汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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迷走(いつもの)


 幕間 変容

「…ジェイガン。これが本当に許されるものなのか?」

 

「いえ、恥を知る者ならばこの様な事は出来ぬかと」

マルス達はミネルバとマリアを待ちながら、先のドルーアによるパレス侵攻における戦闘の詳細を調べる事にした

 

アカネイアに使者を出してみたのだが『詳しい事は調査中』との事しか返ってこない

…だが、マルス達の滞在する街では密かに噂が流れていた

 

 

竜殺し(ドラゴンキラー)の噂である

その噂を耳にしたのはジュリアンとカシム

 

だが、2人は気になる事があったと口を揃えて言う

 

 

 

まるでこの話を公にしてはならない様な雰囲気を感じた

 

 

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街から兵として市民を徴用したアカネイア軍

しかし、彼らは一度として敵と剣を交える事はなかった

 

故に給金が支払われる事はない

 

 

しかも、彼等が戦場で見た事については口外してはならないという訳の分からない事を誓約させられ、彼等は解放された

 

 

代わりに『大陸一の弓使いジョルジュ』とその部下達の奮戦の話がいつの間にかこの街にも届いていた

 

これは街の有力者と懇意にしている(・・・・・・・)貴族から偶々聞いた新しき英雄譚として、広まる事になる

 

 

…不自然な程に早く

 

更に街の吟遊詩人達は挙ってジョルジュの功績を讃える唄を作り、新たな伝説の誕生に街は沸き立って

 

 

いなかった

 

 

 

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街に戻った徴兵された者達は親しい者達だけに自分の見た事を話した

 

 

それは吟遊詩人達の詩よりも、真実味があり

そして現実離れしたものであった

 

 

人は誰しも自分の手の届く、或いは届きそうと思うものに不思議と親近感を抱くものだ

 

かたやアカネイア貴族であり、大陸一の弓使いとして三大神器とまで言われる神弓の使い手

見るからにパッとしない妙な男

 

 

大衆は後者を選ぶ

…ましてや、吟遊詩人達の詩には一切この人物は出てこない上に

戦場に駆り出された誰1人として戦場で神弓の使い手や矢の1つも見ていないと言うのだ

 

 

ジュリアンやカシムはそんな話をしていた者達から詳しい話を聞き出したのだ

 

 

この辺はジュリアンの盗賊としての実力と猟師として生活していたカシムの人柄が現れたと言っても良かっただろう

 

 

仮にこれが傭兵や騎士相手ならば、彼等は口を閉ざしていた筈なのだから

 

 

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「ジョルジュがその様な事をしているとは信じたくはないけど」

 

「…マルス王子

彼等アカネイア貴族は必要なら、他者の功績を平然と自分のものとする事くらいやってのける

私や部下もあの戦場にいたが、少なくとも我等が戦っていた東側でジョルジュ殿の姿は見ていない」

 

マルスの言葉にハーディンは口を開く

 

「ゲレタ殿達が指揮系統を徹底的に潰してくれたお陰で被害は最小限ですんだ

…窮地を救ってくれた恩人に対する仕打ちとは思えないが」

 

「…どうしようもないのやも知れませんな」

ハーディンの言葉を聞き、ジェイガンも頭を左右に振りながら諦めにも似た言葉を口にする

 

「…マルス王子。ミネルバ王女達が戻り次第、パレスのラング殿に使者を送って直ぐにアリティアへ向かうべきではないだろうか?

このままでは良い様に使われるだけだと思う」

 

「…そうかも知れない」

ハーディンの言葉にマルスも否定する気はなかった

ジョルジュやミディアにトムス、ミシェランにボア司祭はアカネイアをどうにか変えようとしているらしい

 

 

…しかし、彼等と連絡が殆ど取れない上にアカネイアからの使者は明らかに此方を見下している

 

自分だけならばマルスは我慢できる

事実としてアリティアはアカネイアの協力無くして、再建は叶わないのだろうし

 

 

…だが、それにしてもニーナ王女がこの様な事をするとは思えない

 

 

 

マルスの苦悩は続く事となる

 

 

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同時刻、パレスでは今後の事を話し合う会議が行われていた

 

 

「…ですから、マルス王子達を我等の指揮下に置くべきなのです!

パレスが攻撃されると言う前代未聞な事態にあって、機能せぬ軍など必要ないではありませんか!」

そう威勢良く主張するのは新たに騎士隊を率いる事になった人物

 

騎士隊の隊長であったミディアは諸々の事情からその職を追われてしまい、その後任となった人物である

アカネイア貴族の一門であり、家格だけ見れば(・・・・・・・)適任とされている

 

言うまでもなく、アカネイア貴族達の手駒であり、彼等はこれを機にアカネイア軍を掌握しようと考えていたのだ

 

 

先の戦闘における騎士隊の数々の失態などから『騎士隊を預けるに足らず』との声が噴出。結果、この様な人事となってしまっている

 

 

「…おかしな事を言われるものだ

マルス王子達はあくまでも王子のアリティア軍を中心とした部隊

何の権限があって、彼等を指揮下に置くと言われるのか?」

ラングはそう反論する

 

「そもそも批判すべきは独力でパレス防衛の叶わなかった我等であろう。ハーディン殿達が間に合ったのは疲労などを完全に無視した強行軍あっての事

彼等は祖国であるアリティアの解放に向かっていたのだ。間に合わなくて当然ではないか」

 

「であるならば、ラング卿

貴殿やジョルジュ殿も責任を取るべきではないのか」

ラングの言葉に応ずる

 

「責任を取る事自体に不満はない

…が、どうやら身の丈に合わぬ玩具を振り回して遊ぶ者がいるらしくてな。流石にそれを放置して退がる訳にもいかんのだよ」

 

「どういう意味か!」

 

「どうもこうもない

貴殿は騎士隊の隊長となったのであろう?

