汚泥の中で 作:アカネイアの雑兵
なお今回は重大な本編ネタバレがあります
気にせず読んでくれると嬉しかったり
アスク王国は危機を脱した
そう思っているのは王子であるアルフォンス、王女シャロン
そして隊長のアンナくらいだろう
確かに直接的驚異は去ったと言って良い
しかし
異伝
裏側の苦悩
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「増やしすぎたな」
アスク王国の一室で頭を抱える者達
アスク王国は滅亡の危機を切り抜けた。それ自体は好ましい事だ
それは此処にいる者達誰一人として思っている
召喚の儀
アスク王国を滅亡寸前までおいやった儀式
奇しくもムスペルにもあったこの儀式はエンブラによるアスク王国の危急存亡と『召喚師』エクラという相反するものを生み出す
危機にあったアスク王国はエクラによる召喚による戦況打破に一縷の望みをかける他に道は残されていなかった
そして、エクラにより招かれた英雄達の力を以てアスク王国は数々の戦乱を切り抜けた
しかし、これにより新たな問題をアスク王国は抱え込む事となってしまう
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「旧エンブラを始めとした地域には未だ混乱がつづいております
····言いづらい事ではありますが」
「分かっている。エンブラなどの統治機構が機能できない現状、我等アスク王国に対する怨嗟や憎悪の声が上がっているのだろう?」
言いづらそうに発言する者を慮り口に敢えて出す取りまとめ役の人物
敵国を倒した
それで凱歌をあげられる程にこの場に居る者達は楽観的に考えていない
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エンブラを始めとしたアスク王国が打ち倒した国家
アルフォンス達は彼等なりの考えがあって、倒すべきと考えて行動したのだろう
「まだ王子も王女もお若い
アンナ隊長にはお止めしてほしかったのだが」
室内のあちらこちらからため息が漏れる
「今の王国は歪に過ぎる
影響力こそ比類なきものではあるが、その軍事力に似合わぬ程内政は貧弱
我等の不手際と言われたら返す言葉もありはしないが」
そもアスク王国の軍事力は召喚した英雄達によるもの
王国軍の要職にある者は国軍の温存が叶う上に強大な発言権を期待してヴァイス·ブレイブへの支援を欠かす事はない
国軍などと言葉だけ聞けば大したものに聞こえるが、彼等は王国中枢の防衛を担っているに過ぎない
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「食糧の生産体制はどうなっている?」
「そんな簡単には解決出来ぬのは分かりきっておりましょう」
「幸いにも先に召喚されたチキ殿のお父上から提案がありまして
現在その案を一部で試験的に行なっていますが」
食糧増産
言葉にすればそれだけであるが、これは幾ら焦った所で時間を掛けねばならない事
エンブラなどの侵攻により、王国内で焼き討ちが行なわれている
結果として、王国内の農地は減少。更に担い手である農業従事者も混乱の最中かなりの数が命を落とした
「軍は嬉々としてヴァイス·ブレイブに支援しているが、それどころではあるまいに」
「それよりも、だ」
苦い表情でともすれば軍に対する明確な批判ともとれる発言を置いて、ある人物は
「チキ殿のお父上ともなれば、期待して良いのではないか?」
そう発言したのだった
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「····と言うわけで
いきなり娘が無茶振りをしてきた件について
いやまるで意味が分からんのだが!?
と内心混乱の極みにあるゲレタ
それに対して満面の笑みを浮かべながら、父との会話を楽しむ娘(なお
「···姫は貴殿を認めて欲しいのだ
皮肉な事ではあるが、貴殿を最も評価したのは当時の敵手
つまりはあの世界の我等だろうて」
ゲレタの狼狽を見てとったのか、メディウスはそう話し諭す
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メディウスの考えた通り、ゲレタの存在を確認していれば確実にガーネフやメディウスは刺客を差し向けた事だろう
が、ゲレタは元いた世界で所謂『歴ヲタ』と言われる人種であり、中でも戦史研究に余念がなかった
故に
果ては情報の隠蔽などの有用性も理解している
存在が確認していれば対処も容易だろう
だが、ゲレタはジョルジュやグラ軍にその辺りの功績(と言う名の面倒事とも言える)を体よく押し付ける事で己の存在や姿をぼかした
結果として、あの世界のメディウスがゲレタの存在を知り得た時には全てが遅かった
地に眠る旧き祭壇を巡る攻防
その際、ゲレタは愛妻であるリンダ。愛娘のチキ
愛弟子となったクライネ、カタリナ、レイ。そして居候のチェイニーと
「···手間かけさせんな、アホ
言ったろうが、愛した女は護れよ。ってな」
「···悪い」
「一度限りのサムシアン残党としての情け。『仲間は助けろ』
·····行け」
「助かる」
そんな会話が元盗賊と交わされ
「····貴方は、ゲレタさん!?
どうして!?!?」
「なに、気まぐれさ
パオラの騎士としての最後の花道
なら、それを助けんのも悪かねぇ」
「···貴方に感謝を」
「アンタからの感謝なんざ一文にもならんのだがなぁ」
白き騎士と赤き騎士と語り
「よぉ」
「まさかこの場に駆け付けるとはな
が、心強くはある」
「生憎と理性を捨てた竜なんぞ殺し甲斐もねぇんだがな
一時とは言え味方だったんだ、共闘するのも吝かじゃねぇ」
「···とんでもないな」
紅き傭兵の背を守り
「···あの小娘にはまっっったく興味はねぇ
ねぇが、ハーディン殿が護ろうとした
せめてハーディン殿の御霊の為にも死なせる訳にゃいかんわな」
そして、暴威は地竜と闇の部族を蹂躙したのだ
ついでに言えば、地の底での戦いなれば余人が信じる訳も無いだろう
という考えも多分にあったそうな
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チキはあの戦いで更に父への慕情を強めた
強さとは旧き世における絶対的な指標
如何にゲレタ達と過ごしたとても、
故にチキはゲレタに惹かれたのだ
だからこそ余計に父を認めようとしない人間に失望した訳である
死に別れた筈の父
夢にまで見て、それでもいつも触れあう事すら叶わなかった父
どれだけの月日が流れようと
父を誰もが忘れようとも
チキが忘れない限り、父はチキの中で生き続ける
しかし、何の因果か
こうして父と再会出来た
ならば
私の父はこんなにも凄い人なんだ!!
そうチキは声を大にして言いたかった
神竜の娘チキ
まごうこと無きファザコンであった
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後日、ゲレタはチキとクライネにメディウス
そしてギムレーとロプトウスを連れてアスク王国の官僚達と共に農業改革案の草案作りや狩猟部隊の調練を担当する事となる
更に後日、その話を聞き付けた某リグレ公爵やその戦友たる研究者などを交えて
魔法による
の開発に没頭する事となる
「···コイツらマジで頭おかしいわ」(白目)
と赤髪のとある人物は呻き
「···混ぜるな、危険
とは良く言ったものだな」(諦観)
と銀髪の人物は天を仰いだ
なお研究テーマは
魔法による害獣の効率的かつ食用部を可能な限り留める
と言うものだったそうな
「いやぁ、その発想はなかった」
「対人戦で使うのは憚られますが、とても研究しがいのあるテーマですね」
「···パント殿やカナス殿も出来なかったとは意外だなぁ」
と言うわけで、本編のネタバレ回でした
小説は
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