汚泥の中で   作:アカネイアの雑兵

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 激戦

港町ワーレンを出た俺達は北上し、峠を抜けた

 

そしてそこから見えた光景に

 

 

「…なに、あれ」

 

「…マジかよ」

 

リンダも俺も絶句する

 

 

ソシアルナイト(高機動力に火力担当)アーマーナイト(防御力、火力担当)アーチャー(間接攻撃担当)

と中々に隙のない布陣の部隊が今まさに砦から出撃しようとしているのが遠望出来たのだから

 

加えて

 

ホースメン(騎馬弓兵)だと!?」

少数ながらにゲレタにとってあまり相手取りたくないものの姿まであったのだ

 

そして今のマルス達にとって下手をすると死神にもなりかねない存在がそこに居たのだから

 

 

 

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ゲームとしてプレイしていた時ならば、盾役となるドーガとバヌトゥを配置する事により、上手いこと部隊のレベル上げにも出来た増援部隊

 

だが、ここは現実であり疲労が蓄積すればミスが起きてしまう

加えて、重騎士つまりアーマーナイトの鎧は確かに堅固ではある。あるが着装して動かねばならない以上、どうしても動きを阻害しない為に防御力の低い所がある

当然、相手はそこを狙うのが、対アーマーナイトやジェネラル戦におけるセオリーなのだ

 

そして何よりも、レフカンディから此方へ直行した場合鎧をしっかりと直せる場所が存在しない可能性がある

ワーレンにはその様な店くらいあるだろうが、鎧の修理となると一朝一夕で終わるものではないし、それこそドーガ(使用者自身)も細かい調整の為に立ち会わねばならない事もあると聞く

 

バヌトゥとて、火竜石がある限りは問題にならないだろうが、あの規模の部隊を相手取るとなるとかなり厳しい戦いになるだろう

 

 

 

別にジュリアンが死ぬには問題ない(出来れば自分の手で殺してやりたい)が、流石にマルスやシーダが死んで後の時代がまるっと無くなるのは少しばかり困る

 

 

というか、その場合どうなるんだろう?

少し見てみたい気持ちもあるが、そこはぐっと堪えよう

 

 

「流石に俺とリンダ2人でどうにかなる数じゃねぇ」

 

「…やり過ごすの?」

意外そうな顔をするリンダ

 

…あのね?

人を戦闘狂みたいに思わないで欲しいんだ

 

確かにやってる事えげつないと俺自身も思ってるよ?

でもね?

 

身体はバリケードみたいでも、心はデリケートな人だっているんですよ!?

 

俺はそう声を大にして主張したい

…まぁ、食糧事情がアレだったのでおおよそ健康的な体格とは程遠いですけど

 

内心ゲレタは旅の相方が自分の事をどう思っているのか気になった

 

 

 

 

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「流石に数が多過ぎる

此処は此方に気付いた奴だけ相手にするべきだろう

…倒せなくないのかも知れないが、流石に手間だ

それに剥ぎ取りに時間がかかり過ぎるし運搬出来たものでもないからな」

 

…そこで倒せないって言わないんだから、ホントこの人規格外よね

 

彼の言葉に聞きながら、私は内心少し呆れていた

何せやろうと思えばあの時の様に5、6人まとめて殺す事が出来るのが目の前の人物なのだ

 

多分殆どの人はこの人の事を知れば化け物とか言って責めるのだろう。…私はそう思わない

確かに変わり者で、少しアレだけど

頼りになるし、強くて優しい

 

 

…でも、足手まといになりたくはない

私はお姫様になりたいんじゃない

 

誰かを守る為に、この道を選んだのだから

 

 

守りたかったお父様は殺されてしまい、何の為に自分は魔道の道を選んだのか分からなくなってしまった

…でも、今は違う

 

護りたいもの(ひと)が自分にもいるのだから

 

 

そう決意して、此方に気づいた敵を私は睨み付けた

 

 

 

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「厄介な敵が西側にいる」

 

その報を聞いた砦にいる指揮官はその数を確認させた

 

 

 

帰ってきた斥候の話では2人組の男女らしい

 

何やら2人とも魔法を使うと

 

「ならばホースメン部隊をぶつければ良かろう

敵はアリティア軍なのだ。さっさと片付けてアリティアのマルスの首を挙げよ!」

そう檄を飛ばした

 

 

 

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その戦場は異常だった

 

 

何の外傷も見られないのに地に伏して、ピクリとも動かない騎士

雷に射抜かれ、炎に焼かれ、苦悶の呻き声を上げる騎士

 

その対極とも言える存在が混在していたのだから

 

 

だが、彼等はそんな者達を気遣う余裕などありはしない

 

「がはっ!」

また1人騎士が胸を抑え、そのまま落馬する

普通ならばあり得ない事だ

 

 

彼等はこの大陸においても屈指の練度を誇るグルニア王国の騎士達

本国にいる主力騎士団程ではないにせよ、そこら辺の雑兵に負ける程度の練度では決して、ない

 

 

だが、この戦場を異常ならしめているのは彼等騎士ではない

 

敵である魔道士2人の側なのだ

 

 

 

 

 

とは言え、女の方は魔法を放ってくる様子が見える為脅威ではあるだろうが対応できる

 

問題はもう1人の男の方だ

少し手を振るうだけで、騎士が

 

顔を

腹部を

腕部や脚部を押さえながら落馬するのだ

 

更に

 

ヒヒィーン!

