汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
「助けてくれてありがとう
…でも、貴方さっきのはどうやったの?」
間一髪の所で難を逃れた
…いや、もしかしたら自分を助けたのには裏があるのではないか?
とリンダは思いつつも、自分を助けた男に話しかける
「…いや、何やってんだよ俺」
そう頭を抱えている男
「…どういう事?」
その口ぶりでは助けるつもりがなかった様にしか聞こえない
…しかし、事実として彼女は無事此処にいる訳で
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「俺はゲレタ
しがない元山賊さ」
「さんぞっ!
…元?今は違うの?」
ようやく落ち着きを取り戻したゲレタとリンダは街から少し離れた所で話をしている
…何せ、先程の騒動の為かリンダを意識して見ている者が多いのだ
因みにリンダはまだ男装を解いていない
が、世の中というのは業の深い者がいるもので、先程のやり取りでリンダが思わず素の自分を出した事で、自らがリンダを手に入れたいと思う者が少なからず出ていたのである
ゲレタとしては思わずやってしまった事で寧ろ厄介事を抱え込んでしまったと後悔すらしているのだが
「色々あってな
今はある男を追っている」
まぁ追っていると言いながら、ジュリアンよりも先に進んでいたりするのだがその辺は見ない事としている
…主に自分の精神安定の為に
「そう、ゲレタさんね
私はリンダ。こんな格好をしているけど、女よ」
「…そうか」
リンダとしては事情がどうあれ、自分を助けてくれた事実には変わらない。としてゲレタにはキチンと自身の名前を明かす事にした
「一応私も勇気を出して打ち明けたのだけど」
「…ああ、すまないな
とは言え、見る者が見れば普通にバレるぞ?それ」
「うそ!」
余りにもあんまりなリアクションにリンダは不満を示したが、続くゲレタの言葉に驚きを隠せなかった
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驚くリンダに
「いや普通に骨格やら違うしな
あと、喉仏。つまりこの喉にあるもの
リンダ、アンタにはないだろう?正確にはあるんだけど、男女を比べると男の方が目立つんだよ」
「…確かにそうかも」
リンダは不思議に思った
目の前の人物は自分の知らない事を知っている。しかもそれを『知っていて普通』と言わんばかりに自分に話をしている
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知識とは広く知らしめるものではなく、秘するもの
これは彼女の住んでいたカダインでも共通する考え方なのだ
魔道士について詳しくなれば、誰にでもなれる訳ではないだろう
…しかし、魔道士と戦う上で有用な
だからこそ魔法都市とも称されるカダインですら、弟子にならなければ魔法を教える事はない
それだけ魔法というものが危険な事もあるが、知識と言うものもまた大切なものなのだ
先程の呟きを聞くに自分を助けたいと思っていたとは思いづらい
にも関わらず、この人は自分を助けた
チグハグなのだ
この人物は
だが、彼女はそうであるからこそ、ゲレタに興味を持った
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「魔法で急所を狙う!?」
リンダはゲレタの言葉に驚きと共に納得もした
リンダと揉めていた相手は
「あのよぉ、流石にんな所で気分悪い事するんじゃねぇよ」
「何だテメェ。引っ込んでろ、怪我したいのか!」
「ギャンギャン喚くなよ
やるなら他所でやれ。…邪魔だから」
「ふざけん、な」
傍目口論している最中に相手が倒れただけ
実際私もあの時は動揺していたから、魔力を追っていなかった
ごく自然に
何の気負いもなく、命を奪った
そういう事になる
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「…ごめんなさい
失礼だとは思うけど、そんな事出来るの?」
「別に信じなくても構わないんだが
…何せこれ便利なんだよ。魔力も殆ど使わないし、無駄に死体が汚れないから剥ぎ取りも捗る」
私の言葉にも気を悪くした様な様子もなく、淡々と語る
「…剥ぎ取り」
「…おや?リンダさんは路銀に困る事はないのか?
