汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
ある世界の話
チキは不愉快であった
父と母の眠る地を守っていた
そんな時にいきなり呼び出された挙句、戦えと言うのだから
(いっそ此処を更地にしてやろうかしら?)
と思わず物騒な考えが頭の中をよぎる
此処はアスク王国
自分を召喚したのはエクラなる怪しげなフードの人物だ
それはまぁどうでも良い
アスク王国の王子アルフォンスと王女シャロン
これもどうでも良い
隊長のアンナ
あの女と同じ容姿
思わず一瞬だが、殺意を抱きそうになったが自制した
それは八つ当たりである
そう思ったから
異説 異界にて
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此処はどうやら妙な世界らしい
隣の大陸であるバレンシアや父から寝物語で聞いた事のあるユグドラル大陸やエレブにマギ・ヴァル
その大陸の出身の英雄?とやらが多く居たのだ
チキの父であるゲレタと母リンダが亡くなって既に200年は経つ
しかし、チキは昨日の様にあの頃の事を思い出す事が出来る
特に父から言われた事、聞かされた事は一言一句
父はアカネイア大陸の人物ではない
そして何処かの組織や集団に属していた訳でもない
成した事は偉業と言えるものであるが、それが後世に語り継がれる事はなかった
あの女の国のせいだ
母はカダインの魔道士であり、メディウスを倒した戦いにおいて記録に残されている
父の教え子であるクライネ、カタリナ、レイにクリス達も歴史にその名を刻んでいた
…だが、そこに父の名も姿もない
全てが母やクライネ達の功績として語り継がれているのだ
マルス王子
…いやマルス王達は自身の日記などに父の姿を残した
しかし、他の資料から父の姿が見えぬとして歴史学者達は父の存在を認めなかったそうだ
本来ならば大陸に縁もゆかりもない父だ
だからこそ、父の一人娘である自分はそれを憶えていなければならないと強く思う
父の死後、テーベで邪竜とか嘯く者が生まれたと知った時はどうでも良かった
マルス達が死んで、ヒトの都合の良い様に記録が改竄されていくのを知った私にとってどうでも良かったから
…だが、アレは父と母達が守っていた村を踏み躙った
許せなかった
許してはならない
そして、マルス王の子孫であるイーリス聖王国の国王を連れて倒しに行ったわ
聖王のした事は私が徹底的に痛めつけて身動きすら取れなくなった邪竜もどきを封印しただけ
名声なんてどうでも良い
ヒトが勝手に選ぶのだから
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「な、何故お前が此処にいる!?」
「無理矢理召喚されたのよ」
懐かしい顔を見た
「…ほう、まさか貴様達も招かれたか
…久しいな、ナーガの姫よ」
彼女はかつて戦った者をそこに見た
「……聞けば聞く程に解らぬものだ
ナーガの姫ともあろうものが、ヒトの娘となるか」
「おかしいかしら?」
「…いや。寧ろそれこそがナーガの望んだ世界だったのやも知れぬ」
チキはかつて敵対した者と気が付けば話をしていた
なお、約1名程逃げようとしていたのだが流石は音に聞こえた暗黒竜と恐れられた者
ひと睨みで逃げ道を断っている
「…私の扱いが酷い」
「ヒトに良い様に利用されておった貴様が悪いわ」
「人工的に生み出されたからかしら
生存本能が鈍いと思うわよ、貴方」
と2人に言われて、肩を落としいじける銀髪美女
それはまぁどうでも良いとして
「しかし、ヒトの浅ましきは変わらぬな」
「それは否定できないわ
そもそも
「……儂が言う事ではないと思うが、お主の父も大概人間を辞めておるのではないか?」
忌々しくも再び世に戻されて同族たる者達と英雄王達と相対した訳だが、そこの中に明らかな
不可視の魔法による確殺
あれは戦闘でも闘争でもない
ただの処理であった
そして漸く思い至った
先の戦争においてグラやパレスでの不自然な同胞の敗北。それにこの男が関わっていたのだと
…だが、その光景に何処か懐かしさを感じたのも事実
旧き世において、ヒトを守らんとナーガと共に戦った時の事を思い出したのだから
あの時、少数ながらも己やナーガ達と共に理性を失った者達と戦ったヒトがいた
だからこそ、彼は
…まぁナーガの姫がここまで拗らせているとは流石の彼も想像していなかったが
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「それで父様は山賊達を叩き伏せたり、各地に散った地竜族を討伐したりしていたのよ」
「…ふむ」
「」
チキの父親語りは日が変わっても続いた
しかし、彼は黙ってその話に聞き入っている。なお、邪竜(笑)は白目を剥いて意識を飛ばしている
何せ竜族を大した魔法も使う事なく、くびり殺す様な人間など彼女の常識にある筈もない
というか、そんな馬鹿げた存在がいるならばそもそも彼女が産まれる事はなかっただろう
暗黒竜はチキの父であるゲレタに対して嫌悪感などなかった
…寧ろ、大いに称賛すべきだと思っている
竜や竜人族を倒すにはそれなりの装備や能力がいる
にも関わらず、世間一般に広く周知されている魔法と大陸の外の知識というものを合わせる事で絶死の一撃を作り上げた
竜や竜人族とヒトの違うところはそこであると暗黒竜は考える
工夫し、努力の果てに強者を打倒する
「…叶うならば、その人物に会ってみたかったものだな」
「そうね。父様はアカネイアの事も知っていたわ
建国の秘密も」
「ふ
ふはははは!
それは更に会わねばならぬな」
暗黒竜
…いや、メディウスは笑った
「ならばあの者に頼まねばなるまいて」
「…そうね」
「…私も連れて行くのかぁ」
そして暗黒竜とヒトの娘に邪竜は召喚者の元へ向かう事とした
なお
「無理だから!
望む人物を召喚するなんて!」
との絶叫が上がる事になる
と言う訳でメディ公とチキにギムレーとのほのぼのになりました
小説は
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