馬が騎士達の指示を聞かなくなる

 

 

騎士達が騎乗している騎馬は当然ではあるが、厳しい訓練を重ねた上で戦場に出ている

乗り手の指示を聞かない

などと言う事はあり得ない、筈なのだ

 

 

風貌からして魔道士の筈なのに

その魔法の痕跡が見られない

 

にも関わらず、騎士達は地に伏せてゆくのだ

 

 

これを異常と言わずして、何を異常というのであろうか?

 

 

余りの状況に引き返そうとする騎士

…しかし、次の瞬間彼は光の中に消えた

 

 

 

 

 

「悪い、助かったリンダ」

 

「大丈夫よ。ゲレタ、気をつけて」

 

どうしても魔力の関係上、ゲレタの攻撃範囲はそこまで広くない

しかも敵は騎乗している為に高速で移動している

 

その体内にピンポイントで火球を送り込むのは中々に面倒な作業と言えた

 

正直、火球即ちファイアーよりも電撃、サンダーの方が殺傷能力や効率の上では良いのだが

高いのだ。サンダーの魔導書は

 

 

命が掛かっているのに、そんな悠長な

 

そう思われるかも知れないが、これは本当に死活問題となり得るものなのだ

1人の時はそこまで気にしなくてもよかった

 

…だが、今はリンダがいる

 

 

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今更強調するまでもないと思うが、リンダは美少女だ

 

その為、彼女を手に入れようとありとあらゆる方法で近付き、騙そうとする

それ故に彼女は街や村を嫌う様になったのだ

 

 

此方に金がないと見るや

 

「ではこうしましょう

その娘さんを一晩お貸し下さい。そうすれば」

 

なんて言ってくる奴の何と多い事

 

 

彼等の言う一晩とは一生であり、一晩あれば人間の尊厳を砕く事など訳も無いのだ

 

 

なので可能な限り節約せねばならないのだ

…勿論ヤバいとなれば、それこそ奥の手を出さざるを得なくなるだろうが

幸いにも魔力による障壁を張ることの出来るリンダが相方なのだ

やったとしても然程問題ないだろうとは思っている

 

 

 

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そんな状況と違い本当の意味で死闘を繰り広げているのはマルス達だ

 

 

「くっ!」

 

「負傷したら下がれ!

今1人でも崩れたら全て終わるのだ!」

 

というのも、レフカンディにおける戦闘によりドーガの鎧の損傷が激しく、またドーガ自身も深手を負っていた

 

 

レフカンディにおいて、マルス達はマケドニア・グルニアの連合部隊と戦闘を行なった

結果として勝利こそしたものの、マケドニアの象徴とも言えるドラゴンナイト

 

これが10騎も投入されたのだ

 

 

ドラゴンナイト

 

 

高い攻撃能力と機動性

更に物理攻撃に対する耐性まで兼ね備えた空を駆ける死神とも呼ばれる存在だ

 

 

マルス達の軍にドラゴンナイトと互角に渡り合える実力者はジェイガンのみ

しかもあくまで一対一の場合のみ

 

マケドニアのドラゴンナイトやペガサスナイトは単騎突出する事を戒めている

 

 

何故か?

 

彼等彼女達とて、無敵ではないからだ

 

 

 

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マケドニア王国の成立はアカネイアの奴隷であったとされるアイオテがこの地に国を興した事に始まるとされる

 

 

しかし、奴隷身分であるアイオテの成り上がりに不満を持つアカネイア貴族達はマケドニア王国を認めようとせず、結局アカネイアの属国という形に収まる事となった

 

 

国土の多くは険しい山岳地帯で構成されており、農業などによる生産性はお世辞にも高いと言えない

故にこそ、マケドニア王国の建国を許したのではないか?との意見も多いのだが

 

しかし、確たる人間の国がなかったマケドニアはペガサスやドラゴンの生息する地域であり、アイオテはこれらを手懐ける事によりペガサスナイト、ドラゴンナイトという戦力を手にする事が出来たと伝わる

 

空を駆けるが故に地形に左右されず

高所にて活動できるが故に索敵に有用

そして高い機動力と決して侮れない戦闘力は敵と遭遇したとしても、生還出来る可能性が高い

 

 

その為、ペガサスナイトやドラゴンナイトは当時のアカネイアにより各地を転戦させられる事となり、大陸全土にその存在と有用性が知れ渡る事となった

 