俺はアジトを潰されたから貯えがなくてね。山賊とかこっちに問答無用で斬りかかってくる騎士なんかは殺してみぐるみ剥ぎ取るが?」
こういう事を平然と口にして、多分やっているあたりは本当にこの人は山賊の仲間だったんだろうと思わせる
…だからこそ気になる
「どこでそんな知識を身に付けたの?」
「知らなくてもいい事ってのはあるもんさ」
私の言葉にゲレタさんは笑ってそう答えた
…でも、その目の奥はまったく笑っていない事を私は見て取れたので、この話は止める事にしたの
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「ところで、リンダさんや」
「なに?」
「さっきから囲まれてるの気がついてる?」
「え!?」
何気なくゲレタさんが口にした言葉に私は動揺してしまう
…でも、誰も動かないし気配も感じない
「おおかたリンダさんを狙っていたんだろうさ
まぁ、苦しむ事なく殺してやったから問題ないだろうよ」
その言葉に気負いも悲しみも憎しみもなかった
ただ邪魔だから
そんな感情しか私には感じられなかったのだ
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時を少しだけ巻き戻す
リンダと彼女に絡む人物の騒ぎは人通りの多いところで起きていた事もあり、それなりの数の住民が目撃していた
そして、見た目の良い(傍目)少年というのは労働力に最適であり、使えなくなれば奴隷として奴隷商人に売れば良い
という二度美味しいものであった
加えて少年は此処の人間ではない
故にどの様な扱いをしたとしても、誰も文句を言う事はないだろう
しかもやり取りを見ると大した力もないらしい
ならば、自分達があの少年を手に入れても問題ないのではないか?
との欲に駆られた者が出てきても不思議ではなかった
先程少年を助けた男と少年は街を出て、人通りの少ないところで話し始める
そして、少年ではなく少女である事を彼等は知った
それならば尚更手に入れたくなり、ある男が足を踏み出した
すると
「あ、が」
突然胸を押さえて蹲る
それがきっかけだったのか、次々と集まっていた者達は苦しみ
そして息絶えた
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ゲレタは人の善性を信じる人間だ
だが、それは人の悪性を否定する事ではないとも彼は考えている
その為、自分達をつけている者達の狙いがほぼ間違いなくリンダであると確信しつつリンダとの雑談に興じていた
彼はそよかぜ以下の風で自分とリンダの周辺に見えない線を引く事にし、仮にこれを踏み越えれば危害を加える可能性が高いとして
問答無用でその者達を体内から焼く。或いは氷漬けにしたのだ
「…うわぁ」
リンダはゲレタの言った事が本当であると理解した
目の前の亡骸達がそれを物語っているのだから
しかし、彼女としては効果的である事は認めるがやり方として正しいと思えなかった
が、自分は全く彼等に気付いてすらいなかったのも事実
…そう
1人や2人ではない
見たところ5、6人はいるだろう
そして誰もが手入れのされているとは思えない様な錆びた剣などを持っていたのだろう
自分に訪れたかも知れない未来をリンダは想像して身震いする
「人の理性という皮を剥がせばこんなもんだろ」
ゲレタの言葉が妙に耳に残った
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「…で?何故ついてくる?」
「…多分私だけだと同じ様な事になると思うの
だから、ゲレタ。貴方に護衛を頼みたいわ」
私がゲレタの後を追いかけてきた事に呆れたのかゲレタは口を開く
今私が言った事は事実。私はまだ1人で旅が出来るほどに強くないし、いざという時躊躇ってしまうだろうと思ったから
「…護衛、ねぇ?
俺は元山賊で傭兵じゃあないんだが?」
私の言葉をキチンと受け止めて、ゲレタは考えた上で私に口を開く
「わかっているわ
私が貴方に差し出せるものなんて無いに等しい
…だから、これを」
私は父から贈られたサークレットを差し出した
「これを売ればそれなりの金額にはなるはずよ
…それでどう?」
「…いやそういう意味じゃなくてだな」
この時の私は恐らく焦りと恐怖に支配されていたのだと思う
何せ、ほんの少しゲレタとの出会いが遅ければ
ゲレタが彼等を殺す選択をしていなければ
私は居なかったのだ
そう理解したのだから
「分かったわ。なら、このペンダント位しか私にはもう無いの
…流石に「身体を差し出せ」なんて言わないわよね?」
そう私は胸元からペンダントを取り出そうとして
コツン
「勝手に早とちりするんじゃねぇ
雇われるなら確かに報酬は要るだろうさ
…だがよ?」
私の頭を軽く叩きゲレタは
「勝手についてくる奴にまで金をせびる理由はねぇだろうが」
そう少しだけ笑いながらそう口にしたの
「つか、父親から贈られたもんを手放そうとすんなや
思い出も一緒に手放すつもりかよ」
私はその言葉で地面にへたり込んだ
「おいおい、大丈夫かよ?」
そう声をかけてくるゲレタに
「お、おい?」
私は抱きつき
そして、彼の胸で泣く事を選んだ
「…ホント碌でもねぇ話ばっかだな」
そんな呟きが聞こえた気がした
という訳で反響が思いの外凄かった
何故に?
と思いつつ書き上げました
なお、現状において恋愛要素は含む予定はありません
リンダはねぇ、好きなんだけどさぁ
私ミネルバ様推しなので!(オイコラ)
今後について迷子になってますのでご意見や感想宜しくお願いします
カオスルート
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いる
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いらない