汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
原作と一部改変がありますが、ご了承下さい
村に忍び込んだ少女
金髪の少女はクライネ
薄紫の髪をした少女はカタリナと言った
カタリナは見るからに衰弱しきっており、村人達の目から見て手遅れではないか?そう思える程のもの
「…カタリナを
妹を助けて下さい
お願いします。…お願い」
そうクライネは涙ながらに懇願する
村人達は困惑した
それはそうだろう。少女とは言え、見ず知らずの者を助ける理由などない
しかもそれが無断で村の中へと立ち入った者となれば、尚更
皆は村長を見て、隣にいるゲレタも見た
「…どうしたものかのぉ」
村長は思案顔だ
無理もない。先の行商人アンナとの取引きで村の余剰食糧はないに等しいのだ
加えて、天馬に飛竜までいるとなると備蓄が心許無くなっている
「村長。無理は承知で助けさせては貰えないだろうか?
足りない食料はこの2人を連れて俺が調達する」
そんな村長の複雑な心境を思ってか、ゲレタはそう発言する
「嬢ちゃん
助けるかわりに働いてもらう事になる
…それでも良ければだが、どうする?」
このゲレタの言い方にミネルバは顔を顰めたが、リンダはミネルバの肩を押さえて何も言わない様にさせる
「お願いします
妹を、カタリナを」
そして、クライネはゲレタの言葉を受け入れたのだ
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「…何故あの様な事を」
ミネルバはゲレタに訊ねる
「…余裕がないのさ
この村にも、な」
ゲレタはミネルバに目もくれる事なく少女カタリナの具合を見てそう告げた。
「リンダ。悪いが野菜とかを細かく刻んで煮込んだスープを頼めるか?」
「分かったわ
あとで冷ました方が良いわね、それなら」
「なら私は水を汲んできます、お父さん」
「悪いが、頼むチキ」
リンダに料理を任せ、チキの言葉に頷くと
「…随分と衰弱しているな
クライネ、だったか?この子食事をいつから食べてないんだ」
とクライネに問いかける
「…2日程前から、です」
ミネルバ達はクライネの言葉に息をのんだ
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私達は暗殺者として育てられた
そうでなければ生きていけなかったから
しかし、クライネは母と慕うエレミヤに初めて背いた
何故なら
「…クライネ
もう
弱ったカタリナを要らないものとして、始末させようとしたのだから
クライネとカタリナは血の繋がった姉妹ではない
ただ、幼い頃のカタリナがクライネの事を姉と慕っていつもついて来た
それだけの筈だ
そう思っていた
…でも、ダメだった
気がつけば意識のない
何をしているのか分からない
何度もカタリナを見捨てようとしたのだ
なのに
…なのに、あの子の
カタリナの少しぎこちない笑顔が頭をよぎるのだ
そして気がつけば、見知らぬ村の誰かに助けを求めていた
…何をやっているのかと思う自分と
これで
自分が分からない
何をしているのか?
何をすべきなのかすら
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そう嗚咽混じりの少女の慟哭を聞いたミネルバ達は呆然とした
「…突っ立ってる暇があるなら、パオラ
その子を綺麗にしてやれ」
「は、はい」
そうゲレタは冷たく言い放つとパオラは弾かれた様に動き出す
本来ゲレタが彼女に何かを言うべきではないのだが、とにかく今は人手が足りない
「見てるだけなら邪魔にしかならん
ペガサスも癒したなら帰れると思うが」
「そ、それはそうだが」
ミネルバは目の前の現実に困惑を隠せない
マリアも顔色を悪くしているし、カチュアも半ば呆然としていた
「どこも余裕がないからな
奴隷として育てるのか。兵士として育てるのか
暗殺者として育てるのか
さして違いはないだろうよ」
「ない訳が」
思わずミネルバは反論しようとするが
「無いんだよ
役割を持たない者や果たせない者というのは余裕のない社会においては負担でしかない
それを許容するかしないかはそれぞれの事情で変わる
…このカタリナって娘はそのエレミヤとやらにとっては、生かす理由がなくなった
それだけだろうが」
その冷徹とも言える言葉にミネルバは拳を握りしめる
「…う」
ゲレタが身体中に出来た傷に傷薬を塗っていると、カタリナはうめき声を僅かに上げる
「もう少し、休め」
ゲレタはカタリナの瞼をゆっくりと下ろす
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「…此処は?」
「カタリナ!良かった」
「姉さん?」
薄紫の髪をした少女カタリナは目を覚ますと見知らぬ所にいた
彼女のそばにいたのだろうか、クライネが呟きを聞きつけて彼女を抱きしめる