そしていつしかマケドニア王国における基幹産業として、傭兵業が認識され、今に至る

 

 

が、ペガサスナイトやドラゴンナイトにも致命的な弱点があった

 

 

空を駆けるが故に、その翼が無くなればそのまま落下して命を落とすのだ

 

 

その為、アカネイアにおいて弓を専門に扱う部隊が創設され、各地においても弓兵隊の整備が急がれる事となる

 

 

 

 

現国王ミシェイルは自国の最大戦力たるペガサス、ドラゴンナイトの有用性と弱点を認識していた

 

その為

 

 

単騎突出を厳に慎む

との通達を出し、部隊指揮を取る指揮官達に対しても

 

単騎による運用は可能な限り避ける様に

と指示を出した

 

 

 

その為、マケドニア軍による敵対者への被害は軽視できぬ者へと膨れ上がる事となったのである

 

 

 

しかし、レフカンディはグルニアの拠点

そこにドラゴンナイトを10騎も派遣するのは些か以上に不自然とも言える

 

 

何せ、マケドニアとグルニアの関係は控え目に言っても良いものではなかったのだから

 

 

 

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時は遡り、マルス達がオレルアン城を制圧して暫く後の事

 

 

 

「…メディウス様

オレルアンが奪還されました。申し訳ございません」

 

「…ガーネフ。別に儂にとってそんな些細な事はどうでも良い

奪還されたならば取り返せ

殺されたならば、それ以上に殺せば良い

…それだけの事よ」

 

ドルーアの奥深くにおいてドルーア帝国皇帝メディウスはその腹心ガーネフからオレルアン失陥の報告を受けていた

人類を滅ぼさんとするメディウスからすれば、封印されている地竜族の封印さえ解ければ何の問題もない

 

自身に従う竜人族と共に全面攻勢に出て、忌々しい連中を根絶やしにしてやるだけなのだから

 

 

 

…ところが

 

「実はアカネイアのニーナが生き延びていたらしく」

 

「…ふん。小娘1人殺しきれぬか

マケドニアにグルニアも所詮口ばかりか」

マケドニアにいる騎竜

 

あれもドラゴンの一種ではあるが、メディウスは人間どもに使われる彼等を同胞とも仲間とも思っていない

 

「…そのニーナめがアリティアのマルス王子にファイアーエムブレムを授けたとか」

 

何?

 

そのガーネフの言葉にメディウスの纏う気配が一変する

 

 

 

----

 

 

 

ファイアーエムブレム

またの名を封印の盾と称されるこれは本来神竜族の長であるナーガを祀っているラーマン神殿に納められていたものである

 

若きメディウスは薄汚い盗賊に騙され、ナーガが後の世の為に残したモノを奪われ仲間を殺された

 

 

それこそメディウスが人間を憎悪する事になったきっかけにして、原初の炎

 

それを奴等は象徴として掲げ向かってくるというのだ

 

 

「…面白い。虫ケラ共め、余程死にたいとみえる」

メディウスの目に憎悪の焔が宿る

 

「ゼムセル、貴様に命じる。あの薄汚い盗賊の末裔とナーガの牙を不遜にも我に突き立てた者の末裔。その首を我が前に持って参れ」

メディウスの言葉に

 

「…はっ、お任せあれ」

今まで言葉ひとつ発する事なくメディウスの側に控えていた男はそう言って部屋を後にしようとする

 

 

「…お、お待ち下されメディウス様!」

しかし、それをガーネフが止める

 

 

 

 

 

「……何の真似だ?ガーネフ」

 

メディウスとゼムセルの視線がガーネフを射抜く

メディウスが人間であるガーネフをそばに置いているのは、あくまでも気まぐれに過ぎない

…確かにガーネフは自身の復活の為に尽力したそうだが、少なくともこの男の願いであるカダインとやらはガーネフの手に落ち、ミロアもガーネフが討ち果たしている

 

であれば、メディウスにとって既にガーネフの存在は

 

「今回の失態をマケドニアとグルニアにしかと伝えます

…今暫くお待ちを」

 

その慌てようにいっそ憐れとすら思ったメディウスは

 

「…良かろう。貴様の言、聞き入れてやろう」

 

そう不敵に笑った

 

 

 

 

 

 

 

その結果、マケドニアとグルニアの戦力が強化されたのである

 

 

 

そしてその牙がマルス達に牙を剥く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

希望の象徴は誰かにとっての憎悪の証

それを知る者は殆どなく、互いの怨恨は深まるばかり

 

それでもヒトは生きてゆく

 

 

 

 

 




なお、作中に出てきたゼムセル

彼は原作におけるラストマップのひとつ前のボスです


言うまでもなく、彼がこの時点で動けばマルス達に勝ち目は1つもありませんでした

ガーネフのファインプレーですね

カオスルート

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