であれば、先の戦闘における醜態を問題視せぬのか?」

 

「ぐ、ぬ」

ラングの言葉に唸る隊長

 

「確かにミディア殿の力量不足もあったのやも知れぬ

…が、少なくとも戦場で武器を手放し、持ち場を離れるなどという事をする騎士隊があるとは私は信じたくないものだが」

 

「それは前任者が」

 

「ならば、すぐにそんな緩んだ考え方をする者達を鍛え直すのが貴殿の役割ではないのか?

自分に与えられた職務すら碌にせぬ者が、新たに戦力を求めるなど言語道断だと私は思うのだがな」

ラングのこの発言により、騎士隊長の提案は却下される事となった

 

 

 

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「…どうにもならんな」

ラングは自室で深いため息をついた

 

パレスに攻め込まれるという二度とあってはならない事があったにも関わらず、アカネイア貴族達は平常運転

 

ジョルジュは確かに戦功を挙げたが、その代償として彼の率いていた弓兵隊は壊滅

結果、ジョルジュの立場は寧ろ不安定なものとなってしまった

 

が、竜殺しの名誉からジョルジュにはそれなりの地位が用意される事となってしまう

言うまでもなく、飼い殺しだ

 

 

現実的な方法で重騎士達の意識改革に取り組んでいたトムスとミシェランが死に、貴族達に対する不信感を隠そうともしないジョルジュとミディアが生き残った

となれば、その2人を動かなくする様にするのは当たり前だ

 

 

自分はまだ貴族達に対しても『一定の配慮』をしているから、どうにかなっているのだろう

 

 

 

 

ラング自身、ニーナ(何も見ない小娘)に従うのは勘弁願いたいという気持ちは強い

 

…だが、それ以外の選択肢がないのならばどうしようもないではないか

 

 

ボアの様にアカネイアの積み重なった負債を外部の者に背負わせる

などという恥知らずな事が出来るはずもない

 

 

 

「…犠牲覚悟でパレス内にドルーア軍を引き込むべきだったのかも知れぬな」

結果論となるが、危機感のかけらもないアレらに理解させるにはそれしかなかったのかも知れないとラングは今更ながらに後悔する

 

新たに騎士隊長となった人物は威勢だけ良い事をラングは知っている

 

 

「…やむを得ぬな」

ラングは覚悟を決めた

変化を受け入れないと言うならば

戦功が稼ぎたいと言うのなら

 

幾らでも稼げば良い

 

 

 

自らの破滅を以て、その判断の重みを知らしめる事としようぞ

 

そう決意したラングは、直ぐに準備に取り掛かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一週間後、アカネイア軍は騎士隊を総動員し、グルニア遠征を決行する事になる

 

 

 

アカネイア貴族達もドルーアの手先となったマケドニアとグルニアを許すべきではないと、この軍の行動を支持する

 

ニーナは最後まで渋っていたが、グルニアの降伏によりグルニア将兵の助命は叶うとの廷臣達の意見を最終的に受け入れた

 

 

 

…勿論、遠征軍はその様な慈悲を与えるつもりなど一切なかったし、そもそもグルニアが今更剣を置くなどとは思っていない

降伏したとなれば、グルニア王家は勿論消滅する事となる。精強との呼び声も高いグルニア騎士団も言うまでもなく解隊する事となり、グルニアという名前も歴史上のものとなるのだから

 

 

名分は『グラディウスとメリクル(アカネイアの至宝)を持ち去った』罪とドルーアに与した事である

 

 

 

 

なお、マルス達に対してはアカネイア軍が出兵する2日前にはアリティア解放を改めて要請しており、マルス達を頼る(アリティア軍を盾にする)という選択肢をラングは奪っていた

 

 

 

「戦功を挙げたいのならば、思う存分機会を用意してやる

…が、貴様ら程度の実力と覚悟で勝てる者がいるならばの話だがな」

 

ラングはボアに賛同する貴族や廷臣達をも味方につけ、グルニア遠征を決断させたのだ

 

 

無論、現実を直視せぬ貴族達の影響力を削ぐ為の方便でしかない

 

 

 

この無謀としか思えないグルニア遠征を主導した事から、ラングはドルーアに通じていたのではないか?との疑いを持たれる事になるのだが

 

 

本人はつまらぬ事と切り捨てた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わりゆく世の中で人は最善を求め、足掻き続ける

されど、答えは1つとは限らない

 

それでも人は明日を望むのだろうか?

 

 

 

 

 

血に染まる明日の向こうに何があるのか?

 

それは誰にも、わからない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




という訳で、ラングは血に染まる道を歩む事を決意しました


役に立たないどころか、害にしかならない騎士もどきなんて必要ないよなぁ?

ifルート(18禁バージョン)いる?それだけ独立して投稿するものとする

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