「ごめんね
ごめんなさい、カタリナ」
そうクライネは震える声で壊れた機械の様に彼女に詫び続ける
「姉さん
…私、役立たずなのに
ごめんなさいっ!」
カタリナもまたクライネを抱きしめ、涙を流すのだった
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「ご飯出来てるから、降りて来て」
そんな2人にチキはそれだけを告げると降りていった
「…もしかして嫌われてます?」
「普通はそうよね
いきなり事情も話さないのに助けてって言われたんだから」
カタリナとクライネは顔を見合わせると苦笑いして、下へと降りて行った
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時間は少しだけ遡り、カタリナを二階のベッドに寝かせてクライネを側につけたゲレタ達はミネルバと話をする事になった
「此方としては別に止める理由はない
…さっきは助かった。悪かったなパオラ」
「いえ、そんな事は」
ゲレタの言葉にパオラは慌てて
「寧ろ今まで殆ど何も出来なかったのですから
…ミネルバ様。私は此処に残ろうと思うのです」
「姉さん!?」
「…理由を聞かせてもらえるかしら?」
ミネルバは真剣な目つきでパオラを見やる
ゲレタ達はもう喋るつもりはないらしく、聞き手に回っていた
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あのさぁ
ゲレタは内心深いため息を吐いていた
何せ自分の持つ
ため息の一つもつきたくなる
…まぁ可愛い嫁さんと娘が居るのに、それは贅沢な悩みなのかも知れないが
と自嘲する
ゲレタとしては、恩を感じるのは構わないけど早く元の居場所に戻って欲しいと切に願う次第
何せパオラとカチュアはマルス達アリティア軍における主戦力足り得る2人なのだ
シーダはどうしても、タリス王女でありマルスの婚約者としての立場がある
危険な任務に従事させづらいだろう
ミネルバとて、本人がどう思おうとマケドニアの王女なのだ
仮に彼女が戦場で命を落としたとなると、アリティアはマケドニアから恨まれ続ける恐れがある
しかも、僅か2人ではマケドニアとの戦いにおいて不利になる事は避けられまい
グラや今回の事などを考えると色々変化するだろう事は間違いないだろうが、居るにこした事はないだろう
もう少し言うならば、最低でもカチュアはミネルバの元に戻るべきだと思っている
何せカチュアに対する村人達の視線は冷たいのだから
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本来、村付近の警戒は俺1人でやる事になっていた
…と言うのも、村の男衆では山賊と戦えるだろうが確実に被害が出てしまうからだ
当初は何人か同行していたのだが、手持ち無沙汰となってしまう事から村長達と話し合った。そして、今まで滞っていた村周辺の開墾や畑の整備に木材の切り出しなどをすべきだという事に落ち着いた
それにより、村の生産性は向上するだろし、より良い環境づくりは精神的な安定にも繋がる
レイについては目が良い事や俺の手伝いをするという事で一応同行する事が認められている
…カチュアを納得させる為に一度だけ連れて行ったのが裏目に出てしまったと後悔するばかりだ
しかし、此処で俺がカチュアを庇うと、そろそろまずい事になる
そう村長からも言われている
加えて、ペガサスの存在はやはり食糧の消費などから歓迎されてはいないとも
パオラについては、傷が明らかに酷かった事もあり、カチュア程反発されてはいない。これだけでもこの村の人たちの善性は明らかなのだが、それにも限度というものがある
…この辺りの事を説明するとなると、それはそれで村側からの彼女達への反発が増すんだろうなぁ
何せ彼等にとって、何もしないと言うのは村から追い出されたとしてもおかしくない大罪なのだから
それをいちいち言わなければ分からないと言うのは、村人達からすればあり得ない事
価値観の相違と言えばそれまでなのだが、村社会での寛容さとは責務を果たしているからこそのものなのだ
そして、村社会において、騎士や貴族などに対して好意的な者はそこまで多くない
彼等は庇護者になり得ないからだろう
まして、村長などの一部の者は気付いている様だ
2人が
…いや、2人を迎えに来たミネルバとマリアも含めて
彼女達がマケドニアの人間であるという事を
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陸の孤島とも言える様なこの村でもアカネイアがドルーアとドルーアに与したマケドニア、グルニアそしてグラにより一度崩壊した事は知られている
どうやら商人から聞いていたようだ。さらに俺とリンダが村から離れている間に商人が来ていたと、先程の話の中で村長が教えてくれた。ならば村人たちは、ミネルバたちがマケドニアの人間であること知っていると考えた方がいい。
