汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
…はぁ、困ったわね
マルス達アリティア軍に参加しているアンナはため息を何とか飲み込んだ
確かにマルス王子達との誼を通じる為にもアリティア軍の一員として戦うのが早道であると考えた
…しかし
マケドニアにおけるアレを見た後でも、戦えるか?と聞かれたならば今のアンナは即答できない
マルス達はパレス付近にある街で待機している
…しかし、アリティアを解放した頃の空気はどこにも無い
誰も彼もが陰鬱そうに何かを考えている
アンナとしては、グラの援軍であるサムソンはともかく
ミディアとアストリアは話にならないと思っている。出来れば商売だとしても関わりたくない
そう思う程
純粋に戦力が足りない
…なら、アンナには心当たりがある
良心が痛まなくもないが、必要な事よね
そうアンナは自分を納得させると動き出した
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「…マルス王子
もう、アリティアに戻るべきではないだろうか?」
ハーディンはそう口を開く
「我等はまだオレルアンに戦力を残している
しかし、アリティアに戦力と呼べる者は居ないに等しいだろう」
「そう、かも知れない」
マルスは心底疲れ果てていた
アカネイアの要請を受けて行なったマケドニア
……そう、侵攻なのだアレは
マケドニアのやり方は騎士道に反しているかも知れないが、マルスは彼等を非難できない
彼等もまた守るべきものを守ろうとしただけなのだろうから
タリス王からも親書が届いている
『アカネイアに振り回されて民が見えなくなるくらいならば、アリティアへ戻られよ』
との事だった
ミディアとアストリアは一向に到着しない物資や兵の事で一度パレスへと戻っている
「…マルス様
自分が言うのもおかしな話だと思いますが、今アリティアが安定していない中ですべき事ではないと思います」
そうクリスもマルスを説得する
「…そう、だね
ジェイガン」
「はっ!ラング殿に使者を送りましょう
あの方ならば理解してくれる事でしょうからな」
…もうマルスはアカネイアという国を信じる事が出来なかった
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「…何故だ」
ミネルバはあの戦闘以降ずっと悩み続けていた
あの様な蛮行は許されるべきではない筈なのに
誰1人として、ルーメルの命令に逆らう者はいなかった
カチュアの話では白騎士団の者達もカチュアに対して猛攻を加えたと言う
…お前は槍を振るう事しか出来ないのか?
昔ミシェイルに言われた言葉がミネルバを追い詰める
マリアを助けたのは間違いではなかった
ドルーアに与して戦うべきではないと思っている
…だが、マケドニアの民はミシェイルを選んだ
自分のしている事は間違っていたのだろうか?
赤き竜騎士は悩み続ける
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「無理に決まっているだろう」
「ですが、マケドニア攻略は」
パレスへと戻ったミディアとアストリアはジョルジュの元を訪れ、彼と彼の部隊である弓兵隊を同行出来ないか?説得しに来ていた
「確かにマケドニアを攻略出来ればドルーアとの間に緩衝地帯が出来るだろうな」
「…なら構わないと思うのだが」
アストリアの言葉にジョルジュは
「正気か、アストリア
ドルーアが我等に降ったマケドニアをそのままにしておくと思うのか?」
そう告げたのだ
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峻険な山岳地帯が国土の大半を占めるマケドニア
しかし、行軍ルートが無い訳ではない
だが、その地理的要因から進軍ルートは狭矮であり、尚且つ山岳部に挟まれる所が殆どだ
ドルーアの部隊は他の国家と違う所がある
マムクートの存在だ
先のパレス侵攻に際しても、マムクート達は竜の姿で険しい山岳地帯を突破している
…となれば、それがマケドニアで出来ないと言うのはおかしな話
そして、アカネイアがマケドニアを統治するにせよ
ミネルバ王女を頂点とした新体制を作るとしても
まず間違いなくマケドニアの戦力は疲弊しているだろう
更に先の戦闘から考えてミネルバがマケドニアの民から信を得ていないのは明白
その状況で、ドルーア相手に抗し切れるだろうか?
アカネイアが増援を送るにせよ、時間がかかる
更にグルニア遠征軍の壊滅。これにより、ただでさえ再建の道筋が立っていなかったアカネイア軍の再建は更に遅れるだろう
そんな部隊をマケドニアに送り、マケドニアを守る?
出来るとジョルジュには思えなかった
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「言いたくはないが、お前達の言う様な戦術をマケドニアが積極的に取り始めたならば安全な所などないだろう
満足に対抗出来るのは同じ竜騎士か天馬騎士くらいだろうな」
「お前でも難しいのか?」
ジョルジュの言葉にアストリアは疑問を持つ
「相手は空を自由に駆ける竜騎士や天馬騎士だぞ?
