払いながらも、思考を止めない
となれば、甚だ情けない事ではあるが
「…やむを得ぬ
ミディア殿に伝えよ!『ニーナ様を落とせ』とな!」
ラングはそう伝令兵に伝えたのだった
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「ラング殿が!」
「はい
私も直ぐに戻らねばなりませんので」
ラングからの伝令を受けたミディアは拳を強く握りしめる
「…また、ニーナ様に辛抱してもらう他ないのか」
ミディアは余りの情けなさに立ち尽くしそうになるも
「…今はそれどころではない
早くニーナ様をお連れせねば」
そう足早にパレス内を走っていく
…だが
「何故ニーナ様にお会いできないのだ!」
「今パレスはドルーアの攻撃を受けているのだろう?
それよりも早くドルーア軍を撃退するのが貴殿らの役目であろうが」
廷臣達に見咎められてしまい、ミディアは時間を無意味に浪費する事となる
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「皆、もう少しでパレスだ!」
ハーディンは必死に愛馬を走らせていた
部下達にも疲労の色が見えるし、ハーディン自身も疲労がない訳ではない
…だが、それよりも守らねばならない
オレルアン公である兄の反対を押し切って、多くの部下の命すら犠牲にして
やっとマルス王子達と共にアカネイアを再建出来ると思っていたのだ
それが僅かな間で失われようとしている
認められる訳がない
許される訳がないのだ
そんな彼の目に映ったのは
「ゲレタ殿か!」
フードを被った男達の姿だった
ハーディンにとって、ゲレタという人物はたった一度しか見た事がないものの、その異質さから記憶に残っていた
オグマやバーツにナバールと言ったアリティア軍屈指の実力者が気にかける人物
そして
あのワーレンの惨状を作り出したと思われる人物なのだ
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「ゲレタ殿!恥を承知して頼みたい
私達と共にアカネイアを守ってはもらえないだろうか!」
いきなり後方から来たハーディンに下馬した上で頼み込まれて困惑中のゲレタです
…いや、馬上から言わないって結構な扱いなんですよ、騎士ハーディン。一介の平民風情に良くやるわ、ホント
しかも後から追いついてきた部下達にも何も言わせないとか、いやマジでこの人傑物だわ
流石に此処まで頼まれては断れんし、個人的にこの人物は嫌いではないからなぁ
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暗黒皇帝なんて原作2部では言われていたけど、正直アカネイアの悪い部分を一身に背負ってどうにかしようとした人だと思っている
闇のオーブで操られたと言うが、その隙が出来たのは恐らくニーナとの不仲だったのだろう
それは2部終章におけるニーナのロスト時のセリフからも推察出来る
なにせ
「ああ…カミュ」
だもんなぁ
思わず
コイツ助けない方が良くないか?
と思ったものだ
つまり、ニーナの想いはカミュに向けられていたのだろう
さぞやハーディンからすれば居た堪れない話だったのではないだろうか?
恐らくだが、ハーディンをトップに据えていたのはアカネイア貴族からすれば暫定的なものであり、ハーディンとニーナの間に男子が産まれれば国王としたのではないだろうか?
…まぁ、その辺りについてニーナが拒否したのだと思うが
かたや命を捨てて守ろうとし、今までの立場も国すらも越えた人物
かたやいつまでも叶わぬ恋に思いを馳せた人物
これでマトモになる筈がないだろう
寧ろこれでハーディンが闇を持つな、と言う方が酷ではあるまいか?
些か以上に偏った意見だとは思うが、ハーディンは嫌いではない
と言うか、FEの初期作品(SFCくらいまで)って割と人間関係ドロドロし過ぎではなかろうか?
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「アカネイアの興亡には興味がない
…が、ハーディン殿。貴殿のその在り方には好感が持てる
非力ながらに手を貸すとするさ」
ゲレタの言葉にハーディンは
「ゲレタ殿、感謝する」
そう深く頭を下げたのだ
なお、ゲレタの言葉を近くで聞いていたリンダとチキは
「…お母さん。お父さん非力だって」
「もしゲレタが非力なら、殆どの魔道士はどうなるのかしら?」
と話していたそうな
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「…敵だな
さて、ハーディン殿にその部下の騎士諸君
パレスへの援護を最優先にしたそうだな
……ならば、道を拓くとしようか」
「ゲレタ殿。失礼を承知で言わせてもらうが、まだ魔法の届く距離ではないと思うが」
パレスを攻撃するドルーア軍を遠望したゲレタの言葉にハーディンは疑問を口にする
「恐らく、ジュリアンあたりが俺の事を話したと思うが
俺は元山賊だ。騎士の様に誇りや名誉に価値を認めてなくてな。外道だろうが、卑怯だろうが知った事ではない」
そのあんまりな物言いにザガロとビラクは顔を顰める。しかし、ウルフとロシェが何かを2人が口にする前に視線で制する
ハーディンは目を瞑り、ゲレタの話を聞いていた
「アンタら騎士に言うべき事ではないかも知れんがな
誰だって好き好んで山賊なんてやらねぇんだよ
奪われて、騙されて、どうしようもなくなった奴等の行き着く先。それが山賊や盗賊なんだ
…ハーディン殿、アンタ獣を狩った事は?」
「狩猟という事か
…いや、ないな」
「一度やってみると良い
獣はその命の炎が消えるまで全力で抵抗してくるぞ
合う合わないについてや、やり方の是非を問わないなら、俺はアンタらをパレスの付近まで届ける方法がある」
「…我々騎士にとっては、許容出来かねるやり方。という事だな」
ゲレタの言葉にハーディンは確認を取る
「それが1番早い方法だろうよ
それ以外だと、悪いが時間がかかり過ぎると思う」
「ならば頼みたい
今何より優先すべきはパレスの防衛だ
手段を選べる程に我等に余裕はない」
そうハーディンは強い目でゲレタを見た
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「サムトー、敵が近づいたら頼む
アンナ、あんまり離れるなよ。面倒だ」
「分かった。任せておけ」
「そうね。任せるわ」
ハーディン達が配置につく中、ゲレタ達はそう言いながらドルーア軍へと接近していた
「リンダ、合図は頼む。…チキ、すまんと思うが竜人族もいるみたいだ。頼めるか?」
「任せて、あなた」
「大丈夫だよ、お父さん」
妻と娘の返事を聞いたゲレタは手首を返した
「悪いとは思う
恨んでくれても構わんよ。…が、力を振り翳すなら殺される事も覚悟の上だろう?」
そう薄い笑みを浮かべた
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「ジョルジュ隊長!
…ぐわっ」
「…くっ」
パルティアでマムクートを次々と射抜くジョルジュであったが、その行為はメディウスに従う事を選んだ彼等の怒りを高める事となってしまう
その為、ジョルジュはマムクート達に集中的に狙われる事となり、彼を庇ってジョルジュの部下達は1人、また1人とマムクートのブレスの中に消えていった
ジョルジュの攻撃は確かに的確であった
…しかし、彼は知らな過ぎた
マムクートという生物の生命力の強さを
「りゅ、竜だ!」
「ひ、怯むな!」
ミディアがニーナを連れて落ち延びる任務につく事となった為、騎士隊の指揮はミシェランが引き継ぐ事となった
…だが、城門付近の防衛戦を行なっていたトムス率いる重騎士隊とミシェランの騎士隊の前に現れたのはジョルジュにより手傷を負い、怒り心頭のマムクートである
彼等は事もあろうにヒト風情がナーガの遺産とも言えるパルティアを我がもの顔で使っている事に理性が消え去る程の怒りを持っていた
そして
「馬鹿な!味方を巻き込んで攻撃だと!?」
マムクートのブレスにより、敵味方の区別なく焼き払われる者を見てトムスは驚きの声をあげた
トムスとミシェランは考え違いをしている
メディウスを含めたマムクート達にとって、ドルーア軍もアカネイア軍もさして変わらない
役に立つから、利用しているだけに過ぎないのだ。…ドルーア軍は
故に役立たずと
邪魔になると思われたならば、彼等は一切の躊躇なく焼き払うだけなのだ
此処に来るまでメディウスに従い、ヒトを滅ぼす事に懐疑的だった竜人族も居た。だが、パルティアを使っているヒトを見た彼等はヒトを滅ぼそうとしているメディウスの考えが正しいと考えを改めたのだ
つまり、彼等にとってこの戦場に味方は同胞である竜人族のみ
被害も
犠牲も
考慮するに値しないのだ
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ドルーア軍の指揮官は優秀な人物だった
そして、無駄な兵の損耗を嫌う人物でもある
故に練度の高い部隊をもって、パレス攻略にあたり
練度の低い部隊は周辺から来るであろう援軍への対処に回す事とした。勿論、全ての部隊の練度が低い訳ではなく中核部隊はパレス攻略側と同程度の練度を持つ者をあてている
…だが、今回ばかりは相手が悪過ぎたと言わざるを得ない
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「アカネイアもこれで終わりだな」
「マムクートまでいるって話だろ?
直ぐに落ちるんじゃねぇか」
周辺警戒に従事している部隊の兵達は気が緩んでいるのか、雑談をしながらパレスの方を眺めていた
本来彼等はパレスの方角ではなく、パレスの東側の道を見張らねばならないのだが、気の緩んでいる彼等の殆どはそんな事を気にしていない
彼等を率いている者も最初は咎めていたのだが、場の空気に流されてしまい、注意する事はなくなっていた
しかし、である
彼等とて、戦場にいるのは事実
死神の鎌は残酷に、無慈悲にそれを刈り取るものなのだ
「お、おい。どうした」
異変は突如として起きる
彼等の中の1人が突然倒れ伏した
最初は冗談かと思い、笑っていた彼等であったが全く起きる気配のない事に言い知れぬナニカを感じるだろう
そして彼等はわずか数分の後に
物言わぬ屍と化した
そして、この様な悍ましい光景はドルーア軍の西側、つまり左翼部隊に少なからぬ影響を与える事となった
何せ、何をされたのか全く分からない状況で人が次々と死んでいくのだ
何をされたか分からないから狼狽し
敵が見えぬから対策も取れず
彼等の心の中はいつしか暗闇に囚われる事となる
仮に左翼部隊にカダインの魔道士部隊がいたのならば、或いは対策出来た可能性もあったのだが、その部隊は戦功を挙げねばならない事からパレス攻略に全戦力を投入していた
そして
炎が打ち上がる
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「皆、行くぞ!」
その合図を見たハーディンは部下を連れて激戦を繰り広げているパレスの非常口へ向けて突撃を開始した
そして、ハーディンは目の前の敵が明らかに統制を欠いている事を理解すると
「討ち取ろうとするな!
突破を最優先にせよ!」
と指示を出した
本来ならば愚策でしかないのだが、彼から見て明らかに部隊全体に動揺が走っている様に見えている
加えて、動揺を収めようとしている者が優先的に討ち取られている事も
(ありがたい)
ハーディンは確かに騎士である
が、マケドニア・グルニア連合軍を相手にオレルアンで抗戦していた時、ハーディンはあらゆる手段を用いて抵抗せねばならなかった
故に、この様なやり方に対して理解があり、寧ろ適切な戦闘法を選ぶゲレタに対して心強さすら感じている
ならば、自分達はアカネイア軍と合流し、部隊を纏め上げてこの混乱が収まる前に敵軍の中枢を叩くべきだと考えたのだ
彼は『草原の狼』
強さの意味を真に知る数少ない人物なのだから
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「しかし、敵が多いもんだ」
「でもあなた。ワーレンの時やグラの時に比べたら、大した事はないと思うのだけど」
『お父さん、来るよー』
そう平然と敵を倒しながら会話をするゲレタとリンダにチキ
チキはゲレタから貰った竜石を使い、その圧倒的とも言える力を無慈悲に振り撒いていた
「アンタら、凄いな
俺もアンナもギリギリなんだが、なっ!」
「手慣れているって
話じゃないわよ、ねっ!」
サムトーとアンナも敵を相手にしていたが、3人が敵の数を減らしていなければまず間違いなく圧倒的な敵の大軍の前に飲み込まれていただろう
特にゲレタのやり方は効率を突き詰めた様なやり方であり、サムトーやアンナが思い浮かべたのは
処理
というおおよそ戦場には相応しくない言葉だった
攻め寄せてくる敵部隊の中で数人をどうやったかは知らないが、倒し
それにより混乱した部隊をまとめて薙ぎ払う
そして何より恐ろしいのが、冷静な判断を下している者から落としていく事だろう
あれでは部隊の指揮統制の維持も覚束ない筈だ
烏合の衆となった者を容赦なくリンダの魔法とチキのブレスが叩き伏せる
だが、そんな5人を危険視したのか
「嘘でしょう!?」
「ドラゴン!」
マムクートが迫っていた
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彼は比較的若い竜人族であり、メディウスのヒトを滅ぼすという思想に共感して彼の元に集った者の1人だ
何やら小煩い連中がいるとの事で来てみれば、同胞を盾にした卑怯な人間がいるではないか
身の程をわからせようと、彼はブレスを吐こうとし口を開いた
だが、彼は強烈な痛みを感じた
今まで一度たりとも感じた事の無い強烈な痛み
視界が回る
思考が定まらない
そして、彼の意識は二度と醒める事の無い闇の中へと落ちていった
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戦場に静寂が満ちた
何故か?
ドルーア側のマムクートが、何一つ抵抗すら許される事なく、その巨体を地に伏したのだから
マムクートの恐ろしさと強さを味方として知るドルーア軍
…だからこそ、今の状況が理解出来ない
したくなかった
まだ、パルティアの様に目に見える形での脅威ならば理解出来た
しかし、この場にいるドルーア軍の誰ひとりとして理解出来ない方法であっさりと殺されたのだ
ようやく彼等は理解した
理解してしまった
強者だと思っていた自分達は手を出してはならぬ者に手を出したのだと
「まぁ、死んどけや」
その呟きにも似た言葉が彼等に聞こえた気がした
そして、倒れ伏す仲間達
「こ、後退せよ!
本隊に合流して、体勢を
…ガハッ!」
そして臨時指揮官が血を吐き倒れると
「に、逃げろ!」
誰かが言ったこの一言により、戦線は崩壊
しかし、逃げようとする彼等に対して
「敵の統制は乱れたぞ!
反撃せよ!」
アカネイア軍からの攻撃が始まった
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異常に気付いたマムクート達が殺到してきたが、既に遅い
ましてや、彼等は竜形態のまま飛行してきたのだ
大いに、結構
見下してくれた方が、こちらとしても楽に終わらせられる
ゲレタは口元を邪悪に歪めると手首を返した
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落ちる
大陸の支配者として君臨していた筈の竜が
堕ちる
彼等は築き上げてきた何もかもが
『バカ、な』
その質量と落下による衝撃を受けて、多くの同胞は命を落とした
忌々しくもナーガの遺産相手ならば納得しよう
…だが、何だこれは?
怒りよりも戸惑いの方が強い
目の前のヒトは何も持たぬ
なのに、彼の竜としての本能が警鐘を鳴らすのだ
『貴様は、何なのだ?』
「態々殺し合う相手に問答とは恐れ入るよ
ヒトさ、俺は
まぁ生憎と、アンタらから
そう笑う
そうだ、コレは笑うのだ
絶対的な強者であり、この大陸の支配者たる自分達を前にしても
許されぬ
許してはおけぬ
側にいる小娘も気に入らぬが、コレの存在は認める訳にはいかないのだ
『我等が世界の為に消えよ!』
「世界とかどうでも良い
俺は、俺の周りの温かな世界だけを守るだけだ」
目の前の
『…ヒトよ
非力なるヒトよ
最期に聞かせてほしい。…何故、我等は負けたのだ』
身体の中が燃える様に熱い
…どうやら、我は敵に負けたのだ
だが、これだけは聞かねば死んでも死にきれぬ
「アンタらは竜であり、ヒトの祖でもあるんだろうが
理性はどうした?知恵はないのかよ
アンタらが獣と忌み嫌う連中と何が違うよ?」
本能のままに暴れる我等は獣と同じ、か
『…なるほど
それでは勝てぬな』
「獣なんざ、罠に嵌めて
テメェのやりたい様にやれば良い
…個人的にはアンタらに同情するがな」
『…変な奴だな
……だが、良かった。貴殿は我等が命を賭けるに値する強者であった様だ』
「冗談よしてくれよ
こちとら戦火から逃げ回る事しか出来ない小市民だぜ」
『……名を
我等を下したそなたの名を教えて貰えぬか?
ナーガに拝謁する時の土産となろう』
「………仰々しいねぇ
ゲレタだ。昔の名は捨てた」
『…そうか』
そして旧き竜は眠りについた
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「さて、街に戻るか」
「そうね。ハーディンさんなら、その辺りは理解してくれるでしょうし」
「うん!帰ろ」
いつもの様に竜石を集めたゲレタ達はあっさりと戦場を後にする事を決めた
「良いのかよ?アンタらなら」
「サムトー。やめときなさいよ
そうね。街に戻って身体を休めましょう」
サムトーの言葉を遮るとアンナはゲレタ達と共に街へと戻る事に賛成した
「こんなところに居たとなれば、面倒ごとしか呼び込まんからな」
そうゲレタの呟きを残して
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「そうでしたか
ゲレタ殿、パオラとカチュアを助けて頂き感謝します
申し訳ないが、今は貴方に報いるだけのものがない」
「その言葉だけで構いませんよ、ミネルバ殿
…マルス王子、無理を言っているのは理解しておりますが」
「いや。ミネルバ王女の騎士を助けるなら、問題ないよ
ミネルバ王女とマリア王女が志願してくれた。その村へ行って治療して貰うのが良いと思う
…出来るなら、貴方を仲間に迎えたいと思うけど
それは無理なんだろうね」
「申し訳ないが、元山賊で多少なりとも名を知られている私を軍に迎え入れるのは王子にとっても、私にとっても益にはならぬでしょう
何せ無駄に気位の高いお歴々を相手にする事もありましょう
それに、私は長閑な生活に憧れておりますので」
「…そうか。それなら無理を言うべきではないね
ただ、もし何か困った事があれば私達を頼ってくれると嬉しい。出来る限り力になるよ」
「ありがとうございます、王子」
そう言って、少し後に街に到着したマルス王子達とゲレタは話を終わらせた
「バヌトゥ!」
「…おお、チキ
無事じゃったか」
そして、チキをバヌトゥに引き合わせた
「…そうか
チキを娘として育てて下さると」
「チキ自身はやはり両親の温もりが恋しいのではないかと思いまして。本来ならば、直ぐにでもバヌトゥ殿のところに来るべきではあったのですが」
「構わぬとも
儂ではその温もりは与えられぬ。…ゲレタ殿にリンダ殿
………どうか、チキを宜しくお願いします」
「分かりました」
「ええ、勿論よ」
「バヌトゥは来ないの?」
「儂は見極めねばならん
マルス王子を」
そうして、ゲレタ達は村への帰途に着いた
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「…行かれるのか?」
「あなたの好意は嬉しく思う
…だが、俺に宮仕えは似合わんよ」
「…そうか
貴殿程の人物ならば、是非と思ったが
…いつでも構わない。もしも気が向けば会いにきてくれると嬉しいものだ」
「アカネイアは守れても、守れないものがある
…ハーディン殿。どうか息災で」
「…ああ
竜殺しのゲレタ
大陸一の道なき道を征く者よ。…いつかまた会いたいものだ」
街の外れで、狼と山賊は互いの道を征く事を惜しみ、そして別れた
という訳でさらっと流しました
ゴタゴタについては、次回
因みにハーディンとゲレタの相性はかなり良かったりします
彼ならば、ゲレタの外道戦術も飲み込めるでしょうし、周囲からのやっかみとかも抑え切れます
ミシェイルとも相性は良いでしょうね
逆にカミュやミネルバとは根本的な考え方の相違から、上司部下の関係になっても長続きしないでしょう
アカネイアは論外
マルスはまだ外部の声を聞かねばならない立場なので、受け入れても難しい事になるでしょう
なお、最高の上司はメディウスであったりするのはここだけの話