となれば、しくじったか
さっさと村から出さないと余計なトラブルを招きかねない
パオラはまだ険しい獣道を踏破出来るほどに回復していなかったが、長居させるべきではなかったかも知れんな
カチュアは良いとしても、パオラはまだメンタル面が安定してないから戻すのはどうかと思っていたが
村社会というものは基本的に排他的なものとなりがちだ
特にこの大陸ではその傾向が強いとゲレタは感じている
物質的にも精神的にも余裕がなく、荒んだ心は容易く道を踏み外す要因となる
故にこそ、身内や長い間の付き合いと言ったものが必要となるのだろう
自分とリンダが受け入れられたのは、村にとって犠牲無しでは解決出来ない山賊を片付けたからなのだ
…別にその辺は気にするつもりなんて無いが
今回保護する事になったクライネとカタリナ
行くあてがないのなら、自分が引き受けて育てるつもりだ
…特にカダインの魔法教育を受けていないだろうカタリナは、本人のやる気次第となるが、俺のやり方を教える事も出来るだろう
クライネにも、山賊時代に色々教わった事が使えるかも知れない
…チキが拗ねるかも知れないが、やってみるか
それはそうとして、命を容易く賭けようとするのはどうにかならんもんかねぇ
ゲレタはそう内心深いため息をつくしかなかった
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「…つまり何か?
暗殺者として育てられていたけど、そのカタリナが使えないと判断されて始末されそうになったから、逃げてきた」
「……はい、その通りです」
「そんな事が」
クライネの話を聞いてミネルバとマリアは驚きを隠せない
「どうなってんだ、真面目な話
孤児を集めて育てるにしても、キチンとした地盤がないと先が無いのは普通に考えればわかる事だろうに
…こうして話を聞くと、ホント今の世の中狂ってんな」
そう言いながらも、何処かゲレタの表情と声は冷めていた
「ゲレタ。でも貴方引き受けるって言ったわよね? 追手とかこないかしら?」
「まぁここから二人が居た場所はそこまで離れていないだろうから、その可能性はある。だから追手がきたら処理する、ただ、藪を突いて蛇を出すことはないから、こっちからは関わらん。
…んで、クライネとカタリナ。お前さん達はどうしたい?」
「…私はもう戻れません
エレミヤの事を信じる事も従う事も出来ない」
「…私は」
クライネとカタリナは表情を曇らせる
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「…あの、チキさん」
「何かしら、ルキナ」
いつもの様にチキの元を訪れて話を聞いていたルキナは、疑問に思った事があるので聞いてみる事にした
「…その、言いにくいのですが
家族団欒の中に他の人が入るのを嫌がらなかったのですか?」
ルキナとて、チキにとって両親が特別である事を理解している
何せ長い時を生きている彼女だ。友人であるンンやその母親であるノノの様に人の世から離れているのも、彼女なりに思う事があるのだろうと感じている
その特別に誰かが入る事について何も思わなかったのだろうか?
そう思ってしまうのだ
「…そうね
クライネはまぁ良いとしても、カタリナに思う事はあったわ
…私は結局お父さんの戦い方を模倣する事が出来なかった。…でもカタリナはお父さんの戦い方を学び、ある程度までとは言え形にしたの
悔しくなかったと言えば嘘になるわ」
そう遠い目をするチキ
あの時ほど自分の無力さが恨めしかった事はないと今でもチキは思っている
父ゲレタの微弱な風による索敵法を実現出来たのはカタリナただ1人だったのだから
流石に父の様に多数相手を制圧できる様な器用な真似は出来なかったし、ましてや竜人族や地竜族を瞬殺する様な事も出来なかったが
なので、メディウスの祭壇に向かう時チキは全力で
勿論、全てが終わった後父ゲレタに思いっきり褒めて貰ったし、母リンダにも甘やかして貰ったが
闇の蛮族だか、部族だかいった者達がいたが、数だけは無駄に多かったのですっきりした。マルス王子達と最初で最後の共闘をしたのは今でも忘れられない思い出のひとつだ。
父ゲレタによる戦術論を仕込まれた〇〇〇達は流石の動きだったのも鮮明に覚えているわ
そうチキはルキナに語ったとされる
という訳でゲレタの後継者となるのはカタリナとなります
チキからの嫉妬のこもったジト目をカタリナは一身に受ける事に
ifルート(18禁バージョン)いる?それだけ独立して投稿するものとする
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いる
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いらない