しかも、ミネルバ王女とその騎士を完全に押さえ込んだらしいな
…その練度は並のものではないだろう。まだ練成途上の部下達では逆に的となりかねない
俺とて勝てるとは断言できないな」
皮肉な事だが、ジョルジュは蟄居を言い渡された事で時間は幾らでもあった
その為、現状を少し冷静になって考えると自分達を取り巻く状況が如何に危険なものなのかを漸く理解する
「……では部隊は動かせないと?」
「…そもそも本来俺達が動く動かないを決めて良い話ではない
確かに俺は弓兵隊の指揮官ではあるが、一歩間違えれば独断専行にしかならんだろう?」
ミディアの言葉に内心辟易しながらも、ジョルジュは答える
「元騎士隊長と、職務を放り出した歩兵隊長
…そんな者の言葉が通る筈もないだろうに」
ジョルジュはミディアとアストリアが去った後、そう深いため息と共に吐き出す
仮に
もし仮に
ミディアかアストリアがパレスから逃れるニーナ様の側にあって、支えていたならば話は変わるだろう
…だが、ミディアの立場は自分と同じ
有力貴族の一門に過ぎないのだ
しかも、家の意向で『大陸一の弓使い』などという大それたものを背負った自分とは異なり、彼女は家に対して反発を繰り返している
故に一門と言っても、殆ど意味を成してない
そして、まだアカネイアには貴族と呼ばれる者はそれなりの数が存在するのだ
彼女をニーナ様が目をかけて特別扱いする事は功績面からも、現在の状況からも難しい
アストリアは言うまでもないだろう
敵に降り、最大の危機であった先の防衛戦にすら参じていない
その上歩兵隊長の立場にありながら、恋人と共にアリティア軍に同行
そして、何も出来ぬままに戻ってきたのだ
多くの兵士達が軍を去って、残った者達
彼等は先の防衛戦におけるラングの奮闘を見て、何とかアカネイアに対しての忠誠を持った者達なのだ
そのラングの地位を奪い、挙句その立場を蔑ろにする様な人物に彼等がついて行きたいと思うはずがない
何度かジョルジュも2人を説得しようとしたのだが、聞く耳を持たなかった
恐らくだが、貴族の娘であるミディアと一介の傭兵でしかないアストリア
その仲を認められる事はなかった
故に貴族というものに対して、特にミディアは拭い難い嫌悪感を持ってしまったのではないだろうか?
ああなってしまっては、恐らく彼女が周囲の声に耳を傾ける事は難しいのではないか
「…どうすれば良いのやら」
ジョルジュは今後の事を思い、頭を抱えた
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兵士や民衆が戦勝に浮かれるグルニアとは対照的にマケドニアの国内の空気は張り詰めたまま
目下の脅威の1つであるアリティア軍を撃退したマケドニア軍
しかし、ミシェイルや各部隊を統率するルーメルにリュッケらは現状に対する危機感を寧ろ募らせていた
「ご苦労だった、ルーメル
お前には泥を被ってもらう事になった
…すまん」
「陛下、その様な事はありませぬ
我等マケドニア軍の兵士ひとりひとり。そしてマケドニアの民も陛下のしておられる事を信じております故」
ミシェイルの言葉にルーメルは
「…ただ、一部の者が暴走せぬかとひやひやしていたのも事実にございますが」
そう返答する
「…やはりそうなるか」
「無理もないかと
元々彼女達はミネルバ様の騎士団としてマケドニアを守る事を選び、志願してきた者達
それがこの様な事になれば。されど陛下が気にするべきではありませぬ。彼女達とて理解はしておりましょう」
ルーメルの言葉にミシェイルは表情を暗くし、リュッケは主君の心中を察して口を開く
マケドニア第一王女ミネルバ
彼女の率いていた天馬騎士団、通称『白騎士団』
その中でもミネルバの直卒であるパオラ、カチュア、エストの3名が相次いでマケドニアを離れた
それより少し前にはドルーアの拠点であったディール要塞において、アリティア軍討伐の要請を受けた筈のミネルバがアリティアとの戦闘を拒否
事もあろうにディール要塞にて『人質の名目』で留め置かれていた第二王女マリアを拉致したアリティア軍に降っている
本人達はそれで良いのかもしれないが、この事はドルーアから傭兵として遇される事も内示されていたマケドニアにとって致命的な事となる
マケドニアは傭兵としてすら信用ならぬ
という致命的な前例となった
ドルーア皇帝メディウスやガーネフは気にしなかったが、ドルーア軍の指揮官はマケドニアに対して重要な任務を任せる事はなくなっている
しかも、この事はパレス解放後アカネイア側により大陸全土へと喧伝される事となり、マケドニアの傭兵としての信頼は地に落ちた
……そして、ミネルバの率いていた白騎士団に属する多くの天馬騎士達は自身の意図する事なく、裏切り者の部下として見られる事となってしまう
無論、ミシェイルは貴重な戦力であり、マケドニアの為に槍を持つ覚悟をした彼女達の覚悟を疑うつもりはない
ルーメル、リュッケ両将軍もあくまで裏切ったのはミネルバ王女とその配下の3名の騎士のみであると軍内部やマケドニアの民に知らしめる事とした
…しかし、とうの彼女達からすれば気を遣われるだけ気に病む事となってしまう
…故にこそ、先のアリティア軍攻撃の際にも彼女達は自身の直属の上官であるルーメルに対して
「私達が先陣をきる事、お許し願いたい」
と願い出るのはある意味では当然の事と言えた
…しかし、ルーメルはミシェイルに話をして
「…お前達がマケドニアの為に命を賭して戦おうとしている事
それを俺は知っている。そして、兵達にも民にも否定させぬ
むざむざ死にに行く様な事は許さん
…今の我等はその様な余裕はないのだ」
と彼女達を説得してもらっている
故に彼女達は元同僚であり、マケドニアに槍を向けたカチュアの命を奪わんと猛攻を加えたのだ
全ては自分達を信じてくれた
白騎士団の者達は作戦後、各地の警戒任務に向かい
手の空いている者達は例外なく鍛練に励んでいる
そんな彼女達の姿を見て発奮せぬ様な者はマケドニア軍にはいない
竜騎士団や地上部隊も猛訓練に明け暮れていた
マケドニアの兵士達は誰一人として、あの作戦を非難しない
国王が
将軍達が
どれだけこの国を守ろうと必死になっているのか?
それを皆知っているのだから
どうやら長年体の事を放置し続けていたツケが回ってきた様です
完結までやりたいと思っているのですが、わからなくなりました
なので、更新が止まった時にはあまり期待せずにお待ち下さい
ifルート(18禁バージョン)いる?それだけ独立して投稿するものとする
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いる